ヒグのサッカー分析ブログ

ベガルタ仙台の試合分析が中心です。

日々是挑戦~明治安田生命J1第30節 ヴィッセル神戸vsベガルタ仙台~

 さて、今年も残すところ5試合となりました。今回は、ヴィッセル神戸戦を振り返ります。

↓前節のレビューはこちら

khigu-soccer.hatenablog.com

 

スタメン

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 ベガルタ仙台は、第23節・川崎戦以来の3バック採用となった。狙いについては後ほど書いていくこととしたい。3バックは、平岡、シマオ、ジョンヤの3枚。前線では、長沢を頂点に道渕と関口のシャドーという配置となった。

 前節・名古屋戦を皮切りに、残留争い直接対決が続く。神戸を叩き、連勝することでより残留へと近づきたい一戦だ。

 一方のヴィッセル神戸も、メンバーをいじってきた。3バックは大崎とフェルマーレンが復帰。アンカーの位置にはサンペールではなく、山口を起用された。またインサイドハーフにはこちらも帰ってきたイニエスタ、そして小川が並び、2トップはビジャと古橋というコンビとなった。

 神戸も仙台同様に残留争いの渦中にいる。同じ勝ち点同士の対戦、ここで勝利することで、神戸も一歩リードしたいところだ。

 

前半

(1)前からプレッシングに行く姿勢を忘れない仙台

 前半は、仙台がエンドチェンジを行ってキックオフ。おそらく日差しの関係でのエンドチェンジだったと思われる。

 

 まずは、この試合で3バックを採用した仙台の狙いを見ていくこととしたい。

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 3バックを採用した仙台は、あくまで5-4-1で重心を低くして守備をすることではなく、神戸に対して前からプレッシングをしていく姿勢を見せていた。

 仙台が、神戸のボール保持に対して取った前プレのパターンが上図の2つのパターンとなる。両方ともセンターラインの選手をしっかり掴まえ、サイドへとボールを誘導させることで、相手の攻撃を狭くし、そこでボールを奪ってカウンターへと繋げようとする意思が見えた。

 このあたり(前からボールを奪いに行く姿勢)は、ここ最近4-4-2でも取り組んでいることで、今節は相手の配置ややり方を踏まえて、3-4-2-1というシステムを採用したということだろう。

 

 実際に前半は、スタートからうまく前プレがハマり、ボールを奪って前へ運べた回数も多かったし、それでセットプレーを得られることもできた。しかし、前節・名古屋戦のように、そのセットプレーを活かすことはできなかった。

 

(2)動き出すインサイドハーフコンビ

 ただ、神戸もこの仙台のやり方を見て、10分過ぎあたりから動き出す。動いたのインサイドハーフであるイニエスタと小川だった。

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 イニエスタは左サイドで、道渕の脇あたりにポジショニングし、ボールを受けた。ここであればマーカーである富田が付いてこないし、サイドで数的優位を作れる。うまく逃げ場を作ったわけだ。

 一方、右サイドの小川は、永戸とジョンヤの間をランニングすることで、永戸をピン止め。このことで藤谷がフリーでボールを受けられる回数が多くなる。

 この2人の動きによって、仙台はシャドーがインサイドハーフや藤谷の対応をしなければならなくなり、なかなか3バックへプレスを掛けられず、次第に自陣で撤退守備をし、我慢の展開を強いられるようになった。

 15分の小川の得点も、イニエスタが左サイドでボールを受けたところからスタートしている。得点自体はディフェンスの足に当たったラッキーな得点ではあったが、形としては、仙台の前プレを抑制させ、うまく押し込んだ形となった。

 

 仙台としては、3バックを採用し、守備基準点(自分が見るべき相手)が変わったときに、どう対応するかをどれだけ準備していたかは気になるところだった。

 おそらく後ろでしっかり跳ね返すことが、その対応策や優先事項だったのかもしれないが、不運にもジョンヤの足に当たり、先制点を許すこととなった。

 

(3)小川と古橋を越えられないボール保持

 神戸の守備は、割とリトリートした形で守備をすることが多かった。よって、仙台もボールを保持できる時間があった。しかし、思うようにボールが前へ進まない。

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 その原因は、小川と古橋のポジションにあった。神戸のボール非保持は5-1-3-1のような形になる。

