ヒグのサッカー分析ブログ

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【1年で開いた大きな差】明治安田生命J2第36節 ジェフユナイテッド千葉vsベガルタ仙台

 さて、今回はジェフユナイテッド千葉戦を振り返ります。

↓前回対戦のレビューはこちら

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スタメン

 ベガルタ仙台は、前節・水戸ホーリーホックに0-1の敗戦。3試合連続無得点で連敗中だ。攻撃ではサイドからのクロスが相手に研究され、なかなかそれ以外の攻撃での工夫を形作るのに苦労している。攻撃にウェイトを置くと今度は守備に脆さが出るという難しいバランスのなかでの戦いを強いられている。8月の連勝で明るい兆しが見えたのも束の間、9月は厳しい月となっている。残留を目指すためにもなんとか明るい兆しを見出したいところだ。

 今節は大胆に多くのメンバーを入れ替えた。センターバックに菅田、右サイドバックに小出、左サイドバックに秋山、ボランチに松下、右サイドハーフに加藤、左サイドハーフ齋藤学が前節から入れ替わった。ベンチにも小畑がアジア大会の大会参加のため不在で松澤がメンバー入り、それ以外にもフォギーニョ、オナイウらが名を連ねた。

 一方のジェフユナイテッド千葉は、目下5連勝中。新米監督である小林監督は前半戦こそ苦しい戦いを続けていたが、根気強くチームを仕上げたことで勝てるようになった。前節は退場者を出す苦しい展開のなかで見木が決勝ゴールを決めて栃木SCに勝利している。プレーオフそして自動昇格圏内を目指すために、この勢いそのままに仙台を飲み込みたいところだ。

 ジェフは退場した鈴木大輔に代わってメンデス、そしてその相方が佐々木になった。それ以外の変更点はなし。ベンチには小森がメンバー入りとなっている。

 

前半

(1)不安定なボール保持

 試合序盤はお互いに様子を見合う形で始まった。

 仙台はこの試合でもボール保持時は松下がアンカーの4-3-3を基本とし、松下とセンターバック、林、そして時々鎌田が援護をしながらビルドアップを行っていく。

 序盤の仙台は、高いディフェンスラインを敷く千葉の背後へボールを送るプレーが目立った。6分には松下から齋藤学が、8分には加藤からホ・ヨンジュンが抜け出しチャンスメイクをしていく。

 

 しかし、様子を見終わった千葉も動き出していく。

 仙台はゴールキックも頑なにボール保持からスタートする。対する千葉は2トップをはじめ、アンカーの松下には田口が縦スライドしてマンツーマンで監視する。後方の同数を受け入れて、仙台陣内では守備基準点をハッキリして、仙台のボール保持を阻害する狙いだった。

 仙台としては、そんな千葉の振る舞いもある程度想定していたのかもしれない。千葉の薄くなった後方エリアでホ・ヨンジュンのキープから擬似カウンターを狙いたい素振りも見せていた。

 しかし、ホ・ヨンジュンに対してはメンデスと佐々木がしっかり寄せて簡単にはキープをさせないし、そもそも後方からのフィードの質が低くて簡単に千葉に回収されてしまうシーンが多かった。

 

 また、頑なにビルドアップからスタートするも、千葉のマンツーマン守備から離れようとするため、結果的に全体の距離が広がることとなり、ボールの循環も悪く、また奪われたら簡単にカウンターの餌食となっていた。

 それでも鎌田の技術や運よく突破できると千葉陣内へと進められる場面を作り出せたが、その先の崩しの部分で連係ミスからシュートまで持ち込めなかった。

 

(2)左利きの右センターバック佐々木翔

 一方で千葉のボール保持局面を見ていく。

 千葉も仙台同様にボール保持時は田口がアンカーとなる4-3-3の形となる。

 千葉の場合は、両サイドの役割が異なっている。右サイドは田中が右ウイングで高橋が後方支援。左サイドはドゥドゥが中に絞ってウイングというよりセカンドトップのような立ち位置を取り、日高がサイドの高い位置を取る。

