ヒグのサッカー分析ブログ

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強まる結束力~明治安田生命J2第5節 モンテディオ山形vsベガルタ仙台~

 さて、今回はモンテディオ山形戦を振り返ります。みちのくダービー第1ラウンド。

↓前節のレビューはこちら

khigu-soccer.hatenablog.com

 

スタメン

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 ベガルタ仙台は前節・いわてグルージャ盛岡に3-0の快勝。開幕4試合負けなしで来ている。今節はみちのくダービーとあって絶対に負けられないが、前日に原崎監督が新型コロナウイルス陽性疑いでベンチ入りできず。代わりに吉田賢太郎コーチが監督代行を務め、総力戦で山形へと乗り込んだ。

 スタメンは前節と変更なし。ベンチには内田と赤﨑がメンバー入りとなっている。

 モンテディオ山形は開幕4試合で1勝2分1敗。前節・ヴァンフォーレ甲府戦では終了間際に追いつかれて勝点2を失った格好となった。山形にとってはホーム開幕戦でもある今節は是が非でも勝ちたい試合だ。

 山形も前節からのメンバー変更はなし。ベンチには大卒ルーキーの横山が入った。

 

前半

(1)中盤のマンツーマン守備と列とレーン移動によるスペース創出

 この試合は、お互いにスペースを見つけては、そこへ早くボールを送ることで攻撃のスピードを上げていた。よって、ゲーム展開自体もよりスピーディーなものとなり、両者ともにゴール前での攻防が増えた。

 

 そんな中で特徴的だったのは仙台の守備とそれに対する山形のボール保持攻撃だった。

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 山形はボール保持の局面になると山田康太が一列降り、また藤田が一列前に出ることで「4-3-3」の形になる。

 それに対して仙台はダブルボランチ山田康太と藤田を、アンカーになる南には富樫がマンツーマン気味で守備を行っていた。また両サイドハーフは高い位置を取っり、氣田は状況を見て、山崎へとプレッシングを掛けていた。

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 しかし、そんな仙台の守備に対して山形は、中盤3人が列やレーンを移動することで、マークしている選手を移動させることで中央にスペースを作っていた。そして中央にできたスペースでワントップの藤本がボールを受けて仙台ゴールへと襲い掛かった。

 仙台としてはマンツーマンで守備をすることで、山形が楔のパスを入れたところを奪ってカウンターへ繋げたかったのだろうが、山形がマンツーマン守備の弱点を上手に利用して攻撃することができていた。

 よって序盤は山形が仙台ゴールに迫るシーンが多かったが、杉本を中心に仙台も無失点で乗り切った。

 

(2)トップ下・富樫敬真が生きた先制点と崩された同点ゴール

 序盤は山形がマンツーマンで守る仙台に対して、うまくスペースを作り楔のパスを入れることでチャンスを増やしていった。

 しかし、この山形のやり方にも弱点はあって、この動きで攻撃が完結すればいいのだが、ボールを奪われたときは移動している分、オリジナルポジションに戻る時間が発生するため、どうしても中盤にスペースが生まれてしまう。

 そして仙台は、そんな山形の弱点を上手く利用した形で先制点を奪った。

 中盤でボールを奪うと富樫を経由し、フォギーニョが中山へ縦パスを通してカウンターを発動。中山は前を向いた氣田にパスをし、そのまま氣田がゴール右隅に流し込んだ。

 山形がボールを持っているときは、南を見ることになっている富樫だが、攻守が切り替わった瞬間は富樫がトップ下の位置にいることでポイントになり、攻撃の起点となっていた。ボール奪取能力が決して高いとは言えない南に対して富樫を当てたのも攻撃における狙い(カウンターの起点になる)があったのかもしれない。

 その後も富樫は昨年の赤﨑のようなタスクで中盤と前線を繋ぐリンクマンとして攻撃に貢献していた。

 

 しかし、先制点を奪ってから10分後の31分に山形に左サイドを崩される。

 前述したマンツーマンでの守備により、中盤が動かされたことでバランスが崩れて、山田康太にライン間を侵入され、そこから崩されて最後は加藤が押し込んだ。

 山形としては狙い通りであり、仙台としては改善し切れてなかった部分を露呈した格好となってしまった。

 

 前半は中盤での駆け引きから、いかにスペースを利用して早く攻めるかがポイントになった展開だった。両者ともに1つずつゴールを奪い合って後半へと折り返した。

 

