ヒグのサッカー分析ブログ

ベガルタ仙台の試合分析が中心です。

気持ちを切らさずに戦えた90分間~明治安田生命J1第34節 ヴィッセル神戸vsベガルタ仙台~

 さて、今回はヴィッセル神戸戦を振り返ります。泣いても笑っても残り5試合。

↓前節のレビューはこちら

khigu-soccer.hatenablog.com

↓前回対戦のレビューはこちら

khigu-soccer.hatenablog.com

 

スタメン

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 ベガルタ仙台は、前節・サンフレッチェ広島戦で2-0の勝利。今シーズン初の複数得点差での勝利となった。大分トリニータとの直接対決に敗れたものの、前節の勝利で希望がつながった。今節も守備をベースにした戦いで難敵・ヴィッセル神戸から勝点3奪取を目指す。

 今節は、松下から上原に変更。それ以外に変更点はなし。ベンチには久々にフォギーニョが入り、前節得点を決めた氣田ではなく中原がベンチ入りをした。

 ヴィッセル神戸は、前節・名古屋グランパスとのACL争い直接対決で2点差を追いつきアウェイで勝点1を奪った。今シーズンは夏に古橋が抜けたものの、武藤や大迫、ボージャンなど余りある補強で、結果を残し、ACL圏内をキープしている。2年ぶりのACL出場を目指すためにも、ホームでしっかり勝利したい一戦だ。

 神戸は佐々木大樹が欠場。代わりに中坂がスタメン。ベンチにはケガ明けの大迫やリンコン、山口蛍らが前節と代わって入った。

 

前半

(1)開始直後の奪い合いとレーンと人で押し込む神戸

 試合は開始早々から動いた。

 神戸が左サイドでフリーキックを得るとイニエスタの正確なキックにニアで武藤が合わせて先制。

 その3分後に仙台も、セットプレーのセカンドボールを拾って崇兆のファーサイドへのクロスに真瀬が合わせてすぐさま同点に追いつく。

 開始直後から落ち着かないゲーム展開だったが、次第に力関係通りに神戸がボールを保持し、仙台が守備ブロックを構える展開になっていく。

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 神戸はセンターバックとサンペールがビルドアップ隊。両サイドバックが高い位置を取って、インサイドハーフイニエスタとともに各レーンに構える配置。

 イニエスタはフリーマンとして自由に動き、インサイドハーフの2人はハーフスペースからサイドへ流れたり、そのままハーフスペースを突撃したりする。またボールサイドと逆のインサイドハーフは、ネガティブトランジションへの準備として真ん中にポジショニングすることが多かった。

 2トップの役割はドウグラスは中央に鎮座し、武藤が両サイドへフォローへ来たり、カウンターのときには積極的に背後へ抜け出していくタスクになっていた。なので武藤が気づけば左サイドに顔を出すなんていうシーンは結構あった。

 

 それに対して仙台は、基本的に自陣で守備ブロックを敷く形。赤﨑がサンペールとデートし、サンペールからの球出しをけん制する。富樫はセンターバックに対してサイドへボールが循環するようなプレッシングを行う。

 仙台のサイドハーフは2トップと一緒に前プレを掛けるよりも、自陣に下がって4-4のブロックを形成することを優先した。これは神戸が各レーンに人を配置したことで、横4人の距離感を空けないことをより意識したからかもしれない。

 

 仙台は「ボールを奪いに行く」というよりも自陣で「ゴールを守る」守備を行う。これはこの試合だけではなく、この1年通して言えることだが、この試合では前半からよりそれが顕著だった。

 

 しかし、人数を掛けて自陣で守ってもこのドウグラスのように個人技を炸裂させてしまうと、とても切ない。このゴールに関しては個人の技術でこじ開けられた失点だった。

 

(2)奪った先の狙いとボール保持の狙い

 神戸にボールを保持される時間帯は長かったが、それでも今節の仙台はボールを奪ったときとボールを保持したときの狙いは見て取れた。

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 まずボールを奪った先では、神戸のシステムのズレからサイドバックに時間とスペースが得られるので、早いタイミングでサイドバックへボールを付けることで、神戸のネガティブトランジションからの解放を狙った。

 特にクバから崇兆、上原から崇兆など左サイドに展開したときに、うまく神戸のネガティブトランジションから解放されてボール保持の展開へと移行することができていた。

 

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 ボール保持でもやはりサイドバックを起点とした前進を狙っていた。

 神戸のプレッシングはサイドバックに対してインサイドハーフがプレッシングに行く仕組みとなっていた。よって仙台はインサイドハーフを来させて、その背後(サンペール脇)を突くことで神戸のプレッシングを剥がしにかかる。サンペール脇に登場するのは基本的に赤﨑、時々サイドハーフだった。

 またサイドバックサイドハーフのような外外循環も行っていた。特に右サイドでは真瀬から加藤へ繋ぐシーンが多かったが、加藤が初瀬になかなか勝てずに、加藤の位置でボールを奪われることが多かった。

