ヒグのサッカー分析ブログ

ベガルタ仙台の試合分析が中心です。

隙を見逃さない鹿島アントラーズ~明治安田生命J1第28節 ベガルタ仙台vs鹿島アントラーズ~

 さて、今回は鹿島アントラーズ戦を振り返ります。

↓前節のレビューはこちら

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↓前回対戦のレビューはこちら

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スタメン

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 ベガルタ仙台は、水曜日にFC東京と戦い2-2のドロー。リードを二度許す展開だったものの、二度とも追いつき、勝ち点1を得た。中2日であるが、この1を次の3へと繋げるための試合としたい仙台だ。

 今節は、ターンオーバーを採用し、4人のメンバーを入れ替えた。柳、兵藤、崇兆、赤﨑がスタメンに名を連ねた。

 一方の鹿島アントラーズは、中6日でこの試合を迎える。永戸が新型コロナに感染し、濃厚接触者も試合に出られない状況だが、前節は首位・川崎フロンターレにドロー。ACL圏内に入り込むために、意地の勝ち点1をもぎ取った。今節は、コンディション面で優位であり、また下位相手なので確実に勝利をものにしたい一戦だ。

 今節は、川崎戦で退場した三竿が出場停止。代わりに永木がスタメンとなった。また右サイドバックに広瀬が入った。

 

前半

(1)「開放」させない鹿島

 この試合の鹿島は、ボール非保持は「4-3-1-2」の形で守備を行っていた。

 まずは、その狙いから見ていくことにしたい。

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 シンプルに言えば、鹿島が抑えたかったポイントは椎橋の位置だった。

 仙台は、4-3-3にして以降は椎橋を経由して、プレッシャーから逃げて、逆サイドへと開放することで、前進することが多かった。

 まず、鹿島としてはそのように開放されたくない。なるべく仙台のボール保持を同じサイドで行わせることで、ボールを奪い取る確率を上げたいと考えた。

 よって、中盤をダイヤモンドにし、2トップがセンターバックをトップ下に入った土居が椎橋を見ることで、大きな展開、開放させる展開をなくしていった。

 システムの噛み合わせ上、仙台のサイドバックには時間とスペースが得られる。そこに関して鹿島は、インサイドハーフがスライドして出て行くことで、サイドバックへ対応していた。

 このときに、必ず永木と逆のインサイドハーフがスライドすることで、中央のスペースを埋めることも行っていた。

 よって、仙台としては椎橋を経由することができないので、同サイドでの攻撃が多くなった。

 

 また、仙台のサイド攻撃を跳ね返した後のセカンドボールを仙台に回収させないために、鹿島は、仙台のセンターバックと椎橋のエリアを同数にし、セカンドボールを回収することで、二次攻撃に繋げさせないようにしていた。

 なので、前半の仙台の攻撃は、単発で終わることが多かった。

 

(2)大外からエヴェラウド

 続いて鹿島の攻撃の狙いについて見ていく。

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 ボール非保持の鹿島は、4-3-1-2で守備をするが、ボールを保持したときは流動的ではあったが、伝統の4-2-2-2で仙台を押し込んでいた。

 鹿島の狙いは大外からエヴェラウドを狙ってクロスを上げていくものが一番多かった。鹿島は、アラーノと土居が、ハーフスペースにポジショニングすることで、仙台のサイドバックを中へ絞らせ、大外のスペースを空ける。そこへサイドバックがオーバーラップし、クロスを上げていくシンプルな攻撃だった。

 そんなシンプルな攻撃でも、エリア内のエヴェラウドは非常に脅威だった。ファーから敢えて自分が飛び込みたいエリアを空けて、クロスのタイミングで、そこへ入っていく。クロッサーとエヴェラウドとの連携もあって、ほとんどのクロスが彼の狙いたいエリアへ送り込むことができていた。

 

 仙台は、鹿島のサイドバックに対してウイングが下がって対応することが多く、ほとんどの時間を5バック、時には6バックで守っていた。

 決定的なシーンが何度もありながら、この試合でもクバがビッグセーブを連発し、なんとか無失点で前半を折り返すことができた。

 前半は、鹿島が攻守において狙い通りの試合運びができた内容だった。一方の仙台は、前半は無失点でというゲームプランのなかでミッションはクリアしたものの、サイドからのクロス、カウンターから決定的なシーンはいくつも与えており、クバが助けてくれた前半だったと言える内容だった。

