ヒグのサッカー分析ブログ

ベガルタ仙台の試合分析が中心です。

リバウンドメンタリティ~明治安田生命J2第41節 ベガルタ仙台vsロアッソ熊本~

 さて、今回はロアッソ熊本戦を振り返ります。ホーム最終戦

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スタメン

 ベガルタ仙台は、前節・アルビレックス新潟戦で0-3の敗戦。目の前で昇格を決められるとともに自身もプレーオフ圏内から転落する屈辱的な試合となった。後がないなかでの残り2試合。まずは目の前に相手に勝利して、なんとかプレーオフの最後の1枠へ滑り込みたいところだ。今節はプレーオフ進出が決めっているロアッソ熊本との対戦。ホーム最終戦でもあり、是が非でも勝点3が欲しい一戦となった。

 今節は大幅にシステムとメンバーを入れ替えた。まずシステムが3-1-4-2となり、2トップを採用。3バックには蜂須賀と福森が入り、フォギーニョと中島がインサイドハーフ、アンカーにデサバトが起用された。そして2トップには中山の相棒に富樫がチョイスされた。

 一方のロアッソ熊本は、前節・ザスパクサツ群馬に5得点の大勝。前述した通り初のプレーオフ進出を決めた。大木監督仕込みの細かいパスワークとダイナミックな攻撃でJ3からの昇格組ながら大きく健闘しているシーズンとなっている。プレーオフに向けて弾みをつけるためにも、アウェイながら勝点3が欲しい試合である。

 熊本は前節と同様のスタメンを起用した。ベンチにはターレスがメンバー入りを果たしている。

 

前半

(1)相手を押し下げ、素早くスペースを突く仙台

 前半開始から勢いよくゲームに入ったのは仙台だった。積極的なプレスと球際の勝負でしっかりボールへ寄せていくプレーはここ最近ではなかった。

 勢いよく入った仙台にはしっかり攻撃での狙いがあったと思う。それが先制点に繋がっていく。

 この日の仙台は、ここまでと打って変わって整えてから攻撃を開始するのではなく、素早く相手のスペースへ顔を出し、ボールを受けることでよりスピード感のある攻撃を狙っていた。

 より細かく見ていくと、仙台は左サイドではフォギーニョが、右サイドでは真瀬が積極的に背後へのランニングを行うことで、熊本のウイングバック(三島と竹本)を押し下げていく。そうすることによって、河原の脇のスペースが空くので、そこへ蜂須賀や内田、中島が潜ってボールを受けることでピッチ中央で前を向くことに成功し、チャンスを作っていく。

 そして狙いがハマったのが先制点となった。

 

 熊本も仙台の配置も含めて、ここまで勢いを持って試合に入ってくるとは想定していなかったはずで、そういう意味で仙台は奇襲に成功したともいえる。4試合ぶりのゴールは、非常に大きくそして勢いに乗れたゴールとなった。

 

(2)より前へ人を押し出す仙台

 早い時間帯で先制に成功した仙台は、守備においても強度の高い積極的な守備で熊本のボール保持に応戦していく。

 この日の仙台は5-3-2でボール非保持をスタートさせる。熊本のビルドアップのスタート地点は左右バック(黒木とイヨハ)から始まる。そこに対して仙台はインサイドハーフ(中島とフォギーニョ)がファーストプレッシャーを仕掛ける。熊本はウイングバックとウイングがお互いにポジションチェンジを行うので、仙台もそこに対して相手の立ち位置に応じてマークを受け渡し対応する。

 例えば、ウイングバックである竹本がハーフスペースにいるときは、中盤の位置にいても蜂須賀は最終ラインから出て行って竹本を捕まえる。その代わり5バックはしっかりスライドして、スペースを埋めて隙を与えない。

 このようにインサイドハーフがプレスを開始したときは、それに連動してしっかり後方も人を捕まえていくことで、熊本のボール保持に自由を与えなかった。

 また高い最終ラインの背後は小畑を中心にしっかりとケアすることも忘れない。

 この試合の守備は伊藤監督の目指しているものに近かったと思う。積極的により高い位置での守備を行うことができ、新潟戦でできなかった部分をしっかり生かせていた。

 

