ヒグのサッカー分析ブログ

ベガルタ仙台の試合分析が中心です。

報われた長沢駿とその仲間たち~明治安田生命J1第27節 ガンバ大阪vsベガルタ仙台~

 さて、今回はガンバ大阪戦を振り返ります。

↓前節のレビューはこちら

khigu-soccer.hatenablog.com

↓前回対戦のレビューはこちら

khigu-soccer.hatenablog.com

 

スタメン

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 17試合勝ちのないベガルタ仙台。前節のサガン鳥栖戦も0-3で完敗だった。結果も内容もポジティブな部分が見つけられないが、この試合まで1週間準備する時間があった中で、どれだけの準備ができていたかという試合となった。

 ケガ人が続出中の仙台。この試合では、サブが1人少ない6人という野戦病院状態。その中で今節は久々に4-3-3のシステムを採用。ジョンヤ、匠、山田が前節と代わってスタメンとなった。

 一方でここ12試合負けなしのガンバ大阪。システムを4-4-2にしてから調子が上向いている。井手口と宮本監督はリーグ月間MVPに選ばれ、ACL圏内を維持するためにも不調の仙台に勝つことは必須となる一戦だ。

 ミッドウィークにヴィッセル神戸と対戦し、1-0で勝利。その神戸戦から矢島、渡邉千真、そしてリーグ初先発となる唐山が名を連ねた。井手口は神戸戦に続き欠場。宇佐美もベンチ外となった。

 

前半

(1)4-3-3になって改善された訳を考えていこう~攻撃編~

 さて、前節・サガン鳥栖戦と打って変わり、4-0の快勝となった今節。システムを4-3-3に変更をして、見違えるように内容が良くなった訳だが、なぜこれだけ改善されたのかを、まずは前節のレビュー同様に「攻撃」、「守備」に分けて考えていきたい。

 

 まずは、攻撃から。

 前節までの仙台は、ボール保持時に相手のプレッシングから逃げるように広がってボールを受けることで、自分たちで自分たちの首を絞めるようなボールの持ち方をしていた。また、「追い越す選手」、「ポストプレーを受ける選手」の役割と立ち位置が悪く、パスミスが頻発していることを前節のレビューでは書いた。

 

 今節は、システムを4-3-3に変更したことで、この課題をクリアすることができていた。

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 4-3-3のボール保持からの攻撃では、各選手のプレーエリアを整理し直したことで、各々の役割が明確になり、安定し、かつ厚みのある攻撃を繰り出すことができていた。

 キーマンとなる選手の役割を見ていくと、椎橋がアンカーになったことで、サイドバックインサイドハーフ(浜崎、匠)に対して平行サポート(横パスを受けて展開できる立ち位置)の選手を作り出すことができた。

 またアンカーを作ったことで、中盤の底が1枚になり、その前にインサイドハーフがいることで、彼らが前線へ飛び出したり、サイドバック、ウイングと3人の関係性を作ることで、サイド攻撃に厚みを持たせることができた。

 加えて、1トップの長沢は基本的に相手CB間にポジショニングすることで、CBとの駆け引きとピン止め、そして降りてポストプレーの役割を担う。

 

 長沢がピン止めし、ウイングが相手サイドバックを引っ張り出すと、相手センターバックサイドバックの間に距離が開くため、そこにインサイドハーフがランニングを繰り返し行っていた。これは、狙いの1つだったと思う。

 システムを変更し、アンカーを登場させたことで、「追い越す選手」、「ポストプレーを受ける選手」(この場合は、中盤の底で展開する選手と言ったほうがいいが)の役割と立ち位置が改善され、ボール保持からの攻撃でチャンスを作れるようになった。

 17分の長沢の先制点の流れは、まさにその象徴的なシーンだったと思う。

 

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 ビルドアップの局面では、無理をしなくなった。

 ビルドアップでは、クバ、センターバック、椎橋の4枚がビルドアップ隊になっていたが、この試合ではガンバが前から仕掛けてきたら、シンプルに前線へロングフィードを送り、前線が競り合ったこぼれ球をインサイドハーフが回収することを狙っていた。