 仙台の守備基準点は、2トップがアンカーの田口を基準として、前線からプレッシングを掛けるというよりもミドルブロックで構えるような格好となっていた。

 よって千葉は苦労せずにセンターバックから前進することができた。この試合のキーマンは右センターバックに起用された佐々木だった。

 佐々木は左利きのため、本来は左センターバックでの起用が多いが、この試合は右センターバックの位置から対角に、また足の速い田中の背後へとロングフィードを気持ちいいくらい通していく。

 左利きの選手が右サイドから蹴ることによって、基本的にタッチラインを割る可能性は低い。よってパスが通らなくても、今度は相手がクリアしたボールを前向きでアタックできるため、セカンドボールを拾える可能性も高くなる。

 この試合のジェフは地上戦で攻めていくこともあったが、佐々木のロングフィードをきっかけに仙台を押し込んでいくシーンが目立った。

 

 そして、その佐々木のロングフィードをきっかけに得た右サイドからのスローインから試合が動く。

 ロングスローのこぼれを佐々木が押し込んで千葉が先制に成功する。

 

 仙台としては、またもセットプレーが絡みの失点。ここではほとんどの選手がボールウォッチャーとなってセカンドボールへの反応が遅れてしまった。

 また、守備に関しても2トップと佐々木との距離が遠いためになかなかアプローチできなかった。不安定なボール保持も相まって時間の経過とともに徐々に千葉へとペースが傾いていた時間帯だっただけに、非常に痛い失点となった。

 

 前半は、攻守ともに好調の勢いそのままにアグレッシブに戦った千葉が1点リードして折り返す。

 

後半

(1)仙台の右サイドを狙い撃ちする千葉

 後半も序盤から先制点を奪った千葉が主導権を握って試合を進める。

 前半は佐々木のロングフィードを起点とし、そこに加えて素早い切り替えからカウンターを発動することでチャンスを作り出していた千葉。

 後半は、仙台の右サイドを狙い撃ちすることでさらに攻勢を強めた。

 前半はドゥドゥが中へ絞ってセカンドトップの振る舞いを見せていたが、後半は中から外へ移動することで菅田と小出の間のスペース(チャンネル)を広げて、そこへ見木や日高が飛び込んでいくことで一気にニアゾーンへと侵入していく。

 前半から久しぶりの出場となった小出の守備対応が甘く、ドゥドゥや日高が突破していくシーンがあったところで後半のポイントとしたのかもしれない。

 そして、そんな左サイドからの攻撃が56分に実を結ぶことになる。

 仙台の中途半端な前プレを佐々木のフィードでひっくり返すと、日高が小出との競り合いに勝利し、ドゥドゥへ渡す。ドゥドゥは菅田を引き付けてインナーラップした日高へ渡すとアーリークロスから呉屋が決めて追加点を奪う。

 千葉としてはほぼ完璧なゴールだっただろう。狙いとしていた左サイドの崩しからシンプルかつダイナミックにゴールを奪った。

 

 そして得点直後にはドゥドゥに代えて米倉を投入し、左サイドへ田中を移動させ、さらに左サイドのアタックを強化していく。実際に得点直後も決定機を何度も作っていたし、ダメ押しゴールをいつ決めてもおかしくなかった。

 

(2)「ハイリスク・ローリターン」それでも頑なに続けた仙台

 仙台は右サイドを狙い撃ちされて、後半早々に決められる苦しい展開。

 そんななかでも、前半から繰り返してゴールキックからボールを繋いでいくことを選択していく。

 対する千葉も仙台のビルドアップに前半よりも人数を掛けてボールを奪いに行く。ホ・ヨンジュンへボールを送ろうもんならメンデスが容赦なく潰して仙台の攻撃の起点を無くしていく。

