ルヴァンカップ準決勝・川崎フロンターレ戦、合計スコアは4-5。非常に悔しい敗戦でした。それでも悔しいという感情と同時に、このチームにはまだまだ大きな可能性が秘めていることを感じた試合でもありました。
今回は、そんな川崎戦の180分間をざっくりと振り返るとともに、ルヴァンカップを踏まえた今週末の川崎戦第3ラウンドの展望、そして今後残り6試合への期待を書いていきたいなと思います。
■1stレグ・仙台3-2川崎
ファーストレグは、ミッドウィークのユアスタでの開催。
仙台は野津田が出られない。加えてリャンが直近の浦和戦で負傷し欠場。ワントップ2シャドーはクリスラン、西村、石原の組み合わせとなった。また過密日程を考慮し、増嶋と蜂須賀がスタメンに名を連ねた。
川崎はいつもの4231ではなく、3421を採用。鬼木監督によれば、3バック相手に3バックで挑んだときの成績は悪くないと。そして板倉の起用(21歳以下をスタメン起用しなければいけないルール)を考慮し3バックを採用したとのことだった。代表選出された車屋の位置には長谷川が左ウイングバックで起用された。
前半のスコアは仙台が30でリードする。自チームではあるが少し驚きのスコアとなった。
このスコアを生んだのは、システムの習熟度の差だった。仙台は日ごろからこのシステムを採用しているので、もちろん習熟度は高い。しかし川崎は仙台に比べたら、習熟度はかなり低かった。
その差が如実に表れていたのが守備面だった。川崎は守備の距離感が悪く、プレスが連動しない状態。また3バックが仙台のワントップ2シャドーを捕まえきれずに自由にプレーさせていた。左シャドーである西村が右に流れてきたのに対して板倉がそのまま付いていったシーンはそれを象徴する場面だった。シーズン序盤の仙台でも同じような光景が見られたが、それを反対に相手にさせているのだがらすごく成長を実感する。
またミラーゲームの状況をうまく生かしていたのも仙台だった。システムが同じなので守備時に誰が誰を見るかがハッキリする。仙台は自陣に引くときはブロックを敷いて守っていたが、前から行くときはハメやすいこともあって、積極的に前からプレスを掛けに行くことができていた。
そのことでボールを奪い、ショートカウンターに繋げられるシーンを増やしていった。先制点のシーンも、ショートカウンターではないが奪われたボールを素早く奪い返したことで得点を生み出すことができた。
前半のもう1つのポイントは仙台の右サイド・蜂須賀と川崎の左サイド・長谷川のサイドの駆け引きで蜂須賀が勝っていたことである。長谷川は不慣れなポジションで、守備時に蜂須賀を捕まえられないことが多かった。本来であれば仙台のビルドアップをサイドに追い込み、ウイングバックの位置でボールを奪いたかったが、長谷川が蜂須賀に強く奪いに行けなかったので、仙台は右サイドから簡単にプレスを回避することに成功する。また長谷川の影響で、奈良も引っ張り出されることになり、川崎に左サイドは狙い目となった。仙台の2点目も川崎の左サイドで奈良と長谷川を奥埜と蜂須賀の関係で崩して奪った得点だった。
本来であれば川崎がミラーゲームにすることで個の優位性で上回りたかったはずだが、蓋を開けてみれば仙台がシステムの習熟度と局面の球際バトルで優ったことで川崎を圧倒することができた45分だった。
後半の川崎は板倉から登里に代えて、いつもの4231の布陣にする。仙台は前半で負傷した椎橋に代わって平岡が投入されている。
後半、仙台が苦しむこととなるが、それには2つのポイントがあった。
1つはクリスランの交代。クリスランは、直近の浦和戦でゴールを決めたことで、この試合でも非常に好調だった。前半は2点決める活躍、そして攻撃のポイントとして決して得意ではないポストプレーと泥臭い守備で、非常にチームに貢献していた。
しかし、クリスランが右脚を負傷しジャーメインが投入される。こうなると高さがなくなり、なかなか前線でボールが収まらなくなった。エアバトルでも谷口と奈良に簡単にはじき返されるので、前半よりも押し込まれる展開となってしまう。
そのような状況のときに失点。またもコーナーキックからの失点となってしまった。このところセットプレーでの失点が多いが、ここ最近の失点を見るとニアサイド、細かく言えば平岡の周辺で合わせられることが多い。これは平岡の問題というよりは、ゾーンのニアは相手が自分の背後から走ってくるので、わかりずらいというのがあるのだと思う。
真ん中やファーでやられることは少なったので、ニアサイドのゾーンの修正をすればもう少しセットプレーの守りは改善されるのではないか。
そしてもう1つが、失点直後の石原の退場。プレー自体は微妙な判定にも見えたが、岡部主審のジェスチャーを見ると膝を高く上げたことがカードの対象になった原因だった。
1失点を食らった後に1人少なくなり、状況はさらに苦しくなった。仙台はミドルサードでは441のような形を、ディフェンシブサードでは531のような形を敷いて守っていた。実際に中盤の3枚はスライドがきつかったし、川崎もそこを動かすことでチャンスを窺っていたので、非常に厄介だった。
もう1失点食らったのが、アディショナルタイムに入ってからというのが、非常に悔しい。180分を振り返ったときに、ここはやはりポイントになったところかなと思う。
後半、川崎にアウェイゴールを2つ許し、32で最初の90分を終えることとなる。
■2ndレグ川崎3-1仙台
2ndレグの川崎は4231の布陣に戻した。21歳枠は三好康児。左サイドバックには登里が入った。
1stレグで退場となった石原が出場停止。また椎橋もケガとジャーメインを入れて18人がようやく揃うという満身創痍な仙台。シャドーの位置に中野を、左のウイングバックには蜂須賀を起用した。
