ヒグのサッカー分析ブログ

ベガルタ仙台の試合分析が中心です。

勝利が一番の良薬~明治安田生命J1第33節 ベガルタ仙台vsサンフレッチェ広島~

 さて、今回はサンフレッチェ広島戦を振り返ります。残りは6試合。

↓前節のレビューはこちら

khigu-soccer.hatenablog.com

↓前回対戦のレビューはこちら

khigu-soccer.hatenablog.com

 

スタメン

f:id:khigu:20211024105205p:plain

 ベガルタ仙台は、大分トリニータとの直接対決に敗れ、残留に向けてかなり厳しい状況に陥ってしまった。それでも残りの可能性があるまでは全力で戦い続けてるしか道はない。今節のサンフレッチェ広島は、今シーズン対戦してカップ戦含め2勝1分と相性がいい相手。ホームで相性にいい広島に勝利し、最終盤に向かって上昇気流に乗りたい一戦だ。

 今節はメンバーを3人変更した。左サイドバックに崇兆、ボランチに富田、2トップの一角に富樫が起用された。ベンチには氣田や西村が前節と代わってメンバー入りを果たした。

 一方のサンフレッチェ広島は、3週間ぶりのリーグ戦。前節は名古屋グランパスに勝利。前線のケガ人が多いものの結果を残している。上位争いにも残留争いにも絡んでおらず、モチベーションが難しい状況だが、残り6試合を全力で戦う。

 スタメンもベンチも前節・名古屋戦と同様のメンバー。1トップの浅野が好調を維持している。

 

前半

(1)ボランチ脇を狙った仙台のビルドアップ

 前半は、仙台が広島がやってくることに対して、攻守両面である程度準備をしたなかでゲームに入ることができていた。

 前半については、まずその準備してきたことについて見ていきたい。

 

 まずは、ボール保持の局面から。

f:id:khigu:20211024201223p:plain

 試合開始から広島は前からのプレッシングで人を捕まえ、仙台に時間とスペースを奪おうとした。

 逆に仙台としては、前からプレッシングに来る広島に対して、その背後を突く狙いを持っていた。

 仙台が主に使いたかったエリアは「ボランチ脇」。広島は前プレを敢行するため、エリアというより人への意識が強い。特に仙台のセンターバックに対して森島と浅野が追いかけるシーンが多く、シャドーの森島の背後が空くような形となっていた。そこに加藤が登場し、ボールを受けることで、広島の前プレを搔い潜るシーンを作ることができていた。

f:id:khigu:20211024201836p:plain

 また、左サイドでは崇兆が起点になることが多かった。崇兆がボールを持つとプレスを掛けるのは右ウイングバックの藤井。関口には野上が付くようになっていた。

 仙台は左サイドでは人数を掛けて、広島をボールサイドに集め、赤﨑や関口らがボールを受けながら、ダブルボランチをスライドさせ逆サイドの加藤や真瀬を目指した。

 広島は人への守備意識が強く、またシャドーがボランチ脇のエリアをカバーしないので、そこをポイントに時間を作って前進することができた。

 先制点はスローインからだったが、右サイドで密集ができたことで広島のダブルボランチがサイドに引っ張られ、中央のスペースを開けることに成功した。

 富樫が受けれたことで上手くペナルティエリアへ侵入でき、富樫のポストプレーから中央のスペースでフリーなれた関口がゴールを決めることができた。

 

(2)3バックを攻撃に絡ませたい広島と対抗する仙台

 次にボール非保持を見ていく。

f:id:khigu:20211024203541p:plain

f:id:khigu:20211024203603p:plain

 広島のボール保持は、3バックの左右バック(佐々木と野上)をサイドバックのような役割にさせている。

 右サイドの攻撃は、ハイネルか青山が落ちて野上を上げる。そして柴崎がインサイドハーフのような振る舞いを見せ、ボールを受けるために落ちてくる。

 左サイドでは佐々木が左サイドバックになり、荒木と野上がセンターバックになる。

 なお、左右で形が違う意図はよく分からなかった。

 

