ヒグのサッカー分析ブログ

ベガルタ仙台の試合分析が中心です。

続けるしか道は開かない~J1第20節 ジュビロ磐田vsベガルタ仙台~

 さて、今回はジュビロ磐田戦を取り上げます。

 

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 ホーム連戦を1分1敗と勝利を挙げられなかったベガルタ仙台。この悪い流れを断ち切りたいところだ。今節はキーパーにシュミット・ダニエル、ワントップには加入後初スタメンとなったハーフナー・マイクが名を連ねた。システムも3-4-2-1に変更した。

 中断明け、4試合連続で引き分けとなっているジュビロ磐田。なんとかホームで勝利したい今節である。今節は前節と代わって小川大貴、上原、松浦、松本がスタメンに名を連ねた。夏の目玉補強である大久保嘉人は今節もスタメン。

 

前半

(1)列を移動することで守備にギャップを作り出す磐田

 

 開始1分の奥埜のミドルシュートからスタートした試合は、10分を過ぎていくと徐々に磐田ペースになっていく。

 仙台は磐田の3バックに対して、3トップで前プレし、相手のロングボールからの回収でボール保持をしたい姿勢を見せる。

 しかし、アンカーにいる田口が3バックからうまくボールを引き出すことで、仙台の前プレを失敗へと陥れていった。

 

 10分過ぎると仙台も無駄な抵抗は止め、自陣へと撤退していく。

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 磐田の攻撃の狙いは、仙台の5-4のライン間を狙うことだった。

 そのために、まずはハーフナー脇でボールを握りだす磐田。このときにインサイドハーフの上原が落ちてくる。田口は3バックからボールを引き出すために落ちてきたり、またはハーフナー脇に顔を出したりと状況に応じて立ち位置を変えていた。

 落ちる上原に対して、もう一方のインサイドハーフである松浦と列を降りてきた大久保がライン間にポジショニングする。仙台のダブルボランチは、ボールホルダーに食い付いていくために、その背後を彼らで取るというのが狙いだった。実際に仙台の守備は磐田のボール回しに対して後手を踏むシーンが見られた。

 磐田としては各選手が列を移動することで、仙台の守備の基準点をずらし、守備にギャップを作り出すことで攻撃を行うことができていた。

 

(2)磐田が解決できていなかった問題

 

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 磐田は仙台がボールを保持したときに、ビルドアップ隊に対して左右で違う対応を見せていた。

 左サイド(仙台の右サイド)では平岡にボールが渡ったときは大久保が寄せていく。一方の右サイド(仙台の左サイド)は上原が板倉に対して寄せていく。この違いはおそらくインサイドハーフの能力の違いだろう。走力のある上原は一人でもなんとかなるが、攻撃に特徴のある松浦のところは大久保に助けてもらうといったイメージだった。なお、大久保が寄せられないときは平岡に対して松浦が寄せていった。

 仙台のボール保持攻撃からの攻めはあまりなかった。その一方で攻守が切り替わったときにサイドからの攻撃で磐田を押し込んでいった。

 

 磐田の守備で解決されていなかったのは、ハーフナーのところだった。ロングボールに反応するハーフナーに対し、大井はどこまで付いていくべきか問題となっていた。大井が付いていけば最終ラインにギャップができるし、付いていかなければ田口のところで競り負ける。どちらを選ぶかというところで、大井は付いていかずにセカンドボールを狙う選択を取った。

 しかし、開始1分のところや23分の先制点の場面が象徴するように、ハーフナーが田口のところで競り勝ちポストプレーをすることで、仙台がチャンスを掴むことができていた。

 

 反対に言えば、磐田の解決されていないポイントで先制点を取れたのはお見事だった。また蜂須賀から中野という両ウイングバックでの得点も良かった。

 ハーフナーの加入により、高さという武器を手にした訳だが、この試合では丁寧なポストプレーを行うシーンが散見され、おかげで石原と西村が前を向いた状態から仕掛けられることができていた。ハーフナーに依存はせず、使うところでしっかり使うという使い分けができていたのはポジティブな面であった。

 

(3)4-4-2への変更

 

 先制したのは仙台だったが、磐田は仙台の5-4-1のブロックをどう攻略するかというテーマに変わりはなかった。失点後も押し込む時間はあり、さらに攻勢を強めたい磐田は、30分にシステムを変更する。

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 磐田は4-4-2に変更。小川大貴を左サイドバックに。また松本昌也が右のサイドハーフに入った。

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 磐田の狙いは5-4のライン間攻略ということには変わりはなかった。しかしシステムを変えたことでライン間の人数が増え、より圧力を増した攻撃を繰り出していく。

 さらにライン間に人を増やしたことで、仙台の5バックは中央に寄ることとなり、空いたサイドのスペースをサイドバックが利用することも可能となった。特に中野が松本に引っ張られサイドを開けてしまうシーンがかなり多かった。

 そして45分に櫻内のクロスから川又がヘディングで合わせて同点に追いつく。平岡より頭一つ抜けたヘディングシュートだった。さすが川又の一言。

 

