ヒグのサッカー分析ブログ

ベガルタ仙台の試合分析が中心です。

腹を括れるかどうか~明治安田生命J1第7節 ベガルタ仙台vsヴィッセル神戸~

 さて、今回はヴィッセル神戸戦を振り返ります。

↓前節のレビューはこちら

khigu-soccer.hatenablog.com

 

スタメン

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 ベガルタ仙台は、前節・FC東京戦に敗れ4連敗中。先週末のルヴァンカップでも清水エスパルスに負け、公式戦は5連敗となっている。清水戦では4-4-2へシステムを戻し、いくらかの手応えを得ている中での今節・ヴィッセル神戸となった。

 スタメンは、そんな清水戦で手応えを得たセンターラインのメンバーに加えて真瀬とマルティノスの右サイドコンビという布陣で挑むこととなった。

 一方のヴィッセル神戸は、前節・北海道コンサドーレ札幌戦では3点差をひっくり返しての勝利。多くの若手メンバーを起用し、一気にフレッシュさが増した印象だ。今シーズン初の連勝を目指す一戦となった。

 神戸は代表帰りの前川と古橋がスタメン。またセンターバックに山川、右サイドバックに櫻内。前線では中坂や郷家が前節と代わってスタメンとなった。

 

前半

(1)逡巡する仙台のボール保持

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 試合開始から神戸が激しいプレッシングで仙台に時間を与えない戦い方を取る。

 神戸は試合を通じて、プレスの強度が落ちず、フィンケ体制ではトランジションのスピードに問題があったが、今はむしろ若手の起用によりトランジションのスピードが武器のチームとなっている。

 そんな神戸のプレッシングに対して、仙台のボール保持は、逡巡するような流れとなった。

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 仙台は、激しいプレッシングを掛ける神戸に対して富田が列を降りる動きをし、アピアタウィアとシマオ・マテを助けようとする。

 これでアピアタウィアとシマオ・マテは、確かにボールを持てるようになったのだが、中間ポジションでボールを受けようとする氣田とマルティノスまでボールが届かない。

 これは神戸がしっかりプレスを掛けていたこともあるが、根本的に前にボールを運べないため、両サイドハーフまで距離があり、そこへパスすることができないのだ。

 特にシマオ・マテはボールを運べる選手ではないので、受けてもパスコースがなく、その間に神戸のプレッシングを受け、結果クバへボールを下げてロングキックで逃げるみたいなシーンが多かった。

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 なので、飲水タイムを挟むと両サイドハーフボランチエリアまで降りてボールを受けるように修正された。

 確かにボール保持はこれで安定したし、前へ進めるシーンも増えたのだが、これだとビルドアップのスタート位置が低く、また氣田とマルティノスに本来求めている「仕掛ける」というタスクができなくなる。

 なので、どうボールを前進させて、どうやって前線へ届けて仕掛けさせていくかというところは再度考え直していく必要があるだろう。ここは仙台が4バックで戦ったときの大きな課題の1つだ。

 

(2)マルティノスを狙い撃ちする神戸・前から掛けられない仙台

 一方で神戸のボール保持、仙台のボール非保持を見ていく。

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 神戸のボール保持は基本的にはオリジナルポジションを維持する形。ただ、この試合では、左サイドから前進させていく狙いがあったように思える。

 開始から山口が左斜めに落ちて、酒井を高い位置へ上げる。左サイドで数的優位を形成することで突破を図った。 

 恐らくだが、仙台の守備の弱点であるマルティノスを狙った形を取ったのではと考えている。守備意識の低いマルティノスのところに数的優位を作って突破していく。

 なので、前半の神戸は左サイドを中心に攻めて、詰まったら右サイドへ展開。そこから佐々木と櫻内で突破を図るような展開になっていた。

 

 一方の仙台は4-4-2のブロックを維持しながら神戸の攻撃を待ち受ける形。この試合ではサンペールのところに2トップを置き、サンペールを経由させない狙いがあった。

 またプレスに行けるときは西村がスイッチを入れて、プレッシングを開始する。

 しかし、ほとんどの時間帯は構えて守る時間が長かった。2トップを赤﨑と西村にしてから、かなり2トップの守備が整理されたが、前から制限を掛けて奪いに行く回数が少ない状況だ。

 今はまだ構えて守備をすることが精いっぱい。そこからラインを高く設定して、どうやって意図的にボールを奪いに行くかは、これからの課題だろう。

 