 ただ、時間の経過とともに熊本も変化を加えるようになる。

 河原が最終ラインに落ちて、イヨハをサイドバックのポジションへ動かし、中島からのプレッシャーを緩和させることで、徐々に熊本がボール保持時に呼吸ができるようになった。ここは後半への伏線となる。

 

 前半は開始から勢いを持って試合に入った仙台が開始4分で先制点を奪い、その後も強度の高い守備でペースを握り後半へと折り返す。

 

後半

(1)サイドで起点を作り出す熊本

 仙台は後半開始に伴い足を痛めた内田に代わって石原が投入される。

 

 前半は積極的に前からプレスを掛けてペースを握った仙台だったが、後半はそんな仙台に対して、熊本が前半の伏線を回収しながらゲームを進めていく。

 熊本はサイドバックの位置に選手を配置し、そこを起点に攻撃をスタートさせるようになる。

 5-3-2の守備ブロックは、どうしてもサイドバックのポジションへのプレスが遠くなり、時間を与えやすい。熊本としては定石通りのポジション変更を行った。

 よって、仙台は前半よりもファーストプレッシャーが利かなくなり、徐々に熊本にボールを保持される時間が長くなった。幸い熊本のラストパスやその一歩前のパスがミスになり、シュートまで持ち込むシーンは少なかったが、前半よりもやや構える時間が長くなったのは確かだった。

 

 徐々にボールを保持できるようになった熊本は69分に杉山と髙橋に代わって田辺とターレスを投入する。怪我から戻ってきたターレスは快足で、彼のスピードを生かした攻撃へとシフトチェンジする。よって熊本の攻撃は右サイドから多くなっていった。

 そして75分に得た右コーナーキックから同点ゴールを決める。

 熊本としてはゆっくりと自分たちのペースにしていってからの同点ゴールとなった。一方の仙台としては、構える時間が長くなったなかで、次の対策を練る前に失点を喫した格好となった。

 

(2)この日一番走った男へのご褒美

 失点直後に仙台は福森と中山に代えて若狭と皆川を投入する。若狭へはターレスの対策を、皆川へは前線からプレッシングと起点となるプレーを求めての投入だった。そのまた直後には疲れが見え始めたデサバトに代えてリャンを投入する。

 

 試合がラスト10分を迎えたあたりで、熊本も次第に足が止まり始めて徐々に中盤にスペースが生まれるようになった。そこで仙台が落ち着いて前線へとボールを届けられるようになり、再度チャンスを作り出す。84分の中島のミドルシュートは惜しくもバーを直撃した。

 

 そして87分に足を攣った富樫に代えて遠藤を投入する。一方の熊本も竹本と三島に代えて土信田と藤田をピッチへと送り、逆転を目指す。

 迎えたアディショナルタイム。仙台が右サイドから押し込んだところでコーナーキックを獲得する。

 遠藤から放たれたボールは、ニアのストーンの選手を越してフリーのフォギーニョへ。フォギーニョがヘディングでネットを揺らし、仙台は土壇場で勝ち越しに成功する。

 この日、攻守に誰よりも走ったフォギーニョ。そんなチームで一番走ったである選手に対するご褒美ようなゴールだった。

 また終盤に投入され、自身の左足で見事にチームへ貢献した遠藤のキックもさすがの一言だった。

 

 そのまま熊本の攻撃を跳ね返した仙台が、ホーム最終戦で劇的な勝利を挙げ、プレーオフへ望みを繋ぐ勝点3を獲得した。

 

最後に・・・

 試合開始のホイッスルとともにアグレッシブな守備から攻撃へと繋ぎ、新潟戦から見違えるような戦いぶりだった。

 特に守備面では伊藤監督が目指しているであろう全体が連動したプレッシングで、パスワークが特徴の熊本に自由を与えなかったことは、とても大きな収穫だった。

 また2トップにした影響もとても大きく、富樫が背後を取るプレーを繰り返してくれることで攻撃に奥行きが生まれたし、何より中山が孤立することがなくなった。

 そして殊勲の決勝ゴールを挙げたフォギーニョは前述した通り攻守においてよく走り、よくハードワークしてくれたことでチームに活力をもたらしてくれた。

 

 徳島と山形の結果次第ではあるが、プレーオフの望みを繋ぐことができた。まずは悔いなくリーグ戦最終節を戦って欲しい。

 次節はアウェイでブラウブリッツ秋田との対戦。リーグ終盤に来て4連勝中と波に乗っているチームであり、もちろん侮れない相手だ。まずはそんな秋田に立ち向かって勝利することがプレーオフ進出に向けての最低条件となる。

 秋田は長いボールを効果的に活用してくるチームだけに、コンパクトさを維持し、熊本戦同様に高い位置から守備をしていきたい。ホーム最終戦での劇的勝利の勢いそのままにリーグ最終戦を勝利で飾って欲しい!!

