ヒグのサッカー分析ブログ

ベガルタ仙台の試合分析が中心です。

【潰し合い】明治安田J2第4節 ブラウブリッツ秋田vsベガルタ仙台

 さて、今回はブラウブリッツ秋田戦を振り返ります。

↓前節のレビューはこちら

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スタメン

 ベガルタ仙台は、前節・水戸ホーリーホックに1-0で勝利し、2連勝中。開幕3試合はどの試合も拮抗した内容だったが、強度と出力で相手に負けずに僅差を制している。

 まだまだ攻撃面での改善の余地はあるが、守備の安定さでここまで開幕ダッシュに成功した。

 今節はロングボールとセットプレーを駆使するブラウブリッツ秋田が対戦相手だ。前節以上に球際の攻防で激しさが求められるなかで、秋田に屈せずにチャンスを活かせるかが勝利のポイントとなった。

 今節は右サイドハーフに郷家、2トップの一角に菅原がスタメンとなった。ベンチには鎌田が戻ってきて、名願斗哉がリーグ戦で初めてメンバー入りを果たしている。

 ブラウブリッツ秋田は、前節・徳島ヴォルティスに2-1で逆転勝利し、今シーズン初勝利を飾った。ルヴァンカップカマタマーレ讃岐と徳島に連勝しホーム開幕戦を迎える。

 秋田は吉田謙監督の下でひたむきに戦うスタイルは変わらない。新戦力がいかに早い段階でフィットし、チームの底上げを図れるかが今後の鍵を握るだろう。

 秋田は、センターバックに出場停止明けの喜岡、右サイドハーフに中村、左サイドハーフに前節決勝ゴールを決めた佐藤が起用されている。ベンチには、駒澤大学から入団した松本が初のメンバー入り。古巣対戦となる蜂須賀は残念ながらメンバー外となった。

 

前半

(1)耐えることを選んだ仙台

 この試合は、まず仙台がエンドを入れ替え風下を選択してキックオフした。

 以下、森山監督のコメントである。

風がかなり強くて、前半は本当に相手のロングキック、セットプレー、ロングスロー、コーナーキックの連続で、失点してもおかしくないような場面も何度かありましたし、こちらが意図的に風下を取ろうという、ここまでの戦いを見て、秋田さんの後半の追い風に乗って相手を上回っていく姿を見ていたので、前半に我慢できれば後半に勝機があるかと思っていました。

2024明治安田J2 第4節 ブラウブリッツ秋田

 前節・徳島戦で秋田は風上に立った後半に、勢いを持って逆転に成功したというのも把握しての判断だったようだ。

 仙台としては、前半はある程度秋田に押し込まれることも想定内のなかでゲームを進めていった。

 

 キックオフと同時、両チームともに相手ディフェンスライン背後を目掛けたロングボールで敵陣でのプレーを増やそうと試みる。

 ただ、風下に立った仙台はもちろん飛距離が伸びないためになかなかボールが収まらない展開が続いていった。

 

 それでも12分に小出から菅原に楔のパスが通ったあたりからボール保持の局面に移行して秋田を押し込む時間帯も作っていった。15分には右サイドを崩して3列目から飛び出してきた工藤のマイナスクロスを最後は郷家がシュートを放つもゴール上を越えていく。

 

 その後は時間の経過とともに秋田が押し込んでいく。秋田は、コーナーキックやロングスローを駆使しながら仙台のゴールへと襲い掛かる。

 22分、23分とセットプレーから左サイドバックの才藤にチャンスが訪れるも決めきることができない。32分には、才藤のロングスローから菅原がニアでクリアしきれずファーに流れたボールを佐藤が合わせたが林のビッグセーブで得点とはならなかった。

 

 前半終盤になると仙台も中盤での奪い合いでボールを回収すると、ショートカウンターを発動し、秋田が守備が整っていないうちに攻め切ろうとするがなかなかシュートまで持ち込めなかった。

 

 戦前の予想通り、激しい球際バトルが随所で繰り広げられ、強い風が吹くなかで両チームともに潰し合いの様相を呈した前半だった。

 スコアレスで後半へと折り返す。

 

 

後半

(1)ボール保持局面でうまくいかなかった理由

 スコアレスで折り返した後半。両チームともに大きくスタンスを変えることはなかったが、ロングボールからのセカンドボール回収で前進を試みる秋田に対して仙台の方はボールを奪ったら保持局面に移行しようという意思が強かったように思えた。

