ヒグのサッカー分析ブログ

ベガルタ仙台の試合分析が中心です。

暗中模索~明治安田生命J1第16節 ベガルタ仙台vs大分トリニータ~

 さて、今回は大分トリニータ戦を振り返ります。

↓前節のレビューはこちら

khigu-soccer.hatenablog.com

 

スタメン

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 ベガルタ仙台は、ミッドウィークの鹿島アントラーズ戦に敗戦し、連敗を喫している。内容も結果もなかなか光明を見出せていない中で、なんとかこの大分戦で明るい兆し、そしてホームでの勝利を挙げたいところだ。

 今節は4人のメンバーを入れ替え。左サイドバックにはリーグ初先発のパラ。また左サイドハーフには崇兆。中央は長沢とゲデスが縦関係に並ぶ布陣で挑んだ。

 一方の大分トリニータは、前節の湘南ベルマーレ戦では、早々に2点リードを許す苦しい展開だったが、後半に2点を追いつき、価値あるドローとなった。そんな粘り強さを今節につなげられるかどうか。

 大分は3人メンバーを入れ替え。ボランチの一角に前田。左ウイングバックには香川。1トップに伊佐が起用されている。

 

前半

(1)自分たちの土俵へと持ち込めるか

 この試合の前半は、開始から大分のボール保持、仙台のボール非保持の局面の時間帯が多い展開だった。大分が自分たちの得意な展開で試合を進められたと言っていいだろう。

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 前半開始から40分に関口が投入されるまでの約40分間。仙台の守備は、機能していなかった。

 この試合でも仙台は前から奪いに行く姿勢を持っていた。これは木山監督が試合後の会見で話している。

 しかし、実際は前から行くどころか、大分のボール保持に対して後方で人数を掛けて守備をする時間が長かった。

 この試合で仙台がどのように前から奪いに行くのか、はめ込んでいくのかという設計をし準備をしていたのかわからない。しかし、ピッチで起きる現象としては上図のような構図になっていることが多かった。

 最大の問題は長沢のエリアだろう。長沢1人に対して、大分はムン、鈴木、羽田の3人で後方から組み立てていく。1vs3では無理がある。このエリアでプレスが掛からないとはめ込むのも難しい。

 またサイドでは、崇兆とジャメが、岩田と三竿を監視するが、その背後のウイングバックがフリーになる。仙台のサイドバックはシャドーへの意識が強く、この辺りもどう対応すべきなのか準備があまりされていなかったように思う。

 結果的にフリーになるウイングバックサイドハーフを見ざるを得なくなり、仙台は5バックのような形で守ることが多かった。

 34分の大分の先制点では、ジャメが三竿に剝がされたところからスタートしている。前半の戦いぶりを象徴する失点と言えよう。

 

 大分のボール保持に対して、セットされた状態で前からプレッシングに行くのはシステムが嚙み合わせていないと難易度が高い。なので、後述するが仙台はシステム変更をし、息を吹き返したわけだ。

 そうでなければ、いかに自分たちが前からプレスしやすい状況を作り出すかが大事だ。

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 前半に前から嵌められたシーンの大半は、ロングボールからのセカンドを拾ってや、大分ディフェンスラインの裏へボールを送り、相手が背中を向けた状態から守備をスタートさせたシーンだった。

 このことからも、このような場面を仙台が意図的に作り出せていれば、システムが噛み合わなくても高い位置からボールを奪うことができただろう。前半にあったプレーは恐らく偶発的なものだ。

 自分たちの土俵の上に相手を上がらせて勝負するか、この点が、前半の仙台に足りなかった部分だと思う。

 

(2)甲高い声を合図に

 39分にジャメに代えて関口を投入する。これで仙台は4-3-3へとシステムを変更する。

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 4-3-3へシステムを変更したことで、システムの噛み合わせが良くなり、大分のボール保持に対して、前から積極的にプレスを掛けられるようになった。後方は同数になりやすくなるが、それを受け入れながらも前からハメ込むことで、徐々に大分のボール保持を苦しめられるようになった。

 

 関口の甲高い声を合図に、積極的に前プレを掛けられるようになった仙台は、ラスト5分で希望を残し、前半を終える。

 0-1で後半へ折り返す。

 

