ヒグのサッカー分析ブログ

ベガルタ仙台の試合分析が中心です。

4-4-2を3-4-3で殴る~J1第25節 ベガルタ仙台vs清水エスパルス~

 さて、今回は清水エスパルス戦を振り返ります。

 

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 前節・川崎戦で敗れ、連勝が3でストップした仙台。連敗だけは避けたいところ。今節は3-4-3を採用。ケガから帰ってきた野津田、前節欠場した阿部がスタメンに復帰。CSKAモスクワへの移籍が決まった西村を勝利という形で送り出したい一戦となった。

 一方の清水エスパルスは、延期分の第18節・横浜Fマリノス戦に勝利し、この試合を迎えた。そのマリノス戦からは2人の変更。左のサイドハーフにミッチェル・デューク、2トップの一角には長谷川悠が入った。なお、クリスランは足首の負傷で欠場となった。

 

前半

(1)清水の攻撃時における2つのパターン

 前半は、両チームの攻撃のパターンについて見ていきたい。はじめに清水から。

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 まず1つは、サイドバックを起点とし、サイドハーフがライン間にポジショニングする4222スタイル。主に右サイドからの展開が多かった攻撃だった。

 飯田、金子、長谷川の関係性から仙台のバイタルエリアへの侵入や、飯田のポジショニングによってウイングバックを引き出し、その裏を金子や長谷川が狙っていくというイメージだった。

 なお、左サイドでうまく機能できなかったのはデュークがライン間のポジショニングを上手くできずに、松原と息が合わなかったからだ。なので、左サイドからスムーズにボールを前進させることが少なかった清水だった。

 

 そしてもう1つが、前線のターゲットを目掛けたロングボールだった。ドウグラスを始め、長谷川、デュークは身長も高くポイントにできる。よって、そこを目掛けてロングボールを送り、そのセカンドボールを回収する。

 どちらかというと、このロングボールでターゲットを狙った攻撃のほうが多かった。

 特にドウグラスは体も強く、空中戦には絶対的な自信があるので、ドウグラスがターゲットになることが最も多かった。前半終了間際の決定機もドウグラスがロングボールを収めてポストプレーした所からだった。

 

 そんな清水の攻撃に対して仙台は、5-4-1のブロックを築きながら、集中した守備で対応する。状況よって自陣撤退を選択することも多々あったが、その時はしっかり全員が引くことで対応した。

 またロングボールに対してもしっかり体を寄せることで、自由に収めさせない守備ができていた。時折、椎橋とドウグラスで質的優位を作られてしまうが、関口や大岩の的確なカバーリングで、危ない場面をほとんど作らせなかった。

 

(2)仙台のポジショナルアタック~目指せハーフスペース~

 一方の仙台は、清水が4-4-2だった3-4-3でのポジショナルアタックでゴールに迫っていく。

 清水のソリッドな4-4-2に対して、3-4-3で立ち位置を取る仙台。昨年まで見た光景がそこには広がっていた。

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 仙台は、清水のプレッシャーラインに応じポジションを調整することで、清水のプレッシングを剥がし攻撃を繰り出していった。

 仙台の3-4-3におけるポジショナルアタックは、ハーフスペースにいるシャドーへボールを届けることを最初の目標とする。

 清水の2トップが仙台のダブルボランチのパスコースを消している守備(ブロックを組んでいる)のときは、平岡、椎橋の左右バックが起点となり、ウイングバックボランチを経由してシャドーへとボールを届けていった。この試合では全体的な距離感も良く、テンポよくボールを動かすことができた。

 また、平岡と椎橋が自ら運ぶドリブルをすることで、相手を動かしていく場面も見られた。

 

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 また24分に仙台が先制すると、清水の守備は前からのプレッシングへと変更していった。

 その時の仙台はダンを活用する。ダンと3バックの擬似4バックを形成することで2トップとサイドハーフで掛けてくる清水の前プレに対して人数を調整していく。

 そしてダンからダブルボランチへと縦パスを入れることで、清水の前プレを剥がし、シャドーへとつないでいくことで、攻撃を加速していった。 

 仙台は開始から清水の守備に対してダンを使いながらボールを繋いでいく意思を見せていたので、試合前からしっかりと準備をしてきたのだと思う。

 

 それに加えて、相手を剥がして前進していくだけではなく、一発で裏を取るロングボールを狙う攻撃も見せていった。相手が前プレをしてくるのならば、裏は空くのでそこを石原や阿部が狙うという仕組みだった。

 天皇杯横浜Fマリノス戦の先制ゴールは大岩の一本のパスから石原が合わせたものだったが、あのような形を狙いたいというのが仙台としてあるのだろう。

 

(3)狙った形のセットプレー

 24分の先制点は、野津田の右からのコーナーキックを大岩が合わせてのものだった。大岩が試合後に語っていたが、この形は狙っていたものだった。

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 清水のセットプレーの守備はマンツーマン。大岩のマークはファン・ソッコだった。

