ヒグのサッカー分析ブログ

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「切り替え・走力・球際」 J1第22節 ベガルタ仙台vsサンフレッチェ広島

 すこし遅くなりましたが更新です。サンフレッチェ広島戦を取り上げます。f:id:khigu:20171113145552p:plain

 仙台は平岡が出場停止。代わりにセンターバックを務めるのは大岩。右のセンターバックには椎橋が起用された。また前節ベンチだった古林、奥埜、西村、石原はスタメンに戻った。

 一方の広島。監督交代後はシステムを4231に変更している。ここ2試合では結果を出し徐々に調子を上げてきている。今節は攻守の要である青山が出場停止。代わりに柴崎をボランチに起用し、トップ下には若い森島を起用した。

 

■前半

(1)広島の攻撃

 開始10~15分は広島が押し込む時間帯が続いていった。監督交代後の広島は良くも悪くもアバウトな攻めをしている。開始からワントップのパトリックや2列目のアンデルソンロペスにボールを集めることでシュートチャンスを作り出し、またセットプレーを獲得していった。f:id:khigu:20171113145634p:plain

 15分過ぎになると次第に広島がボールを保持した中での攻撃へと変わっていった。広島のボール保持時は柏レイソルと似ていて、ビルドアップ隊はボランチセンターバック。両サイドバックが高く取り、2列目の3人は中に絞る。

 ただ、柏レイソルと違うのは2列目の選手が相手の守備ブロックの間でボールを受けるためにポジショニングしているのではないことである。広島の攻撃はやはりパトリックにボールを集めることが第一目的である。よって2列目の第一優先は間で受けるのではなく、パトリックとより距離感を近づけ、パトリックが収めたボールに素早く反応もしくは抜け出し、シュートを狙うことである。この試合でもその狙いがよく見られていた。

 

 仙台は開始から広島の攻撃に我慢強く守る展開を強いられてしまう。もちろん広島がパトリックやアンデルソンロペスを使いながら、押し込んできたことも原因としてある。しかしそれ以上に奪った後のボールロストが多かった。特に折角奪ったボールをつなぐときにパスミスや相手に引っ掛けたりして、なかなか攻撃へと切り替えることができなかった。ここは反省というか、もう少し開始から丁寧にやっていきたかった部分ではある。

 それでも大岩や増嶋を中心に、序盤の危ない場面を凌いでいったのは90分通して見れば非常に大きかった。

 

(2)球際バトルと対角フィードの復活

 押し込まれる時間が長かった前半の仙台だったが、それでもシュートで完結するシーンは多かった。というのも中盤での球際バトルで負けずにセカンドボールを拾い、そして攻撃へと繰り出すことができたからだ。前節はジュビロ磐田の球際バトルに圧倒され、なかなかセカンドボールを取れない状況が続いていたが、今節はボランチの晋伍と三田を中心に球際で負けずに中盤でボールを奪い取って前線3人に預けることができていた。

 ここは前節と比べて良かった点だったと思う。広島が球際で強さがなかったとも言えるが、この部分は上位相手でも負けないようにトレーニングしていきたいところである。

 

 また試合が落ち着いていき、仙台がボールを持てるようになると対角フィードができるようになった。ここ最近は守備に重きを置いているためか、ウイングバックも高い位置を取ることができず、またボランチセンターバックも対角フィードを狙おうという意思が見えなかった。しかし今節はボールを持ったときに対角フィードを繰り出すことができていた。

 理由はいくつかあったと思う。f:id:khigu:20171113145730p:plain

 1つ目に広島の守備についてである。広島はパトリックを残して4411のような形で守っていた。パトリックはパスコースを切ることもあったが積極的にプレスを掛けていくわけではなかった。おかげで仙台のバックラインは落ち着いてボールを持つことができた。そして4411なので森島の両脇にスペースができ、そこにダブルボランチが顔を出しボールを引き出すことに成功していた。ダブルボランチのポジションを広島は誰が見るのかあいまいだったように思う。

 2つ目は中野のポジショニング。増嶋がボールを受けたときに高い位置を取るではなく、少し降りてきていた。具体的に言えば、丹羽とアンデルソンロペスの間にポジショニングするということである。ここにポジショニングすれば丹羽はプレスを掛けてこないし、アンデルソンロペスは下がってくるしかないので非常に賢いポジショニングを取っていた。これは後半への伏線ともなっていく。

 増嶋ー中野のパスルートの確立と、森島の両脇のポジションをダブルボランチが支配することでビルドアップが安定。よって逆サイドの古林は高い位置を取ることでき、そこへ対角フィードをできるようになっていった。26分のシーンはそれが顕著に見られた場面だった。

 なお、右の古林は高い位置をすぐに取ってしまったために、対角フィードは右サイドへのキックしかなかった。両サイドに蹴れるようになるには、古林にも中野のようなプレーが求められていく。

 

 前半は開始から広島が押し込む展開が続いていったが、我慢強く守り、ボールを落ち着いて回せるようになったことや中盤での球際バトルで負けなかったことで、次第に仙台が攻撃を繰り出せるようになった前半だった。スコアレスで折り返す。

 

■後半

(1)アンデルソンロペスを押し込め!

