ヒグのサッカー分析ブログ

ベガルタ仙台の試合分析が中心です。

ここまでの成長とこれからの成長と~J1 2ndステージ第10節 ベガルタ仙台vsサンフレッチェ広島~

 前節、6試合ぶりの敗戦を喫した仙台。今節はホームに広島を迎え撃つ。代表ウィーク前の最後のリーグ戦。f:id:khigu:20191230151327p:plain

 前節、大宮に敗れた仙台。相変わらずケガ人が多いチーム状況は変わらないが、石川直樹が左サイドバックで復帰。藤村が左サイドハーフになった。それ以外は変更点はなし。

 一方の広島。前節、甲府に手痛い敗戦。チャンピオンシップに行くためにはこれ以上は負けれられない状況である。今節はリーグトップスコアラーのウタカが胃腸炎のために欠場で代わりに佐藤寿人。3バックは水本、塩谷が帰ってきてお馴染みの3人になっている。

 

■前半~自分たちを表現するために~

 前半における仙台の立ち振る舞いは、「自分たちを表現する」ことにあったと思う。今シーズンの仙台であれば、どこが相手であろうとボールを握ることを第一としてやっているので、もちろんこの判断で間違えはなかったと思う。

 仙台は自陣で4-4-2のブロックを作ることと、相手陣地で前プレを掛けることの使い分けを狙った。最初の10分間そうであったように、広島が後ろでビルドアップを開始したら、まずはブロックを作ることを始め、広島に縦パスを通させないようにする。時折、2トップが曖昧なポジショニングとプレスで青山に通されて、簡単に1列目を突破されるシーンがあったが、あまり2人に守備で求めてもしょうがない。

 広島は真ん中が無理ならサイドからと、ミキッチサイドからの攻撃を増やす。ミキッチのフェイントに尻もちをつく藤村。ミキッチの多種多彩な攻撃に対して、左サイドは守備に追われることが多かった。

 仙台の守備でもう1つ狙いとしてやっていたのが、前プレ。キーパーがボールを持ったらスイッチを入れようというのが、合言葉。卓人がボールを持つと2トップにサイドハーフボランチまでもが広島陣内で人を捕まえる。

 この守備が正直言ってまずかったシーンがちらほらあった。もちろんボールを引っ掛けることが出来たシーンもあったが、単純に人だけ掛けて、ボールホルダーに対してプレスに行けてない。要は相手がプレスを感じていないシーンがかなり多かった。だから全体的に中途半端になって最終的に広島にプレッシャーを回避させられることがあった。人を掛けたなら行く、じゃなければいかないでブロックを作るというところの判断が曖昧になってしまっていた。

 30分の失点シーンはこれとはまた別の話。きっかけは敵陣での仙台のスローインを広島が奪ってから。青山が左に展開して柴崎が低い弾道でクロス。青山がそれをダイレクトで見事にミートして先制。シュート自体はどうしようもない。けどスローインで奪われてカウンターはもったいなかった。攻撃をやり切れなかったことで広島に広大なスペースを与える結果となった。

 

 まずは自分たちを表現しようの仙台。守備に曖昧さを残しながらも攻撃ではボールを保持した状況のとき狙いが見えていた。f:id:khigu:20191230151533p:plain

 広島の5-4-1のブロックに対して、仙台はボール保持時に3-1-4-2のような形となる。仙台の狙いはウイングバックを引っ張り出すこと。サイドバックが高い位置でボールを受け、ウイングバックを引っ張り出すとそのスペースに2トップが流れる。そして2トップの空けたスペースにサイドハーフが顔を出すという狙いがあった。もちろん状況に応じて流動的になるが、比較的狙い通りに出来ていたと思う。あとはシュートまでどう持っていくかが課題だった前半だった。

 

 守備では曖昧さが目立った前半。しかし攻撃では自分たちが準備してきたことをやろうという狙いが見えた前半だった。しかし広島のリードで折り返す。

 

■後半~縦への意識を強めよ!~

 後半は、仙台がボールを握る時間が長かった。

 仙台は後半も、前半のようにサイドを起点にミキッチ、柏を引っ張り出すことから攻撃を開始する。しかし、広島もハーフタイムに修正。石川直樹、菅井にボールが渡ったときはウイングバックではなく、まずは茶島、柴崎が出ていくことで、サイドの裏をケアしようとしていた。状況に応じてはウイングバックが対応することもあった。

 ということで仙台は攻撃のルートを変更することが必要になったが、仙台は、ウイングバックが出てこない分、斜めのパスを多用していた。具体的に言えばサイドから斜めにウイルソンやハモンに入れるボールである。前半は比較的外でプレーする時間が多かった2トップだが、後半はより中で勝負するシーンのほうが多かった。

 仙台はサイドバックから、または三田や富田の縦パスで崩していくシーンが増えていく。また守備では切り替えも早くなり、奪われてもプレスを早く行うことで、高い位置でボールを奪え、2次攻撃へとつなげることが出来るようになった。よって仙台は広島を押し込んでいくような形になっていった。

 しかし最後のシュートのところで決めきれない。卓人まで届く場面をいくつも作っていくが、最後の精度の問題、広島の守備の粘り強さで卓人の守るゴールを揺らすことが出来ない。

 仙台は菅井→パブロ。藤村を右サイドバックへ。菅井はケガの影響もあったのかもしれないが、藤村が右サイドバックにいることで、縦パスの配給役を増やす。

 しかし75分にその右サイドから失点。途中投入の清水をパブロと藤村が止めきれずに突破され、クロスを上げられる。博文がカットするものの、それが中途半端になり、柴崎のもとへ。そして柴崎の左足一閃で追加点。博文のところをハッキリクリアできれば問題はなかったが、繋げてカウンターという意識があったのだろう。広島は守りながらもしっかり自分たちの少ないチャンスを生かすことに成功した。

 

 残り時間も仙台の猛攻は続く。パブロのシュート、ウイルソンのヘディングも決めきることは出来なかった。あと一歩のところまで行くが決めきれない切なさ。

 広島はケガだった森崎浩司を出す余裕を見せて、ゲームを締めた。0-2。チャレンジし続けた仙台であったが最後まで広島ゴールを破り切れずに試合巧者の広島に敗れてしまった。

 

■最後に・・・

 広島にまた格の違いを見せつけられる形となったゲームだった。しかしここ最近の広島戦の中では、自分たちを表現するということが出来たゲームではなかっただろうか。攻撃ではサイドから再現性を持った攻撃が出来たし、決定機を何度も作ることが出来た。もちろんそれを決めきらなけらば意味はないのだけれど、まったく歯の立たなかった広島にここまで出来るようになったのは成長の証。

 仙台はいいチームになったと思う。評価されるようになったし、下位相手にはしっかり勝てる試合も増えた。けど、もっと上の景色があることを広島はこのゲームで教えてくれたと思う。いいチームから強いチームへ、まだまだ仙台には成長が必要だと感じるゲームだった。ここまでの成長を素直に喜びながら、次なる成長を共にまた楽しみたい。

 来週は天皇杯グルージャ盛岡戦、その次のリーグ戦はマリノス。この広島戦で得た経験を次の試合でぶつけて欲しい!!