ヒグのサッカー分析ブログ

ベガルタ仙台の試合分析が中心です。

隙を見逃さない鹿島アントラーズ~明治安田生命J1第28節 ベガルタ仙台vs鹿島アントラーズ~

 さて、今回は鹿島アントラーズ戦を振り返ります。

↓前節のレビューはこちら

khigu-soccer.hatenablog.com

↓前回対戦のレビューはこちら

khigu-soccer.hatenablog.com

 

スタメン

f:id:khigu:20201123175858p:plain

 ベガルタ仙台は、水曜日にFC東京と戦い2-2のドロー。リードを二度許す展開だったものの、二度とも追いつき、勝ち点1を得た。中2日であるが、この1を次の3へと繋げるための試合としたい仙台だ。

 今節は、ターンオーバーを採用し、4人のメンバーを入れ替えた。柳、兵藤、崇兆、赤﨑がスタメンに名を連ねた。

 一方の鹿島アントラーズは、中6日でこの試合を迎える。永戸が新型コロナに感染し、濃厚接触者も試合に出られない状況だが、前節は首位・川崎フロンターレにドロー。ACL圏内に入り込むために、意地の勝ち点1をもぎ取った。今節は、コンディション面で優位であり、また下位相手なので確実に勝利をものにしたい一戦だ。

 今節は、川崎戦で退場した三竿が出場停止。代わりに永木がスタメンとなった。また右サイドバックに広瀬が入った。

 

前半

(1)「開放」させない鹿島

 この試合の鹿島は、ボール非保持は「4-3-1-2」の形で守備を行っていた。

 まずは、その狙いから見ていくことにしたい。

f:id:khigu:20201123182542p:plain

 シンプルに言えば、鹿島が抑えたかったポイントは椎橋の位置だった。

 仙台は、4-3-3にして以降は椎橋を経由して、プレッシャーから逃げて、逆サイドへと開放することで、前進することが多かった。

 まず、鹿島としてはそのように開放されたくない。なるべく仙台のボール保持を同じサイドで行わせることで、ボールを奪い取る確率を上げたいと考えた。

 よって、中盤をダイヤモンドにし、2トップがセンターバックをトップ下に入った土居が椎橋を見ることで、大きな展開、開放させる展開をなくしていった。

 システムの噛み合わせ上、仙台のサイドバックには時間とスペースが得られる。そこに関して鹿島は、インサイドハーフがスライドして出て行くことで、サイドバックへ対応していた。

 このときに、必ず永木と逆のインサイドハーフがスライドすることで、中央のスペースを埋めることも行っていた。

 よって、仙台としては椎橋を経由することができないので、同サイドでの攻撃が多くなった。

 

 また、仙台のサイド攻撃を跳ね返した後のセカンドボールを仙台に回収させないために、鹿島は、仙台のセンターバックと椎橋のエリアを同数にし、セカンドボールを回収することで、二次攻撃に繋げさせないようにしていた。

 なので、前半の仙台の攻撃は、単発で終わることが多かった。

 

(2)大外からエヴェラウド

 続いて鹿島の攻撃の狙いについて見ていく。

f:id:khigu:20201123184011p:plain

 ボール非保持の鹿島は、4-3-1-2で守備をするが、ボールを保持したときは流動的ではあったが、伝統の4-2-2-2で仙台を押し込んでいた。

 鹿島の狙いは大外からエヴェラウドを狙ってクロスを上げていくものが一番多かった。鹿島は、アラーノと土居が、ハーフスペースにポジショニングすることで、仙台のサイドバックを中へ絞らせ、大外のスペースを空ける。そこへサイドバックがオーバーラップし、クロスを上げていくシンプルな攻撃だった。

 そんなシンプルな攻撃でも、エリア内のエヴェラウドは非常に脅威だった。ファーから敢えて自分が飛び込みたいエリアを空けて、クロスのタイミングで、そこへ入っていく。クロッサーとエヴェラウドとの連携もあって、ほとんどのクロスが彼の狙いたいエリアへ送り込むことができていた。

 

 仙台は、鹿島のサイドバックに対してウイングが下がって対応することが多く、ほとんどの時間を5バック、時には6バックで守っていた。

 決定的なシーンが何度もありながら、この試合でもクバがビッグセーブを連発し、なんとか無失点で前半を折り返すことができた。

 前半は、鹿島が攻守において狙い通りの試合運びができた内容だった。一方の仙台は、前半は無失点でというゲームプランのなかでミッションはクリアしたものの、サイドからのクロス、カウンターから決定的なシーンはいくつも与えており、クバが助けてくれた前半だったと言える内容だった。

