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【日常を取り戻すために】明治安田生命J2第25節 栃木SCvsベガルタ仙台

 さて、今回は栃木SC戦を振り返ります。

↓前回対戦のレビューはこちら

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スタメン

 ベガルタ仙台は、絶賛迷走中。みちのくダービーの敗戦のショックを払しょくできずに清水エスパルスにも0-3の完敗を喫している。6月初旬まではプレーオフ圏内に食い込めそうな位置まで来たが、現在は13位と非常に厳しい状態だ。

 内容についても、攻守において完全にフォームを崩しており、元通りになるまでには少し時間が要する状況だ。ピッチ外でのゴタゴタもあって、サポーターを含めたクラブ全体の足並みが揃っていない。そんな中でいかに一体感を取り戻して、これからの戦いへと挑んでいけるかが、勝利するため、そして今後のクラブのためにも重要になってくる。

 今節は、厳しいプレスが特徴の栃木SC。過去の対戦成績は6戦6勝だが、いずれもタフなゲームだった。そんな栃木に苦しいチーム状況の中で反骨心を見せられるかの試合となった。

 今節は鎌田とホ・ヨンジュンが出場停止。今節はセンターバックキム・テヒョン、右サイドバックに若狭、ダブルボランチが中島と松下。2トップの一角に郷家が起用された。ベンチには久々に林と秋山がメンバー入りを果たした。

 一方の栃木SCは、前節・いわきFCに0-1の敗戦。順位の近い相手に痛い敗戦となった。それでも直近の成績は悪いわけではなく、ホームに戻った仙台戦でなんとか勢いを取り戻したい試合となった。

 今節は3-1-4-2のシステムを採用。3バックの右に岡崎。右ウイングバックに黒崎、左ウイングバックに福森が起用された。負傷した宮崎に代わって根本が小堀と2トップを組む。ベンチには髙萩や矢野など経験豊富な選手が控えている。

 

前半

(1)頑なに同サイドで攻める仙台

 試合開始序盤は、清水戦同様にサイドの深い位置を抉られて連続してコーナーキックを与えてしまう。ショートコーナーで変化を加える栃木に対して小畑を中心にゴールを割らせなかったのは、前節の反省を活かしたと言える場面だっただろう。

 その後、仙台も内田を起点に左サイドから攻め込むとクロスまで持っていけるシーンを作り出していくが、ペナルティエリアに飛び込むフォギーニョや山田になかなか合わなかった。

 

 両者ともに序盤の攻め合いが落ち着くと、時間の経過とともにペースをつかんだのは栃木の方だった。

 栃木はボールの出所となる内田に対して、右インサイドハーフの西谷がプレッシングを仕掛けることで仙台から時間とスペースを奪った。

 仙台のビルドアップの起点となる内田にプレッシングを仕掛けることは、仙台のボール保持がどういう形であれ準備していたものだろう。

 栃木は内田から時間とスペースを奪い、ミスを誘ってカウンターからチャンスを作り出そうと目論んだ。

 

 その後、仙台も栃木の守備に対して変化を加えていく。

 仙台はダブルボランチの一角がセンターバックの列に落ちるようになる。この動きは今シーズン見られていない形だった。また郷家が左サイドに流れて内田と氣田をフォローし、サイドで数的優位を作ることで内田に時間とスペースを配っていく。この辺の変化はベンチの指示というよりも選手たちの判断だったのかもしれない。

 また、仙台は同サイドで攻める意識を強く持っていた。サイドチェンジして展開できる場面でも頑なに同サイドでコンパクトに攻めていたことからも、奪われたときの切り替えなどを考慮した部分があったように思える。

 なかなか調子が上がらないチームだけに選手の特徴も含めて、このような戦い方を選んだのではないだろうか。

 

 仙台は続く40分にも変化を加えていく。

 ベンチからの指示で郷家とフォギーニョの位置を変える。下がって受けようとした郷家に代わってサイドに流れて黒崎をピン止めしながら背後へランニングするフォギーニョへ役割が変わった。基本的に左サイドでの作りに対するアプローチだったことには変わりない。

 なかなか栃木ゴールを脅かすことはできなかったが、それでもここ数試合よりは選手間が列やレーンを移動して変化を加えていこうという意思は見えたし、コンパクトにして選手間が繋がった状態でプレーしようという意思も見て取れた前半の攻撃だった。

 

(2)ラインを押し上げられなかった守備

 一方の守備面を見ていくと、なかなかラインを上げられずにコンパクトに守れない状態が続いていた。

 栃木の2トップである根本と小堀は高さもあるが、一方で背後へのランニングも惜しまない選手たちだ。そんな栃木の2トップに仙台のセンターバックは引っ張られてラインが下がってしまうことが多々あった。

 菅田もキム・テヒョンも決して足の速いタイプではないので、背後への対応に気を使うと無意識のラインが下がってしまう傾向にある。

 ラインが下がると前線からのプレッシングを仕掛けようにも仕掛けられない。よって中盤でセカンドボールを栃木に回収されてゴール前まで運ばれることとなった。

 そして31分に左コーナーキックから栃木が先制に成功する。

 何度か与えていたコーナーキックからの失点。キム・テヒョンが後方に逸らしたボールが相手に渡ったことは不運だったが、清水戦同様にコーナーキックを数多く与えるとこのように合わせられてしまう。

 

 前半は、変化を加えながらコンパクトに攻めた一方で、守備ではコンパクトさを保てずに押し込まれたところからセットプレーで失点を喫する内容となった。

 1点ビハインドで折り返す。

 

