ヒグのサッカー分析ブログ

ベガルタ仙台の試合分析が中心です。

サイドハーフ西村は救世主となれるか!?~明治安田生命J1第35節 ベガルタ仙台vs名古屋グランパス~

 さて、今回は名古屋グランパス戦を振り返ります。残すところ4試合。

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スタメン

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 ベガルタ仙台は、前節・ヴィッセル神戸と対戦し2-4で敗戦。前半で1人減ったものの一時は同点に追いつき気持ちを見せたゲームだったが、個人能力高い神戸に、自分たちのミスもありながら押し切られた形だ。残留に向けて負けられないことは変わらない。この試合も全力で勝利へ向かっていく。

 今節は出場停止のアピアタウィアに代わり福森がセンターバックに。また左サイドハーフに西村、右に関口という布陣にした。ベンチには平岡、加藤らが入っている。

 一方の名古屋グランパスは、ルヴァンカップを制し、リーグ戦ではACL圏内に向けて神戸を追っている状況。前節は柏レイソルに2-0で勝利するなど、連戦で厳しいコンディションであるが、確実に結果を出している。ACLを目指す名古屋にとっても勝利が必須条件の試合だ。

 今節は柏戦から3人のメンバーを変更。ボランチに長澤、左サイドハーフに相馬、2トップの一角に柿谷が起用された。ベンチには山崎、シャビエル、齋藤学、シュヴィルツォクら攻撃陣が多く控えている。

 

前半

(1)サイドからの侵入で先手を取った名古屋

 この試合はお互いに、積極的にボールを奪いに行くよりも、11人で構えて守備を行うことをベースに戦っているだけに、両者ともにボールを保持できた時間があったし、逆に構える時間もあった前半だった。

 そんな展開のなかで先手を取った名古屋のボール保持から見ていく。

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 名古屋は4-4-2でブロックを組む仙台に対して、システムを可変させずにサイドから前進させていくシーンがメインだった。

 開始15秒で中谷から相馬への対角フィードから決定機を作ったようにセンターバックからサイドハーフへの対角フィードや、サイドバックからサイドハーフへの外外循環でボールを前進させていく。

 そのときに柿谷がフリーマンの役割でボールサイドに絡むことで、数的優位を作る。また、左サイドにボールがあるときは逆サイドのマテウスが中へ侵入して、バイタルエリアでボールを受けるシーンが見られた。

 先制点のシーンも左サイドからの崩しから。柿谷や長澤がいることで吉野と富田がサイドに引っ張られ、最終的に中央が空く形になった。

 

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 時間の経過とともに仙台が前からプレッシングを開始すると、今度はラインアップした仙台のディフェンスラインの背後を前田(ときどき柿谷)がランニングするようになる。チャンスに直結することはなかったが、押し上げたい仙台にとっては前田や柿谷のランニングは非常に厄介だった。

 名古屋のボール保持に対して、4-4-2のブロックで構えていた仙台だが、先制点のシーンのように構えていた中で失点をしてしまった。

 これは、どこからボールを奪いに行くスイッチを入れるのか、構えたときにどう相手の攻撃を限定してボールを奪うのかが曖昧だったことが原因だったと思う。だから失点もあっけなく取られた印象になった。

 

(2)ハーフスペースで居場所を見つける西村とバランスを取る関口

 序盤で名古屋が先手を取ったこともあるが、この試合はほかの試合に比べて仙台がボールを保持できた時間が長かった。そんな展開で、仙台も効果的にボールを動かしてチャンスを作れたと思う。

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 仙台のボール保持のパターンは2つあった。

 1つはボランチが相手2トップの脇に登場してボールを引き出し、そこから前進していくパターン。このときに西村と関口、赤﨑は中央3レーンにポジショニングし、ボールを受ける。

 また、富樫が背後へのランニングを繰り返すことで、センターバックを引っ張り、できた手前のスペースを有効活用することができていた。

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 もう1つは富田がセンターバックの列に下がるパターン。このときにバランスを取るために関口がボランチの位置まで下がってビルドアップ隊に加わっていたことが印象的だった。そうすることでボール保持を安定させることに成功する。

 

 加えて、名古屋が前からプレッシングに来たときもそれを剥がして擬似カウンターを発動することもできた。

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 31分のプレーでは、名古屋がプレッシングに来たところをクバ→西村で剥がして一気に擬似カウンターを発動させた。