 

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痛感した積み上げたものの差~明治安田生命J2第40節 アルビレックス新潟vsベガルタ仙台~

 さて、今回はアルビレックス新潟戦を振り返ります。

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スタメン

 ベガルタ仙台は、前節・東京ヴェルディ戦で0-2の敗戦。前半は耐えながら後半に立ち位置を変えながら押し込む時間帯もあったが、ワンチャンスを生かされた格好となった。プレーオフに向けて残り3試合は落とせない試合となる。今節は首位であり昇格のかかる新潟だが、粘り強く戦い好機を生かしたい試合だ。

 今節は、3バックが若狭、佐藤、キム・テヒョンの3人に戻った。またボランチには久々にデサバトがスタメン。また右ウイングバックには真瀬がスタメンに戻ってきている。ベンチには名倉が同じくメンバー入りを果たした。

 アルビレックス新潟は、前節・モンテディオ山形と引き分けたものの、今節引き分け以上なら昇格が決定する。ホームで、また3万人以上詰めかけたサポーターの前で悲願の昇格を果たしたい一戦だ。

 新潟は、センターバックが舞行龍と千葉になり、左サイドバックには渡邊。ボランチに島田が入り、左ウイングに小見、ワントップに谷口と前々節の大宮アルディージャ戦と同様のスタメンで臨む。

 

前半

(1)新潟のボール保持にしっかり構える仙台

 キックオフから新潟がボールを保持しして、後方からの組み立てから仙台陣内へ押し込んでいく展開が続いた。

 一方の仙台は、新潟の個人技術と能力が高いビルドアップ隊に対して前からプレッシングを掛けるのではなく構えた状態から守備をスタートする。

 この試合の仙台の一列目(中山、遠藤、氣田)は新潟のボランチを守備基準点として守備をスタートする。

 仙台は新潟のビルドアップ隊から縦へのパスに対してしっかり人を捕まえ、また中央を締める意識を強めることで、伊藤や谷口に簡単に楔のパスを収めさせない。

 またサイドバックへボールが渡ったときは、右サイドでは真瀬が縦スライドで渡邊へ対応し、その後方では若狭が小見を見るような形となっていた。

 左サイドで同様にサイドバックへボールが渡ったら、藤原のポジションの高さに応じて氣田がプレスに行ったり、中島がスライドして対応するシーンが目立った。ちなみに内田は対面する三戸への意識が強かった。

 このような形で仙台は新潟にボールを持たれることはある程度想定しながら、自陣もしくはミドルサードでコンパクトに守備を行っていた。

 

 仙台は奪ったボールを中山を筆頭に前線へと預けて後方が追い越していくロングカウンターを狙っていた。

 しかし時間の経過とともに、奪ったボールを中山やシャドーに繋げられずに新潟の素早い切り替えからの即時奪回により、仙台は30分過ぎからカウンターへ持ち込むことができずに自陣で耐え凌ぐ時間が長くなっていった。

 監督コメントにもあったように、もう少しラインを上げてミドルサードあたりで守備を行うことができれば良かったが、結果的に前半終盤は自陣で跳ね返すことで精いっぱいな状態となってしまった。

 

(2)時間とスペースを奪う新潟と出口を見つけられない仙台

 また、新潟が終始ペースを握れたのは前線からの積極的なプレッシングにもあった。

 この日の仙台も東京ヴェルディ戦同様に可変しないでボールを保持する意思を見せる。恐らく4-4-2をベースに守備をする新潟とのシステム上のミスマッチを狙ったものと思われる。

 しかし、新潟は谷口のプレッシングを合図に仙台のビルドアップ隊に対して積極的にプレッシングを行うことで仙台から時間とスペースを奪っていく。

 結果的に余裕がなくなったビルドアップ隊は、ビルドアップの出口を見つけらずに苦し紛れに中山を目掛けてロングボールを送り、それを奪われて再び新潟のターンになる連続となった。