 スコアレスで後半へ。

 

後半

(1)前半の伏線回収と、隙を見逃さなかった鹿島

 後半、47分にゲームが動く。前半から狙っていた右サイドからアラーノのクロスをエヴェラウドが合わせて、鹿島が先手を奪う。

 前半、鹿島の右サイドからの攻撃が多かったが、広瀬やアラーノに対して、大外の対応をしていた崇兆の寄せが甘く簡単にクロスを入れられてしまっていた。

 ハーフタイムで、そこの修正ができずに仙台は失点を喫する形となってしまった。

 鹿島にとっては、前半から狙っていた形での得点。伏線を回収するゴールとなった。

 

 そして鹿島は57分に追加点を決める。沖のロングキックから上田が競り勝つと、エヴェラウドにつなぎ、最後はアラーノが決めて突き放す。

 このゴールは、上田が平岡に競り勝ったところから始まるが、平岡が競ったときにジョンヤしかカバーリングのポジションにいなかった。ここは、ジョンヤに加えて柳も連動してカバーリングのポジションを取っていれば、アラーノのシュートに対応できていたはずだ。

 そういう意識の甘さを鹿島は見逃さない。一方の仙台としては、ちょっとした寄せやカバーリングの意識を強めなければならない。そういう詰めの部分をもっともっと高めていく必要がある。

 

 2点をリードした鹿島は、さらに隙を見逃さない。62分には、浜崎のパスミスを奪うとロングカウンターを発動。最後は上田がフィニッシュしてリードを3点に広げる。

 慌てて攻めに出た仙台としては、痛恨の失点だった。

 

(2)3バックへのシステム変更と鹿島の対応

  3点のリードを許した仙台は、飲水タイムを挟んでシステムを3-4-2-1に変更する。

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 3-4-2-1に変更したことで、掴まっていたアンカーがいなくなり、その代わりにダブルボランチがトップ下の脇でボールを受けられるようになったことで、ボランチからの展開から攻撃を行うことができた。

 また、サイドではウイングバックとなった蜂須賀と柳に対して、左右バックのジョンヤと椎橋も攻撃参加することで、リスクを負いながら厚みのあるサイド攻撃を展開した。

 結果的に76分に蜂須賀のクロスから長沢が決めて、1点を返すことになる。このシーンでもボランチの浜崎から蜂須賀に展開。蜂須賀を椎橋が追い越したことで、蜂須賀はフリーでクロスを上げられることができた。

 システム変更で、仙台は鹿島に対してズレを作り出すことで、得点を奪うことができた。 

 

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 残り15分で2点を追う仙台は、関口を投入して、3-1-4-2へさらにシステムを変更して鹿島ゴールへ襲い掛かろうとする。

 しかし、鹿島も選手交代で4-4-1-1に変更。これによって、仙台は中盤で立ち位置のズレを作ることができずに鹿島に対応されてしまい、攻勢を強めることはできなかった。

 試合は1-3で終了。鹿島のしたたかさが随所に現れた試合となった。

 

最後に・・・

 中2日の仙台に対して、中6日の鹿島というコンディションと準備に掛ける時間に差があった中で、鹿島のしたたかなサッカーの前に完敗という内容だった。

 この試合も、前のFC東京との試合もそうだが、4-3-3にしたときにアンカーの椎橋を抑えられてしまうと、仙台の攻撃が難しくなることがあり、そこはこれからのテーマとなりそうな予感がある。

 この試合のように、勝負どころでシステムを変更することは1つの手だと思うが、やはり4-3-3の形を崩さずに、相手の対応を交わしながらサッカーをして欲しいところだ。ここは残りの5試合で木山監督に与えられたテーマの1つだろう。

 

 しかし、ガンバ、FC東京、鹿島と上位3連戦を五分の成績で終えたことは、今シーズンの内容と結果から考えても上出来だと思う。この後は鳥栖、柏、大分、清水、湘南と中位以下との試合が続くだけに、課題を克服しながら結果も求めていきたい。

 そういう意味では、前述のアンカーへの対策への対応もそうだが、今節喫したような失点は減らしたいところだ。

 

 次節はサガン鳥栖戦。ホームでのリベンジを果たしたい。4連戦の最後の試合。高い集中力と締まったプレーで、粘り強く勝利を掴むことを期待したい!!

