ヒグのサッカー分析ブログ

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清水を崩すために何が足りなかったのか J1第30節 ベガルタ仙台vs清水エスパルス

 さて、清水エスパルス戦を取り上げます。気がつけばリーグも残り5試合です。f:id:khigu:20171110153432p:plain

 仙台は前節・川崎戦で負傷した中野に代わって蜂須賀が左ウイングバック。負傷者が多数続出で野戦病院状態になっている仙台は、登録メンバー18人でギリギリ戦っている。

 アウェイ・清水は残留争いの真っ只中。早く残留争いから抜け出すためにも負けられない一戦である。今節は松原が出場停止、そしてチョンテセが負傷離脱で欠場。主力がいない厳しい状況である。右サイドバックには夏に加入した清水航平、左サイドハーフに白崎、2トップの一角に北川が前節と代わって起用された。

 

■前半

(1)失点が許されない清水の対応

 残留争いの最中である清水にとっては、まずは失点しないことが前提の試合となった。アウェイということもあり最低限勝ち点1を持ち帰られればというのがあったと思う。

 試合開始から清水は2トップを中心に仙台のビルドアップ隊に対して前からプレスに行く。しっかり前線からコースを限定させることで、ボールを奪う地点を決めて、仙台の攻撃に対応していった。

 序盤のチアゴアウベスの近距離フリーキックを獲得したシーンでは、中盤でボールを奪ってから素早い仕掛けで得たものだった。

 

 しかし時間が経過するとともに仙台もキーパーやボランチを含め数的優位でビルドアップを行うことで、清水の2トップのプレスを無効化していった。

 引くことを選択せざるを得なかくなった清水は、それはそれでしっかりと準備をしてきた。f:id:khigu:20171110153516p:plain

 特に仙台のウイングバックへの対応は前回対戦よりも準備されていた。仙台が大きなサイドチェンジで揺さぶりを掛けたときにボールサイドのサイドハーフ(図では白崎)がボールが動いている間にスライドをしてウイングバックへ対応することを徹底されていた。なるべくサイドバックを引っ張り出させずに、サイドハーフが対応することで横幅を守ろうとしていた。神戸や浦和がやっていたサイドハーフウイングバックのタスクを課すやり方とは少し違うが。

 清水はサイドのケアをしっかりとしながら、中央でも仙台にペナルティエリア内でシュートを打たせない集中力の高い守備を行っていた。

 

(2)ボール保持できる仙台だけれども・・・

 (1)でも書いたように、序盤の清水の前プレに対して、数的優位を作り出すことで無効化することに成功すると、仙台は70%近い支配率でボール保持し攻撃していく。

 ただ、高い支配率であっても前半から有効な攻撃手段を打つことができなかった。それができなかった理由は多々あると思う。ここでは特にサイドの崩しについて見ていきたいと思う。

 この試合の清水は、集中力が高い守備で最後のところを割らせなかった。もちろん集中力が高いから中央から崩すことは難しい。そうなるとサイドの駆け引きでいかに勝つかがポイントになってくると。f:id:khigu:20171110153554p:plain

 この前半、特に見られたシーンが増嶋がボールを持ったところから攻撃がスタートしていくところ。仙台のサイドの崩しの生命線は、左右のセンターバック、左右のウイングバック、そしてシャドーの三角形(またはボランチを含めた四角形)がいい距離感でプレーすることである。

 この試合では、増嶋がボールを持つ位置が低かったために、蜂須賀と西村も距離を保つために低い位置になってしまい、結果的に三角形が低い位置となってしまい、清水のブロックに侵入できない、または対応されてしまうということが多かった。

 特に増嶋から蜂須賀にボールが渡ったときは、清水航平とデゥークの2人を相手することが多くなり、蜂須賀はなかなかサイドをえぐることができなかった。これが中野であれば2人を相手にしても問題ないのだろうが、蜂須賀だと厳しい。そんなところがあった。f:id:khigu:20171110153618p:plain

 これを解決するには増嶋がデゥークを引き付けることが重要だと思う。増嶋が運ぶドリブルでデゥークを引き付け、同時に蜂須賀と西村が高い位置を取り、引き付けた増嶋が蜂須賀にパスを出すことで1対1を作り出す。このようなシーンを作っていけば、状況は良くなったのではないか。

