ヒグのサッカー分析ブログ

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【成功体験の積み上げ】明治安田J2第2節 V・ファーレン長崎vsベガルタ仙台

 さて、今回はV・ファーレン長崎戦を振り返っていきます。

↓前節のレビューはこちら

khigu-soccer.hatenablog.com

 

 

スタメン

 ベガルタ仙台は、前節・大分トリニータと1-1の引き分け。キャンプから取り組んできたアグレッシブな姿勢を見せ、狙いとしていたショートカウンターからゴールを奪ったものの、ペースの落ちた後半終盤に追いつかれ悔しい結果となった。

 それでも一定の自信を得たチームは課題へ取り組みながら、より自分たちの武器を磨いていく。今節の相手はV・ファーレン長崎。昨シーズンはフアンマを抑えきれずにシーズンダブルを食らった相手だけにアウェイながらもリベンジしたい一戦だ。

 今節は、郷家と新加入のエロンがスタメンに名を連ねた。ベンチには浦和レッズから加入した知念哲矢と中央大学から入団した有田恵人がメンバー入りを果たしている。

 一方のV・ファーレン長崎はカリーレ監督との二重契約問題で、他チームよりもシーズンスタートが出遅れた。今シーズンは昨年まで大分を指揮していた下平隆宏監督が指揮を執る。下平監督と言えば後方からしっかりボールを繋いでいくスタイル。長崎でも同様のスタイルを落とし込もうとしているところだ。

 開幕戦の藤枝MYFCとはスコアレスドロー。ホーム開幕戦であり、今シーズンでお別れとなるトランスコスモススタジアム長崎での試合だけに勝って勢いづけたい試合である。

 今節は名古屋グランパスから獲得した山田陸が本職ではない右サイドバックで起用されている。またセンターバックジェフユナイテッド千葉から来た新井一耀が起用された。ベンチには瀬畠義成、エジカル・ジュニオが前節と代わって名を連ねた。

 

前半

(1)序盤の振る舞い

 序盤の仙台は、前節以上にはっきりとした振る舞いをしていた。

 まず守備では、この試合は長崎に秋野という明確なアンカーがいるため、そこを経由させないように中島がデートするところからスタートした。センターバックに対してはエロンが監視し、前節同様に両サイドハーフは高い位置を取って、サイドバックへのパスコースを制限しながら、長崎のセンターバックへ外切りのプレッシングを掛ける役目を担っていた。

 仙台は何からなんでもプレッシングを仕掛けるというよりは、長崎がゴールキーパーへバックパスしたことを合図にプレッシングを仕掛けるルールとなっていた。

 このときは2トップとサイドハーフの4人が前に行くのと同時に、仙台のサイドバックも連動して長崎のサイドバックまでプレスに行っていたのが印象的だった。

 仙台のミドルブロックの守備に対して様子を見ながらボールを保持する長崎だったが、4分には米田のバックパスがエロンに渡り、そのままエロンがシュートを放つシーンを作るなど、序盤の守備はそこそこ機能していたように思える。

 

 一方の攻撃では、ビルドアップしていくよりも、早めにオナイウやエロンを目掛けて背後へのロングボールを送るシーンが目立った。

 まずは背後を狙うこともだが、もしボールが合わなくても高い位置での守備からプレーをスタートできる。特に長崎は後方から丁寧にビルドアップしていくチームなので、大分のようにロングボールを使わないとなると尚更だろう。そんな振る舞いで高い位置からプレーをスタートさせることに成功した。

 

 しかし、長崎も時間の経過とともに仙台の守備に対応し始める。秋野を経由できないとなると、左サイドの米田からの前進が増えていくようになる。長崎は笠柳が髙田をピン止めすることで、米田に時間とスペースを与える。郷家は米田をカバーシャドウのような形でマークしているため、郷家をうまく剥がすと前進できるような仕組みに変わった。

 ちなみに米田へ通ったら、郷家はフルスプリントでプレスバックする。この走力と強度こそ森山監督が求めている部分である。

 長崎は、左サイドの笠柳、名倉、米田の3人を中心に仙台の右サイドを打開しようとするが、仙台もしっかり戻って守備ブロックを作ることで長崎に深い位置やポケット(ニアゾーン)へ侵入させない。特に大分戦ではポケットを取られるシーンが多かったので、その反省もあったと思う。

 よって仙台は、自陣に攻め入れられても集中した守備で長崎に決定機を与えることはほとんどなかった。

 