 サイドハーフで起用された西村は、攻守において貢献度が高かった。特にボール保持の局面では上記のように攻撃の起点になったり、ハーフスペースでボールを受けて仕掛けたり、時には奪ったボールを受けてキープし、味方へ繋ぐことでボール保持の局面へと移行させたりと、非常に効果的なプレーを繰り返していた。また守備では切り替えが早く、プレスバックでボールを奪うシーンはとても多かった。

 

 前半は序盤に失点したものの、ボール保持の局面では一定の手応えを掴んだという内容だった。

 前半は名古屋が柿谷のゴールで先制し、後半へ折り返す。

 

後半

(1)ミラーゲームだと思い出す仙台

 前半は守備時に構えて名古屋のボール保持に対応していたが、奪いどころが定まらず苦労した。

 得点を奪いに行かなければならない状況で、後半の仙台は高い位置から仕掛け出す。

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 名古屋のボール保持は形を変えずに4-4-2になるので、基本的にミラーゲームになる。

 なので仙台は、名古屋のサイドバックにボールが入った段階でサイドハーフがプレスを掛けるようになった。このことで前半よりも高い位置でボールを引っ掛けられるようになる。

 そして後半開始早々に追いつく。これもきっかけは名古屋のサイドバックへ仙台のサイドハーフがプレスを行ったところからだった。

 仙台としては、早い段階で結果が出て振り出しに戻せたことは大きかった。

 

(2)一進一退の攻防。選手交代によって変化をもたらそうとする両監督。

 仙台が同点に追いついた後は一進一退の攻防が続いた。

 仙台は富樫の背後へのランニングを軸に逆転を狙い、名古屋はシャビエルや森下、シュヴィルツォクを早い段階で投入し、攻撃をパワーアップさせる。

 しかし両者ともに決め手を欠くような時間が続いていった。

 

 流れが変わったのは68分の仙台の交代だった。仙台は富田と富樫に代えて中原とカルドーゾを投入する。

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 前線にパワーを加えたかったカルドーゾの投入だが、それが裏目に出た形となった。

 カルドーゾになったことで、富樫ができていたプレスの部分で、うまく制限できなくなり、結果として仙台はボールを保持され、押し込まれる展開が長くなった。

 またカルドーゾは懐にボールを収めたときの強さはあるが、スペースのランニングを得意としている訳ではないので、引いたチームをなかなか押し上げられることもできなかった。この辺りは監督もコメントしたが非常に悔しい形となった。

 

 それでもクバや吉野、福森を中心として集中力の高い守備で、個人能力の高い名古屋の攻撃を阻む。

 アディショナルタイムにはコーナーキックから赤﨑がネットを揺らすも、オフサイドでゲームは終了。

 両者ともに勝ちたかった一戦は痛み分けに終わった。

 

最後に・・・

 先制点を奪われたものの、後半直後に追いつけたことで逆転のチャンスもあった試合だったが、今シーズン初の逆転勝利とはならなかった。

 ボール保持の局面では、堅守の名古屋に対して手応えのある内容だったと思う。一方で守備では構えたところからの失点で、そこは反省点だろう。後半序盤のように前からボールを奪いに行くシーンを前半から増やして、高い位置でボールを奪う回数を増やせれば、もっとチャンスができたかなとも思う。

 

 サイドハーフに起用された西村は、前述した通りで攻守に存在感を見せた。元々シャドーの位置を得意とするだけに、ハーフスペースでのボールの受け方は上手いし、前を向いた時の迫力はさすがだった。残りの3試合でどのような起用をされるか分からないが、また同じポジションでの起用を見てみたい。

 

 残りは3試合。次節はホームで湘南ベルマーレとの直接対決。ここで負ければ終戦に近い状態となるため、正真正銘のデスマッチとなる。

 代表ウィークがあり、リーグは1週間のお休みとなるが、まずは最良の準備をして、またユアスタで全力で戦うチームに応援したいし、期待したい!!

気持ちを切らさずに戦えた90分間~明治安田生命J1第34節 ヴィッセル神戸vsベガルタ仙台~

 さて、今回はヴィッセル神戸戦を振り返ります。泣いても笑っても残り5試合。

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スタメン

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 ベガルタ仙台は、前節・サンフレッチェ広島戦で2-0の勝利。今シーズン初の複数得点差での勝利となった。大分トリニータとの直接対決に敗れたものの、前節の勝利で希望がつながった。今節も守備をベースにした戦いで難敵・ヴィッセル神戸から勝点3奪取を目指す。