 仙台としては、磐田がシステムを変えてきたことを素早く把握したかった。磐田がシステムを変更した後に、仙台がボールを保持できた場面は何回かあったので、そこで把握し、対応したかったところだ。そうすればボールの保持の仕方や守備の仕方も変えられたと思う。

 結果論にはなってしまうが、90分を通じ試合の進め方として一番問題だったのは、この15分間だったように思う。ここで相手のシステムの変更を理解したうえでゲームを進めることができていたら、リードしてハーフタイムで修正できていたかもしれない。そういった意味では同点に追いつかれたのは、この試合を通して地味に効いた部分だった。

 前半は1-1で折り返す。

 

後半

(1)ハーフナーをケアし始める磐田と逆転に成功する仙台

 

 前半課題となっていたハーフナーの高さ問題。後半に入ると4バックになったこともあり、大井がハーフナーにどこまでも付いていけるようになる(高橋がカバーできるため)。そのために仙台はハーフナーの高さで優位性を作れなくなっていく。

 

 ということで仙台は早々にハーフナーを諦めて、阿部を投入。石原を頂点にした3トップで地上戦に変更する。

 そしてその効果はすぐさま出る。60分に右のコーナーからニアで平岡が背中で逸らして(?)ペナルティエリア前で待っていた阿部がきれいなコースを突くシュートで勝ち越しに成功する。

 

(2)嵌めるか、外すかの戦い

 

 ハーフタイムを経て、仙台は磐田が4-4-2に変更したことを把握する。仙台は3-4-3でシャドーがハーフスペースにポジショニングするお馴染の立ち位置で、磐田に対してボール保持攻撃を展開しようとする。

 一方の磐田は、失点したこともあるが、当初の予定通り、前プレで仙台のボール保持を阻止。仙台に蹴らざるを得ない状況を作り出し、セカンドボールを回収する狙いを見せる。

 仙台はいい立ち位置を取り、相手の前プレを剥がすことで現れるアタッキングサードの広大なスペースへとボールを届けたい。磐田は反対に、相手を前から嵌めることでボール保持を阻止しペースを握りたい。その攻防が後半は長い時間続いていった。

 両者ともに狙い通りに行く場面があり、一方のチームのペースでゲームが推移しているというよりは、自分たちの狙いがハマったほうがチャンスを作れるという展開でゲームは進んでいった。それゆえお互いにゴールのチャンスがあった後半と言えよう。

 

(3)きっかけは75分

 

 75分に仙台はビッグチャンスを迎える。中野からのパスをハーフスペースで受けた西村が縦に突破し、相手を振り切ってシュートを放つ。しかしゴール上を超えていくビッグチャンスを逸してしまう。

 その直後、仙台の思考が停止した隙に、スペースの空いた仙台の左サイドから攻撃。裏へ抜け出した川又から途中出場の中野誠也が決めて同点に追いつく。

 仙台は、西村の決定機が外れたところで思考が止まってしまった。間違いなく暑さとそれによる疲労が原因である。

 

 ここからゲームはお互いが攻めぎあう展開になっていく。仙台はリャンをボランチに投入、磐田はドリブラーの荒木を投入し、勝負へ出る。

 お互いにチャンスがあった残り10分強だった。その中でチャンスを活かしたのは磐田。中央からの上原のフリーキックは、中野が一度クリアするも短く、そのこぼれを田口がシュートし、最後は大井がコースを変えて逆転に成功する。

 

 そして仙台のパワープレーで押し込むも得点には結ばれず。2-3で連敗を喫してしまった仙台となった。

 

最後に・・・

 アディショナルタイムに失点を喫し、悔しい敗戦となった。今回はどうゲームをクローズさせるかより、相手が変化したときにしっかり対応できるかや、勝ち越した後にどういう振る舞いをするべきなのかを考えさせられた試合となった。

 前者に関しては、前半の部分で書いたのでここでは割愛する。後者のリードした後の振る舞いに関しては、やはりボールをもっと保持したいなと。今の仙台は守備で粘り切ることよりもボールを保持することで、相手を動かしたほうがゲームを進めやすいはずだ。なので、ボールを保持しながら相手の体力を削る必要があると思う。

 そして何よりもリードを広げて、自分たちを楽にすることが重要だ。この試合でも決定機は少なくなく、やはり決定機を決めていかなければ上位には行けない。

 

 しかし、リードした後に後方からのビルドアップで、前プレを剥がしチャンスを作り出していたのは、中断期間明けの試合で最もできており、非常にポジティブな部分だった。

 相手を押し込むだけではなく、相手を剥がし、前線がいい立ち位置でかつ前を向いた状態でボールを受けられた回数が、中断期間明けの試合で最も多かった。ここはこれからも継続していってほしいところ。

 

 悔しい負けではあるが決してネガティブなことばかりではない。続けるしか道は開かないのだ。次節は柏レイソルとの対戦。いい試合を期待したい!