ヒグのサッカー分析ブログ

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できることが増えてきたベガルタ仙台~明治安田生命J1第17節 ベガルタ仙台vsセレッソ大阪~

 さて、今回はセレッソ大阪戦を振り返ります。手倉森監督とクルピ監督、8年ぶりの再会。

↓前節のレビューはこちら

khigu-soccer.hatenablog.com

 

スタメン

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 ベガルタ仙台は、前節・名古屋グランパス戦で1-0の勝利。2位撃破と今シーズン初の連勝を上げた。13連戦の13戦目。コンディション的には厳しい部分もあるが、勝利して気持ちよく中断期間を迎えたいところだ。

 名古屋戦から継続してスタメンなのはクバ、アピアタウィア、真瀬、フォギーニョ、西村の5人。ベンチには決勝点を挙げたマルティノス、カルドーゾらが控える。

 セレッソ大阪は、前節・鹿島アントラーズ戦で0-1の敗戦。5月に入ってからは2分3敗と調子を落としてきている。5月ラストゲームの今節は、この暗雲を切り拓きたいところ。

 セレッソは今シーズン初めて3バックを採用。中盤は3センターで原川をアンカーに坂元と清武が並ぶ。2トップの一角には古巣対戦になる奥埜が起用された。

 

前半

(1)セレッソのボール保持と臨機応変に対応できた仙台

 この試合では、セレッソが今シーズン初めて3バックを採用した。

 セレッソも仙台同様にボール保持率は高くない。しかしこの試合においては、ボールを持つ時間が長くなると予想されるので、ボールを保持するうえで噛み合わせの良い配置にしてきたことが、このシステム変更の理由なのではと思っている。

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 セレッソの配置は、3-1-4-1-1のような配置。中盤では清武と坂元が比較的自由に動く。特に清武は、ポジションを気にせずにボールに関わることが多かった。

 彼らが動く代わりに、そのポジションに入ったりするなど調整役を行っていたのが奥埜だった。清武や坂元が出て行ったスペースに入るなど、味方のプレーに応じた動きをしていた。中央では、坂元や清武のアイデア勝負で崩しに掛かろうとする。

 サイドではウイングバックが受けたときに、手数を掛けずにアーリークロスを上げることが多かった。クロス精度が高い両ウイングバックなので、そこは2人の特徴を生かしたい狙いだったと思う。

 

 それに対して仙台は、セレッソの様子を見ながら柔軟に守備の対応ができていたと思う。

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 仙台の最初の対応は、お馴染みの4-4-2の中央閉鎖。2トップは、アンカーの原川を守備基準点とし、3バックにはボールを持たせる。

 後方の4-4はセレッソの立ち位置に対して、中間ポジションを維持して、どこにボールが入っても対応できる立ち位置を取る。サイドに入ればスライドして対応といった形だった。

 

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 中央閉鎖に加えて、状況に応じて前からプレッシングに行くこともできていた。

 サイドハーフセレッソの3バックへプレッシングすることを合図に全体を押し上げて、プレスを掛けに行く。

 2トップは縦関係に。ボールサイドのサイドバックは、ウイングバックをマークする。この守備で高い位置から何度かボールを奪うことができ、チャンスを作ることもできていた。

 ここまでは引いて守備をする時間がどうしても長かったが、全体が連動して前から行くことができるようになっていることは、しっかりチームができることを増やしている証拠だと思う。

 

(2)狙いたいのは「アンカー脇」

 やはり、仙台としては攻撃のときに相手のアンカー脇を狙いたいというはあった。

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 システムの嚙み合わせ上、セレッソが押し込んだ展開になれば、奪ったときにアンカー脇のスペースが空く。よって仙台としては、そこをカウンターの起点ないしはボールを落ち着かせる起点として利用した。

 なので、この試合ではボールを奪った後にアンカー脇をポイントに収めて、ボールを落ち着かせて前進できる回数は多かったと思う。

 

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 また仙台が押し込んだときのセレッソの3バックは、背後のスペースをケアするためか、あまり迎撃プレスをしてこない(初めての3バックでチャレンジ&カバーの連携が取れてないせいもある)。

