ヒグのサッカー分析ブログ

ベガルタ仙台の試合分析が中心です。

低調な両者の戦い~明治安田生命J1第23節 セレッソ大阪vsベガルタ仙台~

 さて、今回はセレッソ大阪戦を振り返ります。

↓前節のレビューはこちら

khigu-soccer.hatenablog.com

↓前回対戦のレビューはこちら

khigu-soccer.hatenablog.com

 

スタメン

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 ベガルタ仙台は、8月3日に延期されていた第5節ガンバ大阪戦を戦い、0-1の敗戦。ボールを保持する展開ながらもこの試合でも決め手に欠き、パトリックの一発に沈んだ試合だった。この低調な状況を抜け出すべくゴールと勝利が欲しい一戦となった。

 今節は、3人のメンバーを入れ替えてきたセンターバックアピアタウィア、ボランチにフォギーニョ、左サイドハーフに加藤が起用された。

 一方のセレッソ大阪も、リーグ戦に限って言えば9試合勝利から遠ざかっている。ミッドウィークに天皇杯3回戦でアルビレックス新潟には勝利したものの、セレッソにとっても9試合ぶりに、そしてリニューアルオープンしたヨドコウ桜スタジアムで勝利したい試合だ。

 セレッソ大阪は、出場停止の松田陸に代わり右サイドバックに西尾、センターバックには東京オリンピックから帰ってきた瀬古、右サイドハーフに坂元が、それぞれ新潟戦から代わって起用された。ベンチにはケガから復帰した豊川が入っている。

 

前半

(1)徹底したアウェイの戦い方を実行した仙台

  この試合の仙台のゲームプランとしては、まずはしっかりとした守備ブロックを築き、そこから攻撃的なカードを切りながら後半に仕掛けていくというプランだった。

 スタメンのダブルボランチが富田とフォギーニョというところにも、その意思が伝わる。

 なので、前半は徹底したアウェイの戦い方を実行した仙台だった。ガンバ戦のように前からボールに奪いに行くシーンも少なく、自陣ないしはミドルゾーンで守備ブロックを形成し、そこに入り込んだセレッソの攻撃に対抗していく。

 前述の通り、仙台のダブルボランチが富田とフォギーニョというのは、ゲーム全体の守備意識もさることながら、トップ下に入った清武を監視する役割が最も大きなタスクだったと思う。

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 しかし、実際は清武が仙台の守備ブロックの外(左ハーフスペース)に降りてボールを受け、そこから攻撃がスタートすることが多かった。ブロックの外に降りたときにはダブルボランチは行かずにスペースを埋める。

 清武を起点に攻撃が始まるセレッソは、左サイドを起点に攻めることが多かった。清武から同サイドを崩すというよりかは、逆サイドへのサイドチェンジ、またはタガートへの一発のフィードという攻撃が多かった。

 よって仙台はスライドの意識、背後への意識を持ちながら、4-4-2の守備ブロックでセレッソの攻撃を対抗していった。

 仙台にとって助かったのは、左から右へサイドチェンジしたときに受ける選手が右サイドバックの西尾が多かったことだろう。もともとセンターバックが本職が西尾なので、そこまで攻撃のアイデアがなく、崇兆も加藤も冷静に対応できていたと思う。ただ、サイドチェンジを受ける選手が坂元だったら、仙台にとっても脅威になっていた可能性はある。

 

 セレッソも清武が降りてボールを受けるのはいいが、個々のアイデア頼みの面が多く、ハーフスペースへ侵入してくる高木も坂元も脅威ではなかった。もちろんタガートのシュートなど惜しいシーンはあったが、仙台は落ち着いて守備をすれば問題ないような状況だった。

 

 (2)押し込んだ背後を使った前進

  セレッソがボールを保持する時間が長いゲームだったが、そんななかでも仙台は相手陣内へと仕掛けられるシーンを作り出すことができていた。

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 セレッソは、ボールを保持して押し込んだときにサイドバックが高い位置を取る。また中盤も清武が落ちて、原川がアンカー、奥埜がインサイドハーフのような位置取りになり、「4-3-3」のような陣形になる。

 よってボールを奪うとサイドのスペースが空くことが多く、そこから仙台はサイドハーフがボールを前進させてカウンターを発動させたり、ボールを相手陣内に押し込んで自分たちのターンへしていった。

 しかし肝心のペナルティエリアでは、なかなかシュートまで持っていけない。それでもコーナーキックを獲得するなど、二次攻撃へ繋げられることはできていた。

 押し込まれすぎずに、時には前に出て行くということにおいてはアウェイでの戦い方を実行するなかで悪くなかったと思う。

 