 スコアレスで後半へ。

 

後半

(1)前半の伏線回収と、隙を見逃さなかった鹿島

 後半、47分にゲームが動く。前半から狙っていた右サイドからアラーノのクロスをエヴェラウドが合わせて、鹿島が先手を奪う。

 前半、鹿島の右サイドからの攻撃が多かったが、広瀬やアラーノに対して、大外の対応をしていた崇兆の寄せが甘く簡単にクロスを入れられてしまっていた。

 ハーフタイムで、そこの修正ができずに仙台は失点を喫する形となってしまった。

 鹿島にとっては、前半から狙っていた形での得点。伏線を回収するゴールとなった。

 

 そして鹿島は57分に追加点を決める。沖のロングキックから上田が競り勝つと、エヴェラウドにつなぎ、最後はアラーノが決めて突き放す。

 このゴールは、上田が平岡に競り勝ったところから始まるが、平岡が競ったときにジョンヤしかカバーリングのポジションにいなかった。ここは、ジョンヤに加えて柳も連動してカバーリングのポジションを取っていれば、アラーノのシュートに対応できていたはずだ。

 そういう意識の甘さを鹿島は見逃さない。一方の仙台としては、ちょっとした寄せやカバーリングの意識を強めなければならない。そういう詰めの部分をもっともっと高めていく必要がある。

 

 2点をリードした鹿島は、さらに隙を見逃さない。62分には、浜崎のパスミスを奪うとロングカウンターを発動。最後は上田がフィニッシュしてリードを3点に広げる。

 慌てて攻めに出た仙台としては、痛恨の失点だった。

 

(2)3バックへのシステム変更と鹿島の対応

  3点のリードを許した仙台は、飲水タイムを挟んでシステムを3-4-2-1に変更する。

f:id:khigu:20201123205405p:plain

 

f:id:khigu:20201123205811p:plain

 3-4-2-1に変更したことで、掴まっていたアンカーがいなくなり、その代わりにダブルボランチがトップ下の脇でボールを受けられるようになったことで、ボランチからの展開から攻撃を行うことができた。

 また、サイドではウイングバックとなった蜂須賀と柳に対して、左右バックのジョンヤと椎橋も攻撃参加することで、リスクを負いながら厚みのあるサイド攻撃を展開した。

 結果的に76分に蜂須賀のクロスから長沢が決めて、1点を返すことになる。このシーンでもボランチの浜崎から蜂須賀に展開。蜂須賀を椎橋が追い越したことで、蜂須賀はフリーでクロスを上げられることができた。

 システム変更で、仙台は鹿島に対してズレを作り出すことで、得点を奪うことができた。 

 

f:id:khigu:20201123210634p:plain

 残り15分で2点を追う仙台は、関口を投入して、3-1-4-2へさらにシステムを変更して鹿島ゴールへ襲い掛かろうとする。

 しかし、鹿島も選手交代で4-4-1-1に変更。これによって、仙台は中盤で立ち位置のズレを作ることができずに鹿島に対応されてしまい、攻勢を強めることはできなかった。

 試合は1-3で終了。鹿島のしたたかさが随所に現れた試合となった。

 

最後に・・・

 中2日の仙台に対して、中6日の鹿島というコンディションと準備に掛ける時間に差があった中で、鹿島のしたたかなサッカーの前に完敗という内容だった。

 この試合も、前のFC東京との試合もそうだが、4-3-3にしたときにアンカーの椎橋を抑えられてしまうと、仙台の攻撃が難しくなることがあり、そこはこれからのテーマとなりそうな予感がある。

 この試合のように、勝負どころでシステムを変更することは1つの手だと思うが、やはり4-3-3の形を崩さずに、相手の対応を交わしながらサッカーをして欲しいところだ。ここは残りの5試合で木山監督に与えられたテーマの1つだろう。

 

 しかし、ガンバ、FC東京、鹿島と上位3連戦を五分の成績で終えたことは、今シーズンの内容と結果から考えても上出来だと思う。この後は鳥栖、柏、大分、清水、湘南と中位以下との試合が続くだけに、課題を克服しながら結果も求めていきたい。

 そういう意味では、前述のアンカーへの対策への対応もそうだが、今節喫したような失点は減らしたいところだ。

 

 次節はサガン鳥栖戦。ホームでのリベンジを果たしたい。4連戦の最後の試合。高い集中力と締まったプレーで、粘り強く勝利を掴むことを期待したい!!