ヒグのサッカー分析ブログ

ベガルタ仙台の試合分析が中心です。

【何かが掛かっているチームと掛かっていないチームの差】明治安田生命J2第41節 V・ファーレン長崎vsベガルタ仙台

 さて、今回はV・ファーレン長崎戦を振り返ります。

↓前節のレビューはこちら

khigu-soccer.hatenablog.com

↓前回対戦のレビューはこちら

khigu-soccer.hatenablog.com

 

スタメン

 ベガルタ仙台は、前節・レノファ山口FCと1-1の引き分け。前半は攻守で主導権を握って先制に成功したものの、後半は山口の修正に対応できなくなると同点に追いつかれてしまった。

 しかし、前節で大宮アルディージャが敗れたことによりひとまず残留は決定。残り2試合は少しでも上の順位でフィニッシュできるように、そして来シーズンに希望を見出せるように戦うことが目標となる。今節の相手はV・ファーレン長崎。個人能力が高いチームを相手にどこまで戦えるかがポイントとなった。

 今節は前節と同じ11人がスタメン。ベンチには今シーズン初のメンバー入りとなる工藤、久しぶりの相良、菅原と若いメンバーが入った。

 一方のV・ファーレン長崎は、前節・徳島ヴォルティスに1-2の逆転負け。プレーオフ進出に向けて手痛い敗戦となった。長崎にとってプレーオフ進出に残された道は連勝のみ。ホーム最終戦となる今節で仙台に勝利し、プレーオフへの望みを繋ぎたいところだ。

 今節は、左サイドハーフに松澤が起用された。ベンチには岡野、加藤、エジカル・ジュニオ、ジョップ・セリンサリウが前節と代わってメンバー入りとなった。

 

前半

(1)両サイドバックの推進力を活かした前進

 前半最初の無秩序な時間が過ぎていくと、長崎が両サイドの前進からチャンスメイクしていく。

 長崎のボール保持は、4バックが広くポジションを取る。これは仙台の前線からのプレッシングに対して、広くポジションを取ることでプレッシングの距離を伸ばそうという狙いもあったのかもしれない。

 長崎の特徴は両サイドバックの推進力だ。増山と米田は元々サイドアタッカーなので、単独のドリブルで相手を剥がしていくことができる。よって長崎はサイドバックの推進力を活かして仙台のプレッシングを剥がしていこうとしていった。

 16分の先制点もきっかけは米田のドリブルで郷家を剥がしたところからだった。そこから松澤がうまくハーフスペースからサイドに流れてボールを受けカットイン。そのこぼれはフアンマのコントロールショットで沈めて幸先よく長崎が先制する形となった。

 

 仙台としては、長崎の広くポジションを取る形に対して、序盤でうまく対応することができず、またこの試合スタメンとなったドリブラー・松澤にサイドを切り裂かれてしまった。

 

(2)ボール保持からバイタルには侵入できる仙台

 試合序盤の仙台のボール保持に対して、長崎はマテウス・ジェズスとフアンマが縦関係になり、仙台の中盤3人に対してマンツーマン気味で監視するような約束事となっていた。

 しかし、長崎が先制点を奪ったことでその後は4-4-2での撤退守備へと切り替わる。

 よって仙台は、センターバックからストレスが少ない状態でボールを保持する時間を増やしていった。

 仙台のビルドアップ隊は林、センターバック、長澤の4人。特に長澤はうまくビルドアップの出口にもなりつつボールを左右へ展開していった。

 両サイドを見ていくと小出は高い位置を取って、ハーフスペースにいる郷家と繋がった状態になることを優先。左サイドは秋山が低い位置でボールを受けることで対面の澤田を引き出し、その背後で降りてくる山田がボールを引き出しビルドアップの出口となっていた。

 容易く長崎陣内へと押し込める仙台。長崎は低い位置で守備ブロックを形成しているため、長澤や鎌田、押し上げてきたセンターバックが高い位置でもフリーで前を向いた状態を作れる。

 長崎は低い位置で構えるものの、仙台の中間ポジションに立つ選手をうまく捕まえられていないので、仙台は高確率でバイタルエリアへ楔のパスを刺し込むことに成功した。ここまで楔のパスを刺し込めるのもなかなか珍しい。

 しかし、楔のパスをバイタルエリアへ入れても、そこから崩し切ることができない。長崎のセンターバックに寄せられるし、仙台もバイタルエリアからワンタッチで崩そうとするため難易度が高くなり、シュートまで持っていく回数は少なかった。

 もう少し強引にシュートを狙っても良かっただろうし、ミドルシュートの数も増やせれば良かったなかなと感じた。

 

 前半は16分のフアンマのゴールで長崎がリードし折り返す。

 

後半

(1)長崎の守備立ち位置の変化

 前半は、長崎が序盤に成功すると仙台のボール保持に対して4-4-2で守備ブロックを構える時間が多くなった展開となった。

 長崎としては、前半の守り方の是非を考えたときに、カリーレ監督としては非として考えたようだった。それが後半開始からの守備の立ち位置の変化に現れていた。

 後半開始からマテウス・ジェズスがボランチ、右サイドハーフにカイオ・セザール、2トップの一角に澤田というように立ち位置が変わっていた。

 仙台のボール保持に対して見ていくと、センターバックに対して2トップが、長澤に対して鍬先が縦スライドして見るようになり、前線から制限を掛けていこうという意思を感じた。なお、鍬先が縦スライドぶんはカイオ・セザールが内側に絞って対応していた。