 森勇介解説員も言っていたが、まさに「ハイリスク・ローリターン」だった。それでも福森のフィードからホ・ヨンジュンのシュートへ繋がったり(シュートは加藤に直撃)、秋山が気合いで千葉のプレスを剥がしていくなどのプレーは確かにあった。しかし効果的なプレーというよりは危険な橋を渡り続けていた印象だった。

 

 2点リードを追いかけるなかでなりふり構ってられない仙台は、66分に松下と郷家に代わって中島と山田を投入。71分には齋藤学と加藤に代わって氣田とオナイウを投入する。

 前線により攻撃的な選手を投入したことで、ピンチを招きながらも千葉陣内で押し込んでいく回数は増えていく。

 後半はコーナーキックを獲得する回数も増えていったが、ホ・ヨンジュンや菅田のシュートはなかなか枠に飛ばない。83分にはショートカウンターからオナイウに決定機が訪れるも、鈴木にセーブされる。

 それでも85分には菅田からのロングボールを山田が収めると最後はパスを受けた中島が右足を振り抜き1点差へ詰め寄る。

 その後も勢いそのままに押し込んでいく仙台だったが、なかなかシュートまで持ち込むことができない。

 

 そしてアディショナルタイムに入った93分に前掛かりになった仙台のミスを突いて千葉がダメ押しゴールを決める。

 菅田が処理を誤ったボールを小森がカットし、最後はベテラン米倉が林をよく見ながら逆サイドへ流し込んだ。

 仙台としては、攻めに出なければいいけない状況で、菅田のミスしかり小出の中途半端なスローインしかり焦りが出てしまった。

 

 そして試合はそのまま3-1で終了。千葉はこれで6連勝。一方の仙台は3連敗となり18位に順位を落とした。

 

最後に・・・

 内容・結果ともに完敗といった内容だった。途中で監督ガチャを引いたクラブと、結果が出ない中でも根気強くチームを作り上げてきたクラブとの差がこの残り7試合というところで大きく出た内容だった。

 

 この試合においては、堀体制になってベースとなっていた「球際、切り替え、走力」のところで千葉に劣ってしまい、また攻撃への意識が強まったところで全体をコンパクトにして戦う部分が欠け、攻守ともに中途半端な戦いに終始してしまった。堀体制になってできていた部分をもう1回思い起こして、しっかり戦う部分から取り戻していく必要があるだろう。

 

 今節は内田や長澤、松崎ら夏場にチームを支えた面々がメンバー外だったのは意外な選択だった。ここからは完全な想像だが、離脱ではない限りこの試合はターンオーバーを採用した可能性があるように思っている。堀監督のサッカーは強度の高さを求められるなかで、ここまで出場を続けていた選手の強度が落ちてきたなかで、あえてコンディションを整えるために休ませた可能性はあると感じている。

 ましてや5連勝中の千葉に対してベストメンバーで組むよりも、次節、次々節に近い順位となるロアッソ熊本いわきFCとの対戦に備えるという意味合いもあったのではないだろうか。特に次節の熊本は天皇杯準決勝を戦う兼ね合いでミッドウィークにアウェイで徳島ヴォルティスと対戦する。地の利や日程的には仙台にアドバンテージがある状態の中で、よりよいコンディションで挑みたいのではないだろうか。

 もちろん、トレーニング中にアクシデントがあったり、流行り病にかかった可能性もあるのであくまでも妄想程度だが、そういう選択を堀監督がしたのならば、次節の熊本戦は並々ならぬ覚悟での試合となる。

 

 次節の熊本戦。まずは自分たちが積み上げてきた「球際、切り替え、走力」の部分をもう1回思い出して、高い強度で熊本にぶつかりたい。連動したパスワークを武器にする熊本なだけに、より狭い局面で複数人で戦えるかは重要になってくる。仙台らしくハードワークして、ゴールに迫って、90分後の歓喜を味わえることを期待したい!

 

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