ヒグのサッカー分析ブログ

ベガルタ仙台の試合分析が中心です。

広島と仙台にある明らかな差~J1 1stステージ第5節 サンフレッチェ広島vsベガルタ仙台~

 代表ウィークが開けて、久々のリーグ戦。前節アウェイで名古屋に敗れた仙台は、今節もアウェイで広島との対戦となった。f:id:khigu:20191218211149p:plain

 1stステージ序盤はACLとの兼ね合いがある広島。この試合もミッドウィークのACLの影響で金曜開催。そんな中で浅野と佐々木翔が負傷。ウタカを頂点に柴崎、茶島がシャドーという前線。3バックは佐々木のところに水本が入ってお馴染みの3枚が揃った。ボランチは青山と宮原のコンビ。ケガから帰ってきた森崎和幸はベンチスタート。

 一方の仙台は、名古屋に敗れたものの、多くのメンバーを試したナビスコカップの新潟、柏戦で1-0といずれも勝利。チームはいい状態で、この広島戦を迎えることが出来た。しかし、名古屋戦でリャンと金久保が負傷。代わりに水野と奥埜がサイドハーフを務め、ウイルソンと金園が2トップを組んだ。

 

■前半~両チームの狙いとかポイントとか~

 前半は、どちらかがボールを持てば、どちらかが撤退守備をする流れが主だった。もちろん、サッカーの試合だからトランジションも発生するわけだけど、全体的にゆっくりとした展開が続いていった。

 ということで、広島がボールを保持したとき、仙台がボールを保持したときの状況に分けて、両者の攻撃、守備の狙い、ポイントを見ていく。

 

 まずは広島がボールを保持したときの展開。f:id:khigu:20191218211230p:plain

 広島がボールを保持したときの仙台の守備は、中央圧縮の4-4-2のブロック。いつもよりも横幅の距離感が短いのが印象的だった。仙台がまず抑えたいのは、3列目(DFライン)から青山へのパスライン。ここをまず抑える(青山にパスを出させない)、もしくは青山に簡単に捌かせないために3列目の前に2トップ、そしてボランチに2枚が青山を後方から見る形で包囲網を作っていた。青山に入れば、2トップとボランチがすぐにプレスを掛けれるという位置取りがポイントだった。決して、絶対に青山にパスを出させないという守備の仕方ではなかった。入ったら入ったでプレスに行きましょうみたいなのが決まり事としてあったのだろう。

 広島の攻撃は、主に3つのパスルートが存在した。1つは青山経由での攻撃。もう1つは、塩谷と水本からミキッチと柏への外外でのボール前進からの仕掛け。3つ目は、3列目からのパスを仙台のボランチサイドハーフの間でシャドーが受けて攻撃する形があった。

 仙台が青山に強烈なプレスを掛けれないのは、この3つのパスラインがあったからだと思う。広島の3列目のパス出しは異常すぎるので、簡単に通ってしまう。よって1つに絞ることは、ほかのパスラインへの制限が限られてしまうためのものだった。

 仙台は、縦パスがウタカに入っていたときが守備の勝負のしどころだった。ウタカに入ったところで博文がしっかり抑え、時にはボランチとサンドし協力をしながら広島の守備を抑えていた。

 けど、様々なパスラインを使いながら攻め続けることが出来る広島。全体を通してサイドからの仕掛けが多かった。特にミキッチは石川、奥埜を振り切ってクロスを上げるシーンがかなり多かった。さすがミキッチ

 

 続いて仙台がボールを保持したときの展開。f:id:khigu:20191218211311p:plain

 仙台がボールを保持したときの広島の守備はお馴染みの5-4-1。人海戦術

 そんな広島の守備を打破できないのが仙台である。この試合の仙台にはボランチに三田がいる。広島の守備の性質上、1列目の守備はほぼ存在しない。もちろん時と場合によってはウタカがプレスに来るけど、5-4-1で守るのでサポートもいなく、そこまで深追いはしてこなかった。

 ということで、ボールの捌ける三田や富田は基本的にフリーな状態でボールを持つことが出来ていた。仙台は、今シーズンのテーマであるサイドに人を掛けて崩すことを行おうとする。特にウイルソン、奥埜のいる左サイドからの攻めが多かった。仙台はサイドハーフが自由に動くことで、数的優位を作ることを行っていた。

 数的優位を作ることのメリットは、守備は自由に動くことが出来ないので、攻撃が自由に動いたときにマークのズレなどが発生する可能性がありより確立を上げてペナルティエリアに侵入することが出来ることである。そしてもう1つのメリットとしてサイドでボールを奪われたときに圧力を掛けて多くの人数で狭いスペースでプレッシングが出来るということが挙げられる。この試合での仙台はボールを奪われてからの切り替えが早く。同サイドで圧力を掛けて奪い返すシーンが見られた。もちろん掻い潜られるシーンもあったがチャレンジしようという意思が見えたいいシーンだった。

