さて、今回はFC東京戦を取り上げます。
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スタメン
前節のジュビロ磐田戦、早い時間で2点を奪いそのまま逃げ切ったベガルタ仙台は、今節も前節同様のスタメンをチョイスした。これで3試合連続で同じメンバーとなる。ベンチにはこの夏に加入した中原が入った。
一方、前節・セレッソ大阪戦で快勝したFC東京は、右サイドハーフが大森からこの夏に帰ってきた三田が起用されている。古巣対戦。
昨年から続く相性の良さか、首位の貫録を見せるか。そんなテーマの試合となった。
前半
(1)リスク管理しながらボール保持をした仙台
試合は、仙台がエンドチェンジを行ってキックオフとなった。
前半の展開としては、お互いにボール保持と非保持の局面が入れ替わりながら進んでいった。ということで、そのお互いのボール保持・非保持の局面について前半は見ていくこととしたい。
まずは仙台のボール保持、東京のボール非保持の局面から。
東京のボール非保持の振る舞いを見ていくと、いつもは2トップのプレッシングを合図に前プレを実行していくのだが、今節の東京は夏の戦いを意識し、引いて構える姿勢でゲームを進めていった。
2トップは、無理に仙台のビルドアップ隊を追わずに中央に位置する。全体も中央圧縮し、サイドの選手にボールが渡った際は、サイドハーフやサイドバックがスライドして対応する形だった。東京としては、しっかりブロックを形成し、奪ったところからのカウンターを狙いとしていた。
それに対して仙台は、7分に富田がセンターバック間に落ちて(サリー)、センターバックを助ける動きをしたものの、その後は上図のような形でボールを動かすシーンがほとんどだった。
仙台としても東京のカウンターを気を付けたいので、極力センターバックは中央から動かすことをせず、ボランチが相手2トップ脇でボールを受けてからの前進をメインとしていた。
崩しの狙いは2つで、1つは同サイドでのコンビネーション。もう1つはサイドチェンジからアイソレーションによる崩しだった。
ボール保持からの前進のそのほとんどが、松下からだったので、主に左サイドからの前進が中心だった。よって、アイソレーションも左サイドから蜂須賀へというシーンがほとんどだった。
仙台の攻撃は、中央を固める東京の守備に対して、サイドからのクロスがメインだった。惜しいシーンまでは作れたものの林を脅かすシーンを作ることはできなかった。
渡邉監督が試合後の会見で話していたが、前半は相手のカウンターを警戒したこともあって、人数を掛けた攻撃がなかなかできなかった。リスク管理をしながら、ボールを保持し、攻めに出ていた前半の内容だった。
(2)永井のランニングとフリーマン2人
続いて東京のボール保持と仙台のボール非保持の局面を見ていきたい。
東京のボール保持の狙いは主に2つだった。1つは、永井を仙台のサイドバックとセンターバックの背後へランニングさせるロングフィードによる前進。
もう1つは、橋本がセンターバック間へ落ちて、ボール保持を安定させ、そこからサイドを経由して前進していくパターン。このときに髙萩と東がフリーマン的役割で、ピッチのさまざまなところで顔を出すことが特徴的だった。この辺りは前回対戦のときと大きな変化はなかった。
また右サイドでは、三田がペナルティエリアの角やニアゾーンへ侵入してくる攻撃も見られた。
そんな東京に対して、仙台も前回対戦と似たような守備の仕方をしていた。特に特徴的なのがサイドハーフで、左の関口は対峙する室屋に対して付いていく形。自陣に引いたときは5バックのようになるときもあった。
一方の右は、3枚になる東京のビルドアップ隊に対して道渕が前に出て、数を合わせる形を取っていた。
しかし道渕が前に出るものの、道渕がオジェソクのパスコースを消していないので、森重からオジェソクへパスが通り、道渕が二度追いするシーンが何度か見られた。
理想としては、上図のように道渕がサイドバックのパスコースを切りながら森重へプレスを掛け、コースを限定させることが1つ挙げられる。そして森重がボランチやサイドハーフへパスを出すところを狙うといったことをしたい。
もしくは道渕が前に出たならば、それに呼応してサイドバック(蜂須賀)が相手サイドバックへとプレスに行くか。どちらかが考えられる。
仙台はここ最近、前からプレスに行きたい意識を見せているが、そのプレスに連動性がないシーンが多い。なので、コースを切りながらプレスを掛けるか、それか全体がさらに連動して守備をするか。その辺は仙台の課題と言えるだろう。
ただ、東京に危ないシーンを作らせたかというと、危ないシーンはほとんど作らせなかった。
飲水タイムを挟んで道渕がプレスに行かなくなり、ある程度構えて守備をする方向へシフトチェンジしたこともあり、シマオと平岡を中心にしっかり東京の守備を跳ね返すことができた前半だった。