 よって、諦めるときは諦めるので、後方で不要なパスミスが起きることがなくなり、ショートカウンターからの危ないシーンも少なかった。

 

  仙台は、システム変更により、各選手のプレーエリアを整理したこと、ビルドアップ時にロングボールを意図的に選択することで、ミスからのピンチを少なくし、またボール保持からの攻撃に厚みを持たせることができた。

 

(2)4-3-3になって改善された訳を考えていこう~守備編~

 続いて守備について

 守備については、4-4-2のブロック形成をしているものの、相手の攻撃を限定できずにズルズルとラインが下がり、ボールを奪う位置が低いことで、攻撃へ転じることができなかった。

 

 この試合では、4-3-3にしたことで、前からのプレッシングが復活。またブロック形成時にも課題はありながらも、以前よりも堅い守備でガンバの攻撃を抑えることに成功した。

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 まずは前線からのプレッシングについて。

 前節までは前線からのプレッシングも、個々が頑張るような形となっていたが、今節はチームで連動した守備を行うことができていた。

 特徴的だったのは浜崎。仙台はガンバのセンターバックにボールが入ったときにプレスを開始する。

 特に菅沼に入ったときは、浜崎は1列前に上がり、菅沼へプレスを掛けていた。この時に浜崎はボランチの奥野へのパスコースを切りながら、パスルートをサイドへと誘導している。そして、サイドでクエンカ、パラでボールを奪い、マイボールにすることで自分たちへのターンへしていった。

 仙台は、ボランチから攻撃を経由されることを嫌がり、匠も山本に対しては厳しくプレッシャーを掛けていた。

 このように仙台は、前プレ時に相手のパスルートを誘導させ、自分たちが守りやすいシチュエーションを作ることで、高い位置からの守備を機能させていた。

 

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 また自陣に撤退してブロックを形成するときは4-5-1の並びに。ここでも中盤の3センターがキーマンとなった。

 3センターはお互いの距離を意識し、中央を開けないように細かくスライドしてポジションを修正していた。このことでガンバに中央からの突破をさせずに、我慢強く守備をすることができていた。

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 しかし、左サイドでの守備ではほころびを見せていたのも確か。ブロックを組んでいるときに高尾に対してパラが寄せることがあり、その背後を矢島や渡邉千真に侵入されることが前半序盤から多かった。パラの背後を取られると、平岡や椎橋がカバーに行かざるを得なくなり、中央の人数が薄くなってしまう。

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 なので、飲水タイム後は、矢島のランニングに対して浜崎が付いていくようになり、平岡や椎橋は極力中央にポジショニングするようにした。

 攻守ともに、上下動が激しい浜崎だったが、サイドバックだったこともあり、このハードワークをこなしてくれたことはチームとして助かった。

 

 システム変更により、攻守ともに連動したプレーができた仙台は、17分に長沢が先制点を奪い、また44分には浜崎の左コーナーキックを再び長沢が決めて2-0で折り返すことに成功した。

 

後半

(1)アイソレーションから右サイドの攻略を図るガンバ大阪

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 ガンバは後半開始からパトリックと小野瀬を投入する。

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 後半のガンバは小野瀬を投入し、右サイドから押し込んでいく。

 仙台の攻撃のストロングであり、守備では問題点のあったパラとクエンカのサイドに小野瀬を投入して、押し込むことで攻撃へ出て行かせないようにしていた。

 また2トップを渡邉千真とパトリックにすることで、中央での強さ、特にクロスで合わせることを期待した2トップにした。

 特に多かったパターンは、上図のように山本から小野瀬へアイソレーションからサイドを攻略していくもの。55分に小野瀬のクロスを平岡がなんとかコーナーキックへ逃げたシーンが象徴的だった。

 

 徐々に押し込まれ始めた仙台は早い段階で手を打つ。

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 57分にパラに代えて柳を投入する。1対1に強い柳を投入することで、小野瀬を抑えようという狙いだ。リードしていることもあり、木山監督は早いタイミングで守備にテコ入れをした。

 