シーソーゲーム~明治安田生命J1第32節 ベガルタ仙台vsFC東京~

 さて、今回はFC東京戦を振り返ります。

↓前節のレビューはこちら

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スタメン

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 ベガルタ仙台は前節・ガンバ大阪戦で17戦ぶりの勝利を果たす。システムを4-3-3にしたことで、攻守における戦い方が整理されハマった試合となった。今節目指すのはまだ果たせていないホーム初勝利だ。

 仙台のスタメンは、中3日ながらガンバ大阪戦と同じ11人となった。しかし、ベンチには蜂須賀、兵藤、松下らケガから帰ってきたメンバーが戻ってきた。

 一方のFC東京は、前節の名古屋グランパス戦でアディショナルタイムに失点を奪われ敗戦。これでACL圏内は厳しいものとなった。この仙台戦が終われば、ACLのためにカタールへと飛び立つ。そんなACL前に勝利し、いいイメージでカタールへと向かいたい一戦だ。

 FC東京は前節から6人のメンバーを入れ替えている。キーパーにはJ1初出場の児玉、インサイドハーフには長期離脱から戻ってきた東が名を連ねた。

 

前半

(1)ボール保持から前進できない仙台

 前半は、仙台がエンドを変えてキックオフをする。

 

 前半の仙台は、特に開始から飲水タイムに入るまでの時間帯において、とてもFC東京の守備に苦労する時間が長く、ボール保持からなかなか前進することができなかった。

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 FC東京は、前から行くときと後ろで構えるときで非常にメリハリの効いた守備を行っていた。

 まず、前線からのプレッシングのときには、まずはアンカーである椎橋を永井が抑え、センターバックからのパスコースを消す。そして、東がプレッシングのスイッチを入れると、迷うセンターバックサイドバックにボールを預けるため、FC東京は仙台のサイドバックに入ったところで、ウイングが素早く寄せてプレッシングからボールを奪うのが狙いとしていた。

 

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 また、自陣でブロックを形成するときは、4-1-4-1で構える。この時も永井は椎橋を監視。センターバックにはボールを持たせるような格好だった。

 FC東京のブロックは、中央をしっかり締めていたので、インサイドハーフや3トップがボールを受けることが難しかった。

 またサイドバックにボールを預けても、先ほど同様にウイングが素早く寄せてくるので、仙台はなかなかボールを前進させて、チャンスを作り出すことができなかった。

 

(2)前線からプレッシングに行けなかった守備

 また守備においても、飲水タイム前までは相手とのかみ合わせのなかで前から行くことができずに、後ろで構えて守備をする時間が長かった。

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 前半開始5分くらいまでは、前節同様に浜崎がセンターバックにプレッシングを掛けるシーンがあった。

 しかし髙萩がセンターバック間に落ちる動きをすることによって、仙台のプレッシングもハマっていかずに、上図のようにFC東京のビルドアップ隊と長沢が3vs1の状況になることが多かった。中盤もFC東京サイドバックインサイドハーフを見てしまい、結果的に後ろで構える時間が長くなってしまった。

 これは、連戦によってFC東京のボール保持に対してどうやってハメていくのかの準備時間があまり取れなかったこともあると思う。

 

(3)飲水タイムを挟んでの修正

 ただ、前半の飲水タイムを挟んで、仙台は攻守におけて修正を施すことで、徐々に自分たちのターンを増やすことができた。

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 特に守備面での修正により、ペースを握れるようになった。

 飲水タイム前は、ビルドアップ隊にプレスを掛けられなかった仙台だが、修正後は長沢が、サイドを変えさせないプレス(図でいう髙萩を切りながら森重にプレス)を行うことで、FC東京をサイドへ限定させる。そして、サイドで囲い込んでボールを奪う。

 また、センターバックからのロングフィードを誘発させて、そのセカンドボールを回収することで、自分たちへのターンにすることができた。

 

 そして、守備を修正してボールを奪えるようになると、仙台はサイドから押し込むことができるようになった。

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 ボールを持ったときには、浜崎は序盤のような裏へのランニングをすることが減り、パラへのパスコースを確保することで、パラ、浜崎、クエンカでの左サイド攻略を図れるようになる。

 30分過ぎあたりから、サイドから押し込めるようになり、またクリアのセカンドボールも回収することで二次三次攻撃へ繋げることができた。

 

 前半は、15分のFC東京の素早いネガティブトランジションからボールを奪われると、永井のクロスをレアンドロに合わせられ、FC東京に1点リードを許し、後半へと折り返した。

