ヒグのサッカー分析ブログ

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暴かれ始めた仙台のサッカー~J1 2ndステージ第1節 ベガルタ仙台vs川崎フロンターレ~

 1stステージを10位でフィニッシュした仙台。更なる成長を目指して2ndステージへと向かう。中1週で迎える2ndステージの開幕戦の相手は川崎フロンターレ。1stステージ惜しくも優勝を逃したチームとの対戦となった。f:id:khigu:20191230144636p:plain

 仙台は、1stステージ最終節・磐田戦から野沢と晋伍が復帰。今週のトレーニングでケガが心配されたハモンはスタメン。平岡が今節でJ1通算200試合達成となった。4連勝後に磐田に完敗。仕切り直しとなる今節であるが、川崎相手に前回対戦のような勇気を持った戦いを出来るか。

 一方の川崎。1stステージ最終節・大宮戦からトップ下大塚翔平、左サイドハーフ中村憲剛を配置している。前回対戦ではいなかったエドゥアルド・ネットがボランチにいる。1stステージの悔しさを2ndステージにぶつけたい川崎。大事な初戦。

 

■前半~仙台の守備を狂わせた2つのピン留め~

 試合は、川崎がボールを保持する展開からゲームがスタートする。

 川崎は前回対戦した時とやり方を若干変えてきてた。f:id:khigu:20191230144657p:plain

 川崎のビルドアップの基本はボランチエドゥアルド・ネットがセンターバックの間に降りてきてからスタートをする。前回ではここが谷口だった。そして大島が仙台の2トップの間に位置することで、2トップをピン留めする役割を担う。

 そして今回の対戦では、2列目の役割がマイナーチェンジされていた。前回では憲剛と森谷が中盤で顔を出していたが、今回は横幅をサイドバック(ここは前回と変わらず)、2列目の3人が仙台のダブルボランチの周りにいることでボランチの位置をピン留めしていたことである。

 ボランチがピン留めされていることで、仙台は大島の担当がどうしても2トップになってしまっていた。相手の2列目がいることで大島の位置まで飛び出すことがなかなか出来なかった。そして憲剛が左サイドハーフにいることもやらしい。憲剛が真ん中いればある程度ボランチがマークに付いていけるが、一番気をつけなければならない選手が左にいると、ボランチが見る場合もあれば右サイドハーフ(奥埜)が見なければならない状況にも陥るため、マークのズレからときにフリーにさせてしまう場面が出てくる。現に憲剛は自由に動くためになかなか捕まえ切れてなかった。

 

 川崎ペースの中、先制点が入る。17分。f:id:khigu:20191230144719p:plain

 右からの作りから、大島が左に展開。この時に顔を出したのは谷口。谷口から車屋車屋がフォローに来た大島へパス。大島は左斜め45度から大外の小林へクロス。小林の折り返しに大塚が合わせて川崎が先制。まさに教科書通り。

 川崎の狙いが詰まった得点だった。左へ展開した大島はフリーだったし、ビルドアップ隊の3枚がフリーなため顔を出せた谷口。そして谷口へのスペースを空けた憲剛はしっかり奥埜を動かしている。あとは大外からのフィニッシュ。すべてが完璧なゴールだった。

 

 2点目は4分後の21分。川崎のゴールキックからのトランジション。大久保と競った博文がスリッピーなピッチに足を取られたところで起きた。前のめりになる川崎。左の憲剛へ展開し、大外へクロス。これを小林が合わせて追加点。

 トランジションが発生したところを見逃さなかった川崎が見事。仙台も博文が足を滑らせたが人数は揃っていた。小林のシュートを六反が弾き切れなかったところが残念。

 

 仙台がボールを保持できるようになるのはこの後から。川崎が2点先行したことで少し落ち着き始めたのが要因であった。

 しかしいつも通りのボール回しが出来ない仙台。それだけ川崎の守備が素晴らしかった。

 川崎の守備の特徴は1列目にある。大久保と大塚の役割。守備の基準点は仙台のボランチセンターバックの使い分け。基本的にセンターバックにはボールを持たせていた。川崎の1列目のプレスはボランチのパスコースを消しながらだった。そしてここだという場面でセンターバックへとプレスを掛ける。いわゆる守備のスイッチを入れる瞬間。川崎は仙台のセンターバックのビルドアップ能力はさほどではないので、そこから蹴らせることで仙台の攻撃を機能させない狙いを持っていた。ビルドアップ隊が3枚になったときは数的同数でプレスを掛けたり掛けなかったり、揃っていたら行くし、準備できていなかったら引くしでハッキリとしていた。

