ヒグのサッカー分析ブログ

ベガルタ仙台の試合分析が中心です。

あと一歩をどう埋めるか~J1 2ndステージ第3節 ベガルタ仙台vs浦和レッズ~

 前節、ガンバに敗れ3連敗を喫した仙台。ミッドウィーク開催で迎える今節の相手は浦和レッズ。ホームでは相性のいい浦和相手に、連敗を止めることが出来るかという一戦。f:id:khigu:20191230145250p:plain

 仙台のスタメンは前節と同じ。ガンバ戦の時に選手を入れ替えることも1つの手ではないかということを書いたが、今節も同じメンバーが名を連ねた。結果は出ていないけど、内容は悲観することはないよというメッセージなのかもしれない。

 浦和のスタメンは、槙野が出場停止明けから戻ってきたことでお馴染みのメンバーが名を連ねた。鬼門・ユアスタでの勝利、そしてミシャ体制初めての5連勝を目指しての一戦となる。

 

■前半~守備の修正を図った仙台~

 ここ3試合連続3失点で3連敗の仙台。守備の修正は急務であった。今週のトレーニングでも準備期間が少ない中で、守備のテコ入れを図ったらしい。

 仙台の守備は大まかに言えば、メリハリをつけてやりましょうというのがテーマだった。浦和が自陣、特に西川がボールを持った時はしっかり2トップがプレスを掛けて、後ろも連動すること。反対に、浦和が高い位置(基準はセンターライン)でボールを保持し始めたら、2トップも含めてしっかり自陣に下がるということはかなり徹底していた。

 特に2トップの守備の時のポジション、または役割はだいぶ修正されていたかなと。レスターやアトレチコ、最近ではユーロで見せたアイスランドが自陣に4-4-2のブロックを作って撤退守備を見せていたが、仙台もそのレベルではないが、全体(3ライン)がしっかりとした距離感で守備を行うことが出来ていた。

 また浦和の前線の5枚に対して、一番気をつけたいのは縦のポジションチェンジである。特に興梠と2シャドーの入れ替わり。そこは仙台も44のブロックの中でマークの受け渡しをしながらしっかり対応できていた印象だった。場合によっては裏を突かれたり、フリックによる変化で付いて行けてなかったりもあったが、最後のところは関がしっかりと抑えてくれた。今節の関のパフォーマンスは非常に良かった。セービングだけではなく、チームを鼓舞したり、落ち着かせたりとこの日は出色の出来だったのではないだろうか。

 

 しかし守備が良くなった一方で、前半は攻撃がイマイチだった。全体の選手の距離感が遠いことや、球離れが遅かったり、ピッチを広く使えてないことが原因でボールを保持することは出来ても相手のバイタルエリアまで侵入できた回数は非常に少なかった。シュートが1本だったことが攻撃がうまく機能していなかったことを表している。

 攻撃がうまく機能しなかったことを具体的に表すとするならば、相手の守備を揺さぶることが出来なかったことにあるだろう。仙台の攻撃が機能している、もしくは脅威になっているときはピッチを広く使い、またサイドから攻撃してダメでもサイドを変えて再び侵入できることにあると思う。浦和戦での仙台はそういう左右の揺さぶりがうまく出来ていなかった。唯一出来たのは、ハモンの左からクロスが右に流れてそこから厚みのある攻撃で最後はコーナーを得られたプレーだけであった。

 そんななかでもビルドアップは改善されているシーンが見られた。今節の浦和は仙台が後ろでボールを持っていた時は5-2-3、もしくは3-4-3のような形で仙台のビルドアップ隊に前からプレスを掛けていた。仙台は2ndステージ川崎戦にあったように3枚の前プレに対して対応できなかったシーンが見られたが、浦和戦では4バックが変化しないことで4vs3の状態を作り出し、中に絞ったサイドハーフがビルドアップの出口になったり、または平岡からサイドの裏へ蹴ってハモンを走らせたりと工夫が見られた。前半30分には三田が下りてきて大岩が上がる左右非対称のビルドアップの形も見られたが1回だけだったのでたまたまの可能性もあるが面白い形を見せていた。とにかく仙台はビルドアップ時に4枚がいることを常に意識して行っていた。

 

 前半は修正できた守備が機能して浦和を0に抑えることに成功した前半だった。0-0で折り返す。

 

