さて、今回はサンフレッチェ広島戦を振り返ります。
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スタメン
ベガルタ仙台は、前節・セレッソ大阪と対戦。一時は同点に追いつくも勝ち越しを許し敗戦となった。攻撃面では迫力に欠け、課題が多く残る試合だった。
今節は、前線2人を変更。左のサイドハーフに崇兆、ワントップにゲデスを起用した。また、ベンチには今シーズン初めて兵藤が名を連ねた。
一方のサンフレッチェ広島は、前節・横浜F・マリノス戦で1-3の敗戦。ここ2試合連続で3失点を喫しており、守備に課題が残っている。
そんな広島は、マリノス戦から2人を変更。ボランチに川辺、シャドーの位置に森島が起用されている。なお、今節も野津田はベンチ外のようで行方不明だ。
前半
(1)シャドーをどうするか問題
試合開始3分でゲームが動いた。広島の最初の攻撃。クロスのセカンドボールを佐々木が拾って、ペレイラへ縦パス。ペレイラは吉野をくるっとかわして、左足でネットを揺らした。幸先よく広島が先手を奪う。
おそらく縦パスが入ったときにペレイラは吉野が奪いに行くのを分かっていたのだろう。吉野の前へのベクトルをうまく利用した。昨シーズンまでチームメイトだった2人。昨日の友は今日の敵といったところか。
その後も、広島がボールを握り、それに対して仙台がプレッシングを掛けていくシーンが多かった。
仙台は、この試合もいつも通り前から仕掛けていく。3バックの相手に対してサイドハーフが外レーンを切りながらプレッシングに行く姿が見られた。
しかし、問題はボランチの周辺だった。この試合の広島は3-4-2-1。仙台のボランチの周辺には相手のボランチとシャドーがいる。仙台のボランチが広島のボランチへ食いつくとその背後が空く。その反対でシャドーを気にするとボランチが空くので、そこで回避されてしまう。この試合はこのボランチのエリアを整理できずに、プレッシングが機能しない状態が続いた。
もっとゲデスと関口が中央のコースを切れれば、ボランチも狙いを絞れたのだが、そこの整理はされていなかったようだ。
よって中央からプレスを回避され、シュートまで持っていかれてしまった。幸い決定的な場面は作られなかったが、同様のシステムを採用する相手（例えば大分とか）には、しっかり準備する必要があるだろう。
(2)どこをポイントに前進し、どこをポイントに侵入していくか
時間の経過とともに、徐々に仙台がボールを保持する時間帯が増えていった。
仙台のボール保持は可変を行わずに4-2-1-3で行う。
まずはどこのエリアで前進するか。仙台は広島のシャドーのエリアをポイントとした。特に仙台の左サイド。蜂須賀から前進することが多かった。ここはヴィエイラがあまり守備に帰らないからというのがある。よって、蜂須賀が悠々とドリブルで運んでいくシーンがかなり見られた。また右サイドは柳vs森島の局面で、柳が縦へ仕掛けてクロス。それがコーナーキックに繋がっていた。
では、どこのエリアから侵入していくか。仙台は、広島攻略のポイントとして「3バックを釣り出す」ことを狙いとしていたと思う。サイドハーフの真瀬と崇兆は、ハーフスペースでポジショニング。組み立て時はサイドバックが持ち上がる時間を作る出すために、相手ウイングバックと左右バック（野上と佐々木）をピン止めする位置取りを取り、そこから裏へ抜けたり、降りてきたりして3バックを引き出す。
そして自らが裏を取る。もしくは引き付けた背後をゲデスや関口がランニングすることが狙いだったと思われる。
しかし広島は、先制して自陣への撤退守備を受け入れたことで人数を掛けられてしまい、仙台はペナルティエリアへ侵入することがなかなかできなかった。その代わり、サイドからのクロスでチャンスを作った。
19分の蜂須賀のクロスに真瀬、38分には真瀬のクロスにゲデスで惜しいシーンを作り出した。しかしペナルティエリアへ侵入できない分、攻撃に迫力があったとは言えない前半だった。後半どう巻き返すかという宿題をロッカールームへ持ち帰ることとなった。
前半は、早々に得点を許すも、サイドからチャンスを作り出した仙台。1点ビハインドで折り返す。
後半
(1)ハイネル狙い撃ち大作戦
前半早々に先制点を許した仙台。その後は撤退した広島の守備をいかに崩すかが焦点となっている。
後半はある選手を狙い撃ちすることによって、仙台は攻撃の糸口を見出した。