 サイドで人数を掛けて攻める広島に対して、仙台も左右で違う対応を見せた。

 まず共通していることは赤﨑(時々富樫)が青山を監視していることだ。言うまでもなく一発で展開を変えられる青山をまず自由にさせない狙いを見せた。

 広島の右サイド(仙台の左サイド)からの攻撃に対して、関口は野上へプレスに行くのではなく、落ちてくる柴崎やハイネル、青山が利用したいスペースを予め埋めておくことで、彼らにボールが入ったときに対応できるようにしていた。

 反対に広島の左サイドからの攻撃に対しては、加藤が佐々木へプレッシングを掛けるシーンが多かった。これは富田や真瀬の守備基準点が明確にできていたこともあるだろう。

 どちらにせよ、少し後ろに重たくなりながらも広島の攻撃に対応できていた。裏へ飛び出す浅野へも両センターバックがしっかりカバーリングできていたことも良かった。

 

 時間の経過とともに広島の右サイドからの攻撃が多くなる。野上と藤井の関係や、スルーパスを受けた藤井の単独突破から崩していこうというシーンが徐々に目立っていった。

 

 前半は10分で先制点を奪え、また攻守において準備してきたことをある程度表現できた45分間だった。仙台が1点リードで折り返す。

 

後半

(1)右サイドから押し込んでいく広島

 後半から広島は柴崎→エゼキエウと1枚カードを切る。

 前半の30分すぎから広島は右サイドからの攻撃に比重を置くようになった。

 後半もスタートから広島は右サイドを制圧していく。

f:id:khigu:20211024205418p:plain

 広島は前半以上に右サイドからの攻撃回数を増やしていく。青山、野上の位置も高くなり、右シャドーもエゼキエウになったことで落ちることよりも、より仙台ブロック内でのプレーが多くなった。

 広島が右から攻めてくることで、崇兆も関口も下がることになり、加えて吉野が引っ張り出されるようになる。

 49分には青山のアーリークロスを森島がそらして、東がフリーでシュートを放つもゴール上に外れた決定機があったが、このシーンでも吉野が引っ張り出されたことで、全体がずれてファーサイドが空いてしまった。

 よって、後半の仙台は広島の右からの攻撃を中心に守備に回る時間がどんどん長くなっていった。

 前線2トップを目掛けてボールを送るも、なかなかボールが収まらずに延々と広島のターンが続くような展開が後半開始から続いていった。

 

(2)カウンターを狙う交代カードを切る手倉森監督

 広島のサイド攻撃を中心に押し込まれ、前半よりもラインが下がってしまった仙台。

 しかし人を掛けて攻撃してくる広島なので、当然広島の背後は手薄になってくる。

 よって、仙台は耐えながらもカウンターを狙えるカードを切っていく。

f:id:khigu:20211024210426p:plain

 63分に氣田と西村、75分にはカルドーゾを投入する。

 仙台は2トップをサイドに走らせ、奪ったらそこへボールを送るシンプルなプランへと変更をした。

 カルドーゾと西村、両者ともにサイドに抜け出してカウンターを発動させることができていた。ここで追加点を奪えればとても楽にゲームを進められたが、決めきることができなかった。

 

 その後は、富田と加藤に代え上原と蜂須賀を投入。真瀬が右サイドハーフになり、より縦に行ける前線になった。

 試合はアディショナルタイムに突入すると、仙台が追加点を決めることに成功する。

 これもスローインの流れから。西村が収めて中央にいた氣田へパス。氣田はステップで相手を外すと右足を振り抜き、リーグ戦初ゴールを決めた。氣田もなかなか結果が出ずに悔しい想いをしていたが、そんな鬱憤を晴らすようなゴールだった。

 

 そして試合は終了。仙台は広島に2-0で勝利。5月の大分トリニータ戦以来のホーム勝利を果たした。

 

最後に・・・

 後半は広島に押し込まれる展開になりながらも、なんとか耐えて追加点を奪い勝利することができた。勝利が一番の良薬。これでまた1つチームが成長できればと思う。

 前半は悪くない内容だったが、後半は相手に押し込まれ、なかなか自陣が脱出することができない状況だった。どうしても縦に急いでしまうあまりにボールが雑になり、すぐ相手ボールになってしまったのは反省点。相手の圧力を解放しながらもっと自分たちでボールを保持する時間帯を増やせれば、もっと楽にゲームは進められたかなと思う。今後の課題にしてい欲しい。

 

 残留圏とはこれで勝点5差となった。厳しい状況は変わらないが、まずはやることをやっていく以外に道はない。次の試合に向けていい準備をして挑むだけだ。

 次節は、アウェイでヴィッセル神戸との対戦となる。神戸もACL出場が掛かっているだけに、より厳しい試合となるだろう。相手の雰囲気や勢いに飲まれずに堂々と戦って欲しい。次節も最後まで諦めずに戦う姿勢を期待したい!!