(2)整理された仙台のビルドアップ

 長崎に押し込まれる時間帯もあったものの、要所を抑えることで時間の経過とともに自分たちがボールを保持する時間がやってくる。

 序盤では背後へのロングボールが多かったが、15分あたりから仙台もビルドアップへ前進していこうとした。

 前節の反省もあり、この試合ではビルドアップ時の立ち位置が整理された。

 前節同様に髙田が上がって石尾はステイし3バックになることに加えてダブルボランチがビルドアップ隊を形成し、そこに郷家が加わる形となった。

 仙台のボール保持は3-4-2-1のような形となるが、郷家と中島のシャドーではそれぞれタスクが異なる。郷家は工藤と小出と繋がるような状態で、小出からのボールを引き出し、近い距離でボランチとパス交換をすることで長崎の2トップを越えていく。

 逆に中島は加藤の背後をスタートポジションとし、そこからサイドでボールを受けたり、中間ポジションでボールを受けることで潤滑油となっていた。また左サイドはオナイウが高い位置を取るため、彼を高い位置へ促すために左サイドを遊撃するようなタスクとなっていた。

 長崎は名倉が一列上がって4-4-2の守備ブロックを組むが、前線からのあまりプレッシングに来ないので、比較的ボールを保持することができたし、ダブルボランチと3バック(小出、菅田、石尾)がパス交換しながら前進することで、リズムも生まれていた。

 ビルドアップで長崎の2トップを越えたあとのパスが雑になったり、合わなかったりするシーンが前半は多かったが、体力をセーブするという意味でも保持率が上がったことは90分通してかなり効いたように思える。

 

 そして、スコアレスで進行した前半は、ラストプレーで試合が動く。

 右サイドで得たフリーキック。中島の精度の高いボールに菅田がファーで合わせて先制点を奪う。菅田の前に石尾がブロックをして、目の前の選手を邪魔することで菅田はフリーでヘディングすることができた。準備してきた形だったと思う。

 

 仙台は、耐え時をしっかり耐え、また保持率を上げながらペースを握ってラストプレーでゴールを奪うというプラン通りかそれ以上の展開で後半へと折り返すことができた。

 

後半

(1)オナイウ大作戦とロングボールのポイント

 後半開始から長崎は名倉に代えて澤田、笠柳に代えて松澤を投入する。名倉は左サイドで効果的なプレーしていただけにアクシデントでの交代は長崎にとって痛かっただろう。

 

 後半の仙台は狙いが明確で、オナイウへなるべく早く届けることだった。

 オナイウと対峙するのは本職ではない山田ということもあって、そこを狙い撃ちにすることと、ウインガーの増山を押し下げることが狙いだったように思う。

 

 後半キックオフからの流れで左サイドから押し込むと、最後はニアでエロンが合わせる惜しいシーンを作る。その後も仙台が押し込むような展開が続いた。

 長崎は前半あまり前からプレッシングに来なかったが、後半はフアンマと澤田がきっかけとなってプレッシングに来ることが多くなった。しかし、まだ整備されていないのか後方が連動してないので、仙台はダブルボランチを経由しながらうまく剥がすことに成功していた。

 

 また仙台はロングボールのポイントも明確にしており、なるべく長崎のサイドバックを目掛けて蹴ることが多かった。サイドへロングボールを送ることでエンドラインを切ってもスローインになるし、米田も山田も決して高さがあるわけではないというのもあったのかもしれない。仙台はサイドをポイントとするロングボールからセカンドボールを回収して敵陣へと前進していくこともできていた。

 

(2)復活を予感させるジャンピングボレー

 長崎は65分に秋野と加藤に代えてマテウス・ジェズスとマルコス・ギリェルメを投入する。

 一方の仙台は69分に郷家とエロンに代えて相良と中山を投入する。

 長崎はジェズスとギリェルメを投入し、後半開始から投入された松澤も加えて個の力で打開しようという狙い。実際に松澤は昨シーズンもドリブルの怖さがあったが、今シーズンも相変わらず左サイドで脅威になっていた。

 

 仙台は長崎の右サイドが変わったことで相良を投入し守備強度を保つとともに、右サイドのオナイウを移動させ、カウンターで前へ出て行く出力を上げることを狙った。

 実際に72分には右サイドで中島がロングカウンターを発動させ、最後は相良の決定機を迎える。惜しくもバー直撃のシュートとなり追加点のチャンスを逸してしまう。

 