 ポイントは小川と古橋のポジション。彼らはボール非保持のときはハーフスペースで立ち位置を取るようになっていた。

 この立ち位置で厄介だったのは、仙台のパスルートのどこにでも対応できることだった。

 ジョンヤから永戸でも小川がプレスを掛けられるし、たとえ富田が列を下して、平岡を上げても古橋は両方にプレスを行けるポジションにいる。

 またウイングバックや3バックと協力して守備をすることができる。もちろんシステムのかみ合わせの問題もあるが、この2人がこの立ち位置を取ることで仙台のボール保持はかなり苦しんだ。そういう意味では、この試合のポイントは、しっかり小川と古橋がこの立ち位置で守備をできたこと、また前述したようにインサイドハーフコンビが逃げ場を作って、仙台の前プレを抑制させたことだったのではないだろうか。

 ということで、前半は神戸が1点リードで折り返す。

 

後半

(1)ビジャの優位性を活かす神戸

 後半はお互いにメンバーに変更なくスタートした。

 

 後半の神戸は、前半のように地上戦からボールを前進させるほかに、ロングボールを意図的に活用するようにもなる。

 ターゲットになったのはビジャとシマオのところだった。

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 仙台の守備は、基本的に人への意識が強い。配置の噛み合わせにより、1vs1をより意識する構図となる。しかしそのデメリットとして、全体が間延びし、チャレンジ&カバーの立ち位置を取れないことも多かった。

 後半の神戸は、そんな仙台の守備に対して、ロングボールを送り、より間延びさせるようにしていった。特にビジャをターゲットしたのは、3バックの中央のシマオを引き出すため。フィジカルではシマオに分があるものの、駆け引きではビジャの方が上手。

 後半はビジャのところにボールが入り、シマオがなかなか取れない。もしくはファウルでしか止められないようなシーンが多くなる。

 69分の小川の追加点も狙い通りだっただろう。ビジャがシマオとの駆け引きに成功して引き出し、チャレンジ&カバーがなってない仙台の守備の背後を古橋と小川で仕留めた得点となった。

 あのシーンではシマオがミスをしたように見えたが、おそらくビジャがうまく駆け引きしたことで、シマオのミスを誘ったのだろう。まさにワールドクラスの駆け引きとプレーだった。

 

(2)4-4-2へ変化する仙台だったが・・・

 2失点目を食らった仙台は、攻めに出るために崇兆とジャメを投入し、4-4-2へとシステムを変更する。

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 4-4-2へと変更したあとの仙台は、神戸の配置でのズレが生まれたことで、ボールの循環が良くなり、前進して押し込めることができるようになる。

 相手の疲労はあったものの、ここまで越えられなかった古橋と小川のところを越えられるようになり、サイドハーフとのコンビネーションで、サイドを制圧できるようになる。

 

 しかし、最後の最後で神戸の個人能力の高い守備に阻まれる。ジャーメインのシュートなど惜しいシーンは作ったものの、あと一押しが足りなかった。

 仙台にも徐々にここまでの疲労が見え始め、攻撃に粗さが見えるとゲームも神戸がしっかりクローズする流れになり、タイムアップ。

 同じ勝ち点同士の対戦は、0-2で神戸の勝利となった。

 

最後に・・・

  あくまでも今までやってきたことの延長線上にこの神戸戦があって、自分たちが目指したいサッカーが、神戸相手にしっかり表現できる最善策が今回の3バックだったと思っている。

 守備に関しては、不運な形で先制点を奪われたが、概ねしっかり守ることができていたと思う。ただ、前述したように相手が守備基準点をずらしたときに、どう対応するのか、そのような柔軟性が問われたし、課題となった試合だった。

 また3バックで前プレをするとどうしても4バックのときより、間延びしてしまう。もし3バックと4バックを併用することを考えているなら、そことどう付き合うか。そこも課題と言えよう。

 ボール保持に関しては、神戸の立ち位置の巧みさもあったが、こちらも相手に対して、自分たちで解を見つけ出すことができるかが大事になってくる。2年前と違って、なかなか相手も自由にはやらせてくれない。そういったときに、どう思考を凝らして戦うことができるかが、3バックでも4バックでも大切になってくる気がしている。

 

 同勝ち点の相手に敗れることは非常に悔しい。ただ大事なのは引きずらないことだ。この敗戦はチャレンジのなかでの敗戦。ネガティブなものではない。まずは次の清水戦が大切だ。

 自分たちがチャレンジしていることを表現して、ホームで勝利することを期待したい!!