 今節は、松下から上原に変更。それ以外に変更点はなし。ベンチには久々にフォギーニョが入り、前節得点を決めた氣田ではなく中原がベンチ入りをした。

 ヴィッセル神戸は、前節・名古屋グランパスとのACL争い直接対決で2点差を追いつきアウェイで勝点1を奪った。今シーズンは夏に古橋が抜けたものの、武藤や大迫、ボージャンなど余りある補強で、結果を残し、ACL圏内をキープしている。2年ぶりのACL出場を目指すためにも、ホームでしっかり勝利したい一戦だ。

 神戸は佐々木大樹が欠場。代わりに中坂がスタメン。ベンチにはケガ明けの大迫やリンコン、山口蛍らが前節と代わって入った。

 

前半

(1)開始直後の奪い合いとレーンと人で押し込む神戸

 試合は開始早々から動いた。

 神戸が左サイドでフリーキックを得るとイニエスタの正確なキックにニアで武藤が合わせて先制。

 その3分後に仙台も、セットプレーのセカンドボールを拾って崇兆のファーサイドへのクロスに真瀬が合わせてすぐさま同点に追いつく。

 開始直後から落ち着かないゲーム展開だったが、次第に力関係通りに神戸がボールを保持し、仙台が守備ブロックを構える展開になっていく。

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 神戸はセンターバックとサンペールがビルドアップ隊。両サイドバックが高い位置を取って、インサイドハーフイニエスタとともに各レーンに構える配置。

 イニエスタはフリーマンとして自由に動き、インサイドハーフの2人はハーフスペースからサイドへ流れたり、そのままハーフスペースを突撃したりする。またボールサイドと逆のインサイドハーフは、ネガティブトランジションへの準備として真ん中にポジショニングすることが多かった。

 2トップの役割はドウグラスは中央に鎮座し、武藤が両サイドへフォローへ来たり、カウンターのときには積極的に背後へ抜け出していくタスクになっていた。なので武藤が気づけば左サイドに顔を出すなんていうシーンは結構あった。

 

 それに対して仙台は、基本的に自陣で守備ブロックを敷く形。赤﨑がサンペールとデートし、サンペールからの球出しをけん制する。富樫はセンターバックに対してサイドへボールが循環するようなプレッシングを行う。

 仙台のサイドハーフは2トップと一緒に前プレを掛けるよりも、自陣に下がって4-4のブロックを形成することを優先した。これは神戸が各レーンに人を配置したことで、横4人の距離感を空けないことをより意識したからかもしれない。

 

 仙台は「ボールを奪いに行く」というよりも自陣で「ゴールを守る」守備を行う。これはこの試合だけではなく、この1年通して言えることだが、この試合では前半からよりそれが顕著だった。

 

 しかし、人数を掛けて自陣で守ってもこのドウグラスのように個人技を炸裂させてしまうと、とても切ない。このゴールに関しては個人の技術でこじ開けられた失点だった。

 

(2)奪った先の狙いとボール保持の狙い

 神戸にボールを保持される時間帯は長かったが、それでも今節の仙台はボールを奪ったときとボールを保持したときの狙いは見て取れた。

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 まずボールを奪った先では、神戸のシステムのズレからサイドバックに時間とスペースが得られるので、早いタイミングでサイドバックへボールを付けることで、神戸のネガティブトランジションからの解放を狙った。

 特にクバから崇兆、上原から崇兆など左サイドに展開したときに、うまく神戸のネガティブトランジションから解放されてボール保持の展開へと移行することができていた。

 

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 ボール保持でもやはりサイドバックを起点とした前進を狙っていた。

 神戸のプレッシングはサイドバックに対してインサイドハーフがプレッシングに行く仕組みとなっていた。よって仙台はインサイドハーフを来させて、その背後(サンペール脇)を突くことで神戸のプレッシングを剥がしにかかる。サンペール脇に登場するのは基本的に赤﨑、時々サイドハーフだった。

 またサイドバックサイドハーフのような外外循環も行っていた。特に右サイドでは真瀬から加藤へ繋ぐシーンが多かったが、加藤が初瀬になかなか勝てずに、加藤の位置でボールを奪われることが多かった。

 前半は加藤と初瀬のマッチアップが非常に多かったが、攻守においてほぼ初瀬が勝っていた。よって右サイドを制圧され、序盤からファウルの多い展開に仙台はなってしまった。

 

(3)アピアタウィアの退場

 前半は45分間通じて、神戸に仙台の右サイドを制圧され、ファウルも重ね厳しい状況が続いたが、決定的だったのが44分のシーンだった。

 真瀬が初瀬のボールを奪われ、初瀬はランニングした武藤へスルーパス。突破を図る武藤をアピアタウィアが倒してファウル。この日1枚カードを受けていたアピアタウィアは、2枚目の警告を受けた退場となった。

