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【時系列で振り返る】ベガルタ仙台・2022年シーズンレビュー

 ご無沙汰しておりました。リーグ戦が終了してはや1か月が経過しようとしています。来シーズンに向けての動きも出てきていますが、今回はまず今シーズンの振り返りをしていきましょうという内容です。

 今シーズンは、昨シーズンラスト2試合から原崎政人監督が継続して指揮を取り、8月に成績が急落したことで伊藤彰監督へ監督交代となりました。最終的に参入プレーオフに進出できず、7位でのフィニッシュとなり、来シーズンもJ2の舞台で戦うこととなりました。

 

 本稿では、時系列的に今シーズンのサッカーを振り返り、締めに来シーズン昇格するために必要なことは何かを考えていきたいと思います。

(※本文では常体の文章になります。)

Chapter1 原崎体制~仙台史上最も攻撃的なチーム~

(1)アグレッシブにゴールを目指すチームへの変貌~第1節から第10節~

 原崎監督は今シーズン、「自分たちが主導権を握る、自分たちからゲームを動かしていくチーム」を目指してシーズン前のキャンプに取り組んだ。

 攻撃においても守備においても自分たちから仕掛けて、主導権を握っていくサッカーで「J1復帰」を目論んだ。

 

 開幕戦のアルビレックス新潟戦では、右サイドバックに加藤千尋の起用や新戦力5人をスタメンに送り出した。新潟戦では、新潟の分厚い攻撃に対して自陣で我慢する時間帯が長かった一方で、ボールを保持した局面では様々な保持設計を見せ、原崎監督の目指している部分が垣間見られた。

 開幕戦はスコアレスドロー、次の水戸戦では今シーズン初勝利、そして群馬戦では再びスコアレスドローと開幕3試合は1勝2分で成績的には悪くないスタートだったが、内容面で見れば物足りない印象を受けた。

 

 大きく変化したのは第4節のいわてグルージャ盛岡戦だった。この試合ではフォギーニョが今シーズン初先発で出場する。この試合から攻撃時にボランチから攻撃のスイッチが入るようになり、ボランチの縦パスを合図に2トップとサイドハーフが中央で関わりながらゴールを目指していく。この攻撃がハマって盛岡戦は3-0の完勝。

 続くみちのくダービー・モンテディオ山形戦でも3-2で競り勝ち、初の連勝を飾る。

 第6節のFC町田ゼルビア戦、続く大分トリニータ戦は、原崎監督を含めて新型コロナウイルス感染者が続出しメンバーが揃わず連敗を喫する。

 離脱者が戻ってきた第7節のヴァンフォーレ甲府戦では、新戦力の鎌田大夢の活躍もあり勝利し連敗を脱出する。第8節のレノファ山口FC戦では、その週に加入が発表された中島元彦が即スタメンで先発するとボランチで存在感を発揮し、退場者を出しながらも競り勝った。

 

 中島の加入がラストピースとなり、仙台はよりアグレッシブに仕掛けていくサッカーに変貌を遂げていく。

 前述したようにボランチの縦パスをトリガーに、2列目の氣田や名倉が中央のエリアに潜っていき、彼らと2トップがより近い距離感で関わりながらゴールを奪っていく。特にこの時期から「スペース」を見つけて、そこへ相手よりも早く顔を出すことが徹底され、素早く見つけたスペースでボールを受けることで、より攻撃のスピードが上がった。

 また、ボールを奪われたときには素早い切り替えで即時奪回を目指し、そこから相手が整っていないうちにシュートまで持ち込む。

 序盤戦は特にショートカウンターやカウンターでのゴールが多かったのは、そんなスペースを素早く見つけてボールを受けることを徹底した結果と言えよう。

 その破壊力のある攻撃がある一方で失点の多さも目立った。特にセットプレーからの失点は開幕当初から多く、後述するがこの失点の多さが結果的に足を引っ張ることとなった。

 

(2)GW連戦で露わになった課題とボール保持へのリトライ~第11節から第23節~

 第11節・FC琉球戦から第15節・V・ファーレン長崎戦までの5試合はゴールデンウィークの過密日程となった。この間の仙台はメンバーを入れ替えながらも4勝1敗、勝点12を獲得。順位も昇格圏の2位までジャンプアップできた。

 この5連戦ではフェリペ・カルドーゾが切り札となり、後半から登場すると前掛かりになった相手に対してカルドーゾのキープからのカウンターがハマり追加点を奪うことに成功する。1つの勝ちパターンが仙台にできた時期だった。

 

 しかし、連戦を大きく勝ち越しできたものの東京ヴェルディ戦のように連戦ゆえに強度が上がらずにいつものスタイルを発揮できなかった試合もあった。

 もともと、切り替えを素早くし、縦に素早く攻撃する戦い方は、攻守において強度の高いプレーが求められる。先の長いリーグ戦を考えると、それだけを武器にして戦うことは非常に難しい。それは原崎監督も重々分かっていたはずだ。

