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【ベストを更新し続ける森山ベガルタ】J1昇格プレーオフ準決勝 V・ファーレン長崎vsベガルタ仙台

 さて、今回はJ1昇格プレーオフ準決勝、V・ファーレン長崎戦を振り返ります。

↓リーグ最終節のレビューはこちら

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スタメン

 ベガルタ仙台は、リーグ最終節で勝利すれば自力でのプレーオフ出場が決まる状況で、大分トリニータを2-1で下し、6位でプレーオフ出場権を獲得した。

 約3週間の中断期間を経て、3位でフィニッシュしたV・ファーレン長崎と対戦する。この中断期間では主に対長崎戦の対策を仕込みながら、この試合に向けて最大出力で戦える準備をしてきた。

 リーグ戦6位のため、仙台はアウェイで2つ勝たなければJ1に昇格することはできない。しかし、長崎とはリーグ戦で1勝1分と負けておらず、そこまで苦手意識はない。

 仙台としては強力な長崎の攻撃陣を組織で抑え込みながら、いかに長崎の隙を狙って攻撃へ出て行けるかがポイントとなる。

 約2,000人のベガルタサポーターとともに新スタジアムに乗り込み、宮城・仙台で応援する仲間たちとともに勝利を目指す一戦だ。

 仙台は、最終節・大分戦と同じ11人をスタメンに起用。ベンチには松下がメンバー入りとなった。

 

 一方のV・ファーレン長崎は、リーグ戦最終節で愛媛FCに5-2で勝利し、リーグ戦5連勝でフィニッシュ。横浜FCの結果いかんでは自動昇格の可能性もあったが、少し及ばずにプレーオフへ回る格好となった。

 長崎の特徴はなんといっても強力な外国籍選手の攻撃力だ。マテウス・ジェズスを筆頭にマルコス・ギリェルメ、エジガル・ジュニオ、フアンマ・デルガドの4人で総得点75点のうち55点を決めている。

 さらに新スタジアムになってからは目下3連勝中。まさに昇格に向けて機運が高まっている状態だ。

 中断期間はあったものの、この勢いを持って仙台を飲み込み、悲願の昇格を成し遂げたいところ。

 長崎は、前線にエジガル・ジュニオを起用し、マテウス・ジェズスが左インサイドハーフに配置された。それ以外は最終節と同じメンバー。ベンチにはフアンマが外国籍選手の枠の問題でいないものの、名倉や中村、松澤など攻撃のギアを入れられる選手が揃っている。

 

前半

(1)ボールを持たせることに成功した仙台

 序盤のせわしない時間帯が過ぎていくと、戦前の予想通りに長崎がボールを保持する時間帯が多くなっていった。

 長崎のボール保持から整理していくと、まずアンカーの秋野がセンターバック間に降りて3バックを形成。アンカーの位置には安部が移動し、増山が右サイドバックの位置から内側へ入っていき、ビルドアップの出口を作るとともに、ギリェルメへのパスコースを解放する。

 このようなビルドアップから長崎は、地上戦でボールを前進させていくことをメインに、前線のエジガル・ジュニオを目掛けてのロングフィードを織り交ぜながら仙台陣内への侵入を試みていた。

 

 対する仙台は、前線からプレッシングを行うよりも、2トップがアンカーをケアしながら、センターバックと秋野にボールを持たせる展開へと持ち込んだ。

 仙台の両サイドハーフは、センターバックへ睨みを利かせながらも、サイドバックへボールが渡ったらプレスバックして戻ることを徹底する。

 仙台が一番やられたくなかったのは、ビルドアップ隊から楔を差し込まれての中央突破だっただろう。仙台はまず中央のパスコースを制限することを優先させながら、長崎のパスルートをサイドへ誘導させる。

 サイドへ誘導したらサイドバックボランチサイドハーフが挟み込んでボールを奪うことを徹底していた。

 この守備において生命線となるのは、強力な長崎のウイングへの対応で、真瀬と奥山が対人守備でどれだけやれるかがカギとなった。そんな彼らはしっかり笠柳、ギリェルメを対人守備で抑え込むことで、長崎に攻撃のリズムを作らせなかった。

 それでも長崎の左サイドでは、笠柳が真瀬と小出の間から背後へ抜け出す動きでボールを引き出し、チャンスを作っていくが小出のカバーリングでシュートまで持ち込ませない。

 

