ヒグのサッカー分析ブログ

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勝って兜の緒を締める~J1第5節 ベガルタ仙台vsV・ファーレン長崎~

  ここから始まる怒涛の15連戦。今回は、V・ファーレン長崎戦を取り上げます。

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 ベガルタ仙台は、前節から晋伍に代えて西村を起用。野津田ボランチ、西村シャドーという、ここ最近で得点が取れている形の布陣を採用した。ベンチにはケガから帰ってきた蜂須賀とリャンが入った。この2人が帰ってきたことは非常に心強い。そしてキャプテンマークを巻くのは古巣対戦に燃える奥埜博亮

 V・ファーレン長崎は、前節・札幌戦から徳重、中原、鈴木武蔵を入れ替えてきた。ルヴァンカップでの勝利はあるものの、未だにJ1リーグでの初勝利を掴めていない。ということで、そろそろ初勝利を掴み取りたい。

 

■前半

 前半は長崎がエンドを変えてキックオフをした。策士・高木監督らしい選択だった。

(1)なぜ長崎がペースを握ることができたのか?

 前半は予想に反して、長崎がペースを握る展開となった。仙台としてはボールを保持して、いい立ち位置からの攻撃を仕掛けたかったところだ。

 まずは、そうさせなかった長崎の仕組みから見ていくことにしたい。

 

 始めに攻撃から。

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 ざっくりではあるが図で表すとこんな感じになる。肝はダブルボランチの役割。ボールを保持するとなったら、碓井が列を降りてきて4バックに可変する。後ろが4枚になったことで、髙杉と徳永はサイドバックとなる。

 以前にも書いたが、5-2-3または5-4-1で守る相手に対して、サイドバックがビルドアップの出口となることで、スムーズにボールを前進させることはひとつの定跡となっている。今回の長崎も4バック化することでサイドバックをビルドアップの出口にした。前節・札幌戦では見られなかったが、昨シーズンではミラーゲーム対策として頻繁に行われていたらしい。

 そして仙台の3枚(西村、阿部、石原)のポジションを見てボールを循環させていった。シャドーが中(中原へのケア)に絞っていたならば、サイドバックへ展開し前進。反対にシャドーがサイドバックよりに立ち位置を取っていれば中原や落ちてくる澤田を、もしくは直接2トップへと縦パスを入れていた。

 このようにハードワークとカウンターのイメージが強い長崎ではあるが、しっかりとボールを保持する仕組みを作っていたことが分かる。

 それに加えて、無理をしない場面も多かった。サイドバックへボールが渡ったときにパスコースがなければ、ファンマへロングボールを狙う。そしてそれに呼応して走り出す鈴木と澤田、または競ったセカンドボールを回収するということを繰り返し行い、チャンスを作り出していた。

 

 続いて守備を見ていく。

 長崎の特徴はハードワークである。そしてそのハードワークの中身は、人とボールに激しく、また素早い切り替えと距離感を近くすることで複数人で奪い取るということだと感じた。

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 特にスローインからの場面ではそれが顕著だった。この写真もスローインからの流れからだが、画面上に7人いることで分かるように、常に距離感を近くし、プレスを掛けやすくしている。

 この試合では2トップ+トップ下という布陣で挑んだ長崎だが、もしかするとより距離の近い形で守備を行うことも狙いの1つだったかもしれない。

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 またこの図では、ファンマが仙台のパスルートをサイドへと誘導することで、コースを限定させている。このように前線からしっかりボールを追うこと(限定すること)、また狭い局面へと運ばせることで、強度の高いプレスを実現させていた。

 ついでにこの場面では阿部のバックパスを鈴木に奪われ、あわやという場面を作らせてしまっている。

 

 仙台としては狭い局面でボールを握ることよりも、ボランチや3バックを経由してより広く展開したかったところだ。特に相手の中盤が密集守備を行っているので、ミドルゾーンで広く展開をすることで長崎の選手をより走らせたかった。

 

(2)それでも先制点を奪う仙台

 間違いなく前半は長崎のペースだった。しかし先制点を挙げたのは仙台だった。31分。自陣のフリーキックの流れから一度はペナルティエリアに侵入するもクリアされる。しかしそのクリアを平岡がはじき返すと、古林に渡りクロス。DFがクリアしきれなかったボールを西村が拾い、冷静にキーパーを交わしてゴールを決めた。

 ルヴァンと合してこれで公式戦は2ゴール。昨シーズンはここぞの場面で決めきれなかった西村が、こうやって結果を出してくれるのは嬉しい。

 