 

 よって仙台は、ゴールデンウィークの連戦が終わり辺りから、開幕当初トライしていたボール保持へリトライするようになっていく。

 第16節・ツエーゲン金沢戦では右サイドバック若狭大志、トップ下に遠藤康をスタメンに起用し、縦に早い攻撃だけではなく、ボール保持を高めながら相手ゴールを目指すスタイルを構築しようとする。

 金沢戦、続く大宮アルディージャ戦は4得点を奪い完勝。早い攻撃とボール保持からの攻撃に一定の手応えを得ていた。しかし、第19節の栃木SC戦では、前から激しくプレスを掛ける栃木になかなかボールを保持させてもらえなかったものの、セットプレーの2得点で辛くも勝利する。

 ただ、徐々に仙台対策が進むとジェフユナイテッド千葉戦で敗れ、徳島ヴォルティス戦ではなんとか勝点1を拾う形となった。

 ボール保持するうえでの課題となったのは、各選手の立ち位置だった。トップ下に起用された遠藤が下がってボールを受けることに合わせて、各選手が立ち位置を場面ごとに考えてポジショニングしなければならず、上手く立ち位置が取れていないとボール回しにリズムが生まれない。

 また遠藤が下がることで1トップが孤立することが多くなり、今までよりもシュート数が減ってしまった。ゆえにどうしてもゴールが遠くなってしまった。

 

 結果的にここでも原崎監督はボール保持へのリトライを頓挫し、2トップにシステムを戻し、序盤のような戦い方に舵を切ることになる。

 しかし狂ったリズムはすぐに取り戻すことができず、後半戦初戦となった横浜FCとの直接対決に敗れ、モンテディオ山形戦でも終盤の中山仁斗のゴールで勝点1をもぎ取るに終わった。最終的に6月は1勝もできずに3位に後退。この6月の成績が結果的に昇格レースで新潟と横浜FCに離される1つの原因となった。

 

(3)7月の巻き返しと改善されなかった失点パターン~第24節から第34節~

 6月に1勝も挙げられなかった仙台だが、7月は第24節のFC町田ゼルビア戦から3勝1分1敗の成績で盛り返すことができた。

 やっているサッカーを戻した影響もあるが、7月はセットプレーでの得点が一気に増えた。7月の全15ゴールのうち6ゴール(PK含む)がセットプレーでの得点。特に中島元彦のキック精度が冴え渡り、第25節のヴァンフォーレ甲府戦では今シーズン2本目となる直接フリーキックを決めている。

 苦しい展開やなかなゴールをこじ開けられない展開でもセットプレーを生かすことで、勝点3を獲得することができた。

 

 しかしチームは第30節・ツエーゲン金沢戦の勝利を最後に泥沼の5連敗を経験することになる。

 常にアグレッシブに攻撃を仕掛け続けるチームとなったが、一方で失点がなかなか減らない課題を解決できなかった。そしてその失点パターンもある程度決まったものになっていた。

  • サイドからのクロスによる失点
  • セットプレーから失点
  • ビルドアップミスからの失点

 恐らくトレーニングのなかで重点的に守備の課題を克服するようなトレーニングをしてこなかったと推測している。サイドからの失点ではクロッサーへの寄せの甘さが改善されなかったし、セットプレーではマンツーマンで守る仙台に対して、しっかり相手に研究しまい、またビルドアップ時にパスミスから一気に危ないシーンを相手に与えてしまった。

 8月以降の戦いでは、危惧していた各選手のコンディションが落ちていき、疲労度が上がったことで今までのサッカーが展開できなくなったこと、そして繰り返される失点パターンを改善できなかったことで、一気に泥沼にハマる形になってしまった。

 第33節・ジェフユナイテッド千葉戦では守備時に5バックのシステムなる変則的な戦い方をしたが、セットプレーから2失点を食らい敗戦。

 続く第34節・水戸ホーリーホック戦で1-2の敗北を喫したところでフロントが原崎監督の解任と伊藤彰監督の就任を決断することとなった。

 

Chapter2 伊藤体制~難しい舵取り~

(1)守備の再整備と可変式の導入~第35節から第40節~

 残り8試合というタイミングで就任した伊藤監督。もちろん1年でのJ1復帰を目指すうえでのフロントの判断だったが、伊藤監督にとって非常にハイレベルで難しいかじ取りを強いられたことは間違えない。

 第35節の大分トリニータ戦から指揮を取ることになった伊藤監督。就任して間もない大分戦は0-1で敗戦するも、セットプレーの守備をマンツーマンからゾーンへ変更するなど、まずは守備の再整備を施すことが優先事項となった。

 第36節・栃木SC戦ではさっそく伊藤監督のカラーが出る。オリジナルポジションは「3-4-2-1」だが、守備時は「5-4-1」、攻撃時は「4-3-3」になる可変式を採用。