 その後の長崎は時間の経過とともに、若原がセンターバック間に入り、秋野がアンカーになったのだが、仙台としてはおおむねやることが変わらずに、長崎にとっては根本的な解決とはならなかった。

 

 仙台は長崎にボールを持たせることに成功し、しっかりサイドへ誘導させることで自分たちが狙っていた形でボールを奪い取ることが出来ていた。

 

(2)出口となる中島元彦

 いい守備ができていたことで、ボールを奪ってからのカウンターも繰り出せていた仙台。それだけではなく、ボール保持の局面でも狙い通りのプレーが出来ていた。

 長崎は守備になると、マテウス・ジェズスとエジガル・ジュニオが2トップとなる4-4-2の陣形になる。

 2トップがプレスを開始すると、ダブルボランチも仙台のダブルボランチを掴まえに行く約束となっていた。

 しかし長崎の場合、仙台と違って2トップがパスコースを制限しきれていないために、仙台はセンターバックからボランチにボールを付けて、長崎のダブルボランチを引き出した背後で待つ中島にボールを届けるシーンを数多く作ることができた。

 この辺りは守備同様にしっかり準備してきた部分だろう。よって、仙台は守備一辺倒になることなく攻撃にも出て行くことが出来た。

 

 そして、試合を動かしたのはリズムを掴めていた仙台だった。

 ロングスローの二次攻撃から中島がペナルティエリア手前で競り合いに勝つと、パスを受けた相良のシュートがヴァウドのハンドを誘ってPKを獲得する。

 このPKを中島が真ん中に突き刺して、仙台が先制点を奪った。

 

 その後の長崎は、なかなかボール保持からリズムが掴めないためにマテウス・ジェズスが降りてボールを受けるようになる。おかげでマテウス・ジェズスがゴールから遠ざかり、仙台としては守備ブロックを組んだ副産物が生まれた。

 

 しかし、それでも一発のある長崎はアディショナルタイムに入ってから秋野の楔パスをきっかけに笠柳、マテウス・ジェズスと繋がって最後はエジガル・ジュニオがシュートを放つがゴール右へと逸れて、仙台としては難を逃れる格好となった。

 

 前半はオーガナイズされた守備と狙いを持ったボール保持からリズムを掴んだ仙台が、PKで先制に成功して後半へと折り返す。

 

後半

(1)長崎の変化と突き放した仙台

 長崎は後半から安部と笠柳に代わって山田と松澤を投入する。

 山田が投入されたことで4-2-3-1となった長崎は、今度は山田がセンターバック間に入ってセンターバックとダブルボランチの4人でビルドアップ隊を形成し、両サイドバックは内側の高い位置へ押し上げた。

 長崎の狙いとしては、前線へ掛ける人数を増やすことで仙台の守備ブロックを押し下げて、敵陣で押し込む時間を増やしていく算段だったのだと思われる。

 

 一方の仙台は、そんな長崎の配置変化はありながらも、後半スタートからよりボールホルダーへプレッシングを仕掛けることで時間とスペースを奪い、長崎にペースを持っていかれないように対抗していった。

 そんな展開のなかで、長崎が前に人を掛けたことで、仙台はボールを引っ掛ければカウンターへと持ち込みやすい状況が生まれていた。

 そして次にスコアを動かしたのも仙台だった。

 きっかけは長崎のビルドアップを引っ掛けたところから。

 左サイドで中島がキープし、鎌田を経由して右サイドへ展開。工藤のパスから郷家が右サイドを抜け出してラインギリギリで粘ったボールが真瀬に繋がり、最後はエロンがニアサイドを突きさして追加点を奪う。

 仙台としては、長崎が押し込もうとしたところの出鼻を挫く貴重な追加点となった。

 

(2)引き込んでからのカウンターへシフトする仙台

 2点のリードを奪えたことで、よりゲームコントロールをしやすくなった仙台は、守備に相手を引き込んでからのカウンターへと戦い方をシフトしていく。

 62分には鎌田を起点とするカウンターから中島のパスを受けたエロンがシュートを放つが枠の上を越えていった。

 このシュートで足を攣ってしまったエロンはここでお役御免。鎌田とエロンに代えて松井とオナイウを投入する。

 

 オナイウが投入されたことで、よりロングカウンターを狙えるようになった仙台は右サイドを起点に攻撃していくと、さらに長崎を突き放す。

 高い位置からのプレッシングからセカンドボールを回収すると、右サイドから押し込み真瀬がボックス内でボールを受ける。そこからポケットに侵入したオナイウへ送ると、オナイウのシュートは若原に阻まれるもののこぼれを郷家が押し込んで3点目を決める。このゴールによってグッと勝利に近づくことができた。