 仙台のボール保持は前節同様に髙田が片上がりして可変する3-4-2-1の形だった。

 前半は3バック+ダブルボランチのビルドアップ隊でボールを動かすことができたものの、その先に進むことがなかなかできなかった。

 それは秋田のダブルボランチが仙台の中島、郷家のシャドーポジションにマンツーマンのような振る舞いをすることで出口を封鎖したからである。

 なので、後半の仙台は中島、郷家に加えて菅原が列を降りる動きをしてビルドアップの出口を作り出そうしていた。そんな動きの変化も付けながら押し込む展開まで運べてもなかなか堅固な秋田の守備ブロックを崩すことができない。

 

 その原因の1つは左右に揺さぶることができなかったからだと思っている。

 前節・水戸戦ではボランチを経由しながら、U字に迂回することで水戸の守備を揺さぶって空いた中央のスペースへ楔パスを入れることができた。

 しかしこの試合では、特に左サイドの選手間の距離が広く左サイドの密集地帯でボールを動かせなかった。前節であれば相良が高い位置を取れば、石尾と相良の間のスペースに中島が流れてきたり、相良が下がってボールを受けたりしたが、今節はそのようなシーンがなかったために、どうしても左サイドの選手間の距離が広くなりボールを動かせなかった。逆に右サイドでは、小出がドリブルで持ち出しながら髙田と繋がった状態でプレーできていたためある程度前進できていた。

 左サイドが機能していないので、結果的にボールが左右に動くことができず、最終的に林までボールを下げて、秋田のプレッシングに対してロングボールで回避するという流れになってしまったために、水戸戦のようなボールの動かし方ができなかった。

 

(2)リスクマネジメントをしながらの仕掛け

 この試合の仙台は、膠着した試合状況というのもあったがなかなか交代カードを切ることができなかった。

 風下に立った秋田だったが、風下なりのロングボールの活用の仕方で前進して来るし、途中交代で投入された選手が勢いをもたらしていた。

 

 仙台としては、森山監督のコメントにもあったように、スタメンにセットプレーに強いメンバーをチョイスしていた影響もあった。

 難しい試合展開のなかで、森山監督が最後に仕掛けたのは名願とオナイウの交代だった。両サイドにドリブラーを投入して、疲労が溜まっている秋田のサイドバックを狙い撃ちしたかったと思うが、なかなか彼らにボールを繋げることができずに不発に終わってしまった。

 

 後半も前半同様に球際での激しいバトル・潰し合いのなかで少ないチャンスを活かそうと両チームがゴールへ迫った試合だった。

 結果はスコアレスドロー。秋田としてはチャンスもあっただけに久しぶりのホーム勝利を逃した格好となった。一方の仙台としては終始思うような展開ではなかったが、ピンチを体を張って防ぎアウェイで勝点1をもぎ取った形となった。

 

最後に・・・

 強風の影響もあり、また秋田がロングボールを主体とするチームということで、なかなか戦術的な駆け引き的な部分は少なく、とにかく球際でのバトルと中盤での潰し合いに終始した内容だった。

 チャンスの数で言えば秋田の方が多かったと思う。昨シーズンの仙台だったら、終盤に押し切られたかもしれない内容だったが、今シーズンは体を張ってゴール前のピンチをみんなで防ぎ切ったところに去年までの違いを感じることができた。

 

 一方で前線からのプレッシングに行けないなかで、どう戦っていくかというのは課題として残った。加えてボール保持の局面でいかに距離感良くボールを動かしながら、堅い守備ブロックに穴を開けていくかという作業はもっと突き詰めていく必要があることも実感した。

 

 次節はホームに戻ってロアッソ熊本戦。熊本は秋田と打って変わってとにかく細かいパスワークと地上戦を徹底してくるチーム。まさに180度違うチームと対戦することになる。練習試合では熊本相手に勝利を納めることができたが、大事なのはリーグ戦での結果。連戦となるがホームの声援をパワーに変えて、再び勝利のダンスを見せて欲しい!!

 

ハイライト


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【プレスを制するものが試合を制する】明治安田J2第3節 ベガルタ仙台vs水戸ホーリーホック

 さて、今回は水戸ホーリーホック戦を振り返ります。

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スタメン

 ベガルタ仙台は、前節・V・ファーレン長崎戦で2-1の勝利。今シーズン初勝利となった。前節はボール保持時の立ち位置が整理され、細かいパスからチャンスを作ることもできていた。一方で水曜日に開催されたルヴァンカップ1回戦のアスルクラロ沼津戦では2回リードする展開を得たものの、終盤に連続失点を喫して1回戦敗退。しかし、菅原や郷家といったゴールを取って欲しい選手にゴールが生まれたのは収穫となった。

