ヒグのサッカー分析ブログ

ベガルタ仙台の試合分析が中心です。

痛感した積み上げたものの差~明治安田生命J2第40節 アルビレックス新潟vsベガルタ仙台~

 さて、今回はアルビレックス新潟戦を振り返ります。

↓前節のレビューはこちら

khigu-soccer.hatenablog.com

↓前回対戦のレビューはこちら

khigu-soccer.hatenablog.com

 

スタメン

 ベガルタ仙台は、前節・東京ヴェルディ戦で0-2の敗戦。前半は耐えながら後半に立ち位置を変えながら押し込む時間帯もあったが、ワンチャンスを生かされた格好となった。プレーオフに向けて残り3試合は落とせない試合となる。今節は首位であり昇格のかかる新潟だが、粘り強く戦い好機を生かしたい試合だ。

 今節は、3バックが若狭、佐藤、キム・テヒョンの3人に戻った。またボランチには久々にデサバトがスタメン。また右ウイングバックには真瀬がスタメンに戻ってきている。ベンチには名倉が同じくメンバー入りを果たした。

 アルビレックス新潟は、前節・モンテディオ山形と引き分けたものの、今節引き分け以上なら昇格が決定する。ホームで、また3万人以上詰めかけたサポーターの前で悲願の昇格を果たしたい一戦だ。

 新潟は、センターバックが舞行龍と千葉になり、左サイドバックには渡邊。ボランチに島田が入り、左ウイングに小見、ワントップに谷口と前々節の大宮アルディージャ戦と同様のスタメンで臨む。

 

前半

(1)新潟のボール保持にしっかり構える仙台

 キックオフから新潟がボールを保持しして、後方からの組み立てから仙台陣内へ押し込んでいく展開が続いた。

 一方の仙台は、新潟の個人技術と能力が高いビルドアップ隊に対して前からプレッシングを掛けるのではなく構えた状態から守備をスタートする。

 この試合の仙台の一列目(中山、遠藤、氣田)は新潟のボランチを守備基準点として守備をスタートする。

 仙台は新潟のビルドアップ隊から縦へのパスに対してしっかり人を捕まえ、また中央を締める意識を強めることで、伊藤や谷口に簡単に楔のパスを収めさせない。

 またサイドバックへボールが渡ったときは、右サイドでは真瀬が縦スライドで渡邊へ対応し、その後方では若狭が小見を見るような形となっていた。

 左サイドで同様にサイドバックへボールが渡ったら、藤原のポジションの高さに応じて氣田がプレスに行ったり、中島がスライドして対応するシーンが目立った。ちなみに内田は対面する三戸への意識が強かった。

 このような形で仙台は新潟にボールを持たれることはある程度想定しながら、自陣もしくはミドルサードでコンパクトに守備を行っていた。

 

 仙台は奪ったボールを中山を筆頭に前線へと預けて後方が追い越していくロングカウンターを狙っていた。

 しかし時間の経過とともに、奪ったボールを中山やシャドーに繋げられずに新潟の素早い切り替えからの即時奪回により、仙台は30分過ぎからカウンターへ持ち込むことができずに自陣で耐え凌ぐ時間が長くなっていった。

 監督コメントにもあったように、もう少しラインを上げてミドルサードあたりで守備を行うことができれば良かったが、結果的に前半終盤は自陣で跳ね返すことで精いっぱいな状態となってしまった。

 

(2)時間とスペースを奪う新潟と出口を見つけられない仙台

 また、新潟が終始ペースを握れたのは前線からの積極的なプレッシングにもあった。

 この日の仙台も東京ヴェルディ戦同様に可変しないでボールを保持する意思を見せる。恐らく4-4-2をベースに守備をする新潟とのシステム上のミスマッチを狙ったものと思われる。

 しかし、新潟は谷口のプレッシングを合図に仙台のビルドアップ隊に対して積極的にプレッシングを行うことで仙台から時間とスペースを奪っていく。

 結果的に余裕がなくなったビルドアップ隊は、ビルドアップの出口を見つけらずに苦し紛れに中山を目掛けてロングボールを送り、それを奪われて再び新潟のターンになる連続となった。