崖っぷち~明治安田生命J1第32節 大分トリニータvsベガルタ仙台~

 さて、今回は大分トリニータ戦を振り返ります。残留争い直接対決。

↓前節のレビューはこちら

khigu-soccer.hatenablog.com

↓前回対戦のレビューはこちら

khigu-soccer.hatenablog.com

 

スタメン

f:id:khigu:20211017191611p:plain

 ベガルタ仙台は、前節・柏レイソル戦で1-1のドロー。先制したものの終盤に追いつかれた格好となった。今節は残留争い直接対決。大分トリニータとの対戦。前日に横浜FCが徳島に勝ったことで、大分に勝てば勝点3差に縮まる。それだけに是が非でも、なにがなんでも勝点3が欲しい一戦となった。

 今節は吉野が出場停止明けで復帰。柏戦でセンターバックに起用された福森が左サイドバックとなった。また富樫が欠場し、代わりにカルドーゾがスタメン。ベンチには中断期間に調子を上げた佐々木匠が久々に入った。また、中原と皆川もベンチ入りした。

 大分トリニータは、前節・セレッソ大阪に1-0で勝利。置かれている状況は仙台と一緒だが、ホームでは連勝中とチームの調子は上向いている。残留圏との勝点差を縮めるためにもこちらも勝利が絶対条件の試合となった。

 セレッソ大阪戦との変更点は1人。右ウイングバックに松本が起用されている。ベンチには刀根や梅崎、長沢などベテラン陣が多く入った。

 

前半

(1)大分の列移動に四苦八苦する仙台

 試合開始から大分がボールを保持し、仙台が守備からスタートする局面でゲームが展開されることが多かった。

 ここ最近の仙台はラインを高く押し上げ、高い位置に陣形を置くことで、相手陣地からボールを奪いに行くことを試みている。この試合も例外ではなく、仙台は高い位置からボールを奪いに行った。

f:id:khigu:20211019213203p:plain

 仙台は、カルドーゾと赤﨑が縦関係になり、両サイドハーフが左右バック(小出と三竿)に対して外を切りながらプレッシングを掛けに行く。このことで大分のパスコースを中央へ誘導し、ボランチのエリアでボールを奪いに行くことを目指した。

 しかし、大分も仙台のやり方を観察しながら対応していく。動いたのは下田だった。下田が列を降りてボールを受ける。これをトリガーに両シャドーも列を移動し、インサイドハーフのような振る舞いを見せる。結果的に大分は4-1-4-1のような形でボールを保持する時間が多かった。

 中央へ誘導する仙台のやり方に対してビルドアップ隊を増やし、中央の人数と配置を変えることで、よりボールを保持を安定させていった。

f:id:khigu:20211019213614p:plain

 時間の経過とともに、高い位置からプレッシングを掛けられなくなり、仙台は結果的に4-4-2の守備ブロックを形成するようになる。

 これである程度中央を封鎖できればいいのだが、2トップの守備基準点が曖昧になり、大分に簡単に一列目(2トップ)の守備を突破されるようになる。

 よって仙台は、どんどん守備ラインを下げることにあり、自陣のディフェンシブサードで跳ね返す時間が多くなった。

 