 しかし、しばらくはガンバのペースで試合が進む。

 仙台もボールを持てる時間があったが、前半とは変わり、自分たちがボールを持ったときに同サイドで攻撃することにこだわり、狭いスペースで打開を図ろうとすることが多かった。

 特に左サイドで多かった。ここで椎橋を経由して逆サイドに展開するなどすれば、プレスを剥がせただろうし、押し込めることもできたと思う。ここら辺は次への課題としたいところだ。

 

(2) 流れを変えた椎橋のスルーパス

 しかし、そんな中で流れを変えたシーンが68分。

 浜崎から横パスを受けた椎橋は、ワンタッチで相手を交わすと、センターバック間を抜け出す長沢へスルーパス

 完全に抜け出した長沢だが、昌子に倒されフリーキックとなる。昌子にはイエローカード

 ここまでダブルボランチの一角として苦労を重ねてきた椎橋だが、ようやく得意のアンカーとしてプレー。この試合では出色の出来だったし、スルーパスイニエスタ級の見事なものだった。

 

 このプレーで再びペースが戻った仙台は、飲水タイム後の75分に3点目を奪う。

 中盤でボールを回収したクエンカから匠へ。匠は右サイドをそのまま駆け上がり丁寧なクロス。そのクロスに長沢が合わせてハットトリックを達成し、勝利をグッと手繰り寄せた。

 そして89分には、ロングカウンターから左サイドで、途中投入の崇兆と柳で突破すると、そのまま柳が決めてダメ押しとなる4点目を決める。

 その後はシマオ・マテと中原を投入し、丁寧にゲームをクローズした仙台。実に17戦ぶりとなる勝利は、今までの鬱憤を晴らすような快勝だった。

 

最後に・・・

 17試合ぶりに勝利が、まさかここまでの快勝となるとは想像していなかった。

 ガンバも仙台がシステムを変更して、ここまで改善できているなんて思わなかっただろうし、対応できていなかったのはあるが、見事な勝利だったと思う。

 

 システムを4-3-3にし、各選手のプレーエリアを整理することで、攻守ともに選手が迷いなくプレーできていた。チームって生き物なのだなと感じる試合だった。

 特に椎橋と浜崎は象徴的で、ダブルボランチのときには、前に出て行っていいのか迷いのある中でのプレーだったが、ポジションを変え、自分の役割が変わったことで見違えるようなプレーだった。

 また、クエンカもここまで満足のいくプレーができなかったが、ガンバ戦では高い位置でプレーする時間が長く、アシストも記録した。また苦しいときはキープをして味方の上りを待つことで、チームは助けられた。

 そして長沢駿は本当に報われた。秩序のない苦しいチームの中でも、もがき続けた長沢がハットトリックで報われたことは、本当に嬉しいし、やはり諦めない奴の前にはボールが転がってくるんだなと思う。

 

 1つ乗り越えることができた仙台。勝利の余韻に浸っていたいのは山々だが、また水曜日に試合がある。次なるミッションは、ホームでの勝利。この勢いに乗ってFC東京に勝ちたいところだ。まずは次節、けが人も多く、過密日程であるが、自信を持って自分たちができる最大限のプレーをユアスタで披露してほしい!!

バラバラ~明治安田生命J1第11節 ベガルタ仙台vsサガン鳥栖~

 ご無沙汰しておりました。更新再開です。

 今回は、延期分の試合となったサガン鳥栖戦を振り返ります。リャン・ヨンギユアスタ帰還。

↓前回のレビューはこちら

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スタメン

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 ベガルタ仙台は、前節・柏レイソル戦が、柏の選手にコロナ陽性者が出たために試合中止になり、広島戦から1週間空けての試合となった。勝ち星から遠ざかっているだけに、この一週間でどれだけのことができたかは楽しみな試合となった。

 広島戦からは、両サイドハーフの変更。関口とクエンカがサイドハーフを務める。また、ベンチには関と川浪がベンチに。木山監督によると、試合当日にアクシデントが起こったようだ。

 一方のサガン鳥栖も9戦勝なしの状況。ただ、仙台に比べれば、若い選手の成長や、高丘とトレードの形で加入した朴の存在もあり、徐々に明るい兆しが見えてきているようだ。今節は、その兆しを確実に自分たちのものとしたい一戦だ。