 よって、セレッソの3センター(原川、坂元、清武)のエリアにスペースがあり、そこで受けてシュートを打つことができた。

 西村と赤﨑のシュートがバーに直撃したが、どちらも相手3バック前のスペースでのシュートだったことからも、セレッソの守備は前を向かせてしまう守備になっていた。

 仙台としては、どちらかを決めて先手を取りたかったところだ。

 

 前半はお互いに決め手に欠いてスコアレスで後半へと折り返す。

 

後半

(1)困ったときのセットプレー

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 前半にフォギーニョがハムストリングを痛め、中原と交代している。

 後半スタートは、お互いに交代なしだった。

 

 後半スタートは、お互いに前半と同じような展開が続いた。その中で、先手を取ったのはセレッソだった。

 原川のフリーキックからチアゴが合わせて先制点を奪う。この試合のセレッソのセットプレーは基本的にチアゴ狙い。原川や清武などいいキッカーもおり、まさに困ったときのセットプレーだった。

 仙台としては久々のセットプレーでの失点。ただ、チアゴをフリーにさせている訳でなかったので、ここは原川のキックとチアゴの強さを褒めるしかない得点だった。

 

(2)ボール保持において整理できた仙台

 先手を取られた仙台だったが、時間も30分以上残っていること、ベンチに加藤やマルティノス、カルドーゾら攻撃的な選手もいることから、決して焦る様子はなかった。

 仙台はハーフタイムでしっかりとボール保持局面で整理できていた。

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 前半は上図のような、ボランチ一枚が降りてボール保持する局面を作っていた仙台だが、この配置だとセレッソの前プレに対して、ボールが行き詰まることが多かった。

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 後半になると、特にマルティノスとカルドーゾが投入されて以降は、オリジナルポジションはいじらずに、5-3-2の攻略法の基本であるサイドバックを起点にボールを前進させる。

 後半は、前半よりもアンカー脇にボールを預けて前を向けるシーンが増えた。これも配置における優位性を作れたことが理由だと思う。

 

(3)外外循環からの同点ゴール

 時間の経過とともにセレッソも得点を奪うことよりも、守備にウェイトを置くようになる。72分に藤田を投入して以降は5-4-1のシステムへ変更するセレッソ

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 このシステム変更の直後に仙台も、蜂須賀と加藤を投入する。

 セレッソの一列目の守備がなくなったことで、ボールを保持して押し込めるようになった仙台。サイドハーフもアンカー脇が消されたものの、ハーフスペースからサイドへ流れる動きで、ボールを引き出す。セレッソが配置を変更して以降は、外外循環で押し込むことが多くなった。

 そして78分に同点ゴールが生まれる。

 左サイドで押し上げて、起点を作ると蜂須賀のファーサイドへのクロスにマルティノスが合わせて同点に追いつく。マルティノスはこれで2試合連続ゴールとなった。

 蜂須賀のクロスも背の高い3バックを越した狙い通りのクロスだった。さすがの一言。

 

 その後は連戦の影響もあってか両者ともに決め手に欠く展開となった。

 ラストプレーの西村の仕掛けから清武の足に引っかかるもPK獲得とはならず。

 手倉森監督とクルピ監督の8年ぶりの対戦はドローに終わった。

 

最後に・・・

 まさに我慢比べのような試合。両者ともに1点を奪って逃げきることがゲームプランだったと思うが、相譲らずといった内容だった。

 

 仙台としては、セレッソが3バックで奇襲をかけてきた中でも落ち着いて守備を行えていたし、連動したプレッシングで高い位置からボールを奪えることもできた。

 攻撃でも相手の立ち位置を見ながら、ボールを動かすことができたし、一度はリードされたものの追いつくことができた。

 

 5月は「鍛え上げる」がテーマだったが、ルヴァンカップも合わせて、連戦をしっかり戦いながら個人レベルでもチームレベルでも、しっかり鍛えられた一か月だったと思うし、ベンチメンバーの豊富さがそれを証明している。

 

 リーグは一旦中断期間に入る。6月9日には天皇杯・いわてグルージャ盛岡と対戦し、次節はアウェイで鹿島アントラーズとの対戦。

前半戦も残り2試合。上がってきた総合力で降格圏脱出と行きたい!!