後半

(1)プレッシングの強度を上げる栃木

 前半の仙台は、栃木のプレッシングに苦労するシーンがありながらも各選手が変化を加えながら、そのプレッシングをかわそうとした。

 後半は開始から栃木がさらにプレッシングの強度を高く保ってゲームに挑んだ。

 後半の栃木は、仙台のサイドバックに対してウイングバックが縦にスライドでして迎撃する形を採用する。山田と西谷の両インサイドハーフは、仙台のダブルボランチを監視することがメインになった。

 よって、仙台は前半序盤同様に前進することに苦労することとなった。自陣でのミスから危ないシーンを作られそうになるが、なんとかカバーしあって防いでいった。

 

 なかなかリズムが掴めなかった仙台だが、58分に同点ゴールを決める。

 菅田が小堀と福森のプレッシングを上手く交わすと、そのまま右サイドの深い位置で逆サイドから流れてきた氣田が受ける。この2つのプレーで芋ずる式に栃木の守備がズレていくと中盤にスペースが生まれた。

 若狭までボールが下げると、若狭の横楔のパスをフリーで松下が受ける。松下の縦パスは相手の当たるが、それがフォギーニョへと渡り、そのまま左隅へと流し込んだ。

 後半序盤から猛烈なプレッシングを施掛けてきた栃木だったが、それを上手く交わすことでスペースを作って同点ゴールを決められたことは良かった。

 

 しかし、直後の61分に再び栃木に勝ち越しを許す。

 大谷に楔のパスを許すと小堀が山田に落としてファーへのクロスを黒崎が合わせる。

 この一連で仙台としては、その前のプレーで4-4-2のブロックから郷家が単独でプレスに行ったことでそこを剥がされ、中島がサイドにスライドせざるを得ない状況になってしまった。その後も郷家がボランチのスペースを埋めきれずに楔のパスを打たせてしまったのは痛恨だった。

 もちろん、郷家に対して後方が指示を出すことが必要だっただろう。ここ数試合はコンパクトで組織的な守備が出来ていない状況が続いているので、この辺りはどのみち修正を施す必要があると感じている。

 

(2)中山と秋山投入で流れが変える

 仙台は失点後の67分に内田と山田に代えて秋山と中山を投入する。

 中山は投入直後のプレーで猛烈なプレスを掛ける。このプレーはファウルでイエローカードが提示された(しかも次節出場停止)が、中山自身の気合いとピッチ内にいる選手を鼓舞する意味でのプレーだったのかなと感じた。

 その後、交代で入った彼ら2人が徐々に流れを変えていく。中山は中央で起点を作りカウンターを発動させる役目を行えていたし、なによりペナルティエリア内で脅威になっていた。

 秋山は大外に張っていることが多かった内田と打って変わって、内外を上手く使い分けながら、氣田の後方支援で左サイドを支えた。

 同点ゴールになったコーナーキックを獲得したのも、中山が前線でタメを作り、それを受けた秋山のファーサイドへのクロスがきっかけだった。

 仙台は、74分に中島の右コーナーキックをファーで菅田が合わせて同点へ追いつく。

 

 栃木は飲水タイム後に福森、西谷、山田に代えて吉田、安田、髙萩を投入した。しかし、ここまで守備での貢献度が高かったインサイドハーフコンビがいなくなったことでプレスの強度が落ちる結果となり、前半のようなプレッシングは影をひそめてしまった。

 

 仙台としてはこの栃木の交代もあって、カウンターで危ないシーンを作りかけられそうになりながらも逆転へのシナリオを描いていく。

 78分には若狭とフォギーニョに代わって小出とリャンが投入される。86分には郷家から遠藤へスイッチする。

 栃木は根本から五十嵐に変わった時点で5-4-1へとシステムを変更した。

 

 仙台は87分に中島のクロスをキム・テヒョンが合わせるもポストに直撃。こぼれを中山も菅田も押し込むことができなかった。

 ラストプレーとなった左サイドからのチャンスシーンも中山のシュートは惜しくも左へ外れて試合終了となった。

 

 仙台は2度のリードを追いついたものの、逆転までは持って行けず2-2のドローで連敗を止めた。

 

最後に・・・

 攻撃面では、ここ数試合と違って4-2-2-2でのボール保持となった。

 ケガ人や出場停止、また出場する選手の特徴も鑑みての部分が大きかったと思うが、ピッチ内の選手やベンチも含めて、ここ数試合よりも相手に対して変化を加えながら駆け引き出来た試合だったと思う。

 また、ここ最近の3-4-3でのボール保持は、ボールを受けるためにポジションを大きく移動してボールを受けることが多くなり、それが結果的に選手間の距離が遠くなる原因となって、間延びして選手間が繋がっていない状態でプレーする原因となっていた。

 なので、この試合で4-2-2-2でプレーした意味はそれなりにあって、この形が必ずしも継続されるわけではないだろうが、自分たちのやりたいことを思い出すきっかけになったのではないだろうか。

 

 その一方で守備は、まだまだ手直しが必要な状態だ。ラインが低いことが多く、行く行かないの判断で齟齬が生まれたりした隙から失点が生まれている。失点を減らすためにも細かいデティールの部分をしっかり詰めていかなければならないだろう。こちらは次節以降も気を引き締めてやっていかなければならない。

 

 次節もアウェイでツエーゲン金沢との対戦。天皇杯を含めて5連戦のラストゲームとなる。厳しくタフなゲームが続くが日常を取り戻すためには、ここを乗り越えなければならない。底は打ったと思っている。ここからまた這い上がっていくためにも、チームとサポーターが一体となって勝利へ向かって戦っていきたい!!

 

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