 20分すぎになるとさすがに新潟も同じ強度でプレッシングを行えなくなり、少し仙台のボール保持に余裕がある時間もあったが、それでもなかなか立ち位置を定めらずにうまく前進することはなかった。

 

 終始新潟ペースで試合は進んだものの、自陣でなんとか耐え凌いだ仙台。前半はスコアレスで折り返す。

 

後半

(1)集中の糸が切れる

 後半開始早々こそ仙台が前からプレッシングに行くシーンはあったものの、ほとんど前半のリピートのような展開で試合は進む。

 仙台は前半と変わらずに自陣深い位置で新潟の攻撃を抑える形。奪ったボールを前へ繋いでいこうとするも、そもそものスタート位置が低いのと、新潟の素早い切り替えによってカウンターの芽を摘まれてしまう。

 54分には起点を増やすために氣田から富樫に交代するも、効果的な交代とはならなかった。

 

 ここまで耐えきれていた仙台も、いよいよ集中の糸が切れてしまう。64分のことだった。

 中島が相手に当ててマイボールにしたと思ったら、新潟のボールの判定に。新潟は素早くスローインから侵入すると最後は伊藤が冷静に流し込んで均衡を破る。

 仙台としてはマイボールだという主張だったが、セルフジャッジをしてしまったゆえにプレーの再開が遅れ、隙を与えてしまった。

 もちろん判定に不満があっても結果は覆らない。不満があっても切り替えてプレーして欲しかったシーンだった。

 

(2)原崎前監督の記憶を辿って

 仙台は失点直後にキム・テヒョンとデサバトに代わって福森とフォギーニョを投入する。フォギーニョの投入はシステムをいじらないものの、前へ出て行く意思を見せるものだった。

 そして74分には若狭と内田に代わって名倉と石原を投入。1点を追う状況で、この交代を機に4-4-2へとシステムを変更する。

 後ろを1枚削り、前線に人を増やしたことである程度ボールを握って新潟陣内に迫るシーンも作り出せるようになる。

 名倉と遠藤がより2トップに近い位置でプレーし、サイドバックが高い位置を取る。そしてそこにボランチが加わって中央から攻め込むのは、原崎前監督時代にやっていたことだった。そんな前監督がやっていたことの記憶を辿りながら仙台はなんとかシュートまで持っていこうとする。

 

 しかし、1人減らして前へ人数を増やした仙台はどうしても後方に脆さが出てしまう。そして新潟に追加点を許すこととなった。

 左サイド深くを抉られると、最後は伊藤がこの日2点目となるゴールが決まる。これで新潟は昇格を大きく手繰り寄せることになった。

 

 その後は、攻める仙台を上手く抑えながらカウンターからダメ押しゴールを狙う新潟という構図に。まさに強者の試合運びだった。

 そしてアディショナルタイムに入って4分後に新潟は3点目を決める。

 カウンターから最後は古巣対戦となるゲデスが決めて、これがラストプレーになった。

 試合は0-3。新潟は3万人の大声援を受けて見事6年ぶりとなるJ1昇格を決めた。一方の仙台は3連敗でプレーオフ圏内から落ちて7位となった。

 

最後に・・・

 これ以上ない完敗だった。J2で苦しみながらもしっかり積み上げたことでチーム力と個人の能力を上げ、着実に強くなった新潟は、まさしく昇格に相応しいチームだった。改めておめでとうございます。

 

 一方の仙台は1年での昇格を目指し、終盤には監督交代という博打に打って出たが、つぎはぎだらけのチームではやはり着実に積み上げたチームとの差はあまりにも大きいことを痛感する結果となった。

 

 残り2試合残されており、もちろんプレーオフに向けてまだまだ諦める状況ではないが、やはり状況は非常に厳しい。

 まずは伊藤監督の下で後悔なくシーズンを終わらせるためにも、ロアッソ熊本戦とブラウブリッツ秋田戦の2試合はトレーニングからいい準備と気持ちを作って、少なくともファン・サポーターに期待を持ってもらえるプレーをして欲しいところだ。

 

 次節はホーム最終戦となるロアッソ熊本戦。7月のヴァンフォーレ甲府戦以来の勝利と2019年・大分トリニータ戦以来のオーラをユアスタに響かせられるように、チームには死ぬ気で戦って欲しい!!

 

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