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【不確定要素の多いのなかで】明治安田J2第32節 レノファ山口FCvsベガルタ仙台

 さて、今回はレノファ山口FC戦を振り返ります。

↓前節のレビューはこちら

khigu-soccer.hatenablog.com

↓前回対戦のレビューはこちら

khigu-soccer.hatenablog.com

 

スタメン

 ベガルタ仙台は、前節・ヴァンフォーレ甲府と2-2のドロー。最終盤までリードしていたもののラストプレーのフリーキックで追いつかれ、あまりにも悔しい引き分けに終わった。ただし、内容は上向き始めており、あとは結果を伴うことで自信を深めたいところ。今節はレノファ山口FCとのプレーオフ争い直接対決だけに絶対に負けられない一戦となった。

 仙台は、前節と同様の11人をスタメンに選んだ。ベンチには怪我から戻ってきた小畑、石尾がメンバー入り。また松下も前節から代わって名を連ねている。

 一方のレノファ山口FCは、前節・ジェフユナイテッド市原・千葉に1-4の敗戦で現在4連敗中。またミッドウィークに行われた天皇杯準々決勝・横浜Fマリノス戦でも1-5の敗戦と、ここ数試合は失点も多く、苦しい時期を過ごしている。また追い打ちを掛けるように、主力でありキャプテンの河野が千葉戦で膝の大怪我を負って戦線離脱。

 前節の敗戦でプレーオフ圏外に落ちて、逃げる立場から追う立場へと変わった山口は、ここで同じプレーオフ争いのライバルである仙台を倒して、再び浮上していきたい一戦だ。

 山口は、平瀬が出場停止。代わりに夏にカターレ富山から加入した下堂が起用された。また、天皇杯に出場した佐藤、吉岡、奥山、末永らもスタメンに名を連ねた。ベンチには前節ゴールを決めている酒井や若月、野寄などのアタッカー陣が控えている。

 

前半

(1)不確定要素の多いコンディションで

 この試合は、山口のホームゲームではあるが、いつもの維新みらいふスタジアムではなく、年に1度の下関開催だった。

 会場となったセービング陸上競技場は、芝の状態も良くなく、また土も固いことに加えて試合前、ハーフタイムには散水を実施しなかったこともあり、かなりボコボコの状態でボールコントロールするのにも苦労するコンディションとなっていた。

 仙台キックオフで始まった試合だったが、さっそく奥山がロングボールを敵陣へ送り込もうとするもボールがバウンドし、浮かしてからキックしていたことからも、この日のピッチコンディションが難しいものであることが分かった。

 

 そんな不確定要素が多いコンディションのなかで、どうしても両チームともにミスからの失点は避けたくなる。よってお互いにロングボールを前線へ送り込むシーンが多く、中盤を省略するサッカーに終始した。

 

 そんななかで、山口は序盤は2トップを目掛けてというより、ディフェンスラインの背後を目掛けたロングボールが多かった。

 徐々に仙台が背後をケアするようになると、今度はディフェンスライン手前にボールを送り込むようになる。22分には下堂がディフェンスとボランチの間に上手くロングフィードを送り、末永のシュートチャンスへ繋げた。

 山口はディフェンスラインの背後と、そのセカンドボールを回収するために二列目、三列目が常に回収できるポジションに立つことで、仙台よりも素早く反応することを意識していた。特に相田や吉岡は鋭くセカンドボールに反応する場面が見られた。

 

 対する仙台は、山口のロングボールに対して小出と菅田を中心に競り勝つことも多く、そこまで決定的な場面は作らせなかった。

 しかし、前述したようにディフェンスとボランチの間にスペースが生まれるときがあり、そこへボールが入って山口に前を向かれると場面がなかったわけではない。それでも全員がアラートに守ることで、シュートまで持ち込ませないことは出来ていた。

 

(2)同サイド完結と逆サイドの待機

 仙台も前進するときは、基本的に中山、エロンを目掛けたロングボールから二列目が回収して敵陣へ侵入していくことを狙っていた。

 ただ、仙台はそれだけではなく地上戦からも前進しようと試みる。

 特にこの試合は右サイド偏重の前進が多く、小出を攻撃の起点として真瀬が高い位置を取るポジショニングが目立った。そして、そこから基本的には同サイドで崩していこうとする。

 ただ、仙台としてはボールサイドの圧縮して守備をする山口に対して逆サイドを使うことも狙っていた。左サイドハーフの中島は右サイドにボールがあるときは内側に入っていくのではなく、左サイドで待機していることが多かった。恐らくボールホルダーが前を向いた状態になれば、逆サイドへ展開していくことも狙っていた。

 実際に松井から中島へのサイドチェンジのシーンも二度ほどあり、1つは中島が収めたものの、追い越した奥山が転んでしまい攻撃は上手くいかなかったが、あのようなシーンはもう少し作りたかったはずだ。

 しかしピッチコンディションが悪く、なかなか逆サイドへ展開するシーンは作ることが出来ずに、同サイドで攻撃を完結させようとする回数の方が多かった。

 

 仙台のチャンスシーンはコーナーキックからだった。34分からは4本連続のコーナーキックの時間帯があり、エロンと松井のヘディングシュートがあったものの、田口にセーブされ、得点を奪うことが出来なかった。

 

 前半は、不確定要素の多いコンディションのなかで、両チームともにロングボールが増える展開となり、そのロングボールに対応しながらも、どうやってゴールを奪っていくのか思考を巡らしていた内容だった。スコアレスで後半へと折り返す。

 

