ヒグのサッカー分析ブログ

ベガルタ仙台の試合分析が中心です。

昔の自分たちとの対峙~J1第14節 ベガルタ仙台vsサンフレッチェ広島~

 さて、今回はサンフレッチェ広島戦を取り上げます。

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 ベガルタ仙台は、前節・湘南戦で6試合ぶりの勝利。中断期間までこの勢いを持続させたいところだ。今節は野津田が契約上の関係で出場できない。ということで晋伍がスタメンに帰ってきた。それ以外は変更なし。

 サンフレッチェ広島は前節、神戸に2-0で勝利した。下馬評を覆す以上の成績を残している広島は、このままリーグを独走してしまうのだろうか。この試合も前節同様のメンバーで挑む。

 

■前半

(1)どこに前進できるスペースがあるのか

 まず広島の守備の特徴から見ていくと、前からの激しいプレスと4-4-2のコンパクトな守備ブロック形成を特徴としている。ざっくり言えば手倉森仙台2012ver.と似ている部分が多い。そんな昔の自分たちとの対戦となった仙台である。

 

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 広島の守備と自分たちの立ち位置を考えたときに、まずどこのスペースが空くかを考える。そうすると4-4-2の横スライドのときに逆サイドが空くよねということに気付く。

 開始から20分過ぎまでの仙台はそんなサイドのスペースを利用して攻撃を仕掛けていった。特に広島は右サイドでの守備のときに柏が絞ってくる。状況に応じて晋伍のところまでプレスを行うので、そこを掻い潜れば蜂須賀のスペースには広大なエリアがある。

 仙台はボールを奪った後に素早く右サイドへと展開することが多かった。そしてその流れから奥埜の得点を生むことができた。まさに狙い通りの得点だった。

 

 その後、柏は蜂須賀のケアをするために必要以上に中に絞らなくなる。ただ、次に問題が生じるのが中盤の3センター。単純に仙台が3枚、広島がダブルボランチの2枚なので、数的優位を活かし、今度は真ん中からゲームを作り出していく。

 そんなこんなで20分過ぎまで仙台がボールもゲームも握る展開となった。

 

(2)前線と最終ラインを同機させる

 失点後もなかなか広島は仙台のボール保持に対応できない。ということで、この試合に次なるテーマは広島がどういう選択をするのかである。改めて前からプレスを掛けに行くのか、それとも一旦引いて仙台の攻撃を受け止めるのか。

 広島が決断したのは前者だった。城福監督の言葉を借りれば「前線と最終ラインを同機させる」。ここまでの広島のプレスは前と後ろとでズレが生じてしまい、仙台にそれを利用された展開となった。

 よって前と後ろのズレをなくし、仙台のボールホルダーに対してしっかりプレスを掛けることを徹底していく。

 具体的にいえば、晋伍のところでダブルボランチのどちらかが素早く寄せていく。前節の湘南であれば石川の役割をどちらかがこなす形を取る。それまではどうしても3人全員に意識が向いていたが、それを「ボールホルダー」にポイントを絞ることで守備をハッキリさせた。

 そして全体のプレスの強度を上げ、仙台にロングボールを蹴らせることを選択させる。そのセカンドボールを回収することで次第に広島はペースを取り戻すことに成功していった。

 そして困ったときのセットプレー。41分に中央からのフリーキックをパトリックが合わせて同点にする。

 

 仙台としては、広島のダブルボランチが前に出た背後を上手く取りたかった。これは渡邉監督も試合後のコメントで話している。現象としては湘南戦の後半と同じだった。あのプレスを剥がすことで、攻撃へと転じたいのが渡邉監督の理想なのだろう。

 それには各選手が頭も体も素早く切り替えることが必要。この辺は中断期間で取り組んでいくことになりそうな部分である。

 

 前半は序盤から中盤にかけて試合を支配できていた仙台だが、徐々に広島が盛り返してきたところで失点を喫してしまった。1-1で折り返す。

 

■後半

(1)前への意識

 後半、お互いにどこを修正してくるのかを注目したが、両者ともに大きな修正点はなかった。

 仙台としては前半途中から広島にペースを握られてしまう形となった。よって後半は前半良かった時間帯を思い出し、積極的に前へ仕掛けていく意識は持っていたと思う。

 前半よりもサイドを早めに使っての攻撃が多かった。蜂須賀が佐々木を破ってのクロスから奥埜のシーンが決まっていれば、流れは変わっていたはずだ。

 広島も前から仕掛けることには変わらない。2トップがキーパーまで追うことで、仙台に対して自由にボール保持をさせない狙いを持っていた。

 

(2)ティーラシンの投入

 広島は62分に渡に代わってティーラシンを投入する。ティーラシンのタスクは渡同様に前からのプレスをして、仙台のボール保持を制限させることだった。要は強度を落とさないための交代。

 タスクは変わらずとも、この交代は地味に効いて、強度が落ちない広島のプレッシングに対し、仙台は剥がすことができなくなり、次第に仙台陣内でのプレーが長くなった。

 そして広島が逆転する。71分。右サイドでの攻防から広島にボールが渡ると青山がダイレクトで柏へ。柏はそのままカットインし逆サイドのネットへ突き刺し、逆転に成功する。この得点は関のロングキックから始まっているが、これにプレスを掛けたのがティーラシンだった。

 

(3)6バックも辞さない広島の守備

 逆転に成功した広島は、前からプレスに行くのではなく、ラインを下げてブロックを構える形へと変化していく。攻撃でパトリック大作戦があるからこそ、なせる業だろう。

 吉野や川辺を投入し、守備の強度を保ちながらゲームをコントロールしていった。

 広島は仙台の攻撃に対して6バックも辞さない構えになる。ペナルティエリアの幅を4バックで守り、ウイングバックに対してサイドハーフがケアする形。これはガンバもやっていた形だが、あれは狙ってやっていたものではないだろう。

 

 仙台としては6バックになった相手に対して、スペースが生まれるバイタルエリアで仕掛けたかった。しかしいつもの悪い癖でサイドからのクロスに終始してしまう。ここは本当に課題。

 サイドへ展開すること自体は悪くないが、やはりそこからバリエーションを持って攻撃したい。サイドからハーフスペースとか、バイタルエリアにボールを入れるとかは何かしらの工夫がないと崩しきれないだろう。

 この試合ではロビングパスで、ハーフスペースにボールを届ける場面がいくつかあったが、ああいうことをもっと増やしていきたいところだ。

 

 試合は攻めあぐねる仙台をよそに、高い位置で奪った広島がショートカウンターからのパトリックで3点目を決める。人間ブルドーザーとはまさにこのこと。

 試合は1-3で広島の勝利。まさに力負けだった。

 

■最後に・・・

 昔の自分たちと対峙しているような試合だった。広島は本当に細かいところにこだわっている。寄せの早さとか距離とか、シュートに対してブロックしに行くとか、プレスの強度を落とさないとか、そういう勝負所を極めているチームなのだろうなと。だからこその首位なのではと感じた試合だった。

 

 仙台は、試合開始からはおおむね自分たちのやりたいことを表現できた試合だったと思う。しかし相手が修正してきたところ、相手の土俵になったときにどれだけ対応できるのか、その土俵で我慢強く戦えるかは、まだまだ足りない部分である。昨年よりはできているがそれでも足りないことを痛感した。非常に多くのことを感じることができた試合だろう。

 

 さて、15連戦も残すは2試合となった。次節は鹿島アントラーズ戦。連戦最後の試合に勝利し、気分よく中断期間を迎えたい!