■後半~攻撃へ出ることの代償~

 後半の仙台は攻撃の修正を行うことで自分たちのペースにしていこうという狙いがあった。

 前半は相手にボールを保持されることが多かったが、守備がしっかりと機能して0で抑えることが出来た。そこからもう1回攻撃に出ようというところで、まずは攻撃における人数の掛け方と選手の距離感を改めた。特に2トップの距離感であったり、2トップと中盤の距離感が良くなったことでボールが回るようになっていった。またボールが回ることで前半にはなかったピッチを広く使った攻撃、特に左右へ揺さぶっての攻撃が出来るようになってくる。68分のシーンでは右で作って左に揺さぶってからのクロスであった。最後のクロスは合わなかったものの攻撃にリズムが出てくるようになる。

 

 しかし、攻撃が機能する一方で、攻撃に人数を割いたときに、やり切れずに中盤でボールを奪われ、一気にカウンターを仕掛けられる状況が多々あった。浦和は仙台がボールを保持したことで前半のように高い位置に相手を押し込むシーンは減っていった。その代わり、浦和は仙台のボールを奪うと素早くカウンターを仕掛けるシーンを増やしていく。

 そこで浦和は関根→駒井、武藤→青木を立て続けに投入する。駒井の投入はサイドの仕掛けを増やしてほしい&仙台の左からの攻撃を駒井が引っ張ることでけん制してほしいという狙いがあったのだと思う。しかし試合に影響を与えるプレーは出来なかった。

 青木を投入したことで、柏木を1列上げている。青木の投入あたりから全体が間延びしていたので青木を入れることで中盤のバランスを取って欲しかったのだろう。それに加えて柏木を1列上げることで広くなったスペースの中で高い位置で攻撃のアイデアを出してほしいという狙いがあったのだと思う。結果的にこの交代が得点を生むのである。

 

 仙台は藤村→菅井で奥埜をフォワードへ。またリャン→ウイルソンで、今度は奥埜を左サイドハーフに置いて一気に攻勢をかける仙台。ウイルソンが投入されたことでサイドに起点ができ、そこからハモンが抜け出してチャンスを作りだす。けど遠藤を中心に浦和が抑える。

 お互いの疲労がピークに達したことで、殴り合いの様相を見せていった。お互いにラストの精度を欠くプレーが多く。歯がゆい時間が過ぎていく。

 しかし決勝点が生まれる。90+2分、浦和。スローインの流れから仙台陣内でボールを受けた柏木。柏木に時間とスペースを与えてしまった仙台。興梠は博文との駆け引きに勝ち、裏へ抜け出すと柏木が絶妙なラストパスを送り、興梠が流し込んでついに均衡が敗れた。ついでにオフサイドはなし。完璧な裏抜けとスルーパスだった。

 そして仙台の反攻の時間もなく、最後の最後に質の部分で差を見せつけられてしまった仙台。0‐1で敗れ、4連敗となってしまった。

 

■最後に・・・

 正直、非常に悔しい結果に終わってしまった。アディショナルタイムまでの仙台の守備は関を中心に非常に集中しており、素晴らしい出来だった。それだけに最悪スコアレスで終えたかったところだった。

 今節はここ最近失点が多かったことで守備を修正し、それが機能したことで浦和と対等な試合を進めることが出来た。しかしその一方で攻撃はシュート数が5分と少し残念な結果となってしまった。後半に修正をして改善されたことは良かったが、監督インタビューでもあったように、シュートの意識を増やすことは重要かなと感じる。いい形を求めすぎるとシュートに行かなくなるのは今シーズンの悪い癖。もう一回修正をして攻撃を改善することが必要だろう。

 しかしあのひどかった川崎戦に比べれば、ガンバと浦和を相手に自分たちが表現したいことが出来たし、改善されたのではないだろうか。あとはいかに結果に結び付けられるようになるか。あと一歩を埋めるためには、さらなる進化と成長が求められるだろう。野沢や金久保がいない中で結果を出せばチームのさらなるレベルアップにつながるはずだ。

 次は新潟。ここ3試合とは違い、結果が求められる相手である。新潟だって仙台には勝たなければならないと考えてくるはずだ。余は今までよりも難しくて激しい試合になるはず。自分たちのサッカーを表現するとともに、球際でのバトルもポイントになってくるだろう。負けられないからこそ自分たちのサッカーをより表現できるか、粘り強いいいサッカーを期待したい!