ヒグのサッカー分析ブログ

ヒグのサッカー観戦日記からのお引越しです。ベガルタ仙台の試合分析が中心です。

ボランチの最適解~J1第4節 清水エスパルスvsベガルタ仙台~

 さて、今回は清水エスパルス戦を振り返ります。クリスランとの再会戦。

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 ベガルタ仙台は、水曜日に行われたルヴァンカップマリノス戦で板倉が負傷。今節は代わって金正也がスタメンとなった。それ以外は変更なし。ベンチにはケガから戻ってきた中野が入っている。

 清水エスパルスはヨンソン監督が就任し、ここまで仙台同様に2勝1分と好調なスタートを切っている。攻撃陣は3試合で7得点を挙げ、その中心にいるのがクリスランと金子。ソリッドな4-4-2を基軸とした組織的なチームに変貌した。スタメンは前節・札幌戦と変更なし。

 

■前半

(1)システムのミスマッチをどちらが利用するか

 この試合は、非常に風が強い中で行われた。前半は風上が清水、風下が仙台だった。渡邉監督のコメントにもあったように風の影響もあり、前半は耐えて、風上に立つ後半に攻勢を仕掛けたかった。しかし前半9分の金子のシュートで先手を許すこととなる。金子の素晴らしいロングシュートも風に乗った影響でかなり伸びた得点だった。

 

 そんな環境を整理したところで、お互いの狙いとゲームの推移を整理していくことにしたい。まずは先制点を奪った清水から。

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 清水のシステムは4-4-2、仙台のシステムは3-4-2-1である。システムが違えば、ピッチ上にズレが生じるのは当然の話である。

 ということで、このズレをどちらが活かすかという話に変わっていく。始めに生かしたのは清水だった。清水のビルドアップ時の立ち位置は4-2-2-2。両サイドハーフのデュークと金子が中央に絞り、仙台のダブルボランチの脇に登場する。また清水のダブルボランチはDFラインに落ちることはない。それはビルドアップの出口をサイドバックするからだった。システムのかみ合わせ上、サイドバックがフリーでボールを持てるので無理に可変しなかった。

 清水はボールを受けたサイドバックから斜めにパスを送ることが多かった。具体的にいえばバイタルエリア。仙台の3バックとボランチの間である。そこに斜めパスを送り、中央の4人からの崩しを狙った。先制点はイメージ通りで、松原から斜めパスを受けた北川が落として金子のロングシュートへ繋げた。もちろん仙台の寄せが甘かったのはあるが、清水としては練習してきた形で得点に結びつくことができた。

 また状況に応じて、クリスランにボールを当てることもあった。しかしこちらはクリスランへの警戒が強く、そこからチャンスが生まれることは決して多くなかった。

 そんな清水ペースの流れが開始から20分ほど続いていった。

 

(2)動き出す富田晋伍奥埜博亮

 清水ペースで始まった試合だが次第にゲームが落ち着ていく。そして仙台がボールを保持する展開へと変わっていった。

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 清水は守備時に4-4-2でブロックを作る。仙台のビルドアップ隊である3バックには2トップが対応する。3バックがボールを持っても、両サイドハーフは前には出てこなかった。

 仙台のボール保持を安定させたのは、ダブルボランチである晋伍と奥埜だった。晋伍と奥埜は、基本的に清水の2トップの後ろに位置する。しかしボールの位置によっては、2トップの間や2トップの脇に顔を出し、ボールを引き出していた。ダブルボランチがボールを引き出すことで、奥行きができ、3バックとボランチでボールを出し引きすることで、3バックがスムーズに前を向いて前方へパスを送れるシチュエーションを作っていった。ボランチ2人が関わることで3バックがフリーになるシーンを作ったわけである。

 具体的なシーンを見ていきたい。35分。

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 ボールを持つ金。このときに奥埜は2トップ脇に、晋伍は2トップ間にポジショニングしている。

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 金は晋伍に当て、リターンパスを受ける。

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 縦のパス交換を行ったことで、清水の2トップは一回引くことになる。これで3バックはフリーでボールを持つことに成功する。

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 そして金は大岩へ横パス。フリーで受けた大岩は隙を見て石原に縦パスを送る。

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 石原がフリックし、阿部へ。阿部はバランスを崩しながらも野津田にパスを出す。このとき阿部に立田が付いていったことで、仙台の左サイドに広大なスペースが生まれる。

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 そして野津田はスペースがあった左サイドへ。そこにフリーで駆け上がる永戸が登場する。

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 フリーで受けた永戸はグランダーのクロスを上げるも、清水守備陣にクリアされる。

 シュートまで持っていくことができなかったものの、3バックとボランチのビルドアップから相手を崩せたシーンだった。

 

 しかしこの35分のチャンスでもそうだが、仙台はあと一歩のところまで侵入できても、清水の守備を崩しきることができなかった。清水は多少、外をやらせても中をしっかりと固めることで対応していた。というのも清水の4バックはいずれも180㎝を超えており、高さでは絶対の自信がある。なので外からの攻撃には落ち着いて対応できていた。ただ後半のところで述べるが、仙台にボールを保持させている状況はヨンソン監督にとっては良しとしていなかった。