 前半はセレッソがボールを保持し、仙台がそれに対して守備ブロックを組んで対抗。時にはカウンターに出て行くというような内容だった。お互いに攻め手に欠き、後半へと折り返す。

 

後半

(1)大きく流れを変えない両者

 セレッソは、高木から新井晴樹を投入。この夏にJFLFCティアモ枚方から加入したサイドアタッカーだ。

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 セレッソは左サイドに新井を投入したことで、配置を整理する。大外レーンに新井、インサイドに丸橋という形に整理されていた。

 また、前半よりも最前線のタガートが背後を取る動きを増やし、仙台の守備ブロックを押し下げる役目を担った。

 セレッソのボール保持時の配置整理や役割の変化は多少なりともあったが、大きく試合の展開や流れが変わることはなかった。

 仙台も前半同様に、守備を念頭に置き、セレッソの攻撃へ対抗しながら機を見てカウンターを仕掛けるような試合展開を狙って行っていた。

 よって、両者ともに立ち上がりから中盤にかけて大きな変化のない試合内容だった。

 

(2)ラスト15分から仕掛け

 試合の潮目が大きく変わったのは、ラスト15分になったところ。

 ここで仙台は攻撃的なカードを一気に切る。カルドーゾ、氣田、上原の3枚を投入する。

 この交代によって、ラスト15分でギアチェンジを図った仙台は、ボールを握ってセレッソ陣内へと押し込む時間を増やすことに成功する。

 しかし、大外からのクロスやアーリークロスなど淡白な攻撃に終始し、チアゴと瀬古のセンターバックコンビに跳ね返され、なかなかチャンスシーンを作ることができなかった。

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 ラスト15分で確かに攻撃的なカードを切って押し込むことに成功はできたが、なかなか再現性のある攻撃ができなかった。

 個人的には、オッティと氣田を各サイドに対して順足の選手を置いていたので、もっと彼らを縦にランニングさせて、サイドの奥を取ることでそこからペナルティエリアへと侵入する回数を増やしたかった。

 実際に90分の西村の決定機は、オッティが左サイドの奥を取ることで相手ディフェンスラインを下げさせ、そのことでペナルティエリア手前にスペースが生まれ、上原がシュートできる状況が生まれた。

 確かに攻撃的なカードを切ったということは有効的だったが、そこから先どのようににペナルティエリアに侵入し、チャンスを作るかというのがこの試合では見えなかった。チーム内の共通認識をもっと高めなければならないポイントだろう。

 加えて、カルドーゾをペナルティエリア内で全く活かすことができなかった。右サイドでは、真瀬がフリーでもボールを受けられることも多かったので、ラスト1枚を蜂須賀にスイッチして、精度の高いボールを蜂須賀から送るなどの仕掛けも必要だったと感じる。個人的には、ラスト15分の仕掛けの部分で少し不満に感じることが多かった内容だった。

 

 両者ともに、なかなか決定打を打てずに試合は終了。スコアレスドローに終わった。

 

最後に・・・

 またしても勝ち切れない試合だった。前述した通りでゲームプランのなかでラスト15分でギアチェンジするというプランがあったなかで、どこか消化不良に終わった部分もあった内容だ。

 なかなか決めきれない試合が7月から続いている。前節では質と量を上げたいということを書いたが、今節も同様の課題が残った形だ。

 またどうしても守備にウェイトを置く戦い方をしているので、チャンス回数は限られている。そんな中で、いかに有効打を打てるか、またチャンス回数と時間を長くするか(セカンドボールの回収による二次攻撃など)はポイントになってくるところだろう。

 守備が安定しているだけに、なんとか攻撃でゴールを奪って勝ちたい。1つ勝てれば自信は間違いなく付いてくるはずだ。

 

 次節はホームに横浜FCを迎える。順位の近い相手であり負けられない試合だ。受けに回りすぎず、自分たちから仕掛けていく。そういう戦い方を期待したい!!

