さて中断期間が明けました。残りは3試合です。大宮アルディージャ戦を取り上げます。
仙台は前節・ガンバ戦で残留が決定。またこの中断期間には渡邉監督の来季続投も発表され、残り3試合は今シーズンの集大成、そして来季へ向けた戦いとなる。残念ながらケガ人の復帰はキーパーの石川慧だけに止まった。よって前節・ガンバ戦からのスタメンは変更なし。
一方の大宮は残留争いの渦中にいる。この中断期間にはシーズン2度目の監督交代を敢行。今季途中まで鹿島を率いていた石井監督を招へいした。この博打が吉と出るか凶と出るか。スタメンは442の布陣、金澤が久々の先発起用となっている。またセンターバックの菊地が負傷離脱し、高山が代わりに起用されている。
■前半
(1)曖昧だった大宮のサイドハーフ
中断明け。大宮が監督が交代したことで、仙台に対してどういう振る舞いを見せてくるかがこの試合の1つのポイントだと考えていた。おおよそやり方を変えない仙台に対して大宮がしっかり準備してきて挑んでくると面倒だなと。 仙台としては、大宮がビルドアップ隊に対して積極的にプレスを掛けに来たり、反対に大宮のサイドハーフが仙台のウイングバックにマンマークのようなやり方で付いてこられると厄介だなと思っていた。
しかし、蓋を開けてみれば肩透かしに合うこととなった。
大宮は守備時は442のブロックを組む。ただ、サイドハーフのタスクが非常に曖昧だった。前から行くためにボールサイドのサイドハーフが前に出るわけでもなく、前述したようにウイングバックへと付いていくわけでもない。かといって中央に絞って中のスペースを閉じているわけでもない。とても曖昧な大宮のサイドハーフだった。
大宮の守備はとりあえず442のブロックは組んでいるね、で終わってしまい、仙台のボール保持に対してどこからプレスを掛け、そして限定しどこで奪うのかというのが明確ではなかった。
よって仙台はいつも通りの攻撃を繰り出していく。ハーフスペースの入口(増嶋と平岡)のポジションから攻撃をスタートし、相手の立ち位置を見ながら外レーン(蜂須賀、古林)、ハーフスペース(西村、野津田)をうまく利用しながら攻撃することができた。
また大宮が4バックで来てくれたことで、大外が空き、例えば左サイドで人を密集させた後で、右サイドの古林へと展開するといった形を数多く作ることができた。
2点目の流れも左サイドで奥埜、三田、石原と絡んで、大宮の守備を中央に集めた後に、できた右サイドのスペースに古林がランニングして生まれたゴールだった。
仙台は大宮の守備にさまざまな問題を抱えていたことで、しっかりと自分たちがやりたいような攻撃を展開することができていた。仙台が何か特別良かったというよりかは大宮の守備が問題だったというのがこのような試合展開になった最大の理由だろう。
(2)仙台の守備はどうだったか
大宮の守備が整備されておらず、理想的な攻撃を繰り出すことができた仙台。では反対に守備はどうだったか。
大宮はボールを保持したときは4222のような形となる。ボールを奪ったら2トップはウイングバックの裏へと抜け出し、そこでボールを受けることで全体を押し上げることを狙っていた。
またビルドアップ時には、江坂と横谷がボールの位置と相手の位置を見ながら、顔を出すことで仙台の守備に対抗していった。
仙台は、前から行くときは523。後ろに構えるときは541の布陣。大宮に危ない場面を作られることは少なかった(大山のフリーキックぐらい)が、それでも前から行くときに少し気になる場面があった。
図は前半31分の場面。大宮が加藤からビルドアップをスタートさせ、仙台の前プレをうまく剥がしながら前線へと運んでいった。結果的に横谷のタッチが長くなり増嶋がクリアしたことで、何ともなかったシーンだったが、ここを振り返りたい。
加藤から山越にボールが渡ったときに野津田は山越に対してプレスを掛ける。しかし山越、奥井、金澤で三角形を作っている大宮に対して仙台は野津田と金澤に付いていた三田しかいない。山越→金澤→奥井とボールが動いたときに蜂須賀が慌てて前から掛けに行く。しかし出遅れたために再度金澤に横パスを出され、その金澤はダイレクトでフリーの横谷に渡すことができた。
仙台の問題は後方が人を掴まえきれていない状況で前からプレスを掛けてしまったこと。この場面だけではなく、前半では他でもそのようなシーンがあった。決して前からプレス掛けるなというわけではなく、前から行くのならばしっかり人を掴まえてプレスを掛けたい。そうでないならば、ある程度パスコースを限定させたい。仙台は簡単に剥がされてしまい、中盤エリアで前を向かれることが多く、今後の課題とも言えるだろう。特に来週のマリノス戦では、モンバエルツ監督はそのあたりも狙ってくるかもしれないので1つのポイントだ。
前半は、26分にコーナーのこぼれから蜂須賀のクロスを増嶋が合わせ先制。36分には中央で崩し右の古林へと展開、古林の低いクロスが相手のオウンゴールを誘い2点のリードで前半を折り返す。