 よって仙台の攻撃はうまく機能しない。サイドに流れるハモンが頼りで、中央からはなかなか崩すシーンが出来なかった。また野沢の登場シーンがとにかく少ない。そして川崎にうまくボランチを消されていた。

 

 理想通りの試合運びをされてしまい、2点ビハインドで前半を折り返す。

 

■後半~続く悪循環~f:id:khigu:20191230144800p:plain

 後半スタートから大塚→武岡。

 

 武岡の役割はハモンを抑えることだった。風間監督の中で、後半スタートから右にいたハモンが左に流れてくると折り込み済みだった。よってエウシーニョを一枚上げて1対1に強い武岡を入れた。

 後半はハモン対武岡は終始行われていた。勝負は五分五分だったけど。仙台の攻撃はよりシンプルなものになった。とにかくサイドから攻める。ボランチからの展開が出来ない仙台はまずはサイドからボールを前進させていった。けどハモンが左に流れているのでクロスに合わせる選手がいないという悪循環。

 だから早めの大岩→蜂須賀。左だけではなく右からもクロスをという展開に。狙っていたのは甲府戦の同点ゴールの形だっただろう。

 川崎のカウンターを浴びながら攻めに出る仙台。しかし肝心のシュートまで持っていけない。奥埜→菅井で中で勝負できる選手を投入する。サイドハーフの菅井は相手の視野外から入ってこれないから本来の彼の特徴は見えなかった。逆に菅井の役割を蜂須賀がこなしていたのは、なんだか切なかった。

 70分過ぎになるとクロス大作戦が始まる。右から左からクロスを入れまくるけど合わせられない。状況は前半よりは良くなったけど、それは川崎が無理に攻めに出ることがなくなったからとも言える。

 

 反対に川崎はトップ下に憲剛を入れたことで、大島と憲剛のパスワークとそこからの起点のカウンターで効率よく仙台ゴールに襲い掛かった。川崎は後半も続けてセンターバックへのプレスを行っていた。よって博文と平岡が慌てるシーンは後半にもたびたび訪れていた。

 

 88分。川崎のダメ押しで勝負が決まる。仙台がパワープレーに出ようと博文が上がるがなかなかペナルティエリアにボールを入れない。そうしているうちに川崎にボールを取られてカウンター。最後は途中出場の三好が右サイドからカットインしてシュート。

パワープレーに出たならば入れなければならないシーンだった。反対にボールを回している方がリスクが高かった。いらない失点だった。

 

 ということで終始川崎に圧倒された仙台。0-3の完敗を喫してしまった。

 

■最後に・・・

 川崎にものの見事にやられてしまった。何がどう悪かったというのは細かい部分も含めていろいろあるだろうが、総じて仙台のサッカーがやはり1stステージを経て研究されている印象は否めない。特に川崎は仙台の特徴をしっかりスカウティングしていた。センターバックへのプレッシングとボランチへのマーク。ハモンへの対応。仙台がここまで自信を持ってやれてきた部分、弱みだった部分をうまくスカウティングされていた。

 ということで今後も対戦相手は仙台のここまでの戦いをしっかりとスカウティングしてくるはずだ。そういった時に違う手もしくはマイナーチェンジが出来るか。新しいこととは言わなくても、少し自分たちのやり方を応用できるかはポイントになってきそう。

 ポジティブな言い方をすれば2ndステージのスタートからある程度相手が仙台のどこを抑えるべきなのかを教えてくれたとも言える。今節自体は完敗であったが、先々に向けてはいい教訓になった試合だったと思う。

 次節はアウェイでのガンバ戦。強豪相手が続く中で、どれだけ仙台はチャレンジできるかが大切になってきそう。次節は新スタジアムである吹田スタジアムでやれるので、切り替えてモチベーション高く、いいゲームが出来ることを期待したい!