ヒグのサッカー分析ブログ

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千葉の土俵の上で~明治安田生命J2第20節 ジェフユナイテッド千葉vsベガルタ仙台~

 さて、今回はジェフユナイテッド千葉戦を振り返ります。実に19年ぶりの顔合わせ。

↓前節のレビューはこちら

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スタメン

 ベガルタ仙台は、前節・栃木SC戦で終了間際の皆川の決勝ゴールで苦しみながらも勝利、5戦負けなしとなった。またミッドウィークの天皇杯2回戦・HondaFC戦でも先制されたものの、中山と加藤のゴールで逆転勝利を納めている。今節は19年ぶりの対戦となるジェフユナイテッド千葉。堅い守備をベースとする相手を崩し切り、千葉戦初勝利を狙う。

 今節は、栃木戦の後半からのメンバーがそのままスタメンという形になった。ベンチもおおよそお馴染みの顔ぶれで、この試合に挑む。

 ジェフユナイテッド千葉は、前節・水戸に勝利しリーグ戦は連勝中。しかし、天皇杯2回戦・ツエーゲン金沢戦では逆転負けを喫している。また負傷者が続出し、台所事情が厳しい状況。今いるメンバーでこの難局を乗り越え、3連勝でプレーオフ圏内へと上がっていきたい一戦となった。

 千葉は、チャン・ミンギュ、熊谷、西久保が前節と代わってスタメンに名を連ねた。またベンチには川又、ブワニカ、櫻川とパワーのある選手が控えている。

 

前半

(1)潜り込めなかった仙台のボール保持攻撃

 前半は千葉が5-4-1(ないしは5-2-3)の守備ブロックを組み、仙台のボール保持攻撃に対して構える形で挑んできたことで、仙台はボール保持時間を長くしながらゲームを進めることとなった。

 千葉の守備のポイントは前線3人とボランチの五角形。前線は3人で仙台の4バックを見る形を取り、ダブルボランチは仙台のダブルボランチを監視。そうすることでボール引き出す仙台のダブルボランチに対して厳しくチェックすることで、構えて守備を行いながらも仙台陣内から規制を掛けていく。

 

 ボランチが掴まっている状態の仙台はどう前進していくかが次のポイントとなった。

 仙台が選択したのは皆川を目掛けてのディフェンスライン背後へのボールか、サイドバックを始点とする外外循環だった。よって仙台の攻撃はサイドからの突破がメインとなり、どうしても縦へのベクトルが強い攻撃となった。

 ただ、冷静に考えれば仙台のダブルボランチを千葉のダブルボランチが見ているので、その背後のスペース(バイタルエリア)は比較的空いている。なのでそこへ潜り込んでいくプレーを増やせれば、より効果的な攻撃なっただろう。

 もちろん、千葉の球際の激しい集中した守備もあったが、16分の内田を起点とする外外循環から氣田のフリックを中央で遠藤が受けて皆川へダイレクトパス(シュートは空振り)を送ったシーンのような形をもう少し作れていればチャンスも増やせたのではないかと感じる。

 前半はどちらかと言えばサイドからの攻撃が多く、仙台らしい中央へ侵入していくプレーが少なかった。そういう意味では少し勿体なかった前半となった。

 

(2)徹底したサイドチェンジによる解放で前進する千葉

 一方で構えた守備からゲームに入った千葉だが、しっかり奪った先の設計もされていたことは見逃せない。

 仙台の特徴はボールを奪われたときのトランジションの速さだ。そこでボールを再度奪いきることで自分たちのターンを継続し、時にはショートカウンターからゴールを奪う。

 もちろん、この試合でも局地戦は行われ仙台がボールを奪ってからのカウンターもあったが、それ以上に千葉がプレッシャーから解放されるシーンは多かった。

 千葉は奪ったボールをダブルボランチもしくは3バックが、すぐに逆サイドへ展開する。このことで仙台のプレッシャーから逃げ切ることに成功し、そこから押し上げて仙台陣内へと押し込んでいく。ダブルボランチの田口と熊谷は展開力のあるボランチだけに成立する部分も大きいと思うが、仙台に対して非常に効果的なプレーだったと思う。

 逆に言えばそこでボールを取り切れない仙台は、なかなか自分たちのリズムでプレーできなかったように感じた。

 そして、千葉のように仙台のプレッシングから逃れることでペースを奪うやり方をしてくるチームは今後も出てくると思うので、いい教訓になったのではないだろうか。

 