後半

(1)攻守ともにイニシアティブを握れた仙台

 前半は、仙台が大分のボール保持に対して守備が機能せずに、先制点を許す展開だった。しかし関口の交代と4-3-3へのシステム変更で希望を見出し、後半へ折り返す形となった。

 後半の仙台は、前半終盤の流れを継続させ、積極的なプレッシングからイニシアティブを握る展開へと移り変わっていった。

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 前半終盤同様に、前からプレッシングを掛けていく仙台。大分に息をさせずにロングボールを選択させることに成功する。ここは鹿島戦と同じような展開へ持ち込むことができた。

 前線の伊佐は、前半にあったような裏への飛び出しが特徴的だが、高さはそれほどない。なので、シマオやジョンヤがここで競り勝つことでセカンドボールを回収し、仙台は二次三次攻撃と、厚みのある攻撃を繰り出すことができた。前半からおそらくこのような展開へと持ち込みたかったが、守備でうまくはめ込むことができなかった。

 

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 また攻撃では、大分が自陣で守備をすることが多かったこともあるが、前節の鹿島戦よりもサイドからの攻撃が上手くいった。

 右サイドでは、ゲデスがいることで、ゲデスのポストプレーに柳が抜け出し、右サイドをえぐれるようになった。

 左サイドでは、パラがいることで左足から相手ディフェンスラインの裏へスルーパスを送れることができ、左サイドでも深い位置へ潜り込むことができるようになった。

 このサイド攻撃からチャンスを作り出すことができた仙台。決定機は2つ3つあったが、長沢も西村も決めきることができなかった・・・。

 

(2)知念のフィジカルバトル

 前半とは打って変わって、守備に追われるようになった大分は、前線を交代。知念と渡を投入する。

 この交代で3-1-4-2となった大分だった。初めは、センターバック2人に対して2トップを当てて前プレによって、ラインを高くすることが狙いかと思った。

 しかし、本当の狙いは別なところにあった。大分はこの押し込まれている状況を許容しながら、前線のパワーを使って、追加点を狙っていた。

 特に知念のところはポイントになった。手薄になった仙台のディフェンスラインに対して知念を置くことで、競り合いをイーブンなものとし、セカンドボールを仙台に渡さないことが狙いだった。

 

 そして結果的に、この交代が功を奏した。大分は80分と85分に追加点を奪うのだが、両方とも知念がシマオとの競り合いで勝ったところからの流れだった。

 コンディションが上がらないシマオに対して、途中から投入した知念で勝負する。片野坂監督の策略が見事にハマった得点だった。

 

 そして試合終了。決めきれなかった仙台とチャンスを生かした大分。スコアは0-3。完敗だった。

 

最後に・・・

 暗中模索が続く仙台は、この試合でも長いトンネルを抜け出すことはできなかった。

 前半は、鹿島戦同様に準備不足を露呈する形となった。それでも前半終盤でのシステム変更で息を吹き返し、負け筋を消せながら後半は戦うことができたと思う。

 おそらく、そこから勝ち筋へと持っていくためには、自分たちのターンで決めきれるかどうかだったのではないだろうか。後半だけでも決定機は多かったし、そこを決めきるか決めきれないかの差がこの試合でも出たと思う。

 ただ、長沢のシュートだったりを見ていると焦りがあるのも確かで、好調の長沢だったらしっかり枠へ飛ばしていた。そういうことも考えると、ゴールが奪えないことや結果が出ていないことへの焦りみたいなのがプレーに出ているような気もしている。

 

 連戦で、修正する部分も修正する時間がなければ、次の試合への準備時間も限られている。時間に追われている中でのリーグ戦は、なかなか難しい面もある。

 まずは、しっかりコンディションを整えながら、前回も書いたようにできることとできないことを整理しながら、今できる最大限の力を発揮するしかない。

 今後の対戦相手は、FC東京横浜Fマリノスセレッソ大阪と強豪との対戦が続く。まずは今できること、やれることを最大限発揮しながら、木山監督には少しずつチームを成長させていってほしい。

 まずは次節のFC東京戦。もう一度切り替えて、前向きなプレーを期待したい!!