質と量の向上~明治安田生命J1第5節 ベガルタ仙台vsガンバ大阪~

 さて、今回はガンバ大阪戦を振り返ります。

↓前節のレビューはこちら

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スタメン

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 新型コロナウイルスによる延期分となった試合。仙台はオリンピックによる中断明け一発目の試合となった。中断前のホーム連戦では決めきれずに2試合とも引き分け。残留争いを勝ち抜くために、いかにゴールを奪って勝ち切れるかがポイントになる。

 今節は、ボランチに松下ではなく上原、左サイドハーフに氣田、西村が2トップの一角に帰ってきている。ベンチにはフォギーニョが久々に入った。

 前述の通り新型コロナウイルスによる延期分を戦うガンバ大阪。リーグ9連戦の6試合目となった。ケガ人も多いなか、上手くターンオーバーを使って大分、札幌と連勝し、残留争いから一歩リードした感もある。今節を勝利することで中位へと上がっていきたい試合だ。

 今節も3-4-2-1のシステムを採用。菅沼、奥野、山本、黒川、宇佐美、パトリックが前節と代わってスタメンになった。ベンチには古巣対戦となる石川慧、新加入の柳澤、チアゴ・アウベスらが入った。

 

前半

(1)ウイングバック背後から活路を見出す仙台

 ガンバが夏場の過密日程を戦うなかで、ターンオーバーを採用しながらも常に前からボールを奪いに行くことは難しい。

 よって、仙台がボールを保持する時間が長かった。そんななかでどんな狙いを持っていたのか。まずはそこから見ていきたい。

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 5-4-1で守るガンバに対して中央から崩していくのは難しい。なので、サイドから活路を見出す。

 ボール保持時は4-2-2-2のような形を取る仙台。センターバックから攻撃を開始することが多かったが、まずはパトリックの脇でボールを持って前進を試みる。

 ガンバはボールを奪いに行くときは、シャドーがセンターバックへプレッシングをすることを合図に全体を押し上げる。

 仙台はそれをトリガーにセンターバックからサイドバックへパス。サイドバックのところにウイングバックが食いついたら、その背後をサイドハーフや西村がランニングしてボールを引き出す。このことでサイドの奥深くを取り、仙台はガンバ陣内ないしはペナルティエリアまで侵入をしていった。

 ただ、そこからクロスを送っても3バックの牙城に跳ね返されることが多く、チャンスに結びつけることはできなかったが、全体が意図的にプレーしていた。

 

 また、サイドから前進していくだけではなく、相手の前プレを剥がして擬似カウンターを仕掛けることもできた。

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 29分のシーン。ガンバが人を捕まえてプレッシングを掛けたところ。平岡が運ぶドリブルからボランチ背後でフリーになっている西村へパス。そこから攻撃が加速し、西村→赤﨑→真瀬でゴールを決めた。しかし赤﨑のポジションがオフサイドということで、ゴールは取り消しになった。

 札幌戦でも前から来た相手に対して、プレスを剥がして擬似カウンターからゴールを奪ったが、今節も同様のシーンができていた。恐らくトレーニングしている形だろう。再現性のあるプレーだっただけに悔しいシーンだった。

 また、このシーンで真瀬がゴール前に顔を出しシュートを決めたが、この試合では真瀬と関口の関係性が良く、サイドに関口が広がれば真瀬は中へ、真瀬が広がれば関口が中へと整理されており、中断期間中のトレーニングで修正できた部分だったなと感じる。 

 

(2)スイッチャーは関口

 一方で仙台の守備はどうだったかを見ていきたい。

 夏場の戦いになり、前半からアクセル全開で常に前からボールを奪いに行くことは難しい。状況に応じて前から行くとき、後ろで構えるときというのを以前よりもしっかり判断していくことが大事になっていく。

 仙台は基本的に2トップが相手ボランチを守備基準点として4-4-2のブロックを作る。

 ただ状況に応じて、前から行くことも忘れない。

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 主にプレスを掛けるときのスイッチャーは関口となっていた。 関口がキム・ヨングォンへプレスを掛けるところからスタート。基本的にはサイドへと誘導し、ガンバのパスルートを制限しながら守備をする。理想としては真瀬が黒川のポジションでボールを奪うことだ。真瀬の背後に抜ける宇佐美に対しては富田がカバーするポジションを取っていた。

 また、キム・ヨングォンが右サイドへとハンドルしたときは連続して2トップがプレッシングを掛ける。このときに2トップは必ずボランチのパスコースを消しながらプレスを掛けることで、サイドへボールを誘導させ、サイドでボールを奪えるように狙っていた。

 14分にプレッシングから氣田がボールを奪ったところからショートカウンターを仕掛け、西村の決定機を作ったが、あれも1つの理想的な形だった。

 中断前と変わらず、集中力の高い守備でしっかり守れていたと思う。

 

(3)セットプレーは脈絡がない

  守備においても攻撃においても、それなりに狙い通りの戦いができていたも、セットプレーは別物。

 35分に右コーナーキックからガンバに先制点を奪われる。

 山本の右コーナーキックをパトリックが合わせて先制。ボールも素晴らしかったし、パトリックが平岡より先に制空権を奪っていた。相手の質的な強さにやられたシーンだった。

 