譲れないもの~明治安田生命J1第29節 名古屋グランパスvsベガルタ仙台~

 さて、今回は名古屋グランパス戦を振り返ります。今シーズンも残り6試合。

↓前節のレビューはこちら

khigu-soccer.hatenablog.com

 

スタメン

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 ベガルタ仙台は、前節・松本戦で手痛い敗戦。今節の名古屋戦を皮切りに神戸、清水、ガンバと直接対決で、負けられない試合が続く。今節の名古屋戦のテーマは前節の反省を生かせるかどうか。

 前節からの変更は、出場停止明けで帰ってきたシマオ・マテ以外になし。ベンチには椎橋、阿部、ジョンヤらが入った。

 名古屋グランパスは、フィッカデンティ体制となってこれが3試合目。ここ2試合は引き分けが続いている。こちらも残留争いのなか、新体制で是が非でも勝点3が欲しい一戦となった。

 こちらも前節からの変更は1人。左インサイドハーフに和泉が起用されている。

 

前半

(1)前から嵌め込む仙台の守備

 まずは試合開始からの仙台の守備を見ていきたい。

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 仙台は、名古屋のボール保持に対して、前からプレッシングを行く形を取っていた。

 ポイントを書くと、まずは2トップがセンターバックからアンカーのシミッチへのパスコースを切りながら、センターバックへとプレスを掛ける。このことで、名古屋のパスルートをサイド、もしくはロングボールへ誘導する。

 次に、名古屋がセンターバックからサイドバックへパスをつなぐと、仙台はサイドハーフが一気にサイドバックへプレスを掛けに行き、さらに名古屋のボール保持を限定せていく。このときにボールサイドのインサイドハーフ(図で言う米本)には、ボランチがスライドして、パスコースを消す動きをしていた。

 このように、2トップから名古屋のボール保持を限定させることで、高い位置でボールを奪取し、ショートカウンターからゴールを目指した。

 

 そして7分の先制点となるコーナーキックは、このプレッシングで吉田のミスを誘ったところからショートカウンターを発動し、得たコーナーキックだった。

 この試合のポイントとなった先制点は、ボールを奪うところ、そして平岡のコメントにもあったように準備していたコーナーキックで奪った狙い通りのゴールだった。

 

 余談ではあるが、この前プレのやり口は第26節の札幌戦(J1第26節 北海道コンサドーレ札幌vsベガルタ仙台)でも見られた。センターバックとアンカーを2トップがいい立ち位置を取って見ることで前プレを可能にさせる。チームに浸透してきた形と言えるだろう。

 

(2)サイドの旋回攻撃から活路を見出す名古屋

 先制点を奪われた名古屋も、10分過ぎからボール保持の配置を変更する。

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 名古屋のボール保持はインサイドハーフの役割によって、左右で若干異なる。

 右サイドでは、米本がサイドバックの位置まで降りることで、吉田を押し上げ、ボール保持を安定させる。

 左サイドでは和泉が、長沢と道渕の間に立つことで、2人の動きを制限。加えて前田がウイングのポジションを取ることで、蜂須賀をピン止めし、太田をフリーにさせる構造となっていた。

 両サイドで共通して言えることは、サイドから数的優位で崩し、そしてクロスをジョー、もしくはペナルティエリアに侵入してきた味方に合わせるという形を攻撃ではメインとしていた。

 ただ、問題だったのは、前線3枚がボールを欲しがるあまりに下がる回数が多く、効果的な攻撃が少なかったことだ。だからこそ、フィッカデンティ監督も途中でシステムを変更(4-4-1-1)したのかもしれないのだろうけれども、選手に上手く意図が伝わらずに、システムを戻すことなったのだと思う。

 

 仙台も先制点を奪ったことで、両サイドハーフを下げることを許容し、4バックがなるべくペナルティエリア幅を出ない守備を心掛けながら、丁寧に名古屋の攻撃を弾き返していたと思う。

