ヒグのサッカー分析ブログ

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耐えきれなかった仙台~明治安田生命J1第13節 浦和レッズvsベガルタ仙台~

 さて、今回は浦和レッズ戦を振り返ります。

↓前節のレビューはこちら

khigu-soccer.hatenablog.com

 

スタメン

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 ベガルタ仙台は、前節・柏レイソル戦で今シーズン初勝利&518日ぶりのホーム勝利を手にした。しかしミッドウィークのルヴァンカップ清水エスパルス戦では1-4の大敗。チームとして成長はしているものの、まだまだ課題がある。それでも柏戦で勝利した自信を胸に、埼玉スタジアム2OO2での初勝利を目指す。

 今節は2人の変更。右サイドバックに蜂須賀。関口がトップ下で、左サイドハーフに氣田が起用された。ベンチには、途中交代で心配された赤﨑が入り、またケガ明けのマルティノスも名を連ねた。

 一方の浦和レッズは、前節・アビスパ福岡戦で0-2の敗戦。リカルド・ロドリゲス監督初年度は、まだまだチームを構築している段階といったところか。朗報なのはミッドウィークのルヴァンカップ柏レイソル戦で新戦力のキャスパー・ユンカーが初出場で初ゴールを奪ったことか。浦和にとってのラストピースになるのか注目である。

 今節は、そんなユンカーがスタメンに。またキーパーには鈴木彩艶がリーグ戦初出場。またボランチには阿部勇樹が起用されている。ベンチには仙台キラーの興梠をはじめ、豪華なメンバーが出番を待っている。

 

前半

(1)仙台が主導権を握れたワケ

  仙台がエンドを変えて始まった試合は、予想に反して仙台が主導権を握ってプレーすることができた。

 これは浦和による理由が大きかった。

 試合開始からの浦和は、ボールを保持しながらもユンカーへ向けたロングボールを選択することが多かった。リーグ戦初先発だったユンカーがどれくらい機能するのか、どれくらいエアバトルに通用するのかという1つの実験的要素もあったと思う。

 それに対する仙台は、ユンカーに対して吉野と平岡がしっかり競り勝つことができていた。彼らは基本的にエアバトルには強いので、そこまで脅威ではなかったと思う。

 競り勝ってセカンドボールを拾えた仙台。浦和のトランジションが遅いこともあり、ボランチや関口でボールを落ち着かせることができたので、仙台はボールを握りながら攻め込むことができていた。

 ロングボールを送る浦和だったが、セカンドボールの反応や切り替えが遅かったこともあり、仙台は予想に反して主導権を握ることができた。

 

 浦和もペースが落ち着かないことでミスが起き、仙台にチャンスが巡ってくる。6分の西村のシュートを決めきれていれば、完璧な序盤を過ごすことができたと思う。

 

(2)日常を取り戻す浦和

 ただ、次第にロングボールが意味をなさないことを浦和も理解し始める。徐々に地上戦へと変更していった。

 

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 動き出したのは小泉だった。ビルドアップ時に3-1を基本形とする浦和。小泉は左インサイドハーフのような立ち位置で、ビルドアップ隊からボールを引き出していく。そして降りる小泉を見て、武藤は左シャドーのような振る舞う。

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 浦和が狙いとしていたエリアは2つ。1つ目は左ハーフスペース。ここは武藤や明本がランニングしていく。そこへボールが渡るとシンプルにクロス。中へ待ち構えるユンカーへを目指す攻撃。

 もう1つは中央エリア。仙台はサイドの守備になると人を捕まえる。サイドの守備にボランチも援護する。ハーフスペースへ誰かがランニングするとそこへボランチが付いていく。そうすると中央のエリアにはもう1人のボランチしかおらず手薄になる。そこへ浦和のボランチが侵入したり、小泉が潜り込んでいくことで仙台の守備網を攻略しようとしていった。

 地上戦へ攻撃を変更したことで、徐々に浦和がボールを握る時間が増えていった。飲水タイム以降は、切り替えが早くなり、奪われても素早く囲い込むことで即時奪回を可能とした。

 

(3)目的地のない仙台の攻撃

 ここまで書いたように序盤は仙台が主導権を握れたものの、浦和が攻撃方法を変えると次第に浦和のペースでゲームが進んでいった。

 浦和の攻撃に対して、仙台も時折動かされることはあっても、センターバックを中心に集中力の高い守備でなんとか跳ね返すことができていた。

 また、浦和は切り替えのスピードが速くなっても、ボール非保持のときには積極的にはプレッシング掛けてこない。よって仙台がボールを握る局面はあった。

 しかし、ここで課題を露呈することとなる。

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 この試合でのボール保持の形は3-1-4-1-1のような形だった。盤面上で分かるくらい仙台の立ち位置はハッキリされていたのだが、この立ち位置を取ってどこを目指して攻撃していくかが見えなかった。要は逆算ができていない。