道半ば~明治安田生命J1第15節 鹿島アントラーズvsベガルタ仙台~

 さて、今回は鹿島アントラーズ戦を振り返ります。永戸勝也との再会。

↓前節のレビューはこちら

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スタメン

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 ベガルタ仙台は、前節・ガンバ大阪戦で1-4の大敗。語弊を恐れずに言うならば、試合をするごとに内容が低調になっている。連戦となるが、なんとかこの低調な状況から光明を見出してほしいところ。

 今節は、キャプテン・シマオマテがスタメンに復帰。また試合前のアップ中に負傷した蜂須賀に代わって真瀬が右サイドバック。そして右サイドハーフにはジャーメインが帰ってきた。

 一方の鹿島アントラーズは、再開幕後は結果が出ない苦しい状況が続いていたが、ここ最近は3連勝中。ザーゴ監督になり、ようやく内容と結果が伴うようになってきた。

 今節は、前節の名古屋グランパス戦からは2人の変更。ボランチに永木。右サイドハーフにフアン・アラーノを起用した。 

 

前半

(1)ボールを保持する設計図を作っていたのか

 まずは、この試合において仙台がどんな狙い・目論見を持ってゲームに臨んだのかを考えていきたい。

 

 仙台は、開始から積極的にプレッシングを行っていく。

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 鹿島は後方からの組み立てにおいて、意地でもボールを保持していくことはなく、前線のエヴェラウドやサイドバックの永戸をめがけてロングボールを蹴ることが多かった。

 仙台としては、鹿島がロングボールを蹴るようなシチュエーションを作り、そのセカンドボールを回収することで、自分たちのボール保持の局面へと移行しようとしていた。

 仙台は、ゲデスと関口が前プレ隊の急先鋒として、積極的にプレッシングを掛けていく。キーパーへのプレッシングを惜しまない。

 そしてロングボールを選択させることで、後方で待っているシマオと吉野がボールを回収するという狙いを持っていたし、ある程度この狙いはハマった。

 

 しかし、ボール保持に移行した仙台は、非常に悩ましい状態になっていた。

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 仙台のビルドアップの基本形は、椎橋が相手2トップの間に入り、相手2トップをピン止め。動きを規制させ、センターバックがボールを持てるような状態を作り出す。

 しかし、センターバックがボールを持っても、そこからの前進がなかなかうまくできない。

 というのも、サイドバックを含め、前線の選手が相手の中間ポジション(選手と選手の間)にポジションを取るだけで動き出しが少ない。相手2トップ脇に降りて、センターバックをフォローするわけでもなければ、前線で誰かが下りて、裏に誰かがランニングするような動きもない。ただ、そこにいるだけというような状態となり、仙台は鹿島の守備に簡単に掴まることとなった。

 せっかく、相手からボールを回収し、自分たちのターンへ持ち込めても、設計図が作られておらず、効果的な攻撃を繰り出すことができなかった。非常に中途半端なボール保持となった。

 

(2)中盤5枚がどう守るか

 時間の経過とともに、鹿島のボール保持から仙台陣内へと押し込んで、攻撃していく時間帯が増えていった。

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 鹿島は、横幅をサイドバックに任せ、中盤4枚と土居は流動的に動くことで、仙台の守備に混乱を生じさせ、近い距離でのパスワークで中央からの突破を図ろうとしていた。

 それに対して仙台は4-4-1-1でセットする。基本的に最終ライン4枚はペナルティエリアの幅で守備をしたい意志を持っていた。サイドチェンジなど長い展開のときは、スライドで相手サイドバックに対応することもあったが、基本的にはペナルティエリアの幅を意識していた。

 そして気になったのが、中盤5枚(4枚+関口)だ。4バックがペナルティエリアを守る分、どうしても相手サイドバックサイドハーフである西村とジャメが対応することになるのだが、そうなると中盤4枚が横に間延びしてしまう。

 そこをスライドで対応できればいいのだが、仙台はスライドがなっておらず、結局関口が中央をカバーするような状況となった。

 またサイドハーフの守備も寄せが甘く、ジャメも西村も対応はしているものの、簡単に背後を突かれたり、サイドをえぐられたりした。

 象徴的だったのが、鹿島の先制点の場面だろう。西村が小泉へ付いていけずにボックスへの侵入を許すと、そこからエヴェラウドに決められてしまった。

 もちろん、ボックスへパスを通した荒木への対応も問題があったが、西村が最後まで小泉を追うことができれば、なんとか対応できていたと思う。そういう意味では西村にとっては、いい勉強になったのではないだろうか。