 

後半

(1)ハーフタイムでブラッシュアップした仙台

 前半は、開始からFC東京に対して攻守になかなかハマるシーンが少なかったが、飲水タイムを挟んでからは、守備からリズムを作り出し、押し込む時間帯を作り出すことができた。

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 仙台は、後半開始から匠に代えて兵藤。FC東京は、中村拓海から小川に代わった。

 

 後半の仙台は、ハーフタイムを挟んで、攻守における狙いを整理し、さらにブラッシュアップすることで、主導権を握ることができた。

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 攻撃においては、両サイドの立ち位置を整理し直して、サイドからの突破を図る。

 左サイドでは、パラ、兵藤、クエンカでトライアングルを形成し、兵藤がサイドへ出て行けば、クロスする動きでクエンカは中央へランニングをする。

 右サイドでは、山田がハーフスペースにポジショニングし、ジョンヤからの楔のパスを引き出す。飯尾を高い位置に押し上げて、クロスからの得点を狙った。

 そして47分に、狙い通りに左サイドを攻略すると、兵藤のクロスに長沢が合わせて同点に追いつく。

 

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 また守備では、前半と同じように長沢が逆サイドへのパスコースを消しながらセンターバックへとプレスを掛けることで、サイドを限定してボールを奪えていた。

 前半と変わったのは、オマリを狙うようになったこと。理由はよく分からないが、フィードの得意な森重よりもオマリの方がボールを奪える確率が高いと見たのかもしれない。

 しかし、63分に仙台はセットプレーから勝ち越しを許す。左サイドでフリーキックを与えると、クリアしたセカンドボールを再びペナルティエリアに入れられると髙萩に決められ、再びリードを許す形となった。

 

(2)中2日の法則

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 再び勝ち越しを許した仙台は、飲水タイム後に赤﨑と松下を投入する。

 一方のFC東京は、アダイウトンと三田を投入する。

 中2日のFC東京にとっては、体力的にも厳しくなる。よって、飲水タイム後以降は、前からプレスに行かずに、基本的には自陣で構えて守備をする時間が長くなった。そして、アダイウトンの単独突破で仕留めることが狙いだったと思う。

 FC東京が、自陣に引いたことで仙台がボールを握って、相手陣内でプレーする時間が長くなる。しかし、中央を締めるFC東京に対して、なかなか中央から搔い潜ることができない。

 また長沢がいなくなったことで、ペナルティエリア内でターゲットとなる選手もいなくなったことで、よりクロスが上げずらい状況になった。

 

 この状況を見かねた木山監督が動く。

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 崇兆を椎橋に代わって投入し、松下をアンカー。インサイドハーフをクエンカと兵藤という攻撃的な布陣を並べた。

 松下がアンカーになったことで、前を向いて色々なアイデアを出してくれるので、攻撃の豊富さは増していった。

 そして84分に同点。FC東京が下がったことでペナルティエリア手前にスペースが空く。そこでボールを受けた松下はリラックスした状態でシュート。キーパー手前でバウンドしたボールはゴールへ吸い込まれ、同点に追いつく。

 その後も攻める仙台。赤﨑に2度決定機が訪れるが、児玉のビッグセーブもあり、逆転することはできなかった。

 アディショナルタイムには、反対にピンチを迎えるも、クバが立ちふさがる。

 

 シーソーゲームとなった試合は、2-2のドロー。仙台は、またしてもホームでの勝利を掴み取ることができなかった。

 

最後に・・・

 シーソーゲームで、非常に見応えのある試合だったと思う。

 今までであれば、同点に追いつくことができなかっただろうが、しっかり同点にできたことは、チームに力が付いてきた証拠だと思ってポジティブに捉えたい。

 

 4-3-3のシステムに戻して、チームが攻守において整理できた合間にけが人も少しずつ戻ってきて、ようやくいい流れが来ているのかなとも思う。またベンチを含めた一体感も生まれており、勝つということがどれだけチームを生き返らせるかというのを肌で感じている。

 もちろん勝利が欲しい一戦だっただけに満足はできない。泥臭くともホームで勝ちたいし、それは選手もスタッフも監督も同じはずだ。

 そしてそのチャンスはすぐに来る。明日の鹿島アントラーズ戦。中2日と厳しい日程ではあるが、勝機がないわけではない。仙台らしくハードワークして、チームで鹿島へ挑んでいって欲しい!!