前半はお互いに慎重に、そして睨み合いのような展開だった。スコアレスで折り返す。
後半
(1)より迫力のある攻撃にするために
前半は、お互いに睨み合いのような展開。リスクを最小限に抑えながら、後半勝負という過ごし方だった。そんな後半はどこで、どうやってギアを上げていくか、そして過酷な条件のなかで自分たちの土俵でサッカーをできるかがテーマとなる。
まずは、仙台が施した修正ポイントから見ていくこととしたい。
前半は、東京のカウンターを警戒しながらのプレーだったために、仙台はボール保持の局面で人数とリスクを掛けずにプレーしていたのがほとんどだった。
しかしギアを上げたい後半は、前半よりも縦に早くボールを送ることが多くなる。東京からボールを奪うと、2トップが相手サイドバック裏へとランニングし、そこへボールを送ることで、素早く相手の背後を取って前進しようと試みるシーンが増えた。
そして、相手の背後でボールを収め、全体を押し上げ、そこから相手ゴールへ迫るシーンを作っていった。
またボール保持の局面に移行すると、後半は富田が右斜めに落ち、蜂須賀を押し上げるようになる。前半の右サイドは蜂須賀と道渕だけで、突破しようというシーンがほとんどだったが、富田がいることで蜂須賀が高い位置を取れ、道渕との距離感も改善された。
よって、仙台は素早く縦にボールを送ることを優先としながら、ボール保持の局面に移行すれば、サイドで3人ないし、4人で数的優位を形成して攻める狙いを見せていった。
(2)してやったりの東と永井
続いて後半に入っての東京を見ていく。
後半の東京の入り方は前半とあまり変わらないものだった。前から守備のスイッチを入れるというよりは、まずは仙台のボール保持に対してしっかり構えて守備をするシーンが多かった。
ただ、変化したポイントとしては、自陣に撤退したときの2トップの関係が縦関係になっていたことだ。基本的にはディエゴオリヴェイラがトップ下のように、永井がワントップのようになっていた。おそらく仙台のボランチをケアするためのものだと思われる。
そしてロングカウンターから永井の裏というのも準備していただろう。
そして56分に狙い通りの形が実現する。東京のゴールキックの流れからセカンドボールを東が回収し、裏へ走っていた永井へ。裏を取られたシマオが後手を踏み倒すとPK獲得。してやったりの東と永井だった。
そしてそのPKをディエゴオリヴェイラが一度は止められるも、クバがラインを踏んでいなかったためやり直し。そのやり直しを決めて、東京が先手を取ることに成功した。
(3)前からの守備でギアを上げる東京
先手を取られた仙台は、攻めの姿勢を強めて東京を押し込む展開へと持っていきたい。
しかし、東京がそうはさせまいとギアをもう一段階上げる。
飲水タイムを挟んだ70分以降から、東京は前からプレッシングを開始する。ここまで前プレをせずに、体力を温存していたかのように、仙台のボール保持に襲い掛かり、時間とスペースを奪い取っていった。
仙台はこのプレスにかなり苦しめられることとなる。特に前半はスムーズに前進できていた左サイドでは平岡が三田のプレッシングを受けたことで、前進が窮屈になってしまう。
東京は守備の強度を保つためのカードを切っていく。ジャエル、大森、ナ・サンホを投入し、守備、特に前プレの強度を保つことで、ゲームを上手くオーガナイズさせていった。
仙台は長沢、中原、リャンと攻撃のカードを切っていく。しかし新加入の中原はゲーム勘がなく、ミスが続いてしまい攻撃の勢いを削ぐ形となってしまった。
リャンは、左サイドから右サイドへ流れ、ペナ角に侵入し、ボールを受けることでチャンスメイクしていたが、その落としをハモンが活かしきれない。
最後の最後まで東京の牙城を崩せなかった仙台。先制点は思っていた以上に自分たちへと重くのしかかる結果となってしまった。0-1での敗戦を喫した。
最後に・・・
PKでの1点が最後まで重かった試合。首位の貫録を見せつけられてしまった。
しかし、90分を通じてみれば、危ないシーンや自分たちが与えてしまった隙はPKくらいで、それ以外ではしっかり守ることができており、本音を言えば勝ち点1でも持ち帰りたかった内容だった。
あとは攻撃でもっと変化が欲しい内容だった。特に先手を奪われた後半。相手の堅い守備を崩しきるためのアイデアと勢いが不足していた。この辺りは戦術的なところと切り札的な存在が必要になってくると思う。切り札で言えば、ジャーメインや崇兆、海夏といったところがケガから帰ってくれば、より攻撃のギアを上げることができると考えている。
水曜日の天皇杯・富山戦を挟み、次節はホームでの川崎フロンターレ戦。上位との対戦だが、連敗は避けたいところ。今節できた我慢強い守備でペースを掴み、王者から勝点3をもぎ取ることを期待したい!!