 好調の武藤に対して、1枚カードを受けていたにも拘わらずチャレンジしてしまったアピアタウィア。若さ故と言えばそれまでだが、真瀬が全速力で戻っていたので、2人で対応できるように武藤のスピードを殺すことができれば良かったが、経験と技術が足りずチャレンジしてしまった。

 本人にとっても非常に悔しい退場となった。

 

 仙台は、後半の45分間を1点ビハインドのなかを10人で戦うこととなった。

 1-2で折り返す。

 

後半

(1)ボールを保持して前進していく勇気が結んだ同点ゴール

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 後半開始からのメンバーを確認すると、仙台はアピアタウィアが退場になったので福森がセンターバックに。それと同時に関口と加藤のポジション、それから富田と上原のポジションが前半と左右反対になっていた。

 神戸はアンカーの位置をサンペールから大崎へと変更している。

 

 10人となった仙台は、どうしても神戸にボールを保持される展開が続く。前半同様に自陣で守備ブロックを敷いて神戸の攻撃へと対応することには変わりはない。

 そのなかで前半に圧倒されていた加藤と初瀬のマッチアップを関口に変えることで、まずは右サイドの守備を修正した。この変更によって前半よりも右サイドの守備は安定したと思う。

 

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 また、仙台は1人減ったもののボール保持することを諦めなかった。後半になって神戸のペースが緩んだことで、ボールを奪った後に保持できる展開へと持ち込むことができた。

 ハーフタイムを挟んで、仙台はボール保持も仕込むことができていた。

 後半から上原が右のボランチになったことで右サイドでのボールを保持を安定させる。また上原が列を降りることを合図に両サイドバックが高い位置を取り、それに連動してサイドハーフは神戸の大崎脇へポジショニングし、シャドーのような振る舞いを見せる。

 両サイドバックを高い位置に押し上げられたことで、仙台は真瀬、崇兆が攻撃参加うする回数を増やすことができた。

 そして、崇兆の仕掛けからコーナーキックを獲得すると、加藤が決めて1人少ないながらも同点に追いつくことに成功する。

 

 神戸のペースが落ちたこともあるが、自分たちで安易にクリアせずにボールを保持できたことで、チャンスを作り同点に結びつけることができた。

 

(2)「個の質」で殴りにかかる神戸

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 同点後の59分に両者とも動く。神戸は山口とリンコンを投入。仙台は西村とカルドーゾを投入する。

 この神戸の交代は、ギアをもう一段階上げる交代だった。後半のスタートからスローテンポでゲームに入った神戸だったが、同点になったことでより人数の優位性に加えて、個の質もより強くして仙台へと襲い掛かる。

 そして投入直後の62分。富田からボールを奪うと山口の右足一閃で再び勝ち越しに成功する。このシーンでは、奪われた後の切り替えが早く、神戸がギアを上げた最初のプレーでの得点だった。

 

 そして70分には上原のミスパスを見逃さずにショートカウンターからリンコンが決めて一気に2点差へとリードを広げた。

 

 約20分間残された仙台。その後も10人ながらリスクを承知で仕掛けていった。蜂須賀やフォギーニョを投入し、サイドから活路を見出す。

 終盤にはコーナーキックから吉野がフリーでヘディングシュートを放つもキーパー正面。

 最後まで気持ちを見せた仙台だったが、ゴールという形で報われることはなかった。

 

 試合は2-4で終了。連勝を目指した仙台だったが、勝利することはできなかった。

 

最後に・・・

 10人になりながらも、最後まで気持ちを切らさずに戦えたことは、この試合の一番ポジティブだったところだろう。

 試合全体を振り返れば、前半からボールを保持される展開のなかで奪ったボールをより早く解放させて、自分たちがボールを保持する時間を増やしたかった。前半から神戸のプレスを剥がせそうなシーンはいくつかあっただけに悔いが残る。

 

 アピアタウィアの退場は、本人にとっては将来の糧になるだろう。退場になったシーンのあの悔しがり方を見るに、私たちが想像している以上に彼らは大きなプレッシャーとストレスを抱えながらプレーしているのだと改めて感じたシーンだった。

 残りは4試合だが、苦しい最中で戦っている選手を最後まで応援したいと思う。

 

 次節はホームで名古屋グランパスを迎える。名古屋もルヴァンカップを制し、そしてACL出場に向かって負けられない状態だ。もちろん一筋縄ではいかない。苦しい試合になるとは思うが、ホームで全力で戦って勝利を勝ち取りたい!!