 それでも耐えて耐えて清水はリードして前半を折り返す。一方の仙台は、序盤の流れから自らの流れに引き寄せたものの、最後のところを突破できずに折り返すこととなった。

 

■後半

(1)ハイプレスを仕掛ける清水

 金子のゴールで先手を奪ったものの、前半のほとんどの時間で仙台にボール保持されていた清水。しっかりと中を固めることで対処し、リードして折り返すことに成功したものの、ヨンソン監督はこの状況を良しとはしなかった。

 ということで、後半の清水はハイプレスを仕掛けていく。前半は仙台のビルドアップからの攻撃に対して、ブロックを敷いて守備をする時間が長かった。しかし後半に入ると、仙台の3バックとキーパーに対して、2トップと両サイドハーフがハイプレスを仕掛けることで、仙台に対して自由にボールを保持させないようにした。

 仙台も繋ぐ意思を見せるが、最終的には関からのロングキックでプレスを回避するしかなくなっていった。このように清水の後半開始のハイプレスは効果的だった。

 また清水は中盤の球際バトルでも強度を高め、高い位置でボールを奪取し、ショートカウンターを発動させていった。この時間帯で追加点を取ることができれば、清水は勝利をグッと手繰り寄せることができていただろう。

 

(2)ボランチ野津田岳人の登場

 前半とは打って変わって、清水がハイプレスを仕掛けてきたことでボールをうまく保持できなかった仙台。渡邉監督は早めにカードを切ることを決断する。

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 60分に晋伍に代わって西村を投入する。これで野津田と奥埜のボランチ、阿部と西村のシャドーとなった。前節・神戸戦でも見られた形である。

 野津田がボランチに入ったことで、仙台はボールを再び保持することに成功する。晋伍よりも野津田の方がボールを受けて前を向ける。また1列飛ばす大きな展開ができるために、野津田と奥埜の位置から徐々にボールが循環するようになっていく。

 ボランチとして決して晋伍が劣っているわけではないが、選手としての特徴やスコア上、バランスが取れる晋伍よりも野津田の方が守備は若干おろそかになっても、前を向けるという判断だった。この早い決断は同点ゴールへとつながる。

 

 70分の同点ゴールは、スローインからの流れ。左のスローインから一旦大岩まで戻す。大岩は野津田へ縦パスを送り、その野津田は反転してシュートを狙う。しかし当たり損ねたシュートになり、そのボールは西村へ。西村のシュートは六反に弾かれるものの、こぼれ球を阿部が拾って落ち着いてネットを揺らし、追いつくことに成功する。

 

(3)最後まで攻勢を強めた仙台だが

 同点に追いついた仙台。残りは20分もある。仙台は同点直前に投入した中野や、80分にはジャーメインを投入し、さらに攻勢を掛けにいった。

 清水が時間を追うごとに体力も減り、ハイプレスが続かなくなったことで、前半同様に再びペースを取り戻す。前半では足元のパスからサイドの展開もあったが、ジャーメインや西村が入ったことで、足元だけではなく、裏へのパスも増えていった。

 加えて裏への形もできたことで中盤にはスペースが生まれ、そこからサイドに展開し、クロスを上げるシーンもより多くなった。しかし永戸のクロスはなかなか味方に合うことはなかった。これは永戸のクロス精度の問題なのか、永戸とクロスに合わせる選手の問題なのか。この辺はより調整していく必要がありそうだ。

 最後まで攻勢を強めた仙台だが、清水の集中した守備もあり、逆転ゴールを奪うことができなかった。

 ということでタイムアップ。前節に引き続き先制されたものの追いついた仙台だった。4試合終わって未だ無敗である。

 

■最後に・・・

 この試合を振り返ると、前半は先制されたあとに晋伍と奥埜が上手くボール引き出すことでボール保持ができた。後半は相手がハイプレスを仕掛けてきたものの、ボランチに野津田を登場させたことで、再び仙台ペースへと取り戻した。そんなボランチがゲームの流れを変えるポイントになった試合だった。今シーズンは三田が抜け、まだまだ解決すべきことが多いが、晋伍や奥埜、そして野津田がダブルボランチまたは3センターとしてこのチームの軸となっていることはこの4試合で明らかになってきている。

 どの組み合わせが最適なのかは、清水戦のように相手の特徴やゲームの流れで変化していく。よって昨シーズンのように三田と晋伍、また三田と奥埜という固定ではなく、状況に応じて柔軟に対応していくようになっていくのではないか。そんなチームに今シーズンは変化してきているのかもしれない。

 もちろんこのポジションには庄司や椎橋もいるわけで、彼らの成長も欠かせない。チームの骨格の1つであるポジションだけに、熾烈なポジション争いを繰り広げてほしい。

 

 リーグ戦はしばし中断。次回はホームで長崎を迎え撃つ。そしてここから始まる怒涛の15連戦。チームの総合力が試される。ここからさらにチームがレベルアップしていくことを期待したい!