 ということで、前半は悪くない内容を過ごせた仙台だったが、ガンバに先手を奪われリードされて折り返すこととなった。

 

後半

(1)5-4-1の牙城をどうやって崩すか

 後半になると、リードしていることもありガンバは前半のように前から行くことを少なくし、基本的に後ろに撤退する時間が長くなった。

 前半に侵入を許していたウイングバックの背後も、必要以上にウイングバックが出てくることが少なし5枚で守備をすることで穴埋めを行った。

 

 仙台としては、完全に撤退したガンバの守備網をどうやって崩していくかがポイントなった。

 相手の出方を見た仙台は、57分にさっそく動く。

 崇兆と関口に代えて蜂須賀と加藤を投入する。

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 この交代によって、左サイドからのクロスを右サイドで仕留める形へと舵を切った。

 実際に蜂須賀が投入されたあとに3本ほどいいクロスボールをペナルティエリアに送れたが、決めきることができなかった。

 ただ、仙台としては愚直に攻め続けるしかない。後半になってガンバが撤退したこともあるがセカンドボールを拾えるようになり、二次攻撃へと繋げられることも多くなった。

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 66分にはカルドーゾとオッティを投入する。

 カルドーゾが入ったことで中央で起点が作れるようになり、ロングボールからの前進ができるようになったし、オッティが縦へ抜け出すことで再び左サイドの奥を取れるようになった。

 また、上原→オッティのラインでチャンスを2つ作ることもできたし、途中投入の選手も効果的なプレーをしていたと思う。

 しかし、シュートを打ち切れなかったり、枠になかなかボールが飛ばなかったりと、チャンスは作るものの、ゴールまで結びつけることがなかなかできない。

 

(2)守備強度を保ちながらゲームを逃げ切り体制になるガンバ 

 そうこうしているうちに、ガンバも選手を入れ替えながら守備強度を保っていく。

 特に前線の選手をフレッシュにし、カウンターから追加点を狙うような構えを見せながら、途中投入されたチアゴ・アウベスや倉田は献身的に守備でも貢献する。

 またパトリックはフル出場。最後までロングボールで起点を作ったり、ファウルをもらってマイボールにしたりと、仙台にとっては最後まで目の上のたんこぶのような存在だった。

 

 最終的にアディショナルタイムもガンバの守備を崩し切れずタイムアップ。

 仙台の中断明け初戦は黒星となった。

 

最後に・・・

 結果的には0-1での敗戦。パトリックの一発に沈んだ試合となった。

 個人的には内容がものすごく悪かったかと言われれば、そんなことはないと思っていて、守備においても攻撃においても狙いを持っていたし、そこからチャンスを作っていた。また後半の選手交代も含めて手倉森監督の采配や判断が悪かったとは思わない(最後の交代は上原じゃなくて富田かなとは思ったけど)。

 ただそれでも決めれなかったことが、このチームがこの順位に置かれている理由なのかなと感じる。

 守備は4月以降から失点が減って、ロースコアの展開へと持って行けている。

 攻撃では主に4つのパターンがチャンスを作るパターンかなと考えている。

 今シーズンの得点は主にこの4つに大別できると思っていて、序盤戦に比べればだいぶ攻撃の幅も増えてきたなと思う。

 しかしゴールが遠い現状が今はあって、やはりそこは質と量(回数)を高めていかないといけないなと感じている。

 ショートカウンターであれば、ゴールへ手数を掛けずに攻め切る力。クロス攻撃だったら、クロスの質もしかりペナルティエリアへの侵入(ニアへのランニングやファーへのランニング、こぼれへの準備)。擬似カウンターなら隙を突いた縦パス、そこから攻撃を加速させ一気にゴールへ迫る迫力。セットプレーなら事前のスカウティングと準備。当たり前だけどシュートの精度。そこをもっともっと高めないとゴール数は増えていかないなと思う。

 

 今はケチャップがどん詰まりしている感じ。1つキッカケがあればまた上昇できそうな雰囲気がある。まずは質と量を増やし、焦れずに戦って欲しい。

 次節はアウェイでセレッソ大阪との対戦。5月に対戦したときはバー直撃のシュートなど惜しいシーンも多々あり、追いついた試合だったが悔しいドローだった。今節はアウェイだが、ゴールを決めきって勝ちたい試合だ。酷暑のなかでの戦いになると思うが、集中力を切らさず、ハードワークして戦って欲しい!!