 引き分けた前節・名古屋グランパス戦からは5人のメンバーを変更し、森下、大畑、本田ら若いメンバーがスタメンに名を連ねた。注目のリャンヨンギはベンチスタート。

 

前半

(1)バラバラになっている訳を考えていこう~攻撃編~

 さて、この試合でも0-3で敗れた仙台。スコアもさることながら、その内容も非常に厳しいものだった。日頃から出来る限り良かった部分を探そうと思っているのだが、この試合に関しては、いいところが1つもなかった。

 ということで、今更ながらではあるが、なぜここまで仙台がチームとしてバラバラな状態になっているのかを「攻撃」、「守備」に分けて考えていきたいと思う。

 まずは、「攻撃」から考えていく。

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 攻撃、主にボール保持の局面だが、ここ最近の現象でよく起きているのが、ビルドアップにおいて、センターバックから爆弾ゲームのようにサイドへとボールが渡っていき、最終的にボールを奪われたり、ロングボールで逃げてしまうことである。

 ゴールキーパーセンターバックから仙台はビルドアップをスタートするのだが、ビルドアップが得意ではないシマオ・マテと平岡というコンビに加えて、どのように相手の列を越えていくかということが決まっていない。

 よって、ボールを繋ごうとしても、具体的なイメージが定まっていないので、相手のプレッシャーから逃げるために広がってしまい、サイドでボールを受けることが多くなる。

 この試合でも、浜崎がボールを受けるためにサイドへと広がるシーンが多かったが、結果的にそれが効果的ではなかった。

 

 広がってボールを受けた後に、何が起きるかというと、結果的にサイドでボールを受けて、一時的にプレッシャーから逃げられても、相手としては限定しやすいサイドにボールが流れてくれるので、相手はサイドから再びプレッシャーを掛ける。

 エリアもコースも限定されてしまった仙台は、そこからプレッシャーをかわせる訳ではないので、ボールを奪われたり、苦し紛れのロングボールを前線へと蹴ることになってしまう。

 また、広がってボールを受けることで、ボールを奪われた際に、仙台の選手間の距離が遠いために、攻守が切り替わったとき(ネガティブトランジション)に、すぐに守備へと移行ができないし、相手にスペースを与える結果となってしまう。

 そうすると1失点目のようなパスミスから、あっさり中央でスペースを与えてフィニッシュまで持ち込まれてしまうのだ。

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 さらに細かい局面を言えば、仙台は受け手と出し手の関係にも課題がある。

 仙台は前線にボールを付けると、後方のサイドハーフサイドバックはボールホルダーを追い越す動きをする。これは攻撃のルールとしてあるのだと思う。

 追い越すこと自体は、相手を引っ張り出すことにもなるので、いい動きだと思う。

 しかし、ボールホルダーは相手ディフェンスを背にしていることが多く、簡単に追い越した選手へパスをすることは厳しい。

 なので、ボールホルダーの下で、ポストプレーを受ける選手も必要なのだが、仙台はその選手がいない。結果的に相手を背負った前線の選手は苦しくなり、ボールを奪われたり、無理にパスをしようとすることで、パスミスを起こしていしまう。まさに1失点目は、その形だった。

 

 仙台は攻撃、特にボール保持の局面においての決まりごとがなく、ただボールを保持していることだけが目的と化している。また、サイドなどの各エリアにおける局面でも、3人以上の関係を作れていない。

 まずは、ボールを前進させるための設計図。そして、エリアごとにおける選手の関係性を高めていくトレーニングが攻撃面では必要なのではないかと考える。

 

(2)バラバラになっている訳を考えていこう~守備編~

 続いて守備ついて考えていく。

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 ここ最近の仙台は、自陣において4-4-2のブロックを形成して守備をしている時間が長い。

 しかし、4-4-2の守備ブロックの形自体は整っているのだが、相手ボールホルダーへのプレッシングがなかなかできない。

 結果的に自分たちから相手の攻撃を誘導して、守備をすることができていないので、ズルズルと4-4-2のブロックが下がるだけで、結果的にペナルティエリアで跳ね返す、クバの神頼み、みたいな守備になってしまっているのが現状だ。

