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【悔やんでも悔やみきれないドロー】明治安田J2第32節 ベガルタ仙台vsヴァンフォーレ甲府

 さて、今回はヴァンフォーレ甲府戦を振り返ります。

↓前節のレビューはこちら

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↓前回対戦のレビューはこちら

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スタメン

 ベガルタ仙台は、前節・藤枝MYFC戦で2-3の敗戦。3失点ともに今シーズンの仙台らしくない奪われ方で、特に背後からの抜け出しで2失点したのは大きな反省点だった。攻撃では火力を上げて押し返すこともできたが、失点が重くのしかかる内容だった。

 今節の相手はヴァンフォーレ甲府。前回対戦では先制したもののアダイウトンの一発で追いつかれた。前節、前々節と仙台らしいアグレッシブな戦いが鳴りを潜めているだけに、個の能力の高い甲府相手にアラートに守りながらも、アグレッシブな姿勢でゴールを奪い3試合ぶりの白星を挙げたいところだ。

 今節は3人のメンバーを入れ替え。センターバックに小出、ボランチに鎌田、2トップの一角には第12節以来のスタメンとなる中山が起用された。ベンチには梅木、菅原と今節はフォワード4人がメンバー入りとなる攻撃的な編成となった。

 一方のヴァンフォーレ甲府は、前節・横浜FCに0-1の敗戦。カウンターからチャンスがあったものの仕留められないと、終盤にコーナーキックから失点し敗れてしまった。

 それでも大塚新監督になってからは調子は上向いており、リーグ戦では8月は4勝を挙げ、ルヴァンカップベスト8では川崎フロンターレに接戦を演じている。

 1試合消化は少ないものの、プレーオフに向けて負けられない試合が続く。プレーオフ進出へ一縷の望みを掛けて仙台へ乗り込む。

 甲府も3人のメンバーを入れ替え。ボランチに三沢、左ウイングバックに荒木、ワントップにピーター・ウタカが起用されている。ベンチには武富、宮崎が前節から代わって名を連ねている。

 

前半

(1)トランジション時の狙いどころと2トップへのフィード

 試合開始時は甲府が前線へのロングボールを送り、なるべく敵陣でのプレー回数を増やそうとするところから始まり、対する仙台はそれを跳ね返しながらゲームを進める展開となった。

 試合が落ち着き始めると、仙台は少しずつ前線からのプレッシングを皮切りにリズムを作り出す。群馬戦、藤枝戦では前線からのプレッシングが掛からないことが多かったが、この試合は2トップのプレスを合図にサイドハーフボランチサイドバックが人を掴まえて甲府のボール保持に襲い掛かっていった。

 前節はゴールキーパーを交えて幅広いポジショニングでのボール保持を主体とする藤枝が対戦相手だったが、甲府はそこまでボール保持が得意なチームではなかったために、1人が2度追い、3度追いできればある程度パスコースを制限することに成功できた。

 

 また、仙台はボール奪取時にどこへボールを届けるかをデザインできていた。

 甲府アダイウトンを生かした左サイドの攻撃がメインとなり、右シャドーの鳥海はウタカの近くでプレーすることが多かった。よってボールを奪えれば鳥海の背後のエリア(ボランチ脇)が空いており、そこで待つ中島へボールを届けることでカウンターを発動していった。

 先制点は、まさにその形が実ったゴールで、菅田がダイレクトで中島へ楔パスを通すと中島は間髪入れずに中山へスルーパス。中山は冷静なループシュートで今シーズン5点目を決める。

 

 加えて仙台は雨でピッチコンディションが悪いなか、足元で繋ぐだけではなく甲府が前からプレッシングを掛けてくればシンプルに2トップへロングフィードを送ることも多かった。2トップで収められれば前進成功となり、もし収められなくても再び仙台が前線からプレッシングを掛けたり、高い位置からの守備をスタートできる算段となっていた。

 試合序盤はトランジション時の狙いがハマった先制点もあり、早い段階でリードを奪ってゲームを進めていった。

 

(2)甲府の対応

 先制された甲府は、20分すぎになると中盤の配置を変化させ仙台のやり方に対して対応し始める。

 甲府ボランチだった木村がボール保持時になると左インサイドハーフの役割となり、左サイドの荒木とアダイウトンをサポートするようになる。

 このことでメインだった左サイドの攻撃に人数を掛けることで左サイドからの崩しを狙った。

 仙台も右サイドで人を掛けて守らざるを得なくなり、奪っても甲府の素早い切り替えをなかなか脱出することができずに狙いだった中島までボールを届けられなくなる。

 

 また、甲府は守備時においても仙台のダブルボランチに対して圧力を強める。甲府のボール非保持は5-2-3と5-4-1を行ったり来たりするが、木村と三沢のダブルボランチは仙台のダブルボランチへの圧力を強めることで、少しずつ仙台のリズムを狂わせていく。

 33分にはセカンドボールを三沢が回収しそのままミドルシュートを放ったり、35分にも荒木のクロスにファーでウタカが合わせるチャンスを迎えるも決め切ることが出来なかった。

 

 仙台としては、なかなか奪ったボールを広いエリアへ解放できなかったり、2トップへのロングボールも時間の経過とともに収められないなどリズムが掴めなくなるが、前節の反省を活かして全員で我慢強く守ることで失点を許さなかった。

 またウタカへの背後のボールも小出と菅田が集中して守ることで、前節と同じ仇を踏まないという強い意志を感じた。

 