■後半
(1)後半開始から3点目、そして退場までのお話
大宮は後半から大前に代えて瀬川。前半の途中から横谷と大山の位置が変わり、横谷がボランチとなっている。 仙台は西村と野津田のポジションを変えた。状況によっては反対のこともあったが、基本的に後半は右西村、左野津田というポジションだった。
後半開始10分は、無秩序な時間が続く。どちらが主導権を握ってというよりは、中盤でボールを握れたチームが攻撃へと転じる時間帯だった。 お互いに落ち着かない展開が続く中で、次の得点を決めたのは仙台だった。56分。
スローインの流れから右サイドで崩して、最後は三田のミドルシュートで追加点を奪った。後半開始して仙台が初めて相手陣地に押し込んで攻撃で来た場面だった。
この得点を振り返ってみると、確かに仙台は右サイドで密集からパスワークで崩しての素晴らしい得点だった。 しかし大宮の守備のポジショニングを見ると、中盤で密集から剥がされてしまった守備も問題があるのだが、逆サイドのサイドハーフ・大山が蜂須賀へと付いていっている。このことで真ん中のバイタルエリアにスペースが生まれ、三田がいい状態からミドルシュートを決めることができた。
大山が蜂須賀へ付いていったのは大宮の修正ポイントだったからではないだろうか。前半に仙台は幾度となくサイドチェンジやピッチの幅を有効活用した攻撃を繰り出していった。それを嫌がった大宮は後半に入るところでボールサイドと反対のサイドハーフがウイングバックへと付いていくようにしたのだった。
このような場面は直後の62分にも表れている。右サイドから三田が中央で受け、左の蜂須賀へ展開し、ダイレクトでクロスを上げるも西村も三田もシュートを打ち損じた場面だ。 しかし大宮はウイングバックへのケアをしようと試みたものの、肝心の中央のエリアにスペースを明け渡してしまう状況になってしまったのだ。この辺に監督交代直後の影響が出ていたように思える。
ついでに大宮のサイドハーフがウイングバックへと付いていくのは、仙台が大宮のバイタルエリア付近に侵入したときだった。仙台が中盤エリアもしくはビルドアップ時にはサイドハーフは前に出て対応していた。大宮が完全に引くときには5バックの状態というのを狙っていたのだと思うが、アドリブだったのか、その移動がうまくできていなかった。
3点目を奪った仙台、後半は前半よりも素早い切り替えから中盤で大宮に自由を与えないようになる。大宮が仙台のプレッシャーを受けたことでロングボールを送り、それを回収するという展開が続いていった。 また前プレも徐々に機能するようになり、前半よりも圧力を強めてゲームを運べていたと思う。前プレ時にボランチが中央でスペースを与えてしまうのは諸刃の剣ではあるが、それでも奥埜と三田が運動量でカバーするシーンが増えていく。
奏功しているうちに大山が2枚もらって退場となり、ゲームはほぼ決まった。
(2)退場後のお話
大量リードと数的優位ということからか、ゲームも徐々に緩くなりだす。もちろん緩くなってはいけないのだけどどこかで落ち着いた感じがピッチに漂っていたのは確かだった。
仙台は退場後も多くのチャンスを作り出す。押し込んでの形、ショートカウンターからの形などなど、さまざまな形から得点を奪いに行くが決めきれない。
特に西村には多くのチャンスが訪れたが決めきれなかった。ニューヒーロー賞を取り、もっと結果が欲しいという気持ちが先走っているのか肝心なところでのコントロールミスが目立った。まだまだ若いということを感じる。ゴール前でもっと落ち着けるようになるといよいよ手が付けられない選手になりそう。
仙台は古林から菅井。しかし5分後に増嶋が交代したことで茂木が入り、菅井は3バックの右へと入ることとなる。監督コメントでは菅井を称賛していた。特別なにかをしたわけではないが、攻撃に出たい気持ちを抑えてしっかり守ってくれた菅井に対する感謝と申し訳なさがコメントから感じ取られた。
その後は茂木がフリーキックのチャンスが巡ってくるけど決められないみたいなことがあってタイムアップ。久々の完勝。クリーンシートでの勝利は第22節・広島戦以来となった。
■最後に・・・
1年を通し継続して戦ってきたチームと監督交代から日の浅いチームの蓄積の差が結果として現れたゲームとなった。渡邉監督のコメント通り決めらなければいけない場面が多々あり、そこは反省材料ではあるが。
仙台が何か特別良かったというわけではないと思う。大宮が仙台に対する対策が甘かった中で、自分たちのサッカーをピッチ上で謳歌した結果である。普通にここまでできるようになったことを今節は示してくれた。
ピッチ上で多くの選手が要求し合う姿がとても頼もしく見えた。守備ではまだまだ改善の余地があるが、それでも開幕から着実に進歩してきた。残るは2試合。次はホーム最終戦、横浜Fマリノスとの対戦となる。上位にどれだけできるか、そして残り2試合でもぜひ今シーズンの集大成を見せてほしい!