ヒグのサッカー分析ブログ

ベガルタ仙台の試合分析が中心です。

押し込めたという事実と勝てなかったという事実と~J1 2ndステージ第2節 ガンバ大阪vsベガルタ仙台~

 前節の2ndステージ開幕戦、川崎相手に0-3と完敗した仙台。仕切り直しの今節、相手はガンバ大阪。初めての吹田スタジアムf:id:khigu:20191230145024p:plain

 ガンバのスタメンは、前節勝利した鹿島戦と同じスタメン。宇佐美がドイツに旅立ったガンバ。宇佐美がいなくても自分たちは勝てるということを証明した前節であった。1stステージの成績を挽回するためにも負けられない2ndステージである。

 川崎に内容も結果も完敗した仙台。あまりにも腰が引けていたという内容だった。自分たちの姿を取り戻したい今節、野沢がケガで4週間の離脱。代わりに抜擢されたのは藤村。キーパーには関を起用した。サブにはウイルソンが帰ってきた。

 

■前半~トップ下・遠藤保仁

 前節、腰が引けていた状態で試合に入ってしまった仙台。よってボールを持つことはおろか、相手の3列目(DF)になかなかプレスが掛けられていない展開を作ってしまった。

 その反省もあり、仙台のスタート10分の姿は勇気を持ってボールを保持していこうという姿勢を見せた。開始10分はサイドにボールを散らしながら、ピッチを広く使うことで全体を押し上げることに成功する。

 開始10分の特徴として、前半いつもであれば右サイドにいるハモンが左サイドからスタートしたこと。左に流れてプレーすることでそこを起点にガンバ陣内へと攻め込むシーンを増やしていった。

 

 しかし先制はガンバ。14分。博文がアデミウソンへのファウルを取られフリーキックを与えてしまう。遠藤が蹴ったボールは仙台のキーパーとDFラインの間に落ちていき、そこに米倉が合わせて先制。流れなんて関係ないのがセットプレー。遠藤のボールは完ぺきだった。石川直樹の対応が遅れたのが気になった失点だった。

 その後はガンバが先制した流れからボールを保持し始める。ガンバの攻めのポイントは2つ。

 1つはサイドからの崩し。ガンバは数的優位をうまく形成してサイドを崩していく。特に左サイドの崩しが多かった。大森と藤春に加えて倉田、遠藤がうまく絡むことによって仙台の右サイドを幾度となく突破することに成功する。藤春に付いていけてない奥埜がとても辛かった。

 そしてもう1つがトップ下遠藤が、列を下りる(移動する)ことによって生まれるスペースを両サイドハーフアデミウソンがうまく利用する崩し方。f:id:khigu:20191230145102p:plain

 遠藤は状況に応じて、ボランチの位置まで下がってプレーすることもしばしば見受けられた。遠藤が列を下りることで、仙台のボランチはそこに食い付くことになる。そうなると空いてくるのが、ボランチセンターバックの間のスペース。そこをうまく両サイドハーフアデミウソンは利用していた。そこにアデミウソンが下りてきて、両サイドハーフアイソレーションで裏へ抜けたり、または反対にアデミウソンが裏に抜ける動きをすることでセンターバックを引っ張り出し、出来たスペースで両サイドハーフもしくは倉田がボールを受けるようなシーンを作っていった。遠藤はこうやってトップ下にいることで自分が自由に動くことにより、味方の走るスペースを作ったり、時には自分が飛び出したりと様々な形で攻撃をけん引していった。

 

 仙台も黙ってはいない。次第にボールを保持できるようになる。というか無理でもボールを保持するようになった。ガンバの守備は1列目が仙台のDFラインへ対してしっかりプレスを掛けることを約束事としていた。それは前節の川崎が行ってきたのと同じ。前節であればつまったところでロングボールを蹴ったり、ボランチのところに入れて引っかかるなどビルドアップの時点でミスが多かったが、今節はガンバが1列目からプレスに来ても、キーパーも使いながらうまくプレスを回避できていた。おそらく前節よりも人の距離感が改善されたのだと思う。特にセンターバックが持った時のボランチサイドバックのフォローは少し下がり目だった。ボランチが列を下りてあげたり、サイドバックが低い位置に下がって出口を作ってあげたりと少しずつ改善も見られた。

 また、ガンバの守備は1列目と2列目が連動していないこともあって、1列目を突破するとボランチが前を向いて自由になれるシーンがいくつもあった。だから仙台はリードされながらもそのスペースで時間を作ることに成功し、ペースも徐々に取り戻せたのだと思う。