前半は開始から、川崎は前からプレスを掛けることで仙台のビルドアップの破壊と自分たちが主導権を握ることを行っていった。
仙台はこの川崎のプレスに対して臆病になってしまった。後方からボールを繋いでいく意思は見せるものの、プレスを掻い潜ることができずに、最終的には前線のクリスラン目掛けてロングボールを送ることが多かった。結局、川崎にボールを渡すことが続いてしまった。
この試合を改めて見てみると、開始からの川崎の前プレに対して仙台がいい立ち位置(相手のプレスを無効化するポジショニング)とボールを繋ぐ勇気さえあれば、しっかりとプレスを剥がすことができたシーンはいくつもあった。
それができなかったのは、相手の勢いに飲まれてしまったことや、1点リードしていることで慎重に戦おうとするメンタルのところが影響したのではないかと思っている。
というのも、29分に先制を許してからの仙台は、やることがハッキリしたことで前へのエネルギーを持って戦えていたからである。ぎりぎりのところでもパスを通すことをチャレンジしていたし、ボランチもギアを上げて前への推進力を持ってプレーできていた。もちろん川崎がリードしたことでプレスを緩めたことも考慮しなければいけないが、開始からこのプレーができていれば前半の戦いはもっと違ったものだったように思える。
ボールを保持したときの川崎の攻撃は局地的に数的優位または同数を作って攻撃していた。2列目である3枚(家長、憲剛、三好)はときに同サイドでプレーし、そこにサイドバックやボランチが絡むことで、仙台にマークをハッキリさせなかった。29分の三好のゴールはまさに狙い通りで、局地的に数的優位を作り出し、最終的には三好がフリーで憲剛のおしゃれフリックに反応することができていた。
前半は序盤から前プレで主導権を奪った川崎が先制に成功するという理想的な戦いができた45分間だった。
前半に川崎がリードしたことで、今度は川崎に選択肢が生まれたと思った。このままでも決勝に行ける川崎はもう一度前から仙台のビルドアップを破壊することもできるし、引いて守ることも選択肢の一つであった。
もちろん川崎なので、攻撃的に行くことは確かだろうが、このままスコアが推移したときに川崎がどういう選択をするか。そしてその選択に迷っているときが仙台のチャンスだと個人的には考えていた。だからなるべくこのままのスコアで推移すればなと。
しかし、そんな個人の願望とは裏腹にスコアはすぐに動いた。川崎が再度仙台の左サイドを崩して三好が追加点を奪う。これで仙台は最低でも2点必要になった。
それでもすぐに中野が奈良に倒され、奈良は2枚目のイエローで退場になる。これが53分の出来事だったので、まだわからない。一列目のプレスがなくなった川崎に対して仙台は配置的優位で川崎を押し込んでいく。特にサイドからの攻撃で川崎ゴールに迫っていくと、59分にショートコーナーの流れから中野が決めて1点差とする。本当に分からない。
このあとの仙台もサイドを起点に攻撃していく。特に川崎の左サイド・登里のところは狙い目で、そこを崩してチャンスを作っていく。しかし、焦っているのか最後のクロスの精度を欠いてしまった。冷静になれないというか、会場の雰囲気も相まって、落ち着くがなかったのは本音だろう。
仙台は野沢を投入し、中野を左に蜂須賀を右ウイングバックにする。その後平岡→藤村で右サイドの攻撃の活性化を図る。最後のカードは奥埜→ジャーメイン。三田をアンカーに置き、その近くに野沢をフォローさせる。クリスランとジャーメインの2トップのような形で、さらに攻撃のカードを投入する。しかしどんどん丁寧さを欠き、アバウトな攻撃に終始してしまった。監督コメントにもあったようにそこは本当に反省点だった。
川崎は長谷川、ハイネルを投入し、守備をしながら、前に出た仙台に対してカウンターもできるようにした。これでカウンターができるようになった川崎が90分に長谷川のゴールで追加点を決める。
もう1点とれば延長に持ち込める仙台だったが、パワープレーで雑さが目立ち、川崎ゴールを奪うことができなかった。
合計スコア4-5。川崎が決勝進出を決めた。
■最後に・・・
ざっくりとではあるが川崎を振り返った。1stレグ、アディショナルタイムに許したアウェイゴール。2ndレグの序盤の戦い方、そして終盤に失ってしまった攻撃の丁寧さ。いろんなところに勝負の分かれ目はあった。やはり川崎とのこういったトーナメント戦での経験値が差として出てしまったかなと。ただ、これを経験してもっと上へ目指せばいいだけの話。クラブの歴史をまたここから積み上げればいいと思う。
すぐにまたリベンジマッチが行われる。次はリーグ戦。同じチームと3試合連続で戦うと、相手の手の内が分かってしまってゲームとしては面白くないと思っていたが、今回に限ってはそうでもないと思う。
仙台はこの2試合で川崎の手の内を知ることができたし、相手の選択肢をなくしている。まず川崎があの状態の5バックを使ってくるとは思わない。また相手が前から来たときに、どこにスペースがあるかを肌感覚で分かった。そして相手が引いたときにしっかりと攻撃できていた。
そしてなによりも次は石原も野津田も使える。前線の駒が増えることで反対に仙台はこの2試合よりも選択肢を増やすことができる。川崎に対して勝機が十分にあると思う。
あとはカップ戦が終わったことによるメンタルの部分。モチベーションをしっかり上げて挑むことができれば、今週の等々力でも十分に戦えると思う。
カップ戦での悔しさをエネルギーに変えてぶつけるためにも、残りの6試合は大事な6試合になってくる。まだまだ今の順位よりも上へ行けるチャンスはあるので、最終節まで今シーズンの戦いを貫いてほしい!