 栃木戦ではケガから復帰した松下佳貴が攻撃時にアンカーポジションになることで、中盤の底からゲームを作りリズムが生まれた。中山のゴールを守り切り、仙台は泥沼の5連敗から脱出することになる。

 

 しかし、その後が続かなかった。第37節・徳島ヴォルティス戦で退場者を出しながら引き分けるも、ファジアーノ岡山戦東京ヴェルディ戦アルビレックス新潟戦で3連敗を喫する。

 5バックにして守備の再整備を図るなかで、確かにセットプレーの守備やクロス対応で一定の成果を上げられたが、やはり練度が不足し失点をしてしまう。また5バックにしたデメリットとしてボールを保持されると後ろに重くなってしまい、自陣深くで守る時間帯が増えて、ボールを奪っても相手の素早いプレスですぐに取り返されるようになってしまった。

 守備を再整備するあまりに今度は攻撃になかなか出て行きづらい現象が起こってしまった。

 

(2)原崎前監督時代との融合~第41節・第42節~

 ラスト2試合は、連勝が絶対条件の状況となったなかで伊藤監督は攻撃的なやり方にシフトチェンジする。

 ホーム最終戦となった第41節・ロアッソ熊本戦では、ここまで採用してきた「3-4-2-1」から「3-1-4-2」へシステム変更をし、3バックの一角に蜂須賀、3センターの真ん中にはレアンドロ・デサバト、また中山の相棒に富樫を復活させ、中山が孤立しないようにする。

 より攻撃的に前から仕掛けられるようになった仙台はアディショナルタイムのフォギーニョの劇的ゴールで勝点3を奪い、参入プレーオフの望みを繋ぐ。

 

 しかし、第42節・ブラブリッツ秋田戦では勝利すればプレーオフ進出が決まる状況だったが、最後まで1点が遠くスコアレスドロー終戦となってしまった。

 

 ラスト2試合では、伊藤監督のオリジナルな部分と原崎前監督時代の特徴を融合させたような形のサッカーだった。よりアグレッシブに仕掛けていく姿勢を見せたが、あと1点だけが足りない結果に終わった。

 

来シーズンに向けて

 2022年シーズンを7位でフィニッシュした仙台は、シーズン終了後早々に伊藤監督の来シーズン続投を発表。この記事を執筆している本日(11月20日)現在で他チームのどこよりも素早く来シーズンに向けての動きを見せている。

 

 今シーズンはワールドカップの影響で例年以上に早く終わったため、今現在もトレーニングを続けているが、来シーズンはより「アキラカラー」が濃くなるはずだ。

 その上で伊藤監督のサッカーに適した人材、または伊藤監督のサッカーを知る人材の確保がこのオフシーズンの肝になる。

 また、伊藤監督のサッカーは可変式を採用するため、守備時と攻撃時で立ち位置や役割が変わるため、それに対応できるユーティリティ性が求められる。いわゆるオールラウンダーだ

 一方でユーティリティな選手だけでは試合に勝利することができない。なので試合を決められる選手の存在、いわゆるスペシャリストも必要だろう。特にゴールを奪える存在は特に重要だ。中山だけではなくもう1人エースストライカーが欲しいのが本音だ。

 オールラウンダーとスペシャリストのバランスがうまくマッチするば、来シーズンこそ昇格レースに最後まで生き残れるはずだ。

 そのためにもこのオフシーズンは非常な重要な時期になってくる。まずは強化部をはじめとする仙台フロント陣営の働きぶりに期待したい。

 

最後に・・・

 まずはこの長い拙文にお付き合いいただきありがとうございました。今シーズンは早めにシーズンが終わったため、ゆっくり振り返ることができました。

 そして1年間、J2になっても変わらず読んでいただけたことに感謝いたします。個人的には昨年までの2年間がとにかく苦しいシーズンだっただけに、今年は多くのゴールと勝利を見ることができて満足しています。もちろん、昇格できなかった悔しさはありますが、まずは本来のサッカーの楽しさを思い出せたシーズンでした。そういう意味では途中で解任になってしまいましたが、原崎監督のやってきたことは間違いなく仙台の歴史の1ページに残ると思います。

 

 さて、来シーズンもまたこの執筆活動は続けていきたい所存です。来シーズンはワールドカップもないし、もう少し余裕を持って執筆できるシーズンかなと楽観視しています(笑)

 個人的には2014年にこのブログを始めてから来年で10シーズン目と節目のシーズンになるので、まずは来年くらいまでは頑張りたいと思います。その先のことはあとで考えます。

 これからワールドカップも始まりますし、オフシーズンは始まったばかりですし、楽しみが続いていきます。

 まだまだ新型コロナウイルスの終息の目途は立ってませんので、まずは健康第一に来シーズンまでゆっくり本業を頑張りたいと思います。

 

 末筆ながら、今シーズンのブログをこれにて終了させていただきます。また来シーズンお会いしましょう!では、また!!