 20分すぎになるとさすがに新潟も同じ強度でプレッシングを行えなくなり、少し仙台のボール保持に余裕がある時間もあったが、それでもなかなか立ち位置を定めらずにうまく前進することはなかった。

 

 終始新潟ペースで試合は進んだものの、自陣でなんとか耐え凌いだ仙台。前半はスコアレスで折り返す。

 

後半

(1)集中の糸が切れる

 後半開始早々こそ仙台が前からプレッシングに行くシーンはあったものの、ほとんど前半のリピートのような展開で試合は進む。

 仙台は前半と変わらずに自陣深い位置で新潟の攻撃を抑える形。奪ったボールを前へ繋いでいこうとするも、そもそものスタート位置が低いのと、新潟の素早い切り替えによってカウンターの芽を摘まれてしまう。

 54分には起点を増やすために氣田から富樫に交代するも、効果的な交代とはならなかった。

 

 ここまで耐えきれていた仙台も、いよいよ集中の糸が切れてしまう。64分のことだった。

 中島が相手に当ててマイボールにしたと思ったら、新潟のボールの判定に。新潟は素早くスローインから侵入すると最後は伊藤が冷静に流し込んで均衡を破る。

 仙台としてはマイボールだという主張だったが、セルフジャッジをしてしまったゆえにプレーの再開が遅れ、隙を与えてしまった。

 もちろん判定に不満があっても結果は覆らない。不満があっても切り替えてプレーして欲しかったシーンだった。

 

(2)原崎前監督の記憶を辿って

 仙台は失点直後にキム・テヒョンとデサバトに代わって福森とフォギーニョを投入する。フォギーニョの投入はシステムをいじらないものの、前へ出て行く意思を見せるものだった。

 そして74分には若狭と内田に代わって名倉と石原を投入。1点を追う状況で、この交代を機に4-4-2へとシステムを変更する。

 後ろを1枚削り、前線に人を増やしたことである程度ボールを握って新潟陣内に迫るシーンも作り出せるようになる。

 名倉と遠藤がより2トップに近い位置でプレーし、サイドバックが高い位置を取る。そしてそこにボランチが加わって中央から攻め込むのは、原崎前監督時代にやっていたことだった。そんな前監督がやっていたことの記憶を辿りながら仙台はなんとかシュートまで持っていこうとする。

 

 しかし、1人減らして前へ人数を増やした仙台はどうしても後方に脆さが出てしまう。そして新潟に追加点を許すこととなった。

 左サイド深くを抉られると、最後は伊藤がこの日2点目となるゴールが決まる。これで新潟は昇格を大きく手繰り寄せることになった。

 

 その後は、攻める仙台を上手く抑えながらカウンターからダメ押しゴールを狙う新潟という構図に。まさに強者の試合運びだった。

 そしてアディショナルタイムに入って4分後に新潟は3点目を決める。

 カウンターから最後は古巣対戦となるゲデスが決めて、これがラストプレーになった。

 試合は0-3。新潟は3万人の大声援を受けて見事6年ぶりとなるJ1昇格を決めた。一方の仙台は3連敗でプレーオフ圏内から落ちて7位となった。

 

最後に・・・

 これ以上ない完敗だった。J2で苦しみながらもしっかり積み上げたことでチーム力と個人の能力を上げ、着実に強くなった新潟は、まさしく昇格に相応しいチームだった。改めておめでとうございます。

 

 一方の仙台は1年での昇格を目指し、終盤には監督交代という博打に打って出たが、つぎはぎだらけのチームではやはり着実に積み上げたチームとの差はあまりにも大きいことを痛感する結果となった。

 

 残り2試合残されており、もちろんプレーオフに向けてまだまだ諦める状況ではないが、やはり状況は非常に厳しい。

 まずは伊藤監督の下で後悔なくシーズンを終わらせるためにも、ロアッソ熊本戦とブラウブリッツ秋田戦の2試合はトレーニングからいい準備と気持ちを作って、少なくともファン・サポーターに期待を持ってもらえるプレーをして欲しいところだ。

 

 次節はホーム最終戦となるロアッソ熊本戦。7月のヴァンフォーレ甲府戦以来の勝利と2019年・大分トリニータ戦以来のオーラをユアスタに響かせられるように、チームには死ぬ気で戦って欲しい!!

 

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