 結果的に前半に追いつくことは出来なかったが、終了間際にはハモンのポスト直撃シーンを作るなど次第にチャンスを作りだして前半を終えた。

 0‐1、ガンバリードで折り返す。

 

■後半~押し込めた仙台とパトリック、井手口の登場~

 後半、仙台が押し込み始める。前半の30分過ぎからあったようにガンバは1,2列目の間が空くことが多い。よって晋伍と三田はスペースと時間を得られることができていた。

 後半に入るとガンバは遠藤がそのスペースを埋め始めることが増えていった。だから4-4-1-1みたいな守備ブロックが見られるようになった。

 それに対して仙台は前半よりもサイドから経由しての展開を増やしていく。サイドバックに当ててボランチ、もしくはサイドに流れたハモンへというボールに展開を見せるようになった。

 仙台のサイドハーフと藤村の役割は主にライン間でのボールを受ける動きだった。特に藤村と奥埜は繰り返しライン間でボールを受ける動きを行っていた。それは前半にも繰り返された動きであったが、仙台が押し込めるようになったことでライン間にボールが入る回数も増えていった。

 そして同点ゴールが入る。54分。きっかけは三田からライン間でボールを受けた奥埜がターンしてシュートを打ったのがディフェンスの当たりコーナーを得たところから。

 左からのコーナーをハモンが合わせる。シュート自体はキーパーの正面だったか、東口がボールを弾いてしまいゴールの中に吸い込まれる形となった。仙台はコーナーを得た形が狙いとしてやってきた形だった。押しこんだ時間帯に同点に出来たことは大きいかった。

 

 その後も仙台はサイドにボールを付けながらボールを前進させる作業を続けていく。ガンバはどうしても中盤のプレスが弱いのでラインも自然と下がってしまうシーンが前半から繰り返されていた。

 その状況を打破するために長谷川監督は動く。守備で貢献できず、後半は博文に抑えられていたアデミウソン→パトリック。そして大森→井手口。この交代が流れを変えることとなる。フィジカルモンスターであるパトリックの投入で、個人での突破を図れるようになり、また守備も献身的に行うので仙台のDFラインに前半のようにプレスがかかるようになる。

 そして井手口の投入で、今野が中盤でバランスを取っていた今野が解放されるようになり、パトリック、遠藤とともに前線からのプレスに呼応。特に仙台のボランチのところを抑えるようになったことで仙台の前進を食い止める役割を担った。

 このことで次第に仙台を押し返し始めたガンバ。仙台は大岩→菅井でもう1回攻勢に出ようとする。

 しかし勝ち越しはガンバ。78分。ガンバは左サイドを突破しようとするがカバーに入った平岡がスローインに逃げる。この瞬間倉田はすかさず裏へランニングし、すぐにボールを受ける。そこへカバーに入った博文がゴールキックに逃げようとするが倉田がうまく残して、左サイドからクロス。真ん中で待っていたパトリックに合わせられ勝ち越し。大雑把に言えばスローインのところでトランジションが発生した形となった。よって最後は中の準備が整っていない状態でクロスを上げられてしまった。

 

 その後同点へと攻勢に出る仙台。ウイルソン、そして佐々木匠を投入して前線に人を掛ける。一方のガンバはオジェソクを入れて藤春を1列あげることで菅井にマークを付ける。

 89分には石川直樹のクロスに菅井が折り返してリャンがシュートを打つが東口の正面。

 その後90+2分にパトリックに決められてジ・エンド。

 ガンバを押し込んで一時は同点にできたが最後に力尽きてしまった。1-3で敗北。これで3連敗となってしまった。

 

■最後に・・・

 前節よりもサッカー自体は改善され、自信は取り戻したように思う。特に相手が前からプレスを掛けてもかいくぐれることが出来たことは収穫の1つではないだろうか。

 1stステージのときにも書いたが、今の仙台がやっていることは強かろうが弱かろうが基本的にサッカーを変えないので、今回みたいな力負けを喫してしまうことは多い。けど、やっていることが間違っていない限りこれを継続してやっていくべきだと思う。

 2ndステージ最初の3試合は強豪ゆえに、厳しいものがあるだろうがそれでも目指しているものを強豪相手に表現してほしいと思っているので、ガンバに何も出来なかった訳ではないので今のサッカーに自信を持つべきだと思う。

 

 それでも守備陣には疲労を隠せない選手がちらほら見えてきた。開幕当初から組んでいるメンバーゆえに少し疲れが見え始めているように思える。次節はミッドウィークなので少しフレッシュな選手を使うことも悪くないのではないか。

 ということで次は浦和。まずは恐れずに浦和相手に自分たちを表現してもらいたい!