 アウェイ3連戦を経ていよいよホーム開幕戦となる今節。高いモチベーションを持って水戸ホーリーホックへ挑む。

 仙台は相良がスタメンに復帰。それ以外は変更点はなかった。ベンチには菅原が入っている。

 一方の水戸ホーリーホックヴァンフォーレ甲府に1-2の敗戦。就任2年目となる濱崎監督の下で攻守にアグレッシブなスタイルで戦っている。今シーズンは大卒ルーキーを多く起用しており、非常にフレッシュな面々だ。水戸も仙台同様にルヴァンカップは1回戦敗退。リバウンドメンタリティを持って敵地ユアテックスタジアム仙台へと乗り込んだ。

 水戸は、右サイドバックに大崎、左サイドバックに城南国際大から加入した石井隼太がスタメンになった。それ以外にも大卒ルーキーの牛澤健、長尾優斗を前節同様に起用している。ベンチには前節ゴールを決めた久保征一郎やドリブラーの新井晴樹らが控えている。

 

前半

(1)仙台のサイドバックを引き出す水戸

 試合開始直後は、両チームともに相手陣地でプレーしたいゆえに相手ディフェンスラインの背後を狙ったロングボールの応酬となった。

 そんな中で、ロングボールから最初にシュートシーンを作ったのは水戸。6分には落合がミドルシュートを放つが林の正面に飛んだ。

 

 その後はボール保持vsプレッシングの構図が両チームで入れ替わっていく形でゲームが進んでいった。

 まず、水戸のボール保持vs仙台のプレッシングを見ていくと、仙台は4-4-2を基本としながら、2トップと両サイドハーフが高い立ち位置を取ることでビルドアップ隊を牽制し、キーパーへのバックパスなどを合図にプレッシングを開始する。

 水戸のボール保持の狙いは、そんな仙台のサイドハーフの背後を狙うことだった。水戸は長井がセンターバックの間に落ちて、両サイドバックが高い位置を取るオーソドックスな形。ちなみにトップ下の落合はフリーマンであらゆるところに顔を出しながらボール保持の安定に貢献していた。

 水戸の狙いは、後方3人から高い位置を取るサイドバックへ出すことで、仙台のサイドバックを釣り出して、その背後をスピードのある野瀬と甲田がランニングしていくことだった。恐らく開幕2試合の仙台の守備を見ての判断だったように思える。

 仙台としてはサイドバックが水戸のサイドバックサイドハーフを1人で見ることになり、守備の判断が難しくなる。

 またサイドで前進することが厳しかったら、安藤に背後へのボールを送ることも狙っていた。

 

 そんな水戸の立ち位置もあって、仙台は果敢にプレッシングに行くことよりも、水戸のサイドに対してアラートに対応しながら、コンパクトに守備ブロックを組んでいた。

 サイドへの対応はサイドハーフが列を越されないようにプレスバックする。またサイドバックがプレスへ行って背後を突かれそうになったら、サイドバックの背後をサイドハーフがカバーするシーンもあった。加えて右サイドでは、小出がカバーリングすることもあったし、安藤へ対しては小出と菅田が仕事をさせないようにしっかりとマークできていた。

 よって、ボールを保持されてもそこまで危険なシーンはなかった仙台の守備だった。

 

(2)サイドアタックに終始した攻撃

 ところ変わって仙台のボール保持vs水戸のプレッシングを見ていく。

 仙台のボール保持は髙田が高い位置を取って、小出、菅田、石尾の3人とダブルボランチがビルドアップ隊を編成する。

 対する水戸は、仙台のビルドアップ隊に時間とスペースを与えないよう2トップを中心にプレッシングを仕掛けていく。

 

 前半の仙台はリスクを負いたくない側面もあったのか、ロングボールを選択することが多かった。後方3人から両サイドを目掛けてフィードを送るシーンは多かった。

 そこでボールが収まれば両サイドハーフが縦へ仕掛けていく。よって前半の仙台はコーナーキックや相手陣地深い位置でスローインを獲得していく。

 また、仙台はボール保持を安定させようとダブルボランチが下がったり、それに呼応して中島が相手ボランチ付近まで下がることでビルドアップ隊を助けようという意識が強かった。よって結果的にエロンが孤立気味になり、突破力のあるサイドから可能性を見出そうとしていた側面もある。

 水戸へチャンスを与えなかった一方で、仙台もなかなか決定機ができなかった。

 

 それ以外にもお互いに強度が高く、ピッチ内のあらゆるところで球際バトルが行われていた。そんな球際バトルも両者ともに譲らず、前半はスコアレスで折り返す。

 

後半

(1)仙台のプレス回避とU字迂回

 後半序盤は水戸がキックオフと同時に、安藤へボールを送りながら仙台を押し込んでペースを握ろうとするところからスタートした。 

 