 結果的にボールを奪えたり、相手の攻撃を終わらせても、奪えた位置が低く、攻撃のスタートポジションが後ろになってしまう。

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 また、4-4-2で守備ブロックを形成しているときに、手倉森監督時代のように中央をしっかり閉じることを意識した守備であればいいのだが、今は人を基準に守っているシーンが多々見られる。

 上図のようにボランチがサイドへ引き出され、引き出されたスペースにサイドの選手にドリブルで侵入されたりするとバイタルエリアは、もう一枚のボランチだけになり、かなり大きなスペースを相手に与えてしまい、シュートまで持っていかれる。

 人なのかスペースなのか、守るエリアによって、変わってくると思うが、そこら辺の整理は急務だろう。

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 加えて、仙台がプレッシングを掛けて限定できるときは、大抵が長沢がプレッシングを掛けているときなのだが、せっかく長沢がパスコースを限定し、インターセプトが狙えそうなシチュエーションでも、なかなかボランチで刈り取ることができない。

 ここは椎橋、浜崎の両ボランチには頑張って欲しいが、ここで奪えないとショートカウンターを発動できないし、前から守備を行っても、奪えることができない。

 このポイントにおいてはボランチの頑張りに期待したい。

 

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 と、ここまでの話の流れを上図のようにまとめてみた。もちろん、これだけが課題ではないと思うが、ひとまず自分なりに考えてみた。

 サッカーは攻守両面が連動しているので、やはり一方が悪いとそれに引っ張られるように、もう一方も悪くなる。

 仙台は攻守においてかなりの課題を抱えており、とにかく悪循環が続いているのが現状といったところだろうか。

 これは、すぐに解決できるわけではない。まずは課題を整理して、1つずつやっていくしかないだろう。ケガ人も多く、時間がない中だが、出来る限りの修正を木山監督には期待したい。

 

後半

(1)諸刃の前プレとロングカウンターからの失点

 1点を失った仙台は、後半開始からとにかく前プレを掛けて、高い位置でのプレーを心掛けようとした。

 実際に長沢やクエンカの守備からボールを奪って、ショートカウンターへと繋げられたシーンはいくつかあった。

 しかし、54分。クエンカが高い位置でボールを奪い、ショートカウンターバイタルエリアへと侵入したパラへボールを渡すも、左足に持ち替えるところでシュートを打てず、鳥栖のカウンターへと局面が切り替わる。

 仙台は、誰も鳥栖の選手を捕まえらずに、最後は本田に落ち着いてシュートを決められて、追加点を許した。これでほぼゲームを決められたと言っても過言ではなかった。

 

 その後、仙台は3-4-2-1へとシステム変更をし、広島戦のような分厚い攻撃を目指すものの、おそらくその場のアドリブであっただろうシステム変更は、功を奏することができなかった。

 そして66分には、再び本田にゴールを許して、3点のリードで突き放される。

 

 その後、惜しいシーンすら作れなかった仙台。最後にリャンの登場もあり、スタジアムは盛り上がるも、仙台は盛り返すことができなかった。

 0-3での敗北となった。

 

最後に・・・

 非常に厳しい内容だった。ここまで攻守においてバラバラとなった試合はいつぶりだろうか。

 

 7月の再開後からチームは、徐々にその「型」をなくしており、今は何もなくなった状態と言っていいと思う。

 もちろんケガ人が多いことや、過密日程という中で、トレーニングできる人数や時間がないというのはあるが、それでもやれることがあるとは思う。

 一番危惧していることは、来シーズンに向けて、何1つ積み上げがないことだ。なので、守備でも攻撃でも、チームが一体感を持つことでも、積み上げが欲しいところだ。

 

 このクラブがどういうサッカーを目指していきたいのか、そこを明確にすることで逆算して、考えられることもあるだろう。

 クラブが目指したいサッカー、木山監督が目指したいサッカーを明確にして、一体感を持って、希望の持てる試合を残りの数試合で展開されることを期待したい。