さて、今回はFC東京戦を取り上げます。
仙台は前節・鳥栖戦で晋伍が負傷。左ハムストリングの肉離れで8週間の離脱となった。代役は奥埜。ルヴァンカップではたびたびこのポジションでプレーしている。奥埜が一列下がったことで右シャドーには西村が起用された。
一方のFC東京。前節・C大阪戦での敗戦を受けて篠田監督が解任された。暫定監督としてコーチを務めていた安間監督が就任。安間監督といえば甲府や富山でパスワークを中心にしたサッカーをしていた記憶がある。
前節までは3142を採用していたが、今節は3421を採用。チャンヒョンスがケガから復帰。ボランチは萩と橋本のコンビ。左ウイングバックには太田宏介が起用された。
勝ち点差は1、いわゆる6ポイントゲームである。鳥栖に勝利し、さらに上へと駆け上がっていきたい仙台としては負けられない一戦となった。
■前半
(1)FC東京がボールを持ったとき
前述したように安間監督はボールをボールを大事にして攻撃するのが好きな監督。今回の就任に当たっても、やはりボールを大事にする、パスワークで崩すサッカーをしたいと話していた。
まずはFC東京がどうボールを保持するかというところに焦点を当てていきたい。
試合開始から見られた形は東が落ちてくる形。特に右サイドで徳永がボールを持ったときに、柳が対面の中野を引っ張り、空いたスペースに東が落ちてきてボールを受けることを行っていた。
システム上ミラーゲームになるので、誰かが背後を取ったときに誰かが落ちてくるとギャップが生まれスペースができる。椎橋もどこまでついていくべきか判断に迷っていたので、右サイドからの前進はスムーズに行われていた。
もうひとつは仙台のボランチの背後を狙うこと
仙台は試合開始からミラーゲームということもあり、前からプレスを掛けに行った。前から掛けに行くことでFC東京のプレーを制限し自由にボールを回させないのが狙いだった。
当然、FC東京のボランチの対面は仙台のダブルボランチとなる。今回は三田と奥埜ということもあり、二人でバランスを取るのは開始早々からは難しかった。二人がFC東京のボランチに食いついてしまい、その背後のスペースを大久保や永井に与えてしまうシーンがちらほら見られた。
FC東京のボール保持におけるキーマンは、萩と東だった。萩は3バックからボールを受ける。その受けたボールを東がさらにリンクマンとして受けるということが非常に多かった。萩は篠田体制でも欠かせない存在だったが、安間体制ではその萩に加え、東もチームの潤滑油として欠かせない存在になるのではないか。
一方の仙台もFC東京の出方に次第に慣れてくる。椎橋やダブルボランチがどこまでついていくか、前線からプレスに行くタイミングや一回自陣に引いてブロックを作るタイミングが徐々に整理できるようになり、FC東京のボール保持にうまく対応できるようになっていく。
仙台が守備を整理できはじめてきた一方で、FC東京はなかなかうまくボールを運べなくなる。仙台に前からうまくパスコースを消されたことで3バックからのビルドアップを阻害され、ビルドアップも安定しなくなる。
FC東京は30分過ぎから萩が最後尾に降りてビルドアップを安定させる。たぶん指示ではなく萩の判断ではないだろうか。そんな気がする。
萩が降りてきたことで433のような形になるFC東京。433にしたことでボールを保持させることに成功したが、問題が発生する。それはボールを受けるために43が非常に低い位置を取ってしまったために、バイタルエリアにボールを運べなくなってしまう。ボール回しを安定させることに成功した一方で、ボールを保持することが目的化してしまい、最終的には前へ人数を掛けられなくなってしまった。よってラスト15分は自陣から中盤エリアでボールを持つ展開に終始してしまう。
(2)仙台の前半45分の評価みたいなもの
この試合の前に相手の監督が代わり、非常にやりにくいシチュエーションだったということは確か。特に仙台はしっかりとしたスカウティングが生命線であり、勝利のための非常に大きな要素となっている。
そんな難しい試合の中で、仙台は相手の出方を窺いながら我慢強く前半の45分を戦うことができたのではないか。
この試合初めてボランチを組んだ奥埜と三田も、始めはバランスを取るのに苦労していたが、徐々にお互いの距離感が良くなり、バランスが良くなっていった。
攻撃では、ボールを保持したときになかなか相手を崩せないことのほうが多かった。サイドをうまく抜け出せたシーンは何回かあったが、クロスははじき返されてしまった。
