ヒグのサッカー分析ブログ

ベガルタ仙台の試合分析が中心です。

まずは守備の再構築を~明治安田生命J1第3節 サガン鳥栖vsベガルタ仙台~

 さて、今回はサガン鳥栖戦を振り返ります。

↓前節のレビューはこちら

khigu-soccer.hatenablog.com

 

 

スタメン

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  ベガルタ仙台は、ホーム開幕戦となった前節・川崎フロンターレ戦で1-5と大敗を喫した。改めて王者の強さを思い知らされた試合だった。

 仕切り直しとなる今節、前節からは5人の変更。平岡、シマオ・マテ、真瀬、松下、赤﨑が前節と代わってスタメンとなった。

 一方のサガン鳥栖は、湘南、浦和を下して開幕2連勝とこれ以上ないスタートを切れている。金監督のもと、昨シーズンのメンバーをベースにファン・ソッコや仙頭などを獲得し、派手さはないもののしっかりとしたチームを作れている印象だ。

 ホーム連戦となる今節は、前節・浦和レッズ戦と同様のスタメンで挑んだ。リャン・ヨンギはベンチからのスタート。

 

前半

(1)鳥栖の配置的優位性と仙台の曖昧模糊なプレッシング

 前半は開始5分で鳥栖が山下のゴールによって先制すると、その後も鳥栖が的確な立ち位置による優位性を生かしたボール保持で主導権を握る展開となる。

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 鳥栖のボール保持の形は4-2-2-2のような雰囲気となる。ポイントはハーフスペースに立つ小屋松と樋口。彼らがハーフスペースにいることで、仙台のダブルボランチがピン止めされ、前線のプレッシングに加わらせないような立ち位置を取っている。

 鳥栖のビルドアップ隊は多くて5人。キーパーの朴に加えて、エドゥアルドとファン・ソッコがハーフスペースに立ち、その前にダブルボランチがポジショニングする形。仙台は、ボランチがピン止めされていることもあって、基本的に5人に対して赤﨑と上原の2人でプレッシングを掛けなければならない状況となる。

 5対2という不利な状況になり、鳥栖は後方から簡単にボールを前進させることに成功している。

 

 仙台も前からプレッシングを掛けたい雰囲気は醸し出すが、1人がプレッシングに行っても、その後が続かずに連動性のないプレスとなり、結局はそれがトリガーとなり、1人が剥がされ、また剥がされという形で、鳥栖にボールを前進させてしまっていた。

 準備期間が短い中だったが、どこでどうボールを奪いたいのか。どのタイミングでプレスのスイッチを入れて、ボールを奪いに行くのかなどのチームの決まりごとがなく、この試合における準備不足は否めなかった。特に鳥栖がボール保持に自信を持っているチームだけあって、少しいただけない試合運びだったなというのが、正直な感想だ。

 

(2)マルティノスと真瀬の突破

 仙台の攻撃におけるポイントは右サイドだった。前半から再三再四右サイドからえぐってチャンスを作るシーンは多かった。

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 鳥栖のボール非保持は5-3-2。5バックは仙台の前線に対して迎撃守備を行う。ややマンツーマンの意識が強かった。

 仙台の狙いとしては、マルティノスと中野のエリアを利用することだった。マルティノスが中野を引き出して、その背後を真瀬がランニングして受けるパターン。

 これで、仙台は右サイドを突破することができていた。

 

 しかし、この攻撃をやるに当たって、真瀬を高い位置に持っていきたい。そのために吉野が列を降りて、ビルドアップ隊が3枚になる形を取っていたが、鳥栖はこの3枚に対して2トップと仙頭が前に出てきてプレッシングを掛けに行く。よって、プレッシングを受けた仙台のビルドアップ隊は、結構前進するのに苦労していた印象だった。

 むしろ、ロングボールのセカンドボールを回収してとか、カウンターの流れから右サイドを突破するケースが多かったように思える。

 真瀬を高い位置で生かしたい一方で、その反動を後方が受け持つ形となった前半の仙台の攻撃だった。

 

前半は鳥栖が3点リードで折り返す。

 

後半

(1)5バックにした功罪

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 仙台は、後半スタートから3-4-2-1にシステムを変更して挑む。

 

 仙台がシステム変更した狙いは攻守においてあったように思える。

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 攻撃においては、前半繰り返し行ってきた右サイドの突破に関して。

 前半は、センターバック(平岡)、真瀬、マルティノスの3人の関係になっていることが多かったが、システムを変更することでボランチがフォローできる配置となり、3人から4人の関係になった。

 このことで、真瀬の突破を続けながら厳しいときは上原が横のフォローに入って、逆サイドの展開や攻撃の再構築を行っていた。

 

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 一方の守備では、前半は攻め込まれたときにサイドチェンジによって守備が広げられ、簡単にクロスを上げさせてしまったり、中央への縦パスを許していしまうシーンが見られた。

 なので、5バックにすることで横幅の対応と中間ポジションにいる選手を捕まえ、縦パスを入れられたときに対応できるような形へと変化させた。

 しかし、5バックにして後ろ重心になったことで、今度は松岡がフリーでボールを受ける回数が増えて、そこから鳥栖に展開されるシーンが増加した。

 56分のゴールシーンはまさに象徴的で、松岡をフリーにさせると、小屋松へ簡単に通させて、あとはサイドからのクロスにファーで合わせられてしまった。すべてが後手に回ったシーンだ。

 本来であれば、赤﨑が松岡を監視する役割なのだろうが、ハーフタイムでそこまでの修正ができていなかったのだと思う。

 それでも、去年なら長沢がやっていたんだろうなと、いなくなった選手を言うのも何なのだが、嘆きたくなるシーンだった。

 この得点によって、ほぼほぼゲームは決まってしまった。

 

(2)選手交代をして一矢報おうとする仙台

  仙台は63分に崇兆と皆川と投入する。

 この交代で、崇兆が右シャドーに、皆川がワントップに配置されるが、崇兆がシャドーに入ったことでマルティノスよりもボールを受けることで右サイドはより安定したし、真瀬が突破するシーンも増えた。

 また皆川は松岡にもしっかりプレッシングを掛けるようになったので、少しばかりだが改善された面もあった。

 その後もアピアタウィア、富田、加藤と投入しながら、なんとか1点でも取ろうと攻めに出るが、最後まで鳥栖のゴールを割ることはできなかった。

 反対に90分+4分にカウンターから酒井に決められて、2試合連続の5失点を喫する。

 

 これで試合終了。仙台は2試合連続5失点での屈辱的な敗戦を喫した。

 

最後に・・・

 5失点が2試合連続で続く形となった。試合間隔が短い中だったが、特に守備での準備不足が否めない試合だったと思う。

 前半でも書いたが、守備の時間のなかで自陣で構えるのか、プレッシングしてボールを奪うのかがハッキリせずに、中途半端なプレーが多かったように思える。特に単騎特攻でのプレスが多く、全員で共有されてないことも多いのかなと感じるシーンは多々あった。

 

 これだけ失点数が多いと、やはり守備の改善というところが今後のポイントになってくる。もう一度守備のところでどうやってボールを奪うのか、守っていくのかを共有しないと同じ過ちを繰り返すことになる。

 まずは今日の湘南戦。お互いにまだ勝ててない中で、集中した守備はポイントになるだろう。泥臭く、ハードワークする姿をアウェイの地で見せてくれることを期待したい!!