 サイドを攻略するのか、中央を攻めたいのか、浦和のようにハーフスペースへ侵入していきたいのか。ボールは持てるけれども、全員の意思と狙いが不明瞭なこともあり、仙台のボール保持からの攻撃は停滞することがほとんどだった。

 もちろん、ここまでのチーム作りで守備に時間と労力を割いてきたので、ボール保持局面が上手くいくはずはない。ここはこれからやらなければならないことの1つだ。当たるべくして壁にぶち当たった感じだ。

 

 ということで、前半は時間の経過とともに浦和がペースを握り返して、前半を終える内容だった。

 

後半

(1)立ち位置の修正と解き放たれた小泉と武藤

 ハーフタイムを経た後半、浦和はボール保持時の立ち位置を修正した。

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 浦和は3-4-2-1の形に変更。前半は左サイドから数的優位で作っての攻略を図ったが、後半はもう一度立ち位置を整理してからのスタートとなった。

 この変更による恩恵を受けたのが、シャドーになった小泉と武藤だった。シャドーになったことで、中央で自由に動けるようになり、前半よりも中央に侵入してのコンビネーションからの突破を目指すシーンが明らかに増える。

 また、左サイドを1人で任せられた明本も、どんどんペナルティエリアに飛び込んでいく。少しずつ浦和の攻撃が迫力を増していった。

 そしてゲームは58分に動く。

 3バックの一角に入った西からの攻撃。右サイドから中央へ侵入していくと、武藤、小泉、ユンカーで仙台の守備をこじ開け先制に成功する。

 

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 仙台が悔やまれるとしたら、右サイドから中央へのパス(関根→武藤)を許してしまったことだろう。

 このシーンを巻き戻すと、西から関根へのパスのときに松下は、阿部へ守備の矢印が向いている。よって武藤がフリーとなり、パスを許すこととなった。

 もし始めから松下が武藤へのパスコースを消せていたら、中央の侵入を許すことはなかったかもしれない。せめて浦和の攻撃を遅らせることはできたのかもしれない。

 もちろん、武藤や小泉のところを潰せなかったところも痛かったが、中央閉鎖で守っている以上は、やはり中央への侵入は許したくなかったところだ。

 

(2)守備のスイッチを入れ出す仙台。阿部の一撃。

 先行を許した仙台は、64分に加藤と関口を代えてマルティノスと赤﨑を投入する。一方の浦和はユンカーから興梠へスイッチ。

 追いかける立場となった仙台としては、前から出ざるを得なくなる。よって、浦和のビルドアップ隊へプレッシングを掛け始める仙台だった。

 積極さを増した一方で、なかなかボールが奪えない。奪えてもマイボールにしきれない展開が続く。

 また切り札のマルティノスも、明本とのマッチアップで負け続け、浦和サポから煽られてしまう悲しい現実。

 

 それでも、1点差を保ちながら戦っていた仙台だったが、75分に吉野が小泉を倒してフリーキックを与える。それを阿部が沈めて浦和が追加点を奪うことに成功する。

 

 その後も中原や真瀬、フォギーニョを投入して攻めに出ようとする仙台。マルティノス、怒りのミドルシュート3連発があったものの、この試合がリーグ初先発の鈴木彩艶にセーブされる。

 

 攻勢むなしく試合は終了。またしても埼玉スタジアム2OO2での初勝利はお預けとなった。

 

最後に・・・

 試合序盤こそ、チャンスがあったが、次第に浦和のボール保持に耐える展開となり、後半についてに決壊したという内容だった。

 もちろん、チャンスをものにしたかったのもあるが、もう少しボールを持てている局面で効果的な攻撃ができれば、守備一辺倒なることもなかったかなと思う。

 そういう意味では、守備のベースがある程度できてきて、次はどうやってゴールを奪うか、目指していくかなのかなと。

 勝ち筋を作り出す作業はまだまだ時間が掛かりそうだが、守備同様に丁寧に根気強くやっていくしかないだろう。

 新戦力のカルドーゾも合流したことで、すべての選手が揃ったことになる。ここから本当の意味での総力戦だ。

 

 次節はミッドウィーク。アウェイで川崎フロンターレとの対戦。誰がどう見ても劣勢になることは間違いない。その中で、王者相手に反骨心を持てるか、1つでも得られるものがあるならば、それを敵地で持ち帰ってきて欲しい。王者相手に立ち向かっていく、チャレンジングな姿勢を期待したい!!