 あとは、この守備でもボールを奪って前線に送れば、高い確率で2トップが相手センターバックに競り勝って、ボールを収めてくれたことで、カウンターへと出ていくことができたのも地味に大きい。守備一辺倒にならなかったのは、2トップがしっかりボールを収めてくれたからだ。

 

 そんなこんなで、仙台は名古屋の攻撃を跳ね返しながら、時折カウンターでチャンスを作り出す狙い通りの試合運びで前半を過ごすことができた。1-0で後半へと折り返す。

 

後半

(1)赤崎、エドゥアルド・ネットの登場

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 後半の名古屋は、前半諦めたと思われた4-4-1-1のシステムに再び戻す。シャビエルが自由に動けるシャビエルシステムだ。

 名古屋としては、サイドバックが高い位置を取れれば、仙台のサイドハーフが下がるし、2トップも無理に前から来ない。また、前線の距離も3枚より4枚(サイドハーフ+ジョー、シャビエル)の方が、近い距離でプレーできるという2つの理由からシステムを変更したのではないかと考えている。

 実際にこのシステム変更が猛威を振るったのは、54分の赤崎、エドゥアルド・ネットが投入されてからとなる。

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 エドゥアルド・ネットと赤崎が投入されたことで、ネットが捌き役としてセンターバック間に降りてテンポよく捌き、前線では赤崎がジョーの近くでプレーすることで、攻撃の迫力を増していった。加えて赤崎が投入されたことで、中盤で比較的自由にボールを持てた松下にプレッシャーが掛かるようになり、仙台のボールを持つ時間が減らされていったことも、この交代によって起こった変化だ。

 ネットが投入されて攻撃のテンポが良くなると、サイドハーフもなかなか前で出て行けずに、仙台は我慢を強いられる時間帯が徐々に長くなっていった。太田や前田から質の良いクロスも上がるようになった。

 それでも前半と変わらずにペナルティエリア幅4バックが守り、弾き返す仙台。時々クバにピンチを救ってもらいながら、仙台はなんとかかんとか名古屋の攻撃を防いでいった。

 

(2)晴天の霹靂・アベタクPK奪取。

 ピンチの後にチャンスあり。ではないけれども、仙台は丁寧に名古屋の攻撃を弾き返すとビッグチャンスを迎える。83分。

 クバのゴールキックをハモンがヘディングで逸らすと、途中投入された阿部が丸山の背中を取り、ペナルティエリア内へ。背中を取られた丸山が思わず阿部を倒して、仙台はPKを獲得した。そしてそれをハモンがきっちり決めて、追加点。大きな1点を終盤に取ることができた。

 途中投入された阿部だが、それまでは守備に追われ、なかなか本来求められていた役割をこなすことができなかった。それでも、あのワンシーンで結果を残すことができたのは良かったし、今シーズン中々ケガで出場の機会が少なかった阿部本人のとっても大きなプレーだったと思う。まさに職人芸といったところか。

 

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 そして残りの時間をクローズに掛かる仙台。ハモンからジョンヤで、5-4-1にシステムを変更。さらにアディショナルタイムには、この試合も最後までタフに戦った関口に代わって久しぶりに椎橋が登場。

 最後の最後まで集中を切らさずに名古屋を抑えた仙台。2-0での勝利。久々のクリーンシートでの勝点3ゲットとなった。

 

最後に・・・

 譲れないもの=勝点3をゲットした仙台。名古屋の攻撃に最後までしぶとく弾き返し、久々の無失点で勝利することができた。

 この勝利のポイントは2つだと思っている。1つ目はスカウティング通りに決めることができた平岡の先制点。渡邉監督のガッツポーズがすべてを物語っている。

 2つ目は、後半。特に70分以降の戦いである。ネットと赤崎投入以降の名古屋の攻撃をしっかり我慢強く守れたことで、最後にご褒美が待っていた。正直、これだけ下がって大丈夫かとは思ったが、渡邉監督がどっしり構えていたところを見て、この試合は、そういう耐える試合なんだなと思った。

 

 残り試合が少なくなってきた中で、仙台は直接対決が続いていく。次節は再び2週間開けてのヴィッセル神戸戦。

 また耐える時間の長い試合が待っていると思うが、しっかり2週間の準備を得て、我慢強く、泥臭く勝点を奪うゲームを期待したい!!