ヒグのサッカー分析ブログ

ベガルタ仙台の試合分析が中心です。

慎重にかつ大胆に~明治安田生命J1第32節 ガンバ大阪vsベガルタ仙台~

 さて、今回はガンバ大阪戦を振り返ります。同勝ち点直接対決第3ラウンド。

↓前節のレビューはこちら

khigu-soccer.hatenablog.com

 

スタメン

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 ベガルタ仙台は前節、残留争いのライバルである清水に勝利し、残留へと大きく勝点3をゲットした。今節も同勝ち点で並ぶガンバ大阪との対戦。ここで勝利し、残留を確定させ、さらに1ケタ順位を目指したい一戦となった。

 そんな仙台のスタメンはおなじみの11人となった。ベンチには大岩、海夏、阿部が入っている。

 一方のガンバ大阪は、前節・大分戦で敗戦。未だに残留を確定できていない状況である。ここで勝利し、ひとまずホームで残留を決めたい試合となった。

 ガンバは遠藤をアンカーに置くピルロシステム。遠藤を支えるのが井手口と矢島のインサイドハーフコンビ。そしてアデミウソンと宇佐美の強力2トップが並ぶ。

 

前半

(1)ガンバの左右非対称ビルドアップと仙台の前プレ

 まずは、ガンバのボール保持時の形と、それに対する仙台のボール非保持の形について見ていきたい。

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 ガンバのオリジナルフォーメーションは3-1-4-2だが、ボール保持の局面では、左右が非対称の立ち位置を取る。

 特徴的なのは3バックで、三浦とキムがセンターバックに、菅沼が右サイドバック化し、菅沼は前線の小野瀬や井手口、アデミウソンと協力しながら、自らもオーバーラップで攻撃参加していく。

 左サイドでは、菅沼のようなサイドバック化する選手がいないぶん、矢島がサイドバックの位置に落ちたり、藤春が降りてボールを受けたりするシーンが多かった。

 また左サイドでは、遠藤や宇佐美が加わって、サイドで数的優位を作りながら攻めていくのが、ガンバのボール保持時の攻撃スタイルだった。

 

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 では、仙台はこのガンバのボール保持にどう対抗しようとしたか。仙台はここ最近の試合と変わらず、2トップから相手をサイドに追い込む守備で、ガンバのパスルートを限定させていった。

 特にガンバの右サイド、仙台の左サイドに誘導するシーンが多かった。これは単純に菅沼と関口のマッチアップのところで、正面からぶつかることができるからだったと思う。前半開始から10分間くらいは、この守備もしっかり機能して、ボールを奪う、もしくはマイボールのスローインにすることができていた。

 

(2)仙台の前プレを無効化するガンバの変化

 そんな仙台の前プレに対して、徐々にガンバもあらゆる手段を使って、無効化させる、もしくは仙台に撤退守備をさせるようになる。

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 思い当たるのが、上図の3つような形だった。遠藤の列降ろし。井手口と小野瀬のレーンチェンジ。三浦から小野瀬へのパス。

 一番のこの中で多かったのが、三浦から小野瀬へのパスだった。菅沼を経由せずに小野瀬に直接パスを通すことで、関口を下げさせることに成功し、仙台の守備を前プレから撤退守備の局面へと変化させることができるようになった。

 このあたりから徐々にガンバが仙台陣内でボールを保持して押し込む時間帯が増えるようになる。

 そうなると仙台も、自陣で跳ね返すことが多くなり、いつも通りシマオや平岡を中心にペナルティエリア幅でしっかり守るように変化していった。というか変化させられたというか。

 

 前半37分には宇佐美と接触した松下が負傷交代。椎橋が投入される。

 前半序盤までは、長沢の決定機などチャンスを作れたシーンもあったが、前述の通りにガンバが仙台の守備に対してうまく対応したことで、ガンバの時間帯が長くなり、仙台は我慢の時間を過ごすことが長かった。

 それでもしっかり跳ね返しながら、耐えた仙台はスコアレスで前半を折り返す。

 

後半

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 後半スタートのメンバー。仙台は、松下に代わって椎橋がボランチとなっている。

 

(1)三浦弦太の質的優位と右サイドの数的優位

  前半は仙台の前プレを無効化させ、撤退守備の局面へと移行させることで、自分たちがボール保持しながら押し込む時間を作ることができたガンバ。後半は、さらに攻勢を強めることで仙台ゴールへと襲い掛かった。

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 ガンバがより攻勢を強めた優位性が2つある。

 1つは、三浦弦太の正確なフィードだった。前半は小野瀬や他の選手へ正確なパスを配球することで、全体を前進させていたが、後半はそれに加えて、両ウイングバックへの正確なフィードを織り交ぜることで、仙台は前プレを掛けたくても、三浦が素早く正確なフィードを送るために、前プレを掛けるタイミングを無くしてしまった。