 

 長崎が守備の立ち位置を変化したことで、仙台としては前半のような前進ができずに苦労するシーンが増えた。加えて前半から左サイドの仕掛けるシーンが目立った氣田へは増山とカイオ・セザールのダブルチームで対応してくるようになり、仙台としては攻撃の糸口が前半に比べて少なくなった。

 

 よって後半序盤は長崎がパスを引っ掛けてカウンターを発動させるシーンを増やしていく。この時間帯で失点していたら仙台としてはさらに苦しい展開になっていたはずだ。

 

(2)選手交代による両指揮官の駆け引き

 苦しい時間が続いた仙台だったが、長崎のセットプレーを防ぐと林が氣田へ素早く渡して氣田が山田と絡みながら長崎陣内までボールを運び、スローインを獲得する。

 このタイミングで鎌田と山田に代わって加藤と菅原が投入される。そして61分のそのスローインの流れから中島が素早く加藤へ楔のパスを刺し込むと加藤が冷静に白井を切り返しでかわして左足で同点ゴールを決めた。

 前半と打って変わって流れが変わり苦しい時間帯だったが、前半から続けていた楔のパスから同点に追いつくことができた。加藤にとっては2年ぶりのゴール。山口戦では決定機を決めきれなかったが、ここではその悔しさを晴らした。

 

 仙台の同点後、長崎は鍬先をアンカーにする4-3-3へシステムを変更した。

 このことで仙台は再び長澤周辺に時間とスペースが生まれたことで、ボールを保持率を上げることに成功する。またインサイドハーフになった郷家が長澤や右サイドの小出、加藤のコンビでうまく繋がることでボールの循環を良くし、右サイドからいくつかチャンスを作ることができた。仙台としてはこの時間に畳みかけて逆転に成功できていれば、勝利の確率をグッと上げることができたのではないだろうか。

 

 長崎としては、勝たなければプレーオフの可能性が断たれてしまうため、どうしてもゴールが欲しい状況。そんななかでカリーレ監督が最初に切ったカードは岡野と高橋だった。米田と増山を一列上げてよりサイドからの攻撃を強調する。岡野と高橋は攻撃に加わることはもちろんだったが、サイドの守備を安定させることで仙台の攻撃機会を減らす狙いがあった。

 

 次に動いたのは仙台。75分に長澤と秋山に代わってエヴェルトンとキム・テヒョンを投入する。特にキム・テヒョンは一列上がった増山への対応を期待されてのものだっただろう。それに加えてロングキックの的になっていた岡野との宮中戦での対応でも地味に機能していた。

 この仙台の交代と同じタイミングで長崎はカイオ・セザールに代わって古巣対戦となる名倉が投入される。名倉はトップ下に入ってフリーなポジションからチャンスメイクをする役割を担っていた。

 

(3)プレーオフへの意地を見せた長崎

 両指揮官が交代カードを切っていくなかで、じわりじわりと効果を見せ始めたのは長崎の方だった。交代で入った両サイドバックは前傾姿勢になる状況でセンターバックと連携し攻撃の芽を摘んでいく。

 一方の仙台は交代で入った選手がなかなか機能しない。菅原は前線でボールを収めようとするも櫛引に幾度となく抑え込まれる。エヴェルトンも激しい中盤の競り合いでボールを奪い切ることができない。

 サイドからクロス攻撃が増えて仙台はなんとか弾くことで精いっぱいとなっていた。

 

 長崎はそこに畳みかけるように、エジカル・ジュニオと加藤大を投入する。

 そしてアディショナルタイムに入った91分にゲームが動く。

 中央で名倉が上手くエヴェルトンを交わしてペナルティエリアへ侵入する。それを菅田が抑えるも、そのこぼれを高橋が丁寧にファーサイドへクロスを送るとエジカル・ジュニオの折り返しにフアンマが合わせて勝ち越しゴールを決める。ラインを割ったか映像だけだと微妙だったがゴールは認められて長崎が土壇場で勝ち越しに成功した。

 

 仙台は残りの時間、菅田をパワープレーで前線へ上げるも万事休す。

 長崎は劇的な勝利でプレーオフへ望みを繋ぎ、仙台は5試合ぶりの敗戦となった。

 

最後に・・・

 仙台としては、先手を奪われたもののボール保持から危険なエリアへ何度も侵入できていたので、そこからシュートへ持っていき前半のうちに追いつきたかった内容だ。

 後半は両指揮官の駆け引きもありながら一時は追いつけたものの、やはり何かが掛かっているチームと掛かっていないチームとでは必死さが違ったように感じる。

 

 シーズンもいよいよラスト1試合となった。開幕前を考えればこんなはずじゃなかったが現実は現実として受け止めて、なんとか来年もJ1昇格への挑戦権を残せたと無理くりポジティブに考えるしかない。今シーズンはたくさん痛い目に遭ってきたので、その経験を活かして来シーズンも乱世J2を戦い抜きたい。

 まずは最終節。ホームで今シーズンのJ2チャンピオン・FC町田ゼルビアを迎える。開幕戦こそしぶとい守備でスコアレスドローに持ち込んだが、それから40試合を経験し大きな差が開いた。まずはチャンピオンにチャレンジャーとして全力でぶつかって後悔のないシーズンラストゲームにして欲しい!!

 

ハイライト


www.youtube.com