 自分たちの流れではなかったが、先制点を奪うことに成功した仙台。このタイミングでワントップに入っていた阿部とシャドーの石原を代えている。この試合のスタートは阿部がワントップだったが、狙いが何だったのかはよく分からなかった。長崎対策がうまくハマっていなかったので、そのあたりでこの試合の狙い(阿部のワントラップ起用)と違う面が出たのかもしれない。

 本来の位置に戻った2人は、いつも通りのプレーを見せてくれる。阿部は古林との連携から右サイドを崩し、また石原は前線で起点となった。少しずつチャンスができ、コーナーから平岡のヘッドはポスト直撃。もう1点取れれば優位にゲームを進めることができたが。

 それでも、流れの悪い中で先制に成功した仙台は、1-0とリードして折り返す。

 

■後半

(1)お互いの変化を見ていこう

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 後半スタートから長崎は両ウイングバックの位置を変えている。おそらく前半は長崎の左サイドを突破されたシーンが多かったからだろう。翁長の裏を突かれたシーンは非常に多かった。ゆえに飯尾を置くことで左サイドの守備を修正した。この変化によって、仙台の右サイドからの攻撃をうまく抑えることに成功した。

 また、後半は翁長が右サイドになったことで、右サイドからのクロスがより増えた。

 

 一方の仙台。前半で石原と阿部の位置を変えた以外は目に見えた変更はなかった。しかし前半よりも後半のほうが、攻撃時に奥埜と野津田が縦関係になることが多かった。2人でバランスを取りながら、前線の3人と絡んでいくシーンは前半よりも増えた。

 しかし長崎のボランチを突破できても最後のシュートまで持っていくシーンは作れなかった。後半のシュート自体、セットプレーのこぼれ球を拾った永戸のミドルシュートだけであり、そこからも仙台がこの試合を通して苦しい試合を展開していた(してしまった)ことが窺える。

 

(2)両監督の交代の意図とは?

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 長崎は立て続けに米田と前田を投入し、システムを3-4-2-1へ。一方の仙台は阿部に代えてジャーメインを投入する。

 長崎が鈴木に代えて米田を投入しシステム変更を行った。裏が取れる鈴木ではなく、米田にしたことでファンマが競ったあとのセカンドボールを拾えるようにすること、それからボールを保持できる中で、ライン間で勝負できる選手というところで米田を起用したのだろう。

 前田に関しては、後半になってからボランチ付近を突破されることが増え、その対応のための起用だった。実際に広範囲でカバーをする前田は非常に効いていた。また4バック化するときも前田が列移動をし、アンカーの位置に碓井がいた。

 仙台はジャーメインは起用。個人的には裏へ抜け出すことで、相手のラインを下げさせたかったのかなと思ったが、足元で受ける場面が多かった。ただ、ジャーメインが足元で受けることで、その裏を抜け出す選手がおらず、左サイドの攻撃は正直機能していなかった。もっとシンプルにジャーメインの裏でも良かったような気がする。

 

(3)ブロックを敷くことを選択した仙台

 70分に奥埜が出血で一時10人となる。このあたりから仙台は5-4-1のブロックを敷いて、相手のボール保持させることを選択する。監督コメントでも、ボールを持たせても構わないということから選択肢としてあった。

 もちろんこの選択は悪くないと思うが、しかしボールを奪った後になかなかいつものようにボールを保持できない、または運べない展開が続く。長崎の切り替えの早さもその原因としてある。しかし石原がキープするものの、落として受ける選手が見つからない。ジャーメインのくだりでも書いたように裏を取る選手や相手DFを引っ張る選手がいないなど、自分たちに原因があったことも確か。そこは再度修正する必要がある。

 攻撃のリズムが良くないと守備のリズムも悪くなり、名倉の決定機2連発のようなことが起きてしまう。攻撃のリズムが生まれずに守備もうまくいかないという展開が後半ラスト20分で起きてしまった。

 それでも相手に助けられ、なんとか凌いだ仙台だった。晋伍と菅井を投入し、クローズ。今回も1-0での勝利となった。

 

■最後に・・・

 なかなかに内容がひどい試合だった、それでも勝てたことは地力がついた証拠かなと思う。

 なによりの救いは、渡邉監督自身が内容に納得していないことだろう。これで「よく耐えた」とか「自信が付いた」というコメントだったら、どうしようかと思った(笑)

 相手がどうこうではなく、純粋にもっと自分たちは戦えると語ってくれたのは何より嬉しい。そして間違いなくもっとできるチームだと思っている。もっともっとこのチームは強くなれるはずだ。

 

 水曜日にルヴァン・FC東京戦を挟み、次節はアウェイでの浦和戦。昨年の埼スタでの屈辱を果たし、そしてまだまだ自分たちは高みへ行けるというところを見せてもらいたい!