(3)与えたくなかった局面とコーナーキックからの失点

 試合はというと、神戸が16分と21分に立て続けにゴールを決める。

 1失点目は、仙台がカウンターへで出て行こうというシーンで、西村がプレスバックした櫻内に潰され、サンペールのフィードに古橋が抜け出して決めた。

 仙台としては、ああいうオープンな局面にしたくなかった。このシーンではカウンターをひっくり返されたシーン。カウンターへの出て行き方、そして後方でのリスクマネジメントなど、あらゆる課題を露呈したシーンだった。

 

 2失点目はコーナーキックから。このシーンでは一番やってはいけない中央のエリアをがら空きにしている。

 今年はマンツーマンで守る仙台だが、マンツーマンゆえに人に引っ張られて、あのスペースを与えてしまう(神戸もそこをスカウティングしたのだと思う)。

 せめて中央にはストーンを置いて、ゾーン+マンツーマンにするとか、方法はいくらでもあるだろう。セットプレーの守備も修正が急務だ。

 

 ということで、前半は0-2で折り返す。

 

後半

(1)手数を掛けない攻撃とプレスの強度が落ちない神戸

 後半の神戸は、2点リードということもあり、手数を掛けずに攻撃することと、前半同様にプレスの強度を落とさないことをテーマとして取り組んでいた。

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 攻撃ではサイドバックからサイドハーフにシンプルにボールを渡して、仙台のサイドバックの裏を突くシーンが目立った。下手にサイドバックが上がったり、ボランチが可変せずに、中坂や途中投入された井上のドリブルと技術を生かすやり方へと変化していった。

 

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 プレッシングは、前半同様に仙台のボール保持に対して襲い掛かっていく。特に目立ったのは古橋のプレッシングだった。古橋は、ボールホルダーに対して、必ず逆サイドへ展開させないようにコースを限定させ、味方が次に奪えるようなプレッシングを行っていた。

 前半でもあったが、後半になると一段ギアを上げていたと思う。後半に仙台は蜂須賀が右サイドバックになるが、そこから上手くボールを運べなかったのは神戸の前線のプレッシングが機能していた証拠だろう。

 ということで、後半も仙台にペースを明け渡さずに神戸がしっかりと主導権を握る展開が続いていった。

 

(2)西村拓真の奮闘 

  後半になって巻き返しを図りたかった仙台だったが、神戸のプレッシングの前になかなか自分たちのターンへと持ち込むことができなかった。

 そんな中でも、奮闘したのが西村拓真だった。

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 後半から左フォワードへ変わった西村だが、前半は足元でボールを受ける回数が多かったが、後半になると背後へのランニングを増やすことで、奥行きを作る動きをするようになる。そこへ氣田や崇兆がスルーパスを狙っていくシーンが増えていった。

 前半には決定機を迎えるも決めきれなかった西村。しかし、後半も果敢にゴールへ向かっていく。菊池という大きい壁が立ちはだかるが、それでもチャレンジし食らい付いていく姿勢は西村らしかった。

 80分には、そんな西村の抜け出しからチャンスが生まれる。西村のマイナスのクロスを途中投入の加藤がゴール左隅に決めて1点を返したかに思えたが、西村の抜け出しがオフサイドだった。しかし、1つ狙いのなかで作れた形だった。

 

 その後は、平岡をパワープレーで投入して、ゴールを目指すものの、最後まで菊池の壁が分厚く。仙台はゴールどころかチャンスを作り出すこともできなかった。

 試合は0-2で終了。これでリーグ戦5連敗を喫した。

 

最後に・・・

 ルヴァンカップ・清水戦を経てのこの試合。4バックだとまだまだ解決すべき課題が山積みだということを改めて思い知らされた一戦だった。

 守備では、どうやって意図的にボールを奪っていくのか(プレッシングの設計図)。攻撃では、どうやってボール保持を安定させ、前線へと届けていくか(ビルドアップの安定化)。セットプレーでの守り方。攻撃時のリスクマネジメント。などなど。

 これをすぐに直すことはまずできない。トレーニングのなかで、試合のなかで課題を解決していき、強くなっていくしかできない。今年も時間との戦いとなりそうだ。

 残りリーグ戦は30試合ある中で、間に合うかどうか。腹を括ってやっていくしかないと思う。

 そして、ここから連戦が続いていく。次節は昇格組の徳島ヴォルティス。ボール保持をメインとするチームとの対戦だ。アウェイでまずは粘り強い守備から勝ち筋を見出していきたい。慌てず焦れずに戦うのが手倉森監督の真骨頂だと思っている。次節はそんなところを期待したい!