そんな中で35分過ぎから野津田がフリーマンとしてダブルボランチと距離感を近くすることで、リズムが生まれるシーンもあった。ミラーゲームでなかなか相手を崩せないなか、誰かが自由に動くことで相手をズラしていくような作業はこれからも練度を上げていく必要がある。
相手の出方がわからない中でスタートした試合ではあるが、我慢強く戦い、0で折り返すことができたのは良かったと思う。ということでスコアレスで前半を折り返す。
■後半
(1)FC東京の変化・修正
前半はボールを保持するために後ろに重心が重くなってしまい前への人数を掛けられなかったFC東京。後半は前線に人数を掛けるために高萩や東を前目でプレーさせた。ビルドアップは3バックが基本的に行い、時折橋本がフォローするような形にした。
また前半はボールを繋ぐことに終始していたが、後半に入るとシンプルにワントップの永井へロングボールを送ることもするようになる。このことでセカンドボールを回収し、より前でのプレー機会を増やしていった。
また守備では、前半よりも前プレの強度を上げ、また仙台のダブルボランチに対してボランチが付いていくことでビルドアップを阻害していた。
このような変化・対応に対して、仙台は後手を踏むことになる。
FC東京が前プレの強度を上げたことで、ビルドアップが安定しなくなり、高い位置でボールを奪い取られ、ショートカウンターを食らってしまうシーンが出てくる。
またセカンドボールが回収できなくなる。仙台もFC東京同様に前プレを掛けるが、FC東京の3バックは裏へのロングボールを選択肢として増やしたことで、ロングボールを送る→仙台がはじく→セカンドボールを回収するという展開になってしまい、間延びすることで中盤のエリアをFC東京に明け渡してしまう時間が続いた。
(2)飛び道具・セットプレー
先制点は67分だった。太田の右コーナーキックをニアでチャンヒョンスが合わせFC東京が先制する。
この試合ではそれまでに数多くのコーナーキックや直接フリーキックを太田に与えていた。J屈指のキッカーである太田に蹴る機会を与えれば精度は上がってしまう。
この失点は仙台の守備が悪かったというよりは、FC東京のセットプレーの精度が上回ったシーンだと思う。
(3)二枚替えの効果
追う展開になった仙台はすぐさま動く。奥埜に代えてリャン、西村に代わってクリスランを投入する。
この試合の仙台は、野津田をフリーマンとし、自由に動かすことで局面局面で数的優位を作って攻めるという狙いがあった。しかし肝心の野津田にいい状態でボールが入らず、とても苦労していた。
しかしリャンがボランチに入ったことで、野津田にボールが入るようになり、攻撃にテンポが生まれてくる。野津田、三田、リャンがいい距離感でボールを回すことで、徐々に攻撃に繰り出せるようになった。
仙台としてはその中盤のタメからサイドに展開し、クリスランで勝負したかったのが理想だろう。実際にサイドからチャンスを作り出すことに成功する。しかしFC東京の3バックは非常に堅く、林を脅かすことがなかなかできなかった。
仙台は疲労の見える古林に代わって蜂須賀を投入し、サイド攻撃をより強化する。
サイドからチャンスを見出そうとする仙台だが、シュートを打つにしてもエリア外からのシュートとなり、なかなか崩せない。
ラストプレーでバックパスをかっさらったクリスランが石原にパスを送るが、合わずにタイムアップ。0-1で仙台が敗れてしまった。
■最後に・・・
鬼門のスタジアムや審判が理由で負けたのではなく、お互いに平等にあったチャンスを活かせたか、活かせなかったかの差がこのスコアになった。単なる力負け。悔しい。
同じシステムを採用している両者だったが攻撃の形は異なった。仙台はポジション優位で攻撃をしていくポジショナルプレーであるのに対して、FC東京は自由に動き、相手の間間にポジションをし、パスを繋いで攻撃していくポゼッションサッカーだった。
自分たちのポジションで相手とのギャップを作り攻撃していく仙台よりも、相手に合わせて変化をすることでボールを動かし攻撃していくFC東京のほうが、効果的な攻撃だったことは事実だった。
4バック相手にはポジション優位で攻撃ができるようになった仙台だが、5バック相手で同数やミラーゲームになったときにギャップが作れずに、うまく攻撃できなくなるのは今シーズン抱えている課題である。今後はこれを克服していくことが、このチームをより成長させていくカギになってくるだろう。越えなければならない壁だ。
直接対決で敗れたものの、まだまだ巻き返せるチャンスはある。まずは連敗をしないことが重要だ。次節はセレッソ大阪戦。いいゲームを期待したい!