 また千葉は22分にアクシデント。鈴木大輔が負傷し、ブワニカを投入。

 センターバックをできる選手がいない千葉はこのタイミングで4-4-2に変更する。

 システム変更後も、大きな流れと両者の狙いはほとんど変わらなかった。

 変わったとするならば、千葉の守備の立ち位置が変わった(前線3人から2人に代わった)ので、仙台もその立ち位置にアジャストする必要があったこと。

 また4-4-2同士のミラーゲームになったので、仙台のサイドバックに千葉のサイドハーフが見るような形になったので、サイドバックを始点とする攻撃が鈍くなった。この辺りはハーフタイムでの修正が必要な部分となった。

 

 ということで、千葉のアクシデントもありながらの前半はスコアレスで折り返す。

 

後半

(1)ハーフタイムの修正が裏目に出た後半開始10分間

 仙台は後半開始から皆川に代わって富樫を投入する。

 前半はなかなか相手のバイタルエリアに侵入する回数が少なく、仙台の狙いとする攻撃ができなかった。よって仙台は立ち位置を修正し、攻撃の改善を図る。

 後半の仙台はフォギーニョをセンターバック間に落として、両サイドバックを高い位置に上げる。また、遠藤と氣田は千葉のボランチサイドハーフの間に立ってビルドアップの出口なる。また彼らをスキップして頂点の富樫へ楔のパスを入れることも狙いのだったし、加藤はセカンドストライカーのような役回りだった。前半はサイドからの攻撃がメインだったが、やはり中央から潜り込んでいきたいという考えが見て取れた後半の修正だった。

 

 しかし、そんな矢先で仙台は立て続けに2失点を奪われることとなる。

 1点目は前半にもあった大きなサイドチェンジからの攻撃で仙台を揺さぶり、最後は2トップの高さで押し込んだ。天皇杯・HondaFC戦でもそうだが、サイドで揺さぶられてしまうのは弱点の1つとなっている。

 2点目は奪われ方が悪く、また後半の修正によって高い位置に押し上げたサイドバックの背後を突かれた格好となった。

 仙台としては、後半からもう一回ボールを握りながらペースを握ろうという狙いのなかで立て続けに失点したことは、最後まで重くのしかかることとなった。

 

(2)こじ開けに行く氣田たち

 2失点をした仙台は、59分に中島と遠藤に代わって吉野と中山を投入。続く66分には加藤から鎌田にスイッチする。

 この交代で明確に2トップにすることで、彼らにボールを当てて、そこから氣田と鎌田の両サイドハーフがボールを受けてこじ開けに行く。特に氣田はスイッチが入ったように仕掛け続ける。

 千葉が2点を奪ったことでプレッシャーが弱まったこともあるが、千葉陣内で前傾姿勢でプレーできるようになったことで、前述した両サイドハーフがこじ開けに行くプレーが増えたし、またセカンドボールに対してフォギーニョと吉野が奪いに行ける回数も増やすことができた。

 しかし、立て続けに訪れるチャンスも残念そこは新井章太でゴールを奪うことができない。

 76分には右サイドバックに真瀬を投入し、右サイドからの攻撃を狙うも効果的なチャンスを作ることができなかった。

 

 一方の千葉は、仙台の攻撃を新井章太中心に跳ね返しながら、守り抜いていった。

 そして仙台は最後まで千葉のゴールを破れることができずにタイムアップ。19年ぶりの対戦は千葉に軍配が上がった。

 

最後に・・・

 堅い千葉の守備を最後までこじ開けられず、終始千葉の土俵でサッカーをしてしまった形となった。

 前半の振り返りでも触れたように、もう少し序盤から中央へ潜り込んでいくことをトライしたかったなという印象だった。

 ただ、後半はその辺りも修正して、追いかける展開だったこともあるが、しっかりトライしてチャンスを作れたことは次に繋がる部分だったと思う。

 

 リーグも折り返しに来て、やはり対戦相手から研究されてきているところもあるので、出た課題を解決し、自分たちのものにしてもっともっと個々人においてもチーム全体においても成長して欲しい。芯のところはぶれずにいかにバリエーションを増やしていくかは今後のポイントになってくると思う。

 

 ということで次節は前半戦ラストゲーム。アウェイで徳島ヴォルティスとの対戦。徳島もボール保持を志向するチームだけに、守備で我慢が強いられる時間帯が長くなることも想定される。その中でいかに我慢づく守りながら、攻撃時にリスクを負って出て行けるかが勝負のカギだろう。次節もまた一筋縄でいかないが、粘り強く勝点3を獲得して欲しい!!

 

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