ヒグのサッカー分析ブログ

ベガルタ仙台の試合分析が中心です。

バラバラ~明治安田生命J1第11節 ベガルタ仙台vsサガン鳥栖~

 ご無沙汰しておりました。更新再開です。

 今回は、延期分の試合となったサガン鳥栖戦を振り返ります。リャン・ヨンギユアスタ帰還。

↓前回のレビューはこちら

khigu-soccer.hatenablog.com

 

 

スタメン

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 ベガルタ仙台は、前節・柏レイソル戦が、柏の選手にコロナ陽性者が出たために試合中止になり、広島戦から1週間空けての試合となった。勝ち星から遠ざかっているだけに、この一週間でどれだけのことができたかは楽しみな試合となった。

 広島戦からは、両サイドハーフの変更。関口とクエンカがサイドハーフを務める。また、ベンチには関と川浪がベンチに。木山監督によると、試合当日にアクシデントが起こったようだ。

 一方のサガン鳥栖も9戦勝なしの状況。ただ、仙台に比べれば、若い選手の成長や、高丘とトレードの形で加入した朴の存在もあり、徐々に明るい兆しが見えてきているようだ。今節は、その兆しを確実に自分たちのものとしたい一戦だ。

 引き分けた前節・名古屋グランパス戦からは5人のメンバーを変更し、森下、大畑、本田ら若いメンバーがスタメンに名を連ねた。注目のリャンヨンギはベンチスタート。

 

前半

(1)バラバラになっている訳を考えていこう~攻撃編~

 さて、この試合でも0-3で敗れた仙台。スコアもさることながら、その内容も非常に厳しいものだった。日頃から出来る限り良かった部分を探そうと思っているのだが、この試合に関しては、いいところが1つもなかった。

 ということで、今更ながらではあるが、なぜここまで仙台がチームとしてバラバラな状態になっているのかを「攻撃」、「守備」に分けて考えていきたいと思う。

 まずは、「攻撃」から考えていく。

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 攻撃、主にボール保持の局面だが、ここ最近の現象でよく起きているのが、ビルドアップにおいて、センターバックから爆弾ゲームのようにサイドへとボールが渡っていき、最終的にボールを奪われたり、ロングボールで逃げてしまうことである。

 ゴールキーパーセンターバックから仙台はビルドアップをスタートするのだが、ビルドアップが得意ではないシマオ・マテと平岡というコンビに加えて、どのように相手の列を越えていくかということが決まっていない。

 よって、ボールを繋ごうとしても、具体的なイメージが定まっていないので、相手のプレッシャーから逃げるために広がってしまい、サイドでボールを受けることが多くなる。

 この試合でも、浜崎がボールを受けるためにサイドへと広がるシーンが多かったが、結果的にそれが効果的ではなかった。

 

 広がってボールを受けた後に、何が起きるかというと、結果的にサイドでボールを受けて、一時的にプレッシャーから逃げられても、相手としては限定しやすいサイドにボールが流れてくれるので、相手はサイドから再びプレッシャーを掛ける。

 エリアもコースも限定されてしまった仙台は、そこからプレッシャーをかわせる訳ではないので、ボールを奪われたり、苦し紛れのロングボールを前線へと蹴ることになってしまう。

 また、広がってボールを受けることで、ボールを奪われた際に、仙台の選手間の距離が遠いために、攻守が切り替わったとき(ネガティブトランジション)に、すぐに守備へと移行ができないし、相手にスペースを与える結果となってしまう。

 そうすると1失点目のようなパスミスから、あっさり中央でスペースを与えてフィニッシュまで持ち込まれてしまうのだ。

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 さらに細かい局面を言えば、仙台は受け手と出し手の関係にも課題がある。

 仙台は前線にボールを付けると、後方のサイドハーフサイドバックはボールホルダーを追い越す動きをする。これは攻撃のルールとしてあるのだと思う。

 追い越すこと自体は、相手を引っ張り出すことにもなるので、いい動きだと思う。

 しかし、ボールホルダーは相手ディフェンスを背にしていることが多く、簡単に追い越した選手へパスをすることは厳しい。

 なので、ボールホルダーの下で、ポストプレーを受ける選手も必要なのだが、仙台はその選手がいない。結果的に相手を背負った前線の選手は苦しくなり、ボールを奪われたり、無理にパスをしようとすることで、パスミスを起こしていしまう。まさに1失点目は、その形だった。

 

 仙台は攻撃、特にボール保持の局面においての決まりごとがなく、ただボールを保持していることだけが目的と化している。また、サイドなどの各エリアにおける局面でも、3人以上の関係を作れていない。

