ヒグのサッカー分析ブログ

ベガルタ仙台の試合分析が中心です。

勿体ない試合だったけれども~J1 1stステージ第4節 名古屋グランパスvsベガルタ仙台~

 前節、鹿島に勝利した仙台。連勝を目指す今節は、ここ5年で負けなしの名古屋との対戦となった。f:id:khigu:20191218210301p:plain

 仙台は前節からの変更はなし。ベンチにはケガから帰ってきた蜂須賀、ルーキーの差波が入った。

 一方の名古屋は前節は川崎Fに2-3で敗れた。メンバーの変更はなし。下馬評では厳しい評価が多かったが、ふたを開けてみればそんなに悪くない小倉グランパス

 

■前半~相手のやりたいことをやらせないということ~

 前半は非常に静かな展開だった。お互いに、自分たちがやりたいことを出すことよりも、相手のストロングポイントだったり、狙いたいポイントみたいなところを抑えることにエネルギーを注いだ前半だった。

 

 名古屋が仙台に出させたくなかったポイントとして、仙台のサイド攻撃をうまく機能させないという狙いがあった。名古屋は基本的には4-2-3-1。守備時は4-4-2になる。名古屋の特徴として、基本的にはサイドバックは上がってこない。正確に言うと、ポゼッション時は高い位置をとることはあるが、サイドハーフを追い越す動き(オーバーラップやインナーラップ)はほぼ皆無だった。

 おそらく名古屋は守備のクオリティの問題で、全体的な守備力(組織的に守れるかどうかとか)がかなり低いのではないかと思う。だから極力サイドバックは上がらない。その代わりに、縦に速く走れる永井と古林を置くことで、サイド攻撃をうまく担保させているのだと思う。

 そのことも相まって、仙台は前節同様、シンプルに2トップをサイドの裏へ走らせ、センターバックをサイドへおびき出したかったところだが、サイドバックが常にいるために、サイドバックの裏のスペースを攻略することが出来なかった。また、それでもサイドから攻撃を作っていこうとするものの、名古屋の早い寄せで、うまくボールを回せない時間帯が続いていった。

 

 一方、仙台が名古屋に出させたくなかったポイントは、相手の個の力のところ、特に永井のスピードとシモビッチの高さという部分。永井に対しては、カウンターを発動させない。余は永井に時間とスペースを与えないことが一番のポイントであった。前半は大岩があまり攻撃参加せずに永井につくことで、永井のスピード、特にカウンターを発動させたシーンは作らせていなかった。また、金久保がプレスバックをして永井に好きにプレーさせていなかった。

 シモビッチに対しては、まずはしっかりセンターバックのどちらかがマークにつくこと。そして、シモビッチとの競り合いでこぼれたセカンドボールをしっかり富田、三田が回収するということがポイントとしてあった。またサイドでは、フリーで上げさせないことが重要視されていた。特にクロスが得意な矢野、古林が揃っている相手の右サイドはかなり集中して寄せていっていた。

 

 しかし、失点してしまう。アディショナルタイムに、三田がセンターサークル付近で、左サイドの裏へフィードしようとしたところを田口がカットし、トランジションが発生。そのまま右からオーバーラップしてきた古林がフリーでクロス。中のシモビッチが頭で合わせて先制。

 前半は、ほとんど相手の思うように競らせてなかったのだが、トランジションが発生したことによって、守備の準備が間に合わずにやられた格好となった。両サイドバックが三田が受けたことを合図にグッと押し上げたことも不運だった。

 名古屋リードで折り返す。

 

■後半~サイドをどう攻略するか~

 後半に入って仙台は、相手の左サイドから攻めていくシーンを増やす。前半は、ウイルソンが左に流れることが多かったが、後半に入るとウイルソンが右に流れるケースが多かった。

 理由は単純で右からのほうが攻めれるから。名古屋の左サイドは永井がいる。永井はカウンターのために攻め残りをするために、下がって来ない。よって左はボランチのヘルプがない限り、左サイドは安田一枚になる。仙台は前半よりも大岩のポジションを高く設定し、安田に金久保、大岩、ウイルソンがいる状態を作らせていた。

 そしてもう一つの狙いが、右で攻撃の起点を作くれたならば、右でそのまま完結するだけではなく、状況に応じてサイドチェンジをすることで名古屋の守備をスライドさせ、名古屋のブロックの間にスペースを作らせようという狙いもあった。実際に繰り返すことで相手陣内深くまでボールを運べることが出来ていた。

 名古屋が後半も前半同様の攻め方で変化がなかったこともあって、守備も安定し、より多くの人数をかけて攻撃を仕掛けることに仙台は成功していく。

 

 名古屋は78分でシモビッチに代えて明神を投入し、4-1-4-1へと変更。早いタイミングで守り切る姿勢に。

 そして82分に追いつく。仙台のDFラインにボールが来ると、それを右に展開。この時にセンターバック2枚に対して、途中交代の野田と永井がプレスに掛けていた。そして仙台は右に展開。大岩がフリーで前を向くとプレスに来る安田。その裏を途中投入の水野が取り、センターバックの竹内を引っ張り出す。水野のマイナスクロスは富田へ、富田が逆へ振ってウイルソン。そのウイルソンのクロスにハモンが決めて同点。狙い通りに右で作って左へ展開し、クロスから中で決める形が出来た。ほぼ完ぺきなゴールだった。

 

 しかしいただけなかったのは、その後の時間帯。前へ出るのか、後ろで守るのかあいまいな時間帯が続く。そしてアンカーに入った明神を仙台の選手が誰も付き切れてない状態が続く。

 そして87分にミス絡みで相手にボールが渡ると、右サイドバック矢野貴章が、決めて勝ち越し。そしてアディショナルタイムの3分をうまく守り切った名古屋の勝利となった。

 

■最後に・・・

 勿体ないゲームではあった。おそらく監督のゲームプラン通りに進められていたと思う。前半は、相手にスペースを与えないため、そしてアウェイであることから無理をせずに、守備を優先とした戦いを。後半は、永井が攻め残りをするだろうから、そこをポイントにサイドからチャンスを作っていこうと。狙い通りの戦い方が出来ていたはずだ。それでもミス絡みの2失点でやられたところが非常に残念である。

 それでも、しっかり意図を持った攻撃が、特に後半は出来ていた。得点の場面は狙い通りだっただろうし、引いた相手からどう点を取るか!、リードされている状態の中で点を取ることが出来るか!、みたいなことは徐々に出来てきたところかなと。ただ、後半の采配はリスク承知の部分があって、ブラジル人コンビを2トップにしたり、野沢拓也サイドハーフという諸刃の剣をしたりと思い切った采配をしたことで最後にボロが出てしまった感は否めない。。

 ただ、まだ序盤なので、こういうチャレンジ、リスク承知の采配も大切であるとは思う。あとは守備陣が細かなミスを減らしていくことが、今後勝ち点を増やしていくために必要なのかなと感じる。

 

 とりあえずリーグ戦は、しばし休戦。次のリーグ戦は広島戦であるが、まずはヤマザキナビスコカップの2試合。若手が増えた今季の楽しみの1つでもあるので、いろんな選手の活躍を期待したい!!