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W杯 決勝 ドイツvsアルゼンチン

 いよいよ迎えたW杯の決勝。準決勝で開催国ブラジルを7-1で粉砕し、王国のプライドをズタズタにしたドイツとオランダと準決勝らしい緊張感のあるゲームを120分戦い、PK戦の末に勝ち抜いたアルゼンチンの対戦となった。

 準決勝を前半で決めてしまい、なおかつ120分戦ったアルゼンチンより1日休みの多いドイツがコンディション的に有利な中でのゲームとなった。

 スタメンはf:id:khigu:20190502115800p:plain

 ドイツは、試合前のアップでケディラが負傷し代わりにクラマーを起用。それ以外は準決勝と同じメンバーとなった。

 一方のアルゼンチンは、決勝トーナメントから4-2-3-1を採用し、ダブルボランチにしたことでバランスがよくなり、予選から不安だった守備に安定感が出た。しかし準々決勝でディマリアが負傷したことは痛い。メッシのために走れるかがポイントのチームだけにディマリアがいないこともポイントの1つであった。

 

1.前半

 開始から構図がはっきりする展開となった。ボールを保持するドイツとイグアイン、メッシ、ラベッシを中心とする鋭いカウンターを狙うアルゼンチンという構図となった。

 早々からラベッシやメッシがドリブルでドイツのDFを振り抜きチャンスを作るシーンがあった。しかし、ボールを保持するのはドイツ。ということでアルゼンチンの守備は以下のような守備ブロックを組んだ。

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 アルゼンチンはメッシが守備を免除されているので、シュバイニーが自由でボールを持てる状況となる。しかし、そこに食いつかないアルゼンチン。そこにボランチが食いつくとドイツのパスワークでどんどんマークがはがされてしまうために、シュバイニーには食いつかず我慢してサイドにボールを誘導させ、こまめなスライドで対応するようにした。だからミドルサードではあまりプレスをかけず、ディフェンシブサードでプレスをかけるようにした。

 ドイツは、ボランチを引き出してそこからはがし始めたかったが、アルゼンチンが出てこなので、ラームサイドからチャンスをうかがう展開が続く。しかし、アーリークロスや裏に出してもアルゼンチンがしっかり対処していた。クラマーが負傷交代後、エジルがトップ下にクロースが1枚下がり、またこの時間帯からラームがより高い位置を取り変化を見せたがアルゼンチンの守備網を掻い潜ることができず45分を終えることになった。一方のアルゼンチンはカウンターも打てたし、ある程度狙い通りにできた前半だったのではないだろうか。まぁ、イグアインの決定機は決めたかっただろうが・・・。

 

2.後半

 後半頭からラベッシに代えてアグエロを投入。システムを4-3-3に変え、さらに守備ブロックに変化を加えた。 

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 ドイツがクロースを1枚下げたことでボランチが余る形になったので、ビリアを上げてマスチェラーノのアンカーにすることでよりマークを明確にした。また、アグエロを投入し、3トップにすることでミドルサードのスペースを埋めると同時にメッシの守備をイグアインアグエロが負担する格好にした。

 後半開始から仕掛けたのはアルゼンチン。ドイツは相手のシステム変更についていけなかったためか、中央からアルゼンチンがいくらか崩すことができたが、46分のメッシのシュートは枠外に飛んだりと決定機を作り出すが決めきれない。そうなると徐々にドイツペースになっていく。前半同様ボールを保持するドイツだが、アルゼンチンの堅い守備ブロックに穴をあけることができず、集中したアルゼンチンDFに引っかかるシーンが増える。そんなドイツだが奪われた後はすぐに奪い返す守備でアルゼンチンにペースを握らせることはなかった。ここまで来ると守備を忠実になおかつ、さぼらないチームが上にくるのだと思った(メッシは例外だけど)。

 ということで、手詰まり感の否めない後半でついに延長を迎えることとなった。

 

3.延長

 延長前半は、コンディションがいいドイツがチャンスを作るシーンが増える。アルゼンチンは準決勝も延長を戦っているせいかボールを奪ってもすぐに取り返されドイツに攻められる展開が続く。そんな中でもパラシオにチャンスが巡ってくるがノイアーが立ちはだかった。それ以降アルゼンチンはチャンスを作ることはなかった。延長前半は0‐0で折り返すこととなった。

 延長後半も変わらずドイツが攻める展開。それをマスチェラーノ中心に粘り強く守るアルゼンチンの展開が続く。そして113分にゲームが動く。左サイドにドイツがボールを振るとシュールレがドリブルを開始。それと同時にゲッツェが左からスーッと中央へ移動しシュールレのドリブルするスペースを空ける。シュールレマスチェラーノの抜き去り、中1枚しかいなかったゲッツェへクロス。それを左ボレーで流し込み、ついに均衡を破った。その後はアルゼンチンが最後の力を振り絞るが最後までノイアーの壁を越えることはできなかった。最後のメッシのFKもゴール遥か上を越え、万事休す。ドイツが4回目の優勝を成し遂げることとなった。

 

4・最後に・・・

 今回のドイツの優勝は、妥当な結果だと思う。ドイツはどのチームよりも戦術、メンタル、選手層、完成度が上回っていた。まさに総合的に強かったチームだった。ドイツの優勝には育成の成功、そしてクロップとペップの影響が陰に潜んでいた。このチームにはバイエルンの選手が多くいるし、その点では4年前のスペインと共通するところがある。とにかくスキのない素晴らしいチームだった。

 一方のアルゼンチンはメッシが中心のチームであることは間違えないが、そのなかでも守備陣の頑張りは素晴らしかった。マスチェラーノはMVP級の活躍だったと思うし、DF陣は最後までついていく粘り強い守備だった。体を最後まで投げだすことは守備の基本だが、それをこのような最高峰の舞台でやり切ることがとても大事なんだと思う。

 今大会を振り返って、やはり強い気持ちを見せるチーム、何事も粘り強く、辛抱できるチームが上に上がれるんだと思う。戦術的な部分ももちろんあったが、それ以上にサッカーそのものに対する気持ちの大事さを知った大会だった。なんだかサッカーの本質を改めて考えさせられた大会だった。