 ガンバには、多くの高い個人能力を持つ選手がいるが、三浦の存在は攻守両面で非常に大きい。さすが代表に選ばれる選手だなと、この試合ではつくづく感じた。

 また2つ目の優位性として、右サイドでの数的優位を形成することだった。前半は、菅沼、井手口、小野瀬、アデミウソンの4人で右サイドを攻略しようとしていたが、後半はそれに加えて、遠藤や矢島も加わる。なので仙台もなんとか同サイドで守ろうとするが、左サイドを突破されるシーンは、後半になって増えていった。

 また右サイドから左で完結を狙うガンバ。右からのクロスを藤春が合わせかけるシーンを何度も作り出す。ペースは完全にガンバとなっていった。

 

(2)攻撃へ出ていけない仙台に待っていた大きなツケ

 前述した通りに、攻勢を強めたガンバに対して、仙台は引いて守らざるを得なくなる。サイドハーフも押し下げられ、2トップも守備に参加しなければならない。

 そうなるとボールを奪っても、攻撃のスタート地点が低く、なかなか前へと前進することが難しい。

 ボールを前進させることができても、ガンバの帰陣も早く、なかなかカウンターや相手の背後を取るシーンがない。

 なので、2トップに収まったとしても、相手の帰陣が早い→キープして味方の押し上げを待つ。みたいな流れが続いていった。

 

 そのツケが出たのが、69分の失点シーンだった。ハモンが左サイドでキープして永戸に出そうとするもミスパスになり、それが宇佐美へ。宇佐美はそのまま1人カウンターからゴールを決めて、先制点を挙げる。

 

 この試合、攻撃において相手の背後を取る動きだったり、仕掛ける場面が少なかった。そういう積極的な姿勢がなかったツケが回った結果なのかなと思う。

 ここまで強力2トップに対して、粘り強く守れていたが、この試合初めて自由を与えてしまったシーンだった。無念。

 

(3)仕上げの2点目と松下なき乏しい攻撃

 失点前に長沢に代わって阿部を投入していた仙台だが、失点後にジャーメインを投入。前線の選手を多く投入して、より攻勢を強めようとする。

 しかし、その代償として前プレに連動性が欠けてしまい、前プレを掛けても剥がされることが増えていく。そして77分に、仙台が前プレを掛けたところを剥がしたガンバが、擬似カウンターから最後はアデミウソンが決めて追加点。勝利をグッと手繰り寄せる得点を決めた。

 

 その後の仙台も得点を奪おうと試みるが、今シーズン攻撃のタクトをふるい続けた松下の抜けた穴は大きく、どこかバラバラな乏しい攻撃に終始してしまった。

 最後までガンバの守備を崩す糸口を見出せずタイムアップ。0-2での敗戦となった。

 

最後に・・・

 またしても吹田で勝てなかった。前半から丁寧に我慢強く戦っていたが、慎重に戦いを進めたゆえに起こってしまったミスで、先手を取られてしまい、そのままなす術なく敗戦となった。

 

 やはり改めて攻撃での積極性やチャレンジする姿勢、リスクを負うことの大事さを学んだ気がする。慎重に戦う中でも、やはりどこかで賭けに出ることは勝つうえでは必要だ。その賭けるタイミングはどこなのか。それは個々人が見極めていく必要がある。

 

 さて、残りも2試合だ。次節はホーム最終戦となる。相手は大分トリニータ。最後にホーム最終戦で勝利したのは2014年まで遡る。そろそろ勝ってホーム戦を締めたいところだ。今シーズン強さを発揮したホームで、またその強さをいかんなく発揮することを期待したい!!

すべての局面を制する~明治安田生命J1第31節 ベガルタ仙台vs清水エスパルス~

 さて、今回は清水エスパルス戦を振り返ります。勝点35同士の直接対決。

↓前節のレビューはこちら

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スタメン

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 ベガルタ仙台は、前節・神戸戦で敗戦。同じ勝ち点同士の相手に悔しい敗戦を喫した。その神戸戦は3バックを採用したが、今節は4-4-2のシステムに戻した。メンバーもハモンが戻ってきて、現状のベストメンバーと言える布陣を並べた渡邉監督だった。

 清水エスパルスも残留争いの真っ只中。前節は静岡ダービーに敗れ、3連敗中である。残留に向けてこれ以上負けられない一戦だ。

 その磐田戦でファンソッコが退場し、今節は出場停止。そのセンターバックには立田が起用された。それ以外にメンバーの変更はなし。

 

前半

(1)スコアの変化によって変わった守備

 この試合の仙台は、攻守の局面、切り替えの局面において、しっかりと準備し、それに加えて今まで積み上げてきたものを清水相手に表現できた試合となった。

 まずは守備の局面から見ていくこととしたい。

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 この試合における仙台の守備テーマは、ここまでやってきたことと根幹のところは変わらない。2トップがボランチないしは中央エリアのパスコースを消しながら、相手のパスルートをサイドへと誘導。そして相手の攻撃を限定させたところで奪い。そこから素早いカウンターへと繋げるということだ。

 今節の守備のポイントは、2トップが相手のボランチを消しながらセンターバックへとプレッシングすることである。ここ最近の対戦相手ではアンカーを置くチームとの対戦が多く、2トップで3人を見る形だったが、この試合は4人を見る形となった。