(2)「ボールを下げたらプレッシング」を徹底した大分

 また、大分がボールを保持して押し込むことに加えて、ロングボールを織り交ぜながら試合を展開していった。

 大分はビルドアップ時に詰まったらロングボールを選択し、相手のディフェンスラインの背後へボールを送る。このことでいったん陣形を上げて前から守備を行うことへとシフトチェンジする。

f:id:khigu:20211019214310p:plain

 特に徹底したのは、仙台がボールをキーパーやセンターバックへ下げたときを合図にラインを押し上げてプレッシングを開始することだった。

 相手が後ろを向いたり、ボールを下げたときにラインを押し上げることは教科書通りのことだが、大分はしっかり意識づけて行うことで、守備でも優位に試合を進められていた。

 

 逆に仙台は大分のプレッシングに対して、正面から受けてしまうことが多く、最終的にカルドーゾや赤﨑を狙ったロングボールを送り、結果的に大分に回収されてしまう。

 本来、仙台としてはダブルボランチにボールを預けて、そこからの展開で攻撃へと繋げていきたかったのだが、ボランチにボールが入ることが少なく自分たちのリズムでプレーする時間がほとんどなかった。

 大分もボール非保持の局面になったら守備ブロックを敷いていたので、どこかで大分のプレッシングを外すことで局面を安定させたかったが、そのようなプレーはほとんど見られなかった。

 

 前半は攻守ともに大分が主導権を握る45分間だった。仙台は、4-4-2の守備をベースに跳ね返すことで失点を免れた。スコアレスで折り返す。

 

後半

(1)ペースを取り戻せそうだった矢先の失点

 後半の仙台は、前半の戦いを反省してボールを奪ったらボランチにボールを集め出すようになる。このことで大分のプレッシングを剥がして自陣からボールを保持してゲームを進められる回数を増やしていった。

 実際に前半よりもボール保持の局面からサイドを突破して、相手の深いエリアまで運べることはできていた。

 

 しかしその矢先での失点だった。

 きっかけは下田の背後へのロングフィードから。伊佐が抜け出しシュートもポスト直撃。しかしそれを渡邉新太がこぼれに反応して大分が先制点を奪う。

 ボール保持時に背後へのボールも織り交ぜていた大分。狙ったいた形の1つでの得点だっただろう。

 仙台としては、せっかくリズムを取り戻せそうだったところだったので、非常に苦しい失点となった。

 しかし、相手のキーマンである下田をフリーにしてしまったのは頂けないところだった。

 

 そして続く60分にはバックパスをクリアしたクバが、突っ込んできた町田に対して腕を振り下ろしたという判定でPKを与える。

 前半から積極的にプレッシングを掛けていた大分だが、それがこのような形で結果として現れる格好となった。一方で仙台としては余計のPKを与えることとなった。

 そしてこのPKを渡邉が沈めて大分が2点にリードを広げる。

 

(2)人を代え、システムを変え仕掛けた仙台

 後半の15分間で2点のリードに広げられた仙台は、選手を入れ替え、システムを変更してゴールを狙う。

 後半からボランチがボールを持つことでリズムはできるようになったが、いかんせんペナルティエリアまで侵入できなかったり、最後のパスが雑になったりと明らかに焦りがプレーに現れていた。

 その後78分には3バックへシステム変更をするも、ミラーゲームなったことで逆にサイドから押し込めなくなり、攻め手を失う形となった。結果的にカウンターを与える機会も多くなり、事態が好転することはなかった。

 最後まで必死さを見せたが、空回り感の否めない攻めに終始してしまった。結果は0-2。内容としては完敗という形となった。

 

最後に・・・

 いよいよ崖っぷちとなった。崖っぷちから見る景色はなかなかに残酷なものだ。

 

 試合としてはこの中断期間中に手応えを感じていたものの半分も出せていなかったのではないかと思う。

 大分の方が様々な局面で上回っていたし、悔しいが完敗という内容がふさわしい。

 

 自分たちが攻撃のときにどこを攻めていきたいのか、どう攻めていきたいのか。守備では、どうやってボールを奪いに行くのかがこの試合ではとても中途半端になっていた。

 泣いても笑っても残りは6試合しかない。まだ何も決まったわけではないので、チームには最後の1分1秒までやれることを全力でやって、目の前の試合を戦って欲しい。

 次節はホームでサンフレッチェ広島戦。ホームで戦えるのは4試合もある。まずは広島戦に向け、1つずつ準備をして、そしてホームで喜べるように仙台らしくハードワークして戦って欲しい!!