 

 仙台は、前半のラストプレーで鹿島に先制を許し、1点ビハインドで折り返すこととなった。

 

後半

(1)ビルドアップの改善と、侵入できないペナルティエリア

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 改めて後半のメンバーの整理。前半途中で内転筋を痛めた吉野に代わってジョンヤが入っている。

 前半ラストプレーで失点した仙台は、どのように巻き返すのかがポイントとなる後半だった。

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 後半も前半と同じように、前プレ→ロングボールを選択させる→セカンドボール回収→ボール保持。という狙いは大まかに言えば変わらない内容だった。

 後半は、前半の反省もあり、右サイドでは浜崎が2トップ脇に顔を出すようになり、ジョンヤからボールを引き出したり、鹿島の2トップを越える働きをしていた。

 よって、徐々にボールが前進できるようになった仙台だったが、肝心のアタッキングサードからペナルティエリアへ侵入することができない。この辺りも、まだまだ連携と精度、練度を高めていかなければならない。ただ、右サイドでは真瀬が奥深くまでえぐってクロスを上げチャンスを作れるようになった。

 一方で左サイドはシマオが孤立するシーンが続いた。なので、左サイドからの攻撃は機能しなかったし、柳も右サイドバックのときのようなゴリゴリ縦に突破するシーンが見られなかった。

 

(2)3-4-2-1という賭け

 仙台はケガ明けのジャメに代わって長沢を投入し、守備の強度を保ちながらも、得点のチャンスを狙っていた。

 スコアが動かない中で、飲水タイムを挟み仙台が賭けに出る。

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 中原、兵藤、崇兆を投入して、システムを3-4-2-1に変更する。4-4-2の相手に対してワイドから攻めたいという木山監督の狙いだった。

 このシステムにしたのは今年初だったし、奇襲的なところもあったのだろう。そういうときは相手が慣れる前に仕掛けることが大事だ。

 そしてさっそくチャンスを迎える。右サイドをえぐると西村のクロスに兵藤がヘッド。バーに当たったこぼれを長沢が押し込むも、まさかのクロスバーで決めきれなかった。ここを決めきれれば、システム変更をした意味もあったし奇襲も成功だった。

 

 その後は鹿島がボールを保持する展開。仙台は、システムを変更したことで5-4-1で守ることになり、結果後ろに重たくなってしまった。よってなかなか前から仕掛けらずに、再び耐える時間が長くなる。

 そして82分に永戸のロングボールに上田が反応すると、カットインからのシュート。これが決まって鹿島が仙台を引き離す。

 仙台は87分に右コーナーキックから長沢が決めて1点を返すも、鹿島も奈良を投入して、5バックにし、ゲームをシャットアウト。

 仙台は1-2で敗戦。これで5試合勝なしとなった。

 

最後に・・・

 前半から狙いを持てていたし、それを実行することもできていたと思う。しかし自分たちがいざ相手ゴールへ迫っていくという状況になると、設計図が中途半端でゴールまでが遠い。連戦で準備する時間がない中だが、ここまで準備できていたならば、最後までしっかり準備してこの試合へと挑んでほしかった。

 

 すべてが悪いわけではないが、攻守ともに中途半端な部分が目立つ。前述の通り、ボール保持の局面では、どこをポイントにどう前進させ、相手ペナルティエリアへ侵入するのか。守備では、前プレを掛けながらも、引いたときにどこへ誘導して守るのか、どこを優先して守るのか。どこを締めるべきなのか。

 まだまだこのチームは整理すべきところが多い。一個ずつにはなるが、それでもやっていくしかない。できたこと、できないことを整理しながら、けが人は多いものの、今出られるメンバーの中で最大限の力を発揮してほしい。

 

 次節はホームで大分トリニータとの対戦。大分も昨年のような勢いもなく、仙台同様に低調なシーズンとなっている。もう一回気合を入れ直して、次こそはホームで初勝利をもぎ取って欲しい!!!