 しかし、それでも集中を切らさなかった仙台は77分に待望の追加点を奪う。

 中盤での球際バトルを制すると左サイドで石尾がセカンドボールを回収。相良が受けると増山を交わしてクロス。それを中山がジャンピングボレーで突き刺し、追加点を奪った。

 昨シーズンは2ゴールと悔しい結果に終わった中山だが、そんな鬱憤を晴らすような豪快なシュートは復活を予感させるものだった。

 

(3)最後は全員で守り切る

 追加点を奪った仙台は、81分に中島から有田に交代し、右サイドの守備強度を保つ。

 ホーム開幕戦で意地を見せたい長崎はラスト10分、猛攻を仕掛け両サイドからのクロス爆撃でゴールを目指す。

 実ったのは86分。増山のアーリークロスがファーへ流れると松澤のクロスに途中投入されたエジカル・ジュニオが合わせて1点を返す。

 このシーンでは相良が奪い切れなかったところで増山をフリーにさせてしまったのが痛かった。ファーへ流れたことで結果的に揺さぶられる格好となり、ニアへ米田がランニングしたことで仙台の守備がズレてしまった。

 

 その後仙台は1点を守り切ろうと、知念とマテウス・モラエスを投入し、5-4-1へ変更する。長崎は新井を前線に上げてパワープレーに出てくるが仙台は、なんとかゴール前で跳ね返して守り切ることに成功した。

 

 今シーズン初勝利であり、森山監督にとってJ2初勝利となった。九州連戦で勝点4をゲットして、いよいよホーム・ユアスタへと帰ってくる。

 

最後に・・・

 前節の反省を踏まえながら、今シーズン初勝利をゲットすることができた。ボール保持では監督コメントにもあったように相手ボランチを困らせるポジショニングから意図的にボールを保持することができ、一定の自信を得ただろう。あとはビルドアップから相手陣地へ侵入したときの精度・質の部分はもっと高めていく必要もある。

 また、終盤は押し込まれる展開だったが、ベンチに知念とマテウス・モラエスを入れておいたことで5バックで逃げ切ることができた。この辺も前節の反省もあったと思う。石尾はこの試合でも足を攣ってしまったが、そのようなアクシデントがあったなかでも逃げ切って勝点3をゲットできたことは大きい。

 

 リーグ開幕して2試合目にして勝利できたことは自信にも繋がるだろう。まだまだ伸び代は多いと思うので、個々の成長とチームの成長をさらに期待したい。

 

 次節はミッドウィークにルヴァンカップアスルクラロ沼津戦を挟んで、いよいよホーム開幕戦・水戸ホーリーホック戦を迎える。水戸も若い選手が多く、アグレッシブなチームだ。昨シーズンはシーズンダブルを食らっているだけに今節同様にリベンジのつもりで戦いたい。このアグレッシブなサッカーにサポーターの声援が乗って、その相乗効果と勢いで水戸を飲み込んで欲しい!!

 

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【所信表明】明治安田J2第1節 大分トリニータvsベガルタ仙台

 さて、2024年シーズンもよろしくお願いします。

 今回は、開幕戦・大分トリニータ戦を振り返っていきます。

 

 

スタメン

 昨シーズン16位と、大きく期待裏切る結果となったベガルタ仙台。優勝争いどころか一時は残留争いに片足を突っ込んだシーズンとなった。

 今シーズンからU-17日本代表など長年育成年代の指導をしてきた森山佳郎監督が就任。平均年齢が昨シーズンより2歳若返り、「ボールとゴールを刈り取る」サッカーを標榜する。キャンプでは徹底的な走り込みと個々人の強度を上げるトレーニングに力を入れた。

 クラブ設立30周年の節目のシーズンとなる今年こそいい成績を残しJ1昇格を目指す。

 そんな開幕戦のスタメンも新たな顔ぶれが名を連ねた。右サイドバックにはブラウブリッツ秋田から加入した髙田涼汰、左サイドバックには仙台大学から加入したルーキー・石尾陸登がそれぞれスタメンに。ボランチには昨シーズンリーグ戦の出場がなかった工藤蒼生が初出場。右サイドにオナイウ情滋、左サイドに相良竜之介が起用された。

 ベンチには横浜FCから獲得したマテウス・モラエス、またブラジル2部から加入したエロンがメンバー入りを果たした。またキャンプ中に怪我で離脱していた鎌田大夢や郷家友太も開幕に間に合った。

 

