さて、今回は大宮アルディージャ戦を取り上げます。二回連続で大宮戦になったのはたまたまです。
前節は札幌に敗れた大宮。ミッドウィークのルヴァンカップでも打ち合いの末にFC東京に敗れている。今節は352のシステムから442のシステムに戻した。ケガ明けの菊地がスタメンに復帰。またムルジャもスタメンで起用されている。
前節はFC東京に敗れた仙台。惜しいシーンを作りながらも決めきることができず、内容が良くても結果が出なかったもどかしい内容だった。ミッドウィークのルヴァンカップではクリスランの土壇場ゴールで柏に追いつき、貴重な引き分けを得た。チーム状態は悪くはないだろう。あとは内容と結果が伴うことである。今節は菅井がケガで欠場、代わりにルヴァンカップでフル出場だった蜂須賀が入った。
■前半ルヴァンカップを経て
このカードは先日の清水戦同様に、短い期間で同じカードがやってきている。お互いにメンバーは違うものの、チームとして目指しているものや、やりたいことは選手が変わっても変わらないはずだ。ということで、この対戦もそんなルヴァンカップの流れが残っているように思えた。
ここ最近の仙台は相手が4バックである対戦が多い。そんな中で自分たちが目指しているもの、表現したいことができてきている。仙台の攻撃のバロメーターはウイングバックである。いかに高いポジションでボールを受けられるか。また、サイドをえぐれるかはこのシステムでの重要なポイントだろう。特にボランチや最終ラインからの大きなサイドチェンジからウイングバックが高い位置でボールを受ける回数は、シーズン始まってから格段に多くなり、そこからゴールが決まるようになってくる。
大宮が一番嫌がっていたのは、間違いなくこの大きなサイドチェンジからの攻撃だった。ルヴァンカップでは、この形から揺さぶられて先制点を許している。
ルヴァンカップのときの大宮は、アーリアが石川直樹にプレスを掛けることで仙台のボールの出所を抑えようとしていた。しかし今節は、無理に前からボールを取りに行くよりは、後ろで構え、ソリッドな442のブロックを作ることで対抗していた。後ろで構えることで大きなサイドチェンジにもスライドで対応できるようにするためである。よって前半の仙台は大きなサイドチェンジからの得意な攻撃はできていなかった。
では、仙台はどうするか。仙台としては、サイドチェンジができないものの最終ラインからの組み立てはできる。狙い目は2トップの脇を起点にすることだっただろう。3バックの両脇が広がる、もしくは三田が降りてくることで、そこを起点にボールを前進させるような狙いが見えた。
2トップの脇でボールを受け、そこから外外循環でウイングバックへとボールをつないでいった。PKを得た場面でも後方からの組み立てから蜂須賀が右サイドをえぐった形だった。もし注文を付けるとしたら、図のように晋伍(もしくは三田)が2トップの間に顔を出すことで2トップの動きを制限し、より最終ラインが自由にボールを保持できるような形を取れれば良かった。
また大宮はブロックを組むものの、人を捕まえることができていなかった。石原に対しては渡部がマンツーマン気味で見ていたものの、リャンは比較的前を向いてボールを受けられていた。リャンがうまく入り込んでいるのもあるが、大宮もマークの受け渡しが曖昧になっていた。
前半は比較的仙台ペースでゲームが運ばれた。ルーズボールやセカンドボールをしっかり拾うことで二次三次攻撃へとつなげていった。しかしトランジションでカウンターが発動しても仙台はシュートで終わる回数が少ない。前半はペースは握れていたものの、シュートで終わるシーンが少なかったのは気がかりだった。雑になってもシュートで完結することを意識付けたいところ。
前半は23分にクリスランのPKストップからのそのままこぼれ球プッシュで先制した仙台がリードして折り返す。
■後半大宮の修正と落ち着きのない仙台