 前半5分のように蜂須賀がえぐってチャンスを作っていたのは確かだが、もっとそういうシーンを意図的に増やしたかった。この試合では、清水が引いたことで、仙台の左右センターバックに時間とスペースがあった。なのでもっとそこを有効活用して攻撃を繰り出したかったのが本音である。

 またこの運ぶドリブルに関しては椎橋が使い手である。椎橋が起用されて増嶋が起用されない理由にはそんなところがあると。ストッパーとして増嶋は素晴らしいが、ビルドアップに関してはまだまだ克服しなければいけない課題が多いと思う。

 

 前半は、仙台が高い支配率を誇るも、清水の守備を崩せずにスコアレスで折り返す。

 

後半

(1)清水の牙城を崩せない仙台

 後半序盤も清水は前半同様に前からプレスと中盤での球際バトルで激しく戦うことで、仙台から自由を奪おうとした。しかしそれも長くは続かず、最終的には後半もほぼ仙台がボールを保持する展開へと変化していった。

 

 後半の清水は左サイドの守備を修正した。前半はデゥークが増嶋に行くのか蜂須賀に付くのかが曖昧になり、仙台に配置的優位性で左サイドを崩されたシーンがあった。後半のデゥークは増嶋にはボールを持たせ、蜂須賀にマークを付くようになる。このことで仙台の左サイドの攻撃は機能しなくなる。

 後半初めに蜂須賀が左サイドをえぐってからのクロスを西村が合わせきれずというシーンはあったが、ほとんどの時間は清水の右サイドをなかなか攻略することができなかった。

 それは前述したように増嶋のポジショニングで清水の守備を動かしていないことや、シャドーが前半よりも中央にいたためにサイドでのコンビネーションがうまくいかなかったことが理由としてあると思う。

 

 時間を追うごとに清水も守備へ集中し、勝ち点1でも持ち帰るという姿勢に全員の意思が統一され始めていく。このことで中央の守備はより強固になっていき、仙台はシュートを打てども清水守備陣にブロックされ、またなかなかペナルティエリア内へと侵入できなくなっていく。

 仙台は茂木とクリスランを投入し、攻撃の活性化を促す。茂木は右ウイングバックに入り、積極的な姿勢を見せる。無理やりにでも縦に行ってコーナーキックを得るなど、流れを変えようと奮闘する。しかしその判断は本当にチームにとって正しい判断なのかというプレーも見られた。本当にそのタイミングでクロスを入れていいのかとか、頑張りが空回りするシーンがあった。同年代の西村がプレーモデルのなかで自分を活かせている一方で茂木にはまだまだやるべきことが多いように思える。

 クリスランは相変わらずというか。どうしてもクリスランが入ると攻撃がアバウトになってしまう。それにクロスのタイミングでなんで中にいないの!?みたいなシーンがあって切なかった。まぁいつものことなんだけど。

 

 最後まで清水の守備を崩せなかった仙台だった。崩せないのは組織の問題だったり、個々の問題だったり、いろいろなことを感じる試合だった。

 

■最後に・・・

 ここ最近、仙台相手だと4バックのチームでもサイドハーフウイングバックみたいに振る舞うことで5バックになるチームの増えているように思う。おそらくこれが仙台に対抗するために効果的な手段なんだと思う。

 そういうチームにはもちろん質的優位(絶対に勝てると保証する場所)を作ることも重要なんだけど、それ以外にも相手の守備をフリーランで動かすみたいなのもやっていくべきなんだと感じる。

 例えば75分に茂木がカットインしてチャンスを作ったシーンがあった。あのシーンでは西村がボランチを引っ張りながら右サイドへとフリーランすることで茂木が中へ侵入するスペースが生まれた。

 こういうマークを動かしてスペースを作る動きをもっともっと作るべきなんだと思う。今までは自分たちのポジショニングだけで攻撃できていたけど、それに加えて相手を動かす動きを増やすことも大切になってくる。

 

 相手が対策を練っていく中で、仙台もそれを超えていかなければならないし、それがチームへの成長へとつながる。まだまだやるべきことは多いけど、残り4試合の中でも成長していく姿を見ていきたい。次節はアウェイでガンバ大阪戦。次節もいいゲームを期待したい!