 それでも長沢とハモンは、しっかり背後でボランチを消しながらも、相手センターバックへとプレスを掛け、前プレにスイッチを入れることができていたと思う。

 

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 しかし、開始から先制点(20分)までの時間帯はうまく剥がされてしまうシーンもあった。

 特に竹内が列を降りてセンターバックを助けると、仙台との配置にズレが生まれ、仙台が前から行くのか構えるのかが中途半端になると、中央(ボランチ)のエリアを開けてしまい、そこに縦パスを通され、サイドに展開されるというケースがあった。

 決定機にはつながらなかったが、もしスコアレスの状態が長かったら、もう少し危ないシーンを作られた可能性はある。

 そういう意味でも、先制点を取れたことは大きかったし、何より自分たちが狙いとしていた形(高い位置で奪ってからのカウンター)で得点を取れたことは、このゲームの勝敗を分けた最たるポイントだったと思う。

 

 先制点を奪った後の仙台は、行くときは行くものの、無理に前には出ず、しっかり中央を締めながら、4-4-2のブロックを組む時間が長くなった。

 このことで清水にボールを保持するシーンは多くなったが、試合序盤のような縦パスを通されるシーンもなくなり、清水の攻撃をサイドからだけにすることができた。

 ボールを保持されたというよりは、保持させたという展開だった。仙台が主導権を握ってゲームを進めていたことには変わりはない。

 

(2)相手の前プレを剥がすクバのフィードと左サイド

 前述したように、先制点以降の仙台はボール保持させる展開が多く、自分たちがボールを保持した時間はほとんどなかった。

 それでもこの試合に向けて準備されたものがあった。

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  この試合でクバがボールを持ったときにセンターバックがハーフスペースの位置でポジショニングしていたことは、おそらくわざとだろう。

 清水のプレッシングは、4-4-2。しかし仙台と違って、2トップが守備での約束事がおそらくない。そんな尻拭いをするのは金子だった。

 金子は平岡に対してプレッシングを掛けようと準備している。仙台はその逆手を取り、クバか金子を越え、フリーになっている永戸(時々関口)へとロングフィードを送るシーンが多々あった。

 この辺は、清水のプレッシングの兼ね合いとスカウティング通りだったのだと思う。清水のプレッシングは、全体に連動性が欠けており、間延びすることが多々あった。そこをうまく突いた仙台だった。

 

(3)意図的に難しい状態を作らせる

 それからもう1つ狙いとしていたことは、相手にとって難しい状態を作らせることだった。

 具体的にいうと二見を狙い撃ちするのがそれだった。

 前半は、意図的に二見のところで空中戦を作ったり、二見の背中にボールを送ることで、そのセカンドボールを回収することや二見が苦しい状態を作って、前プレからボールを奪い取るなど、決して二見に恨みはないのだが、そういうシーンを意図的に作っていた。

 

  前半は、さまざまな局面において、自分たちが準備してきたものをしっかりと表現することができた内容だった。そして大事な試合で先制点を奪ったことで、より有利にゲームを進められる展開となった。1-0で折り返す。

 

後半

(1)早い時間帯での追加点

 後半は、仙台が早い時間帯で追加点を奪うことに成功する。48分に右コーナーキックから平岡がニアで合わせて、リードを2点に広げる。平岡のコメントを読むと、前半で気付いたポイントだったようだ。それをしっかり狙い通りに実行できた永戸のキック精度と平岡のフリックにはお見事だった。

 後半の早い時間帯に追加点を奪えたことで、さらにゲームを有利に進められる仙台だった。

 

(2)前半のリピート、丁寧に丹念に守る仙台

 追加点を奪った仙台は、前半のリピートのような内容で、後半の残りを過ごした。

 4-4-2で中央を封鎖しながら、清水の攻撃をサイドへと誘導し、クロスを丁寧に弾き返す。

 清水も個々人の能力で中央をこじ開けようとするが、仙台も4バックがしっかりと中央を締めているので、簡単には破けない。

 清水はこうなったときのプランBがない。よって守る仙台側も苦労をしない、みたいな展開が後半は続いていった。

 

 仙台はお久しぶりの石原や椎橋、ジャーメインで、しっかりクローズ。清水も選手交代を行うもそこまで効果的ではない。

 後半は、仙台が清水の攻撃を丁寧に丹念に守る展開で、心穏やかに終了のホイッスルを聞くことができた。

 2-0で勝利。同勝ち点同士の対決を制して、残留へ大きく近づく勝点3をゲットすることができた。

 

最後に・・・

 内容と結果ともに完勝だった。勝つべくして勝った試合だった。どの局面においても、清水を上回ることができ、上出来の試合だったと思う。

 そして、あの悔しい日本平での敗戦から自分たちが成長したことを見せることができたのではないだろうか。僕らはときに立ち止まりながらも、しっかりと成長してきたんだと実感する。

 

 もちろんこの勝利で満足することはない。行けるところまで行く。そういう意味でも次のガンバ戦も同勝ち点同士の対戦だけに負けるわけにはいかない。

 この試合で得た自信をより深め、更なる高みへを目指していきたい!!