大宮は後半開始と同時にムルジャ→大前。瀬川を前線に上げて、大前を左サイドハーフに置いた。
この交代の狙いは攻守両面においてあった。
まずは攻撃面。大宮は前半から江坂をフリーマンにして、中盤で数的優位を作ることまたはディフェンスを引き付けて、ムルジャもしくはマテウスが裏を狙う形を作ろうとしていた。しかしムルジャが孤立する場面が多く、ボール保持からのチャンスは作ることができなかった。
そこで大前をサイドハーフで投入。江坂と大前で時間を作り、機動力のある瀬川を裏に走らせる狙いに変えた。大前は、仙台のウイングバックとシャドーの間に登場し、チャンスを作り出す。また持ち前のキープ力で、大宮の全体の押し上げにも貢献した。
一方で守備面。瀬川が前線にいることで、前からのプレスを機能させることに成功する。また全体の守備の意識もはっきりし、ボールに対するアプローチも前半よりも良くなっていった。
一方で仙台。前半は外外循環からのボール前進があったものの、後半はほとんどなくなる。もしかすると前半のあの運び方はみんなが共通意識を持ってやっていたものではないのかもしれない。
ハーフタイムに大宮の守備の狙い目が整理できていれば良かったのだが、後半を見る限りその印象はなかった。むしろ前半のほうがボール保持からの攻撃はできていたと思う。後半は、攻撃の意思疎通ができていなかったこと、大宮の守備強度が上がったことで攻撃が機能しなくなる。
そして案の定同点ゴールに。きっかけは仙台のビルドアップミスから。カウンターを食らいそうになるもののダンがコーナーに逃げる。しかしそのコーナーを山越に決められ同点となってしまう。60分の出来事。
同点にされたものの時間としては30分残っている。相手は勢いを持って来るだろうが、それをしっかり防げばまた自分たちの流れが来ると思った。しかし、大宮の勢いに便乗するように仙台の攻撃もテンポアップしてしまい、ゲームテンポを上げてしまった。
裏への単調なロングボールやスルーパスが多くなり、攻撃が淡泊になってしまう。また間延びし中盤にスペースが生まれ、大宮にカウンターを食らうようになる。
お互いのゴール前のシーンが増えることは仙台として良かったのか疑問に思う。奥埜、西村を投入し、より攻撃を活性化させようとするが、攻撃に厚みがないため効果はあまりなかった。
大宮は大山や岩上を投入し、守備の強度を保ちながらも虎視眈々と逆転を狙う。
そして実ったのは大宮。89分。岩上が西村からボールを奪うと大前へロングパス。裏へ抜けた大前は平岡を冷静にかわし、逆転ゴールを決める。最終ラインに残っていたのが三田というのがなんとも切ない。
仙台はパワープレーを試みるも、大宮の必死の守備に阻まれ、タイムアップ。非常に痛い逆転負けを喫してしまった。
■最後に・・・
非常に残念な試合だった。残念というのも、逆転負けをしたことよりも自分たちでゲームをうまくコントロールできなかったからだ。戦術やシステム云々ではなく、チーム全体としてのゲームマネジメントに稚拙さを感じてしまう。
先制し折り返したところで、後半より良くするための術はあったはずだ。得意としている大きいサイドチェンジが防がれてしまっていたが、それでも狙いどころはあったはずだし、前半はできていた。そこを整理して、丁寧にそして愚直に繰り返せば、追加点は取れていたと思う。
また、同点にされてから慌ててしまったのも残念。再度、相手の勢いを抑えながら広島戦のときのように厚い攻めができるように全体を押し上げることが必要だった。しかし攻め急ぎ、最終的には間延びする展開を自ら招いてしまったのは、もったいない。
ようやく内容が向上し始めただけに残念さは際立つ。しかし、まだ3分の1が終わっただけ。残りでここまでの経験を生かしてもっともっと向上していってほしい。そして内容が結果を伴うようになればいい。
まずは次のマリノス戦。仕切り直しの一戦。いいゲームを期待したい!!