後半

(1)石尾がもたらした安定感

 仙台は、前半に頭部を痛めた菅田に代わって怪我明けの石尾がセンターバックに投入される。

 緊急登板的な出場となった石尾だったが、この交代によって攻守に安定感をもたらしていた。

 まず、守備では菅田ほど空中戦が強いわけではないが、それでも181㎝あるのでロングボールに対して卒なくこなしていた。また、スピードのある選手に対して、しっかり間合いを取って駆け引きしながら対応できていたのが好印象だった。

 また、攻撃においても石尾がビルドアップの起点となり、右ハーフスペースへ出る小出と2トップ脇で顔を出すようになった鎌田へシンプルにボールを配球し、味方に時間とスペースを配ることでボール保持の安定にも貢献していた。

 特に石尾はボールをもらうポジションが良く、深さを作ったり、もらうポジショニングを素早く変えることでサポートする態勢を整えていた。

 また対角のロングフィードも精度が高く、怪我明けとは思えないパフォーマンスで緊急事態を乗り切ることが出来た。

 

 石尾の登場によってボール保持が安定した仙台は、右偏重だった攻撃から左右へボールを振って攻撃することができた。

 苦しくなったときは2トップへロングボールを送るシーンもありながら、後半は前半よりも攻撃の内容を改善することができたと思う。

 

(2)勝負を分けたセットプレー

 一方の山口は、基本的にはロングボールによる前進は変えなかったものの、特徴であるサイドアタックからチャンスを作り出していく。

 48分には敵陣でボールを奪うと、吉岡のクロスに山本が合わせるもゴール左へ逸れる。

 その後、57分には佐藤と末永に代えて田邉と酒井を投入。67分には山本と奥山に代えて野寄と若月を投入し、ここまでレギュラーとして出場していたメンバーを立て続けにピッチへ送り込んだ。

 

 一方の仙台は、62分に中山に代わって古巣対戦となる梅木を投入。71分には松井とエロンに代わって工藤とオナイウを投入する。梅木とオナイウの2トップにすることで、梅木の競ったボールにオナイウが反応するような形を狙った。

 この試合での梅木は、以前と比べると空中戦で先に触ることが多く、またエロンのように収めたり、二列目、三列目に落とすようなプレーではなく、前方へ逸らすような形の競り勝ち方が多かった。決してマイボールになる回数は多くなかったが、それでもディフェンスに当たってスローインになるなど、ポイントになれることは以前にも増して多くなった。

 

 そして、拮抗した試合はセットプレーで動くこととなる。

 きっかけは小出のロングフィードに真瀬が反応し、新保との競り合いを制するとそのままペナルティエリアへ侵入。そのこぼれを工藤がミドルシュートを狙うも、ディフェンスに当たってコーナーキックとなる。

 この試合、6本目となるコーナーキック。鎌田のインスイングのボールに中島がニアで合わせて仙台が先制に成功する。

 鎌田曰く、あのキックはミスキックだったとのことだったが、中島が勘付いてニアへ飛び込んだことが功を奏した。加えてオナイウがヘナンをしっかり抑えて中島への対応を遅らせたのもポイントだっただろう。

 

 1点を追う山口は、吉岡に代えて板倉を投入する。この交代のタイミングでセンターバックだった下堂を最前線へ上げてパワープレーに出る。

 交代直後の77分には、相田のロングスローからこぼれ球を野寄が狙うも右ポスト直撃。さらに79分には新保のクロスに前がフリーで合わせるも、ここは林のスーパーセーブで難を逃れる。

 

 仙台は最後の交代で中島に代えて相良を投入する。ラスト10分は相良が左ウイングバックに入る5-4-1のシステムに変更し、1点を守り切る戦いへシフトチェンジする。

 その後も山口のロングボール、クロス、セットプレーなどを跳ね返した続けた仙台。前節の反省も生かしてアディショナルタイム5分も自陣でのファウルに細心の注意を払いながら、最後まで集中を切らさずに守り切り試合を終わらせた。

 

 仙台は虎の子の1点を守り切り、4試合ぶりの勝利。勝点を55に伸ばしてプレーオフ進出に向けて一歩前進した。

 

最後に・・・

 不確定要素の多いコンディションで、お互いに自分たちらしさを出し切れないながらも、気持ちと球際が激しくぶつかり合う試合となった。勝敗を分けたのはセットプレー。こういうコンディション、試合だからこそセットプレーを活かして勝利できたのは非常に大きい。

 また、前節の悔しい引き分けもあり、この試合は前節以上にアラートに最後まで集中を切らさずに守り切ることができた。菅田が前半で退くというアクシデントもあったが、代わりに起用された石尾が役割以上の活躍を見せてくれたことも、最終盤に向けて大きな収穫となった。

 とにかく勝点3が欲しい試合で、かつ6ポインターでもあったなかで勝てたことは大きい。残り5試合も簡単な相手は1つもなく、すべての試合が総力戦となる。1試合1試合、今節のような粘り強く戦う姿勢を見せられれば、自然と結果も付いてくるのではないだろうか。

 

 次節はホームに戻ってブラウブリッツ秋田との試合となる。前半戦は敵地でスコアレスドロー。秋田特有の気候もあり、押し込まれる展開が続き、なんとかアウェイで勝点1を拾った試合だった。秋田は山口、岡山、千葉とプレーオフ争いを繰り広げているクラブを後半戦で食っている。またロングボール、セットプレーの質は非常に高く、今節以上に集中力を切らさずに守らなければならない。またタイトな守備も特徴の秋田だけに、簡単には崩せないだろう。今節同様にセットプレーを生かしたり、カウンターなどで一瞬の隙を突きたいところだ。

 まずは目の前の対戦相手を倒すことに集中したい。いい戦いができれば結果は自然とついてくるはずだ。次節もとにかくハードワークして、秋田に襲い掛かっていって欲しい!!

 

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