ヒグのサッカー分析ブログ

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5バックの守備について考えてみよう J1 第8節 サンフレッチェ広島vsベガルタ仙台

 2週連続の更新です。今回はサンフレッチェ広島戦を取り上げます。f:id:khigu:20171115122703p:plain

 前節、鹿島に1-4で敗れた仙台。今週のトレーニングでは守備の整備に時間を掛けた。その成果が表れるかどうか。増嶋、晋伍、永戸が前節に変わってスタメンとなった。

 一方、なかなか波に乗れない広島。ここまで1勝とらしくないスタートを切っている。前節もマリノスに0-1で敗戦した。ケガ人が多い状況の広島だが、千葉、青山、柏がスタメンに帰ってきた。またベンチにはミキッチも復帰している。

 

■前半まずは守備からf:id:khigu:20171115122741p:plain

 前節の反省もあって、今節の仙台は守備からゲームに入った。基本的には541で迎撃する形を取り、広島のボール保持攻撃に対応していた。

 前節よりも良かった点は、相手にボールを持たれても比較的ラインを高くできたことである。ラインがずるずる下がることなく対応することができていた。その証拠として、左右のストッパー(大岩と増嶋)が縦パスが入ったときに前にチャレンジできていた。

 また前からもプレスを掛けることにもチャレンジしていた。広島の415の変化に対して、仙台も三田がクリスランと同列になることで同数を作り、相手のボール保持を自由にさせていなかった。

 

 しかし、いい点ばかりではない。相手の5トップに対して5バックで同数なので、裏を取られるとカバーリングがおらず、対応に苦しむ場面が見られた。特に永戸の対峙である高橋壮也には試合全体で苦しめられることとなった。またディフェンスラインでオフサイドを取るのか、カバーで対応するのか各々で違う対応を見せてしまい、前節から修正されていないシーンもあった。

 加えて、青山のところでマークが甘くなることも多々あった。三田と富田の寄せが甘く、簡単にロングフィードを許してしまい、背後への対応で苦労するディフェンス陣が散見された。

 

 それでもスコアレスで前半を終える。広島も調子が悪いのが明らかで、攻撃に迫力がなければ、ミスも多く助けられるシーンが多かった。前線のユニットが変わったことで連携面がまだまだなのだろう。それに加えてケガ人が復帰したばかりでコンディションが揃っていないのも原因かもしれない。

 仙台も調子が悪いなりに前半を乗り切った印象である。ここまでの試合の反省とアウェイということも相まって守備からのスタートとなった。

 停滞感漂う試合は00で折り返す。

 

■後半スコアと時間の変化とともに

 後半は前半とは打って変わり、スコアが動く展開となった。スコアの流れを中心に見ていく。

 後半の仙台は、右サイドを中心に押し込んでいくシーンが見られた。これは監督のコメントにもあったが、前半にもあったように右サイドのほうがボールを深い位置まで運べる、または形が作れるというのが理由だった。

 

 先制点は広島。仙台の前からのプレッシングを掻い潜ると、右へ展開し高橋がクロス。工藤が落として柏が決めて先制点という流れだった。f:id:khigu:20171115123500p:plain

 この場面、仙台は前からプレッシングに行ったもののはがされて、広島に広大なスペースを与えての失点となった。この失点の一連の流れを見ると匠が水本に対してプレッシングに行ったところからスタートになっている。これには問題はない。水本も後ろにボールを下げているし、キーパーに対してクリスランもプレッシングに行った。

 なにが問題だったのか?それは匠のプレッシングに対して、全員で押し上げができなかったことにある。一番の理想は水本がボールを下げたときに全体を押し上げてマークに付くことだった。しかしラインが押し上がらず、前線だけがプレスに行き、剥がされてしまい、そして前後が分断する形となってしまった。もし、このような前からのプレッシングに行くならば押し上げることは必要になってくる。この場面では前と後ろで意思統一が図られていなかった。

 

 広島の2点目はカウンターから。永戸とクリスランのワンツーが失敗し、ボールを奪われると仙台のディフェンスが簡単に抜かれ、最後はアンデルソン・ロペスのシュートのこぼれ球を工藤が押し込み追加点となった。