 まずは、ボールを前進させるための設計図。そして、エリアごとにおける選手の関係性を高めていくトレーニングが攻撃面では必要なのではないかと考える。

 

(2)バラバラになっている訳を考えていこう~守備編~

 続いて守備ついて考えていく。

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 ここ最近の仙台は、自陣において4-4-2のブロックを形成して守備をしている時間が長い。

 しかし、4-4-2の守備ブロックの形自体は整っているのだが、相手ボールホルダーへのプレッシングがなかなかできない。

 結果的に自分たちから相手の攻撃を誘導して、守備をすることができていないので、ズルズルと4-4-2のブロックが下がるだけで、結果的にペナルティエリアで跳ね返す、クバの神頼み、みたいな守備になってしまっているのが現状だ。

 結果的にボールを奪えたり、相手の攻撃を終わらせても、奪えた位置が低く、攻撃のスタートポジションが後ろになってしまう。

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 また、4-4-2で守備ブロックを形成しているときに、手倉森監督時代のように中央をしっかり閉じることを意識した守備であればいいのだが、今は人を基準に守っているシーンが多々見られる。

 上図のようにボランチがサイドへ引き出され、引き出されたスペースにサイドの選手にドリブルで侵入されたりするとバイタルエリアは、もう一枚のボランチだけになり、かなり大きなスペースを相手に与えてしまい、シュートまで持っていかれる。

 人なのかスペースなのか、守るエリアによって、変わってくると思うが、そこら辺の整理は急務だろう。

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 加えて、仙台がプレッシングを掛けて限定できるときは、大抵が長沢がプレッシングを掛けているときなのだが、せっかく長沢がパスコースを限定し、インターセプトが狙えそうなシチュエーションでも、なかなかボランチで刈り取ることができない。

 ここは椎橋、浜崎の両ボランチには頑張って欲しいが、ここで奪えないとショートカウンターを発動できないし、前から守備を行っても、奪えることができない。

 このポイントにおいてはボランチの頑張りに期待したい。

 

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 と、ここまでの話の流れを上図のようにまとめてみた。もちろん、これだけが課題ではないと思うが、ひとまず自分なりに考えてみた。

 サッカーは攻守両面が連動しているので、やはり一方が悪いとそれに引っ張られるように、もう一方も悪くなる。

 仙台は攻守においてかなりの課題を抱えており、とにかく悪循環が続いているのが現状といったところだろうか。

 これは、すぐに解決できるわけではない。まずは課題を整理して、1つずつやっていくしかないだろう。ケガ人も多く、時間がない中だが、出来る限りの修正を木山監督には期待したい。

 

後半

(1)諸刃の前プレとロングカウンターからの失点

 1点を失った仙台は、後半開始からとにかく前プレを掛けて、高い位置でのプレーを心掛けようとした。

 実際に長沢やクエンカの守備からボールを奪って、ショートカウンターへと繋げられたシーンはいくつかあった。

 しかし、54分。クエンカが高い位置でボールを奪い、ショートカウンターバイタルエリアへと侵入したパラへボールを渡すも、左足に持ち替えるところでシュートを打てず、鳥栖のカウンターへと局面が切り替わる。

 仙台は、誰も鳥栖の選手を捕まえらずに、最後は本田に落ち着いてシュートを決められて、追加点を許した。これでほぼゲームを決められたと言っても過言ではなかった。

 

 その後、仙台は3-4-2-1へとシステム変更をし、広島戦のような分厚い攻撃を目指すものの、おそらくその場のアドリブであっただろうシステム変更は、功を奏することができなかった。

 そして66分には、再び本田にゴールを許して、3点のリードで突き放される。

 

 その後、惜しいシーンすら作れなかった仙台。最後にリャンの登場もあり、スタジアムは盛り上がるも、仙台は盛り返すことができなかった。

 0-3での敗北となった。

 

最後に・・・

 非常に厳しい内容だった。ここまで攻守においてバラバラとなった試合はいつぶりだろうか。

 

 7月の再開後からチームは、徐々にその「型」をなくしており、今は何もなくなった状態と言っていいと思う。

 もちろんケガ人が多いことや、過密日程という中で、トレーニングできる人数や時間がないというのはあるが、それでもやれることがあるとは思う。

 一番危惧していることは、来シーズンに向けて、何1つ積み上げがないことだ。なので、守備でも攻撃でも、チームが一体感を持つことでも、積み上げが欲しいところだ。

 

 このクラブがどういうサッカーを目指していきたいのか、そこを明確にすることで逆算して、考えられることもあるだろう。

 クラブが目指したいサッカー、木山監督が目指したいサッカーを明確にして、一体感を持って、希望の持てる試合を残りの数試合で展開されることを期待したい。