ヒグのサッカー分析ブログ

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【風とともに行こうぜ】明治安田生命J2第8節 ヴァンフォーレ甲府vsベガルタ仙台

 さて、今回はヴァンフォーレ甲府戦を振り返ります。

↓前節のレビューはこちら

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スタメン

 ベガルタ仙台は、前節・V・ファーレン長崎に0-1の敗戦。ツエーゲン金沢戦よりも内容は向上しているものの、ミスを突かれて失点を喫し、ホームで連敗となった。

 守備における形、やり方が見えてきたので、それをどうやって攻撃へと繋げていくかが今後の課題となる。「いい守備からいい攻撃」へ。愚直にチームを組み立てている途中だ。

 今節は目下4連勝中のヴァンフォーレ甲府との対戦。伊藤監督と渋谷コーチ、そして小出にとっては古巣との対戦となる。好調の相手ではあるが、ここで連敗をストップしたい試合だ。

 今後の連戦を考慮してか4人のメンバーを入れ替えた。センターバックに菅田が復帰し、左サイドバックにはキム・テヒョンボランチには今シーズン初スタメンの鎌田、2トップの一角に中島が起用された。ベンチには、内田、フォギーニョ、そして練習試合でゴールを決めてアピールを続けていた加藤がメンバー入りを果たした。

 一方のヴァンフォーレ甲府は、前節・清水エスパルスに1-0で勝利し、4連勝と好調。各ポジションの選手がフィットし、ハードワークを軸に戦っている印象だ。今後はACLも控えており、いかに序盤で勝点を稼いでいけるかがポイントになりそうだ。

 連勝中なだけあって、今節もスタメンをいじらなかった。ベンチにはジェトゥリオに代わって中山陸がベンチ入りしている。

 

前半

(1)明暗を分けたエンドチェンジとセカンドボールの回収設計

 この試合は、強い風がメインスタンドから見て左から右へと吹いている気候条件だった。コイントスに勝利したのは甲府だったが、須貝はボールを選択し、小出はエンドチェンジを選択した。この選択によって仙台は、前半から優位にゲームを進めることができた。

 

 試合後の伊藤監督のコメントにあった通り、この試合は「背後への抜け出し」をテーマに試合に挑んでいた。

 文字通り、山田と中島を中心に背後へのランニングを繰り返し行っていた。

 風上を選択したことも相まってボールが伸びるために、甲府センターバックコンビは処理に苦慮していた。

 加えて仙台は背後への抜け出しだけではなく、ロングボールのセカンドボールを回収するために、この試合では以前の試合よりも全体が縦横にコンパクトだったことが印象的だった。

 若狭を中心として高いライン設定をし、ボールサイドと逆サイドのサイドハーフサイドバックが絞った位置を取ることで陣形をコンパクトにし、セカンドボールを回収しやすい位置取りを行えたことで、たとえ背後へボールが届かなくてもセカンドボールを回収して甲府陣内へと押し込むことに成功した。

 

 前半で奪った2点はいずれもセカンドボールを回収したところが起点だった。

 2点目の起点となるプレーは、左サイドで右サイドハーフの郷家が競り勝ったところからであり、いかにコンパクトに陣形を保っていたかが分かるシーンだった。

 

 また、仙台は守備においても前節・長崎戦同様に守備基準点を合わせて前線からプレッシングを行っていく。

 甲府のボール保持は、センターバックとアンカーの品田(負傷交代により途中からは中山)が2トップ間に立つところからビルドアップがスタートする。

 対する仙台は、2トップが品田を起点にプレスをスタートし、センターバックにボールが渡ると2トップの一角が品田へのパスコースを消しながらセンターバックへプレスを掛けて、サイドへとボールを誘導。そこからサイドハーフボランチがボールホルダーへアプローチし、ボールを奪っていく。

 2トップがある程度コースを限定してくれるので、後方も次のプレスが行きやすくなり、強度の高いプレッシングを行えていた。

 

(2)左右で異なったボール保持

 仙台のボール保持について見ていくと、左右で異なったボール保持の設計となっていた。

 右サイドでは、この日右サイドバックで起用された小出が攻撃の起点となることが多かった。横のサポートをボランチが、前線では郷家に加えて山田と中島も右サイドに加勢してパスコースを作りながら、コンビネーションで崩していく。

 小出は真瀬と違って突破力はないが、後方で攻撃の起点となりながら、絶妙なタイミングで飛び出していき、右サイドの活性化に一役買っていた。

 続いて左サイドではキム・テヒョンが攻撃の起点になっていた。

 キム・テヒョンに対して鳥海がプレッシングに来ていたこともあり、それをトリガーに甲府の右サイドを剥がしていくことが狙いだったと思う。

 山田(もしくは中島)が須貝をピン止めする役割をして、ウイングバック化した秋山に時間とスペースを作っていく。受けた秋山はボランチの横サポートを得ながら、山田や中島とともにコンビネーションで崩しに掛かっていく。