 大岩はファーから中央へ回り込むようにして走り込む。そのときに平岡は付いていったファン・ソッコをブロックする。回り込む大岩に対して平岡はファン・ソッコをブロックし、進路を妨害することで大岩は瞬間的にフリーになることができ、野津田のボールに合わせることができた。地味なプレーだが平岡の効果的なプレーが先制点を生んだ。

 

 前半は、狙い通りのセットプレーで先制した仙台が折り返す。

 

後半

(1)前プレの修正を行った清水

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 後半スタートから長谷川に代わって北川が投入された。

 前半の清水の守備は、ゲームが動くまでは2トップがボランチへのパスコースを切りながらブロックを組み、ゲームが動くと2トップを皮切りに前からのプレッシングで、仙台のボール保持に対して圧力を掛けていった。

 しかし、仙台のキーパーを使いながら前進していくビルドアップで、清水の前プレを無効化されていった。

 ということで後半の清水は前プレを仕方を修正することで、圧力を掛けていった。

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 前半の清水の前プレは、ダンがボールを持ったときに2トップの片方が左右バックに付いていく形となっていたために、ボランチへのパスコースができてしまい、剥がされてしまった。

 後半は、2トップがキーパーにプレッシングに行きながら、背後のボランチのパスコースを消すことで、仙台のビルドアップを阻害していった。

 この修正で仙台にロングボールを蹴らせることに成功し、そのセカンドボールを回収を回収することで、清水がペースを握る展開へなっていった。

 そして55分に波状攻撃で、左サイドを崩すとデュークのクロスにドウグラスが合わせて同点に追いつく。清水としては、しっかり前半からやっていたことを修正することで、同点にすることができた。

 

(2)コンディションの差と動き出す野津田岳人

 前プレで仙台のボール保持を阻害することで、振り出しに戻した清水。しかしそう長くは続かなかった。

 水曜日にゲームをしたこともあり、疲労が徐々にピッチに現れてくる。後半から投入された北川は、元気にプレッシングを掛けるもそれ以外の選手が付いていけなくなる。ゆえに、北側の単独プレッシングとなり、仙台が前半同様にボール保持する展開へとゆっくり戻っていった。

 

 そして、それと同時に動き出したのが野津田だった。前半の野津田は、ハーフスペースにポジショニングすることで、後方からのボールを引き出していた。しかし後半はあらゆるところに自由に顔を出すことで、ボールを引き出し、また少ないタッチでサイドへ広げることで、攻撃を展開していった。

 野津田がいない中でも結果を残してきた訳だが、野津田が帰ってきたことで、そこに攻撃のスムーズさも加わり、仙台の攻撃はよりその厚みを増すことができた。

 

(3)勝ち越したい仙台、逃げ切りたい清水

 清水が疲弊し、自分たちのターンが続いていった仙台は、何としても勝ちたいゲームとなっていく。中野やジャーメインを投入して、さらに攻撃の迫力を増していったが、なかなか清水のゴールを揺らすことができない。

 一方の清水は、疲労が見えてきた中で攻撃はドウグラスと北川に託すようになっていった。仙台が前傾姿勢になっていくなかで、我慢強く守りながら虎視眈々とカウンターを狙う戦いへとシフトチェンジしていく。

 

 そして84分に両者とも最後のカードを切る。仙台は野津田に代えてリャン、清水は金子に代えて角田を投入する。

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 仙台は、奥埜をシャドーにした3-4-3。清水は逃げ切りを図るために5-4-1にする。

 終盤、清水は粘り強く守りながらカウンターからコーナーキックを得て、チャンス作るも残念そこはシュミットダニエル。

 

 

 そして90+5分。仙台は再三攻め立てたサイドから勝ち越しに成功する。左サイドから右サイドへ展開し、蜂須賀へボールが渡る。平岡のオーバーラップを囮に、切り替えして左足でファーへのアーリークロスを上げる。

 それを中野が折り返して最後は石原のダイビングヘッド。ウイングバックからウイングバックへのクロスからの得点で、仙台はついに勝ち越しすることができた。

 そして残り時間を跳ね返してゲーム終了。土壇場で勝ち越した仙台が勝点3をもぎ取った。

 

最後に・・・ 

 ロシアへと旅立つ西村へ勝利という最高のプレゼントを渡すことができた仙台だった。

 この試合自体は昨年からやってきたことの積み重ねだった。4-4-2の相手に対して優位な立ち位置を取ることで、ボールを前進させ攻撃していく。相手のプレッシャーラインが変わってもキーパーを使いながら剥がしていく。そういう作業を一つ一つ丁寧に行うことができた試合だった。

 また昨年までであれば、このような逃げ切りを図る相手に、押し込むも崩すことができずに勝点1しか取れないゲームが多かった。しかしこの試合では、最後の最後に押し切り勝ちをもぎ取ったところにチームの成長を感じる試合となった。

 

 西村が抜けた穴は確かに大きい。しかし、それを十分に埋められる戦力が今のチームに揃っていることこれからの試合で証明していきたい。

 リーグは一時中断。次節はホームでFC東京との試合となる。自分たちよりも上のチームを叩き、さらに上位へ駆け上がっていきたい!