 攻撃は、広島のようなオートマチックさがない分、かなり選手たちのアイデアに頼るシーンが散見された。だから、なかなかシュートまで持っていくシーンは少なかった。それでもボランチからの縦パスでブロック内に侵入したり、サイドをえぐったりとそれなりの攻撃の形が見えた場面もちらほら見えた。

 

 それ以外にも、前半はお互いにトランジションが発生したときに早くボールを運ぼうという意識があった。広島はボールを奪った後にシャドーを中心に、仙台の守備が準備される前にボールを素早く運んでいくシーンが見られた。

 仙台は、基本的にウイルソンがボールを運ぶ役割を担い、いつも通り左サイドに張って、ボールを受けてドリブルで運ぶシーンが多々見られた。仙台は全体のラインが低いせいもあって、ウイルソンのフォローが遅く、効果的にボールを運べた回数を多くなかった。

 

 前半はスコアレスで折り返す。

 

■後半~前半の伏線を回収する広島~

 後半に入って、ゲームに大きな変化はなかった。前半同様に仙台は中央圧縮の4-4-2のブロックを敷くシーンが続く。

 広島は、前半を踏まえて後半はサイドから、主にミキッチ、柏のところから攻め入るシーンを増やしていった。単純に前半の3つのパスラインのうち、最も可能性を感じたのがサイドからだったということだろう。ということで、サイドから攻める広島。特に前半のも繰り返されていたミキッチのサイド突破を繰り返す。

 そして広島の先制点。塩谷からミキッチ。塩谷はインナーラップでミキッチを追い越し、ボールを受けて突破。それに対して三田が後ろから足をかけてしまいPK獲得。それをウタカが決めて先制。PK自体は不運なもの(三田が故意に足をかけたわけではなかった)だったが、前半から繰り返し行ってきたことをしっかりこなしたことで、広島がPKを得ることが出来た。

 追加点はすぐに入る。次は柏サイドから攻め入ってクロス。それを仙台は逆サイドでスローインへと跳ね返す。しかし、広島はすぐにリスタートし、茶島から柴崎、柴崎のシュートミスをウタカが押し込み、追加点。解説の中島浩司が言っていたように広島のスローインになったとき、仙台の選手は一息ついてしまった。そこを広島が見逃さなかった形となった。

 3点目は63分。仙台が左サイドで押し込もうとするが、カットされカウンターが発動。柏の左からのクロスが大岩に当たりコースが変わると、最後は茶島が押し込んで3点目。わずか60分足らずで広島はゲームを決めてしまった。

 

 その後の仙台はハモン、藤村、野沢を投入し攻撃のアクセントをつけようとする。広島が3点取ったことで、自陣に撤退し仙台の攻撃を迎撃する形を取ったことで、仙台がボールを持つ時間がずっと続いた。

 仙台は、前半同様に同サイドで崩していこうという意識のもとで、攻撃を仕掛けるがやはり、パスの精度が悪かったり、ズレたりでなかなかシュートに持っていく形が出来ない。

 それでも野沢や藤村が入ったことで前半よりかは、幾分リスク承知のパスや中央からのチャレンジ、逆サイドへの展開などは見られた。

 けど、得点には結びつかないと意味がないじゃんと言われそうな内容でタイムアップ。0-3の完敗となってしまった。

 

■最後に・・・

 広島に、「俺たちに勝つのは100年早いぜ」と言われたような内容だった。チームとしての成熟度、完成度、攻撃の形、守備の形がしっかりしている昨年王者はやっぱり強かった。3点とも仙台的には不運に見えるが、広島の抜け目なさ、スペースにしっかり走り込んでいるからこそボールもそこに転がってくる貪欲さみたいなのがスコアとしての差として出ていたのかなという印象を感じる。   

 しかし、そう悲観する内容でもないとも思う。広島に勝つためにはこの試合のような戦い方しかなかっただろうし、そういう中でもしっかり自分たちがやりたいこと(同サイドで数的優位での攻撃。攻守の素早い切り替えによるボール奪取などなど)をチャレンジしている姿勢もあったので、怯むことなく継続してやっていくべきだと思う。特に前半は、しっかり昨年の広島戦と比べて戦えている部分があったので、そこは成長しているところだと感じる。けど1つ言えるとしたら、同サイドで攻め切ることに固執する場面が多く、時にはサイドを変えて相手の守備をリセットさせるみたいなことが出来ると、今度は中央も空いてくるだろうし、攻撃の幅みたいなのは、これからもっともっとその練度を上げる必要はある。

 次はガンバ、浦和と続く。ここの3連戦は正直厳しいものがあるが、こういう相手に自分たちがやりたいことを出来るようになれば、ほかの相手でも出来ると思うので、ポジティブな気持ちで見ていきたいと思う。