 ここでは仙台が押し込んでいるシーンからワンツーを奪われて、カウンターを食らっている。このとき仙台は両ウイングが高い位置を取っており、5トップの状態となっていた。よって奪われると5人が置き去りになり、後ろも止めることができなかった。

 これを対処する方法は二通りだろう。まずは攻撃の精度を上げること。永戸とクリスランの技術的なミスから始まっている失点なので、そういうミスを無くすようにトレーニングする。2つ目はカウンターの止め方。前回も書いたが無理なら戦術的なファウルで止めるなど、何かしらの方法でプレーを切る、遅らせることが大切になってくる。ここでは簡単に前を向かれてしまい、広島のカウンターに勢いを持たせてしまった。

 

 しかし、ここから仙台の逆襲が始まる。

 仙台は2失点後、リャンと蜂須賀を投入する。右サイドの攻撃を活性化するためだ。リャンは、引いてボールを引き出したり、間で受けたりと、ここまでシャドーのポジションで苦労していたのが嘘のように機能していた。また、リャンが外に出たら蜂須賀が中の入ってくるといったサイド旋回が見られたのはちょっと感動した。

 加えて広島が2点リードしたことで、メンタル的に余裕が生まれたのかプレーも緩くなっていったことも仙台が逆襲できた理由の1つである。

 リャンが68分に1点返すと、73分に三田の直接フリーキック、76分には石原が逆転ゴールを決める。特に3点目は、左右に揺さぶり波状攻撃で決めることができた。増嶋がアシストしたということ、中に大岩が走りこんでいたことが、どれだけ分厚く攻めたのかという証だろう。

 

 仙台は永戸に代えて石川直樹を投入し、途中出場のミキッチのところを封じにかかる。ラスト10分弱。

 ここからは広島の猛攻を仙台が耐える展開になる。ぎりぎりのところで防ぐ仙台。ロスタイムも4分を回り、ラストプレーまで来た。

 しかし、ミキッチのクロスを柏に折り返され、最後は柴崎に決められて同点に追いつかれる。そしてこれがラストプレーとなった。

 最後の失点は、ミキッチに寄せれられなかったこと、ダンが中途半端な飛び出しを見せてしまったことなど原因は多々あった。悔やんでも悔やみきれないラストプレーになってしまった。

 スコアは3-3。なかなか軌道に乗れないチーム同士の試合は、お互いの調子の悪さが如実に表れた試合内容だった。

 

■最後に・・・

 最後のプレーを守り切れればという試合だった。そう簡単には勝てないのが現実である。

 

 この試合では、守備をテーマに試合に挑んだ。前半は無理をせずに全員がオーガナイズをして守備をできたことは一定の評価ができる。もちろん寄せきれなかったり、ディフェンスラインがズレていたりと課題は多々あるが、あの前半はベースにしてほしいところ。

 後半は反対に3失点してしまった。3失点目は特に悔やまれる。しかしこの試合では、今後の布石になりそうな場面もあった。それは1失点目。前述したように前後に分断はしてしまったが、匠が前線から追い込もうとしたトライは良かった。あとはあそこで全員が押し上げられるか、全員で意思統一してプレーできるかどうか。ここはチームとしてどう評価するかにもよるけど、ああいうトライを続けてほしい。

 たぶん、5バックと4バックではかなり守備のやり方やルールの部分が異なるんだと思う。同じブロックでもディテールのところはかなり違う部分が多くて、それで苦労しているのだと感じている。1試合ずつ修正していくしかない。

 攻撃では、ようやく複数得点が取れた。これは収穫。またリャンがようやくシャドーとしてのコツをつかんだように思う。ここ数試合、外から試合を見て悔しさもありながら、学ぶこともできたのだと思う。

 

 攻撃もさらにより良くしてほしいが、まずは守備に時間を掛けることが優先になってきそう。ここから連戦が続き、ルヴァンカップもあるので、さまざまなことにトライできる。トライ&エラーを繰り返しながらさらに成長していってほしい!