 

(3)追撃の1点とさらにダメ押しした仙台

 長崎は3失点後にギリェルメとエジガル・ジュニオを代えて名倉と中村を投入する。この交代でより狭いエリアでボールを受けられる名倉やキック精度の高い中村が打開を図ることが狙いだった。

 仙台も相良や中島に疲れが見え始めると76分に長崎が追撃の1点を決める。

 松澤の仕掛けから山田を経由して、最後はマテウス・ジェズスが左隅に決めて1点を返す。

 仙台としては、松澤に対して真瀬とオナイウの2人で対応していただけに、中央へのパスコースは遮断させたかったところ。ここはオナイウの守備が反省点だっただろう。

 

 それでも2点のリードがある仙台は、慌てずに長崎の攻撃に対応していく。長崎も最低2点を決めなければならない状況下でどうしても焦りが見え始め、ミスも出始めた。

 

 仙台は84分に足を攣った真瀬に代えて石尾を投入。石尾が右サイドバックに入ったことで松澤を封じることに成功し、長崎の脅威となっていた左サイドを蓋することができた。

 アディショナルタイムは8分と非常に長かったが、そんななかでさらに追加点を奪えたのは仙台だった。

 石尾が右サイドで相手を交わすとそのままドリブルでカウンターへ持ち込む。ファーサイドで待ち構えていた中島がボールを受けると最後は冷静にネットを揺らしてダメ押しの4点目を決めた。

 

 その後はパワープレーに出た長崎に対して、仙台は松下と中山を投入し、前線の守備強度を保ちながらディフェンスラインがしっかりと跳ね返してゲームをクローズさせた。

 試合は4-1で仙台が勝利し、プレーオフ決勝に進出。いよいよ残り1勝まで登り詰めた。

 

最後に・・・

 まさに完勝だった。守備でも攻撃でもほぼ狙い通りの戦いが出来たのではないかと思う。シーズン中同様に中断期間を挟むと強いことをこの試合でも証明した。

 おそらく長崎は前半から仙台を押し込み、敵陣でプレーしくことが狙いだったのだろうが、仙台はそんな長崎に対してミドルブロックで中央を封鎖し、後半は前半以上に圧力を掛けることで時間とスペースを奪っていった。

 そしてなによりこの試合の先制点は大きかった。先手を取れたことで、後半の長崎はより前掛かりになり、手薄になったディフェンスラインにカウンターを仕掛けたり、押し込むことが出来た。

 この時期になってもベストを更新し続けるチームである。特にミドルブロックに関しては、シーズン中よりもグレードアップしているし、そこに選手たちのハードワークと集中力も加わってより強固なものになった。

 

 長崎を撃破して、いよいよ決勝の舞台へと上がる。決勝の相手はファジアーノ岡山。今シーズンはシーズンダブルを食らっており、木山体制になってからの岡山には勝てていない。

 正直に言えば、非常に難易度の高い試合になると思う。長崎とは打って変わって守備が堅く、仙台同様にハードワークするチームなだけに先制されてしまうと非常に厄介だ。

 前線には一美や岩渕、木村など機動力に優れた選手が揃っており、ベンチにはルカオも控える。ボランチの竹内や藤田は経験値も高く、ディフェンスラインも田上やブローダーセンといった面々も手強い。

 勝たなければいけない仙台としては、失点を避けながらもいかに得点を奪うかという試合になる。

 ただ、今シーズンの仙台は攻守のバランスを考えて賢く戦うチームではない。やはり、全員で1つの塊になってチャレンジしていくことが勝利への突破口になるのではないかと考えている。

 そういう意味では攻撃のときは大胆に出て行き、守備では全員がサボらずに体を張っていくことを継続していけば、自ずとチャンスは巡ってくるはずだ。

 

 ここで勝てばJ1昇格と考えるよりも、まずは1つ1つのプレーに全身全霊を掛け、そして岡山を倒すことに集中したい。その結果がJ1昇格に繋がることを忘れてはいけない。

 

 泣いても笑っても残り1試合。まずは悔いなく90分を戦いたい。最後の最後まで仙台らしく高い強度と出力、そしてハードワークで岡山に襲い掛かりましょう!!

 

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