 前半はパトリックやアンデルソンロペスを中心に攻めてくる広島に対して、守勢に回る時間が多かった仙台。しかし後半は開始から広島を押し込むことに成功する。

 仙台がねらい目にしたのは、相手の右サイド。仙台で言う左サイドからの攻撃である。前半にも書いたように中野が丹羽とアンデルソンロペスの間にポジショニングすることで、アンデルソンロペスを下げさせ、広島の攻撃を鈍化させることに成功した。

 前半の左サイドはどちらかというとビルドアップの起点になっていて、中野も比較的低いポジションを取っていたが、後半はより高い位置を取ることで、アンデルソンロペスを下げさせていた。

 アンデルソンロペスを苦手な守備に回したことでパトリックを孤立させ、また広島の守備バランスを悪くさせていった。また前半から続けて素早い切り替えから中盤でボールを拾い続けたことで、広島にカウンターの機会を与えなかった。

 

 先制点はまさに狙い通りの得点だった。素早い切り替えでアンデルソンロペスからボールを奪い、そのまま左サイドで中野と西村のパス交換で、西村は中にカットイン。西村はそのままミドルシュートを放ち、中林がキャッチングミスでこぼしたところに奥埜が詰めて先制する。

 アンデルソンロペスを狙い目にしたことと、素早い切り替えからボールを奪い返し得点につなげることができた。

 

 その後も仙台は左サイドを中心に攻めていく。ほとんどのシーンをシュートやクロスで完結させることで、カウンターの機会をほぼほぼ与えなかったことは非常に良かった。本音を言えばこの時間帯に追加点を決めたかった。

 

(2)両チームに采配

 最初に動いたのは広島。トップ下の森島に代えて森崎。柴崎をトップ下に持ってきた。最初に手を打ったのがトップ下だったのは意外だった。アンデルソンロペスを放置したのにはそれなりの意図があったかは不明。先制点を取られてそのまま得意なポジションに残したかったのだろうか。

 仙台は足をつった古林に代えて、蜂須賀。古林は前半から運動量が多く、高橋のオーバーラップをけん制させていた。その後入った蜂須賀も迫力あるスプリントとクロスでチャンスを演出できた。このポジションに2人いることで、コンディションも整い、競争が激しくなっているので今後非常に楽しみなポジションである。

 

 そしてようやく広島が右サイドをテコ入れする。柴崎に代えて茶島。アンデルソンロペスをトップ下で茶島を右サイドハーフに持ってきた。仙台としてはこれで厄介になったというか。狙い目を消されたので、攻撃のポイントがなくなった。茶島は投入早々にパトリックのポストから飛び出しチャンスを作って広島に流れをもたらした。

 広島の最後のカードは高橋に代えて工藤。アンデルソンロペスを再度右に茶島を左、そしてパトリックと工藤の2トップにした。ここから広島の総攻撃が始まる。

 

 仙台は奥埜からリャン。疲労が見える奥埜に代えてリャンを投入し守備の強度を保つことと、カウンターの起点になることを狙った。リャンはこのタスクをしっかりこなしていたと思う。的確なポジショニングでボールを受けキープすることで全体の押し上げを促していた。

 

 ラスト10分は広島の攻撃を体を張りながら守り、時にはカウンターを発動させた仙台だった。守りっぱなしではなくカウンターでシュートまで持って行けたことは、地味に効いていたと思う。

 ラストプレーで危ない場面を迎えるもダンが飛び出してブロックし、タイムアップ。仙台は8試合ぶりの勝利を挙げることができた。

 

■最後に・・・

 実に8試合ぶりの勝利となった。非常に大きい勝ち点3だと思う。

 最初の10分と最後の10分を除けばおおむねゲームプラン通りに進めることができたのではないか。もちろんあと1点2点決めていればさらにゲームを楽にすることができたが、それは次までの課題。

 

 この試合では、前節とは違い球際の勝負で負けなかったことが勝因だと思う。ルーズボールセカンドボールを拾い、自分たちのモノにするのとしないのとでは、どれだけ違うのかをこの2試合で痛感した。そういった意味でもこの部分はもっともっと向上させていく必要がある。

 渡邉監督が以前掲げていた「切り替え・走力・球際」というのがすごく大事なんじゃないかとここ最近の試合を見て思う。どんなサッカーをやろうとも仙台の根底にあるものというか、サッカーの根底にあるものは「切り替え・走力・球際」だと思う。もう一度この部分を思い出し、そして今やっているサッカーを向上させれば、さらに上へと行けるのではないだろうか。今節はそういうキッカケになる試合であってほしい。

 

 次節はアウェイで新潟との対戦となる。「切り替え・走力・球際」を忘れずに次もいいゲームを期待したい!