後半の仙台は基本的に前から行くことは少なくなった。それは広島の攻撃をおびき寄せるためだと考えている。
仙台はボールを奪うと椎橋へボールを集めるようになる。そして椎橋にボールが渡ると必ずハイネルが寄せに来る。前半からあったのだが、ハイネルは人へボールホルダーへの意識が強い。よって自分の守るエリアを飛び出してくることが多く、前半もその背後を突くシーンは何回かあった。
仙台は椎橋がハイネルが食いついたところで崇兆やゲデスへ縦パスを通し、攻守を切り替える。椎橋がハイネルの背後を突いたシーンは後半だけでも4回あった。
あえて引いたのも、攻守が入れ替わったときにハイネルを釣り出しやすくするためだったと思う。そうして徐々に攻撃の糸口を見出していった。
またボール保持でも変化があった。右サイドでは、柳がハーフスペースへ立ち位置を取り、真瀬が横幅を取るようになった。
このことで柳が森島を引き連れて、真瀬へのパスコースを開ける。吉野が真瀬へ通すと、柳はハーフスペースを一気にランニングする。このようなパターンにすることで右サイドの前進もスムーズに行われていった。
(2)選手交代で修正する広島と、その上を行く仙台
広島は62分に2枚替え。浅野と東を投入する。
浅野は右シャドーの位置に入り、椎橋をケアすることでハイネルの動きを抑制しながら仙台の出所を抑える。
東は、横幅を取る真瀬を抑えながら、背後を取られない守備を心掛けていた。
この交代は、守備の修正をするに当たってはとても理にかなった交代だったと思う。特に浅野はスピードがあり、カウンターで出ていくことでチャンスも作り出していた。
しかし、そんな広島の対応のその上を仙台は行った。
仙台は飲水タイム後に兵藤を投入する。
この交代で仙台は、ボール保持時は4-3-3のシステムへ変更（ボール非保持は兵藤がトップ下の4-2-3-1）。このことで浅野にケアされていた椎橋はアンカーのポジションでボールを持てるようになった。
また兵藤はハイネルの相手となり、再びハイネル狙い撃ち大作戦が決行されることとなる。兵藤は、インサイドハーフの位置からサイドへ流れることでボールを引き出して、仙台の攻撃を引っ張っていった。
そして72分に追いつく。サイドに流れた兵藤はファーの関口へクロス。これは合わないものの、再び拾った仙台は右サイドから中央の椎橋へ。椎橋はゲデスへ縦パスを通す。ゲデスは潰れ、そのボールを真瀬が拾うとマイナスクロスを上げ、それをハーフボレーで丁寧に叩いた兵藤が決め、仙台は追いついた。
この一連の流れは、この試合の狙いが詰まったゴールだった。まずは兵藤がサイドへ流れる。ファーへクロスを送ることで広島の守備は横に間延びし、佐々木をサイドへ釣り出すことに成功する。そして空いた中央のスペースへ縦パスを通して、ペナルティエリアへ侵入。そこからクロスを上げてゴールを決めた。素晴らしいゴールだったと思う。
(3)ハイネルの負傷で失われたポイント
本音を言えば、この流れでさらに攻勢を仕掛けて逆転まで持っていきたかった。しかし79分にハイネルがハムストリングの負傷で青山と交代。これでゲームの潮目が変わった。
青山が入ったことでバランスを取り戻した広島が、猛攻を仕掛けるようになる。仙台も前へ出ていきたい気持ちを抑えながらなんとか守る。セットプレーで決定的なシーンもあったが、そこは残念ヤクブ・スウォビィク。なんとか瀬戸際で守った。
仙台もアディショナルタイムに浜崎のチャンスがあったものの決めきれず。タイムアップ。1-1のドローで終わった。
最後に・・・
前節のセレッソ大阪に比べれば、属人的な守り方をする広島だったので、どこを狙いとして攻撃するかがハッキリしていたように思える。
早い時間帯に先制点を奪われてなければ、勝ち目があったゲーム内容だったと思う。しかし、しっかり追いつけたことはポジティブだったのではないだろうか。
同点ゴールを決めた兵藤はさすがにプレーだった。投入して自分のタスクは何かをすぐに把握し、それを表現できるのはサッカーIQが高い証拠だ。木山ベガルタには必要な存在であることを自ら証明した。ケガ人が多い中で必ずや貴重な戦力になるはずだ。
次節はホームでガンバ大阪を迎え撃つ。今節はFC東京に敗れたものの宇佐美らの攻撃陣は好調のようだ。そんな攻撃陣を抑えて、勝機を見出せることができるか。次節こそホームで勝つ姿を期待したい！！