 そんな水戸の攻勢を防いだ仙台は、次第に自分たちのペースへと持っていくことに成功した。

 前半はサイドアタックから好機を見出そうとしていたが、なかなか水戸の守備ブロック内へ侵入できず、チャンスを作ることができなかった。

 ハーフタイムを挟んだ後半は、ロングボールをあまり使わずに地上戦から水戸のプレッシングを剥がして押し込んでいく。

 まず、改善されたのはボールを奪ったあとのプレーだった。ボールを奪うと仙台のダブルボランチである長澤と工藤は素早くポジションを取って、相手選手間に立つことでパスコースを創出しボールを受ける。長澤も工藤もしっかりポジションを取り、水戸の2トップとボランチの間でボールを受けることで水戸のプレスを回避することに成功していく。

 長澤も工藤もこの相手の選手と選手の間、いわゆる「門」にポジションを取ることが上手い。地味なプレーではあるが、彼らの貢献度は非常に高いと思う。

 押し込むことに成功した仙台は、主に左サイドから組み立てていく。後半は石尾と相良に加えて、中島が水戸のボランチとディフェンスラインの間にポジションを取り、石尾の横に長澤がサポートする形が多かった。

 そして、同サイドで完結できないときは長澤を経由して右サイドへと迂回し、前進していく。このときに長澤は、菅田ではなく小出に出すことで水戸の守備ブロックのスライドの距離を長くしていく。そして水戸のブロックを揺さぶりながら、中央へと縦パスを仕掛ける。

 59分のシーン(菅田の楔パス→中島フリック→エロン)や65分(髙田サイドチェンジ→相良→工藤アーリークロス→郷家)など押し込んで、揺さぶってから決定機を作り出せるようになった。

 

 仙台は61分に郷家と菅原を投入。ライン間でのポジションがうまくてゴールを狙える郷家と、高さでポイントになれる菅原を投入することで、よりゴールへと迫っていこうとする。73分には髙田の楔パスから相良、中島と繋いで最後は菅原がシュートを放つも惜しくもゴール左へ逸れた。

 

 一方の水戸も、67分に甲田と安藤に代えて新井と寺沼を投入し、攻撃のギアを一段上げる。

 お互いが交代カードを切ることで、お互いにゴール前へと迫っていくプレーが多くなった。

 

(2)結実した背後への抜け出し

 両チームともにゴール前まで迫るプレーが多くなったが、なかなかゴールを割ることができない。

 水戸は75分に石井のロングスローから落合が決定機を迎えるも、林のビッグセーブで決めきることができなかった。

 

 そしてピンチの後にチャンスありで76分に均衡が破れる。

 小出がインターセプトして郷家へパス。背後へ抜け出した相良へ渡ると冷静なループシュートで松原の頭上を越えてネットを揺らした。

 前線からのプレッシングから前向きでボールを奪い、背後を素早く付いた相良のゴールまでチームが狙いとしている形でのゴールが、大分戦、長崎戦同様に生まれた。

 

 得点後も、意識的に出力を上げる仙台は、ペースを握らすまいとギアをもう一段上げてアグレッシブにプレーしていたことが印象的だった。

 

 しかし、その後は水戸も久保と山崎を投入し前線の枚数を増やし同点ゴールを目指す。

 仙台も虎の子の1点を守り切る方向へ舵を切り、前節同様にマテウス・モラエス、知念を投入し5バックに変更する。

 最後は押し込まれる展開だったが、スタジアムの雰囲気も含めて、最後まで集中力を切らさず水戸の攻勢を弾き返した。

 そしてタイムアップ。仙台はクリーンシートでホーム開幕戦を白星で飾り、2連勝となった。

 

最後に・・・

 アグレッシブなスタイル同士、球際バトルが激しく強度の高い試合となった。

 そんななかでも仙台は後半になるとボールを左右へ動かしながら、水戸のブロックを揺さぶったことでペースを握れた。ここはまた1つ成長できた部分かなと思う。

 ルヴァンカップを含めて、終盤での失点が多く、かつクロスからの失点がほとんどだったが、そんな反省も踏まえて、最後まで体を張って守り切ったことも、チームとして自信になっただろう。

 

 毎試合、こうやって課題をクリアしながら、強度・出力を上げてもっともっと個人もチームもレベルアップしていく必要がある。これからはもっと多くのチームが仙台のことをスカウティングして厳しい戦いになる。そんななかでもそれを乗り越えながら強くなっていって欲しいと思っている。

 次節はアウェイでブラウブリッツ秋田戦。蜂須賀孝治との再会だ。秋田にとってはホーム開幕戦。今節は徳島ヴォルティスに逆転勝利し、調子を上げてきている。

 秋田もまた球際での厳しさが売りのチームだけに、しっかりと球際バトルを制して主導権を握りたいところだ。

 次節も慢心せず、相手よりもハードワークして勝点3をもぎ取りたい!!

 

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