 前半は、仙台が幸先よく先制するも、その後は甲府も仙台のやり方に対応する形でペースを握り返して前半を終える。仙台が1点リードで後半へと折り返す。

 

後半

(1)電光石火の追加点と3枚替えによる変化

 後半早々にスコアを動かしたのは仙台だった。

 自陣で松井が回収すると右サイドへ展開。エロンと郷家のコンビネーションで右サイドを突破し、郷家のクロスに真瀬が合わせて追加点を奪う。真瀬はこれが今シーズン初ゴール。チームとしても大きな得点となった。

 追加点を奪った仙台は、再びプレッシングの出力を上げて甲府に襲い掛かりペースを明け渡さない。

 ボールを保持できれば、前半よりもダブルボランチがボールに触れながらリズムを作っていく。

 加えて右サイドでは真瀬が高い位置を取り、郷家が降りてビルドアップ隊をサポートするシーンも見られ、前半よりも保持を安定させながら押し込んでいく意識を感じた。

 ボール保持を安定させることで、ボールを左右に振ることもでき、前半途中で消えかかっていた中島へもボールが届くようになる。

 追加点後には3点目を決められるチャンスもあったが決めきれず。それでもゲームの進め方としては悪くない形で戦うことが出来ていた。

 

 一方の甲府は62分に3枚替えを行う。三沢、アダイウトン、ウタカに代わって中山、宮崎、三平を投入する。

 甲府は、前線に機動力のある三平と宮崎を投入することで前線のプレッシングを入れやすくする。

 また攻撃では、鳥海、宮崎の両シャドーがシンプルにサイドバックに背後を突いていくことで次第に仙台陣内の奥深くまで侵入できるようになった。

 そして68分にセットプレーから1点を返す。

 きっかけは右サイドの深いエリアで宮崎がコーナーキックを獲得したところから。

 荒木のキックに三平が合わせて1点差へ詰め寄った。

 

(2)ブザービート

 失点直後にも鳥海に左サイドを突破されると、最後は中山にミドルシュートを放たれるが、これは林がセーブ。

 少しずつ流れが甲府に傾きつつあるなかで、仙台は71分に鎌田とエロンに代えて工藤と菅原を投入する。

 工藤は前節も途中投入から中盤でセカンドボールを拾い続けたが、今節も鋭い危機察知能力でセカンドボールを回収し続け、傾きつつあった甲府の流れを食い止める役割を果たしてくれた。

 菅原も前線でポイントになり、しっかり競り合って五分五分の状態にしたり、収めてくれたことで終盤になっても自分たちのターンを作り出すことができた。あわよくばいいクロスが上がればというところだったが、今節はなかなかチャンスが巡って来なかった。きっとどこかで報わるはずだ。

 

 甲府は76分に武富、82分に関口を投入する。関口の投入のタイミングで4バックへ変化させ同点を目指した。

 仙台は最後の交代でカードを貰っていた松井と中島に代わって實藤と梅木を投入し逃げ切り体制を図る。

 しかし、ここでアクセントが発生。投入直後に實藤が筋肉系のトラブルが起きてしまい、右サイドバックに入っていたものの真瀬を再び右サイドバックにして、菅原を右サイドハーフにする緊急配備をせざるを得なかった。

 それでもアディショナルタイムに入り、なんとか6分を逃げ切ろうと全員でしぶとく守る。しかしアディショナルタイム6分が経過する直前でファウルを取られてフリーキックを与えてしまう。

 このフリーキックを中山が直接沈めて土壇場で同点に追いつき、このまま試合は終了となった。

 

 仙台としてはラストプレーを守り切れればというところで失点を喫し、するりと勝点2が手からこぼれ落ちる結末となってしまった。

 

最後に・・・

 ここ2試合鳴りを潜めていた前線のプレッシングも試合開始からしっかりでき、先制点、そして追加点を決めることもできた。1点は失ったもののその後は交代選手を含めて全員がしっかり与えられた役割をこなして十分に勝ちに値する試合が出来ていたと思う。本当に最後のところ、クロージングの部分でアクシデントもあったが、最後にチャンスを与えてしまったのが悔やまれる。

 

 ホームでのV・ファーレン長崎戦でも同様の結末を味わったが、今節は長崎戦以上に悔しい試合となった。

 それでも内容には十分手応えを感じるゲームだったと思う。前述のとおり前線のプレッシングでリズムを掴み、久々にエース中山にも得点が生まれた。守備ではアラートに守れており、特に前節のような背後への抜け出しに対してはセンターバックを中心に食い止めることが出来ていた。

 勝ち星がない状態でこのような試合をしてしまうとどうしても落ち込んでしまいがちだが、しっかり出来た部分、取り戻せた部分は自信にしていきたい。

 

 次節はアウェイでレノファ山口FCとの対戦。プレーオフを争う山口だが、今節は千葉に敗れてプレーオフ圏外へ落ち、仙台同様に尻に火がついている状況だ。

 きっと山口も必死に立ち向かってくるはず。そんな山口に対して今節得た手応えをしっかりピッチで表現したいし、何よりも1つの塊となって戦いたい。7月のように1人1人がバラバラになって戦ってはいけない。こういうときこそ集団で戦えるかがポイントになるだろう。

 次節は今節の悔しい想いをリバウンドメンタリティとして山口にぶつけて、リーグ最終盤に向けて弾みをつける試合にして欲しい!!

 

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