 前半は加藤と初瀬のマッチアップが非常に多かったが、攻守においてほぼ初瀬が勝っていた。よって右サイドを制圧され、序盤からファウルの多い展開に仙台はなってしまった。

 

(3)アピアタウィアの退場

 前半は45分間通じて、神戸に仙台の右サイドを制圧され、ファウルも重ね厳しい状況が続いたが、決定的だったのが44分のシーンだった。

 真瀬が初瀬のボールを奪われ、初瀬はランニングした武藤へスルーパス。突破を図る武藤をアピアタウィアが倒してファウル。この日1枚カードを受けていたアピアタウィアは、2枚目の警告を受けた退場となった。

 好調の武藤に対して、1枚カードを受けていたにも拘わらずチャレンジしてしまったアピアタウィア。若さ故と言えばそれまでだが、真瀬が全速力で戻っていたので、2人で対応できるように武藤のスピードを殺すことができれば良かったが、経験と技術が足りずチャレンジしてしまった。

 本人にとっても非常に悔しい退場となった。

 

 仙台は、後半の45分間を1点ビハインドのなかを10人で戦うこととなった。

 1-2で折り返す。

 

後半

(1)ボールを保持して前進していく勇気が結んだ同点ゴール

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 後半開始からのメンバーを確認すると、仙台はアピアタウィアが退場になったので福森がセンターバックに。それと同時に関口と加藤のポジション、それから富田と上原のポジションが前半と左右反対になっていた。

 神戸はアンカーの位置をサンペールから大崎へと変更している。

 

 10人となった仙台は、どうしても神戸にボールを保持される展開が続く。前半同様に自陣で守備ブロックを敷いて神戸の攻撃へと対応することには変わりはない。

 そのなかで前半に圧倒されていた加藤と初瀬のマッチアップを関口に変えることで、まずは右サイドの守備を修正した。この変更によって前半よりも右サイドの守備は安定したと思う。

 

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 また、仙台は1人減ったもののボール保持することを諦めなかった。後半になって神戸のペースが緩んだことで、ボールを奪った後に保持できる展開へと持ち込むことができた。

 ハーフタイムを挟んで、仙台はボール保持も仕込むことができていた。

 後半から上原が右のボランチになったことで右サイドでのボールを保持を安定させる。また上原が列を降りることを合図に両サイドバックが高い位置を取り、それに連動してサイドハーフは神戸の大崎脇へポジショニングし、シャドーのような振る舞いを見せる。

 両サイドバックを高い位置に押し上げられたことで、仙台は真瀬、崇兆が攻撃参加うする回数を増やすことができた。

 そして、崇兆の仕掛けからコーナーキックを獲得すると、加藤が決めて1人少ないながらも同点に追いつくことに成功する。

 

 神戸のペースが落ちたこともあるが、自分たちで安易にクリアせずにボールを保持できたことで、チャンスを作り同点に結びつけることができた。

 

(2)「個の質」で殴りにかかる神戸

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 同点後の59分に両者とも動く。神戸は山口とリンコンを投入。仙台は西村とカルドーゾを投入する。

 この神戸の交代は、ギアをもう一段階上げる交代だった。後半のスタートからスローテンポでゲームに入った神戸だったが、同点になったことでより人数の優位性に加えて、個の質もより強くして仙台へと襲い掛かる。

 そして投入直後の62分。富田からボールを奪うと山口の右足一閃で再び勝ち越しに成功する。このシーンでは、奪われた後の切り替えが早く、神戸がギアを上げた最初のプレーでの得点だった。

 

 そして70分には上原のミスパスを見逃さずにショートカウンターからリンコンが決めて一気に2点差へとリードを広げた。

 

 約20分間残された仙台。その後も10人ながらリスクを承知で仕掛けていった。蜂須賀やフォギーニョを投入し、サイドから活路を見出す。

 終盤にはコーナーキックから吉野がフリーでヘディングシュートを放つもキーパー正面。

 最後まで気持ちを見せた仙台だったが、ゴールという形で報われることはなかった。

 

 試合は2-4で終了。連勝を目指した仙台だったが、勝利することはできなかった。

 

最後に・・・

 10人になりながらも、最後まで気持ちを切らさずに戦えたことは、この試合の一番ポジティブだったところだろう。

 試合全体を振り返れば、前半からボールを保持される展開のなかで奪ったボールをより早く解放させて、自分たちがボールを保持する時間を増やしたかった。前半から神戸のプレスを剥がせそうなシーンはいくつかあっただけに悔いが残る。

 

 アピアタウィアの退場は、本人にとっては将来の糧になるだろう。退場になったシーンのあの悔しがり方を見るに、私たちが想像している以上に彼らは大きなプレッシャーとストレスを抱えながらプレーしているのだと改めて感じたシーンだった。

 残りは4試合だが、苦しい最中で戦っている選手を最後まで応援したいと思う。

 

 次節はホームで名古屋グランパスを迎える。名古屋もルヴァンカップを制し、そしてACL出場に向かって負けられない状態だ。もちろん一筋縄ではいかない。苦しい試合になるとは思うが、ホームで全力で戦って勝利を勝ち取りたい!!