 右サイドとの相違点は郷家が加勢しないことだ。郷家は自身がシューターとなるためにゴール前に侵入してクロスやパスを待つ役割となっていた。

 

 また両サイドともに共通して言えるのが、ピッチの横幅を広く使うことよりも同サイドで完結させようという意思を強く感じたことだ。恐らくボールを奪われても即時奪回できるし、広く展開したボールを奪われてカウンターに繋げさせたくなかったのではないかと思う。

 

 仙台は攻守においてコンパクトさを保つことで、風上を上手に使いながら主導権を握ってゲームを進めることができた。2点のリードを持って後半へと折り返す。

 

後半

(1)より強度の高い守備で

 両チームともにメンバー交代がなかった後半。

 今度は風上に立つ甲府と風下になる仙台だったが、仙台は臆することなく、前半より守備強度を上げてゲームに入った。

 仙台は前半同様に、甲府のボール保持に対して2トップからプレッシングを開始する。前半と変わった点は後方のアプローチの速度が上がったことだ。

 甲府サイドバックに対するサイドハーフのアプローチが一段上がったことで、前半よりも甲府に時間とスペースを奪っていった。

 結果的に後半序盤から高い位置でボールを奪えた仙台は、主導権を握ってゲームを進めていく。

 そして3点が入ったのは51分のことだった。

 前半から狙っていたファーサイドで待つ菅田の折り返しを郷家が合わせてリードを3点に広げた。

 

(2)一矢報いたい甲府と5バックへ変更する仙台

 ここまで仙台のプレッシングに捕まっていた甲府。しかしホームでの戦いでなんとか一矢報うべく選手交代を含めて仕掛ける。

 まずは三平と鳥海に代えて松本孝平と宮崎を投入し、前線のキャラクターを変える。続いて61分には松本凪生とウタカに代えて山本と荒木を投入する。

 この交代で甲府は4-3-3に配置を変えた。

 4-3-3に変更したことでインサイドハーフが仙台のボランチエリアで勇気を持ってボールを引き出すシーンが増え、仙台は徐々に押し込まれる時間帯を過ごすことになる。

 ちなみにボール保持では特徴が出ていた仙台のダブルボランチだったが、守備では人への意識が高いために、スペースを埋めきれず甲府に中央でボールを収められることがあり、諸刃の剣となっていた。それでも4バックが最後はカバーをしてくれたので事なき終えられた。

 

 攻勢を強める甲府に対して、68分の選手交代をきっかけに5-4-1へシステムを変更し、甲府のボール保持をしっかり弾き返しながら、ボールを奪ったらカウンターを発動したり、ボールを保持して落ち着かせていく。

 最前線に加藤、シャドーにフォギーニョの起用は驚いたが、機動力がある2人なので、低い位置でボールを奪っても前へボールを運べることができたし、いざとなったらしっかり敵陣でプレッシングを行って後方を助けていたのは非常に良かった。

 甲府はその後、山本が3バックの一角に入って、両サイドを高く上げることで前線へと人数を増やすが、仙台の牙城を崩すことはできなかった。

 仙台は松下とオナイウを投入し、5-4-1の守備ブロックを築きながら、前線へのパワーを残すことで強度を保っていた。

 

 最後までゴールを許さなかった仙台は、第2節・栃木SC戦以来となるクリーンシートを達成し、連敗を脱出した。

 

最後に・・・

 前半は風を味方に付けながら、コンパクトな陣形を保つことで主導権をしっかり握れた展開だった。自分たちの流れが来ている時間帯で中島のゴールが生まれ、アディショナルタイムに山田が追加点を奪ってくれたことで、余裕を持ってゲームを運ぶことができた。

 

 また初スタメンとなった鎌田は出色の出来。ビルドアップ隊から適切な立ち位置でボールを引き出し、前線へと繋げるプレーを何回も繰り返してくれたし、しっかりセカンドボールを回収してくれたのは今後に向けて大きな収穫だった。守備ではスペースを与えてしまうことが反省点ではあるが、今後の活躍に大きく期待を持てるプレーだった。

 

 長崎戦から少しずつ良くなってきて、今節で結果に結びつけることができた。あとは課題をしっかり修正しながら、チーム力をさらに積み上げていって欲しい。

 次節は今シーズン初の連戦となる。水曜日にアウェイで清水エスパルスとの対戦。秋葉監督交代後、ようやく今節で初勝利を挙げただけに勢いに乗ってくるだろう。また、個の力が強力なため各局面、各エリアで数的優位を保ってプレーしたい。

 連戦ではあるが短い期間でいい準備をして、強敵相手に連勝と行きたい!!

 

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