後半

(1)守備のやり方を変更した仙台

 前半は、中盤の攻防で人への意識を強くした守備を行った仙台だが、山形にうまく打開されスペースを与えてしまった。

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 ハーフタイムを挟んで仙台は守備のやり方を修正する。仙台は中盤のマンツーマン守備をやめて通常の4-4-2の守備に戻した。富樫は引き続き南を気にしながら守備を行っていたが、中山とともにビルドアップ隊へプレッシングを掛ける。

 また列を降りる藤田に対しても、前半はリャンが付いていくことが多かったが、後半は2トップがプレスに行くようになった。

 守備を整理した仙台は、前プレが機能し始める。開始早々の46分には左サイドでボールを奪うとカウンターを発動。富樫がドリブルからシュートまで持っていった。

 

 そして52分に勝ち越しゴールを決める。

 セカンドボールを回収し、中山が左サイドへ展開。リャンの浮き球のパスを富樫が収めてペナルティエリア内へパス。中山が木村の背後から出て行きボールを受けると、最後は後藤の股を抜いて冷静にゴールを決めた。

 1点目でもそうだったのだが、山形のセンターバックはチャレンジ&カバーが上手くいっておらず、背後へと引いてしまうため中山へのプレスが甘く、中山が楽にボールを受けて展開することができていた。このシーンでも山形のセンターバックは中山へプレスを掛けらていなかった。仙台はそこをうまく利用した格好となった。

 

 しかし、直後の54分に左サイドを崩されると半田のアーリークロスを杉本がパンチングし切れず。こぼれ球を藤本の押し込まれ再びゲームは振り出しに戻った。

 このシーンでは半田と國分のワンツーでの打開と藤田のハーフスペースへのフリーランによってリャンが引っ張られて、ペナ角にスペースが生まれてしまった。杉本の処理ミスはあったものの、仙台の左サイドを山形の1点目同様に崩された形となった。

 

(2)遠藤康の一撃

 シーソーゲームの様相を呈した試合が次に動いたのは59分のことだった。

 仙台が左サイドから前プレを行うと國分がバックパスをする。そのパスが遠藤に渡りビッグチャンスを迎えそうなところで木村が倒してしまう。

 この判定がDOGSOということで木村は一発退場となり、山形は10人となる。

 そして、これで得たフリーキックを遠藤が自分で沈める。

 キーパーノーチャンスのまさに芸術的なゴール。これでスコアでも数的にも優位になった仙台だった。

 

(3)クローズドにゲームを進める仙台

 残り30分以上あるなかで数的優位かつリードできた仙台は、無理に攻め急がずにゆっくりボールを保持しながらクローズドにゲームを進めていく。

 山形が奪いに来なければ、後方からしっかり組み立てていき、またゴール前まで進めたら追加点を狙いに襲い掛かる。

 また山形がボールを保持したときにも、無理には奪いに行かず、しっかり構えた状態で守備を行うことで落ち着いて対応できていた。

 

 山形は79分に山田康太と藤本に代えて河合と横山を投入し、前線の活性化を図る。一方の仙台はリャンの代えて富田、5分後には赤﨑を投入し、追加点を狙いながらも守備強度を落とさない交代を行う。

 

 しかしアディショナルタイムにアクシデント。富田が藤田との接触で膝を痛めて交代。ボランチの代えがいなかったため、名倉が急遽ボランチを務めることとなった。

 最終盤にアクシデントがありながら、それでもアディショナルタイム8分をやり切った仙台。

 

 シーソーゲームとなった試合は、仙台が3-2で勝利し、みちのくダービー第1ラウンドを制した。

 

最後に・・・

 展開の早い、スピーディーでオープンな展開だったゆえに、個人のクオリティで上回った仙台が最後は勝つことができた。

 原崎監督不在のなかだったが、前半上手くいかなかった守備の部分をしっかりハーフタイムで修正し、勝ち越しに持っていくことができたのは吉田賢太郎コーチをはじめとするベンチワークのおかげだっただろうし、そこに応えた選手も見事だった。

 また、2失点時にミスをしてうなだれていた杉本をみんなで鼓舞した姿は、昨年までになかったものだし、チームの結束力がより強くなっているところが垣間見れたシーンだった。

 

 これで今シーズン初の連勝となった。開幕5試合で3勝2分は開幕ダッシュに成功したと言っていいだろう。まだまだ試合は続くし、気の抜けない戦いは続くが、こうやって勝つことでもっともっと自信をつけて欲しい。

 次節はホームに戻ってFC町田ゼルビアとの試合。今節は東京ヴェルディに敗れたものの、町田も開幕から好調でいいサッカーをしている。押し込まれる時間も今まで以上に長いかもしれないが、焦れずに守りながらチャンスを伺いたい。

 ダービーに勝利した勢いをホームに持ち帰って、直接対決を制して欲しい!!

 

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