 一方の大分トリニータも昨シーズンは9位でフィニッシュ。序盤こそ好調を維持していたが後半戦に失速した。

 今シーズンからは片野坂知宏監督が2021年以来に復帰。以前は「カタノサッカー」と言われる相手を自陣に引き込んでから擬似カウンターで一気に畳変えるスタイルでJ1でも結果を残したが、今シーズンは「攻守にシームレス」なサッカーを標榜し、アグレッシブなスタイル目指す。

 そんな大分のスタメンは、ゴールキーパーが試合前に負傷した西川幸之介に代わって濵田太郎がJ2初スタメン。右サイドバックには昨シーズンFC町田ゼルビアでプレーした藤原優大が起用された。それ以外は昨シーズンからいるメンバーが起用されている。

 ベンチには鹿児島ユナイテッドから獲得した薩川淳貴、中京大から加入した小酒井新大と同じく中京大在学中の有働夢叶、再契約を果たした長沢駿が名を連ねた。

 

前半

(1)厳格になった守備組織

 まず前半では仙台が約1か月のキャンプをやってきたなかで、昨シーズンと違っていた部分・強化してきた部分についてピッチ上で見えた範囲で書いていきたいと思う。

 

 はじめに森山監督のインタビューにもあったように守備の強化を取り組んできたキャンプということもあって、この試合でも守備で狙いとしている部分を表現できたことは多かったように感じた。

 森山監督は、「ボールとゴールを刈り取る」ことを標榜し、積極的な前線からのプレッシングから高い位置でボールを奪うことを目指した。

 この試合では、ゴールキーパーセンターバックとアンカーとなる保田の4人がビルドアップ隊になる大分に対して、仙台は2トップと両サイドハーフが高い位置を取っていたことが印象的だった。

 2トップは、自分たちの背中で保田や降りてくる弓場を消しながらセンターバックゴールキーパーへプレッシングを仕掛けていた。加えて両サイドハーフも、背中でサイドバックを消しながら、状況に応じてセンターバックへプレッシングに行くこともあった。

 自分のマーカーを自分の目の前ではなく、背中で消すことによって、ビルドアップ隊からのパスルートを消しながらビルドアップ隊へプレッシングを仕掛けることが最大の狙いとなる。もし浮き球でサイドバックへパスをしようとしても浮いている間にプレスバックをして対応することも可能だ。

 40分の相良のゴールも狙い通りの形だった。濵田のパスをオナイウが引っかけてそのまま素早くゴールへ繋げた。まさに今シーズン目指している形でのゴールはチームにとっても自信になるものとなっただろう。

 

 また大分時間の経過とともに、仙台のプレッシングに対して試合中盤からロングボールを送り、そのセカンドボールを回収することで前進しようと試みる。仙台はサイドハーフが高い位置を取るため、間延びしそうになるがそこはキャンプで積み上げてきた走力を活かして、しっかり自陣に戻って守備対応することが徹底されていた。

 

 

 仙台は自陣に撤退したときは全員が引いてコンパクトな4-4-2の陣形を組む。

 大分が同サイドで人数を掛けるためにどうしてもボールサイドではボランチの援護が必要となる。仙台の約束事としてセンターバックは原則としてサイドのカバーをしないので、よりボランチのフォローが重要になる。

 ボランチがボールサイドの援護をする代わりに逆サイドではサイドハーフが中央に絞って中央のエリアを埋めることが徹底されていた。よって相良やオナイウが中央でクリアするシーンもあった。

 ちなみに逆サイドの大外はサイドバックが担当する。後半のプレーになるが石尾が横パスをインターセプトし、そのまま50m駆け上がったシーンは仙台が狙いとしているカウンターだったと思う。

 

 それ以外でも組織的な部分だけではなく、個々人の球際での厳しさも目立った。特に相手が背中を向いている状態のときはかなり厳しく寄せていくプレーが多かった。ファウルを取られることが多かったが、このような個々人の厳しさも森山監督が求めているであり、キャンプ中に意識づけられたプレーだった。

 

(2)道半ばなボール保持攻撃

 一方の攻撃では、カウンター時に勢いよく出て行く部分は良くなったものの、試合前の森山監督の言葉通りでボール保持においては道半ばな印象だった。

 仙台のビルドアップ隊は石尾がセンターバックと横並びになり、アンカーに長澤がいる3+1の形がベースとなっていた。

 それ以外の選手はポジションの固定はなく選手の特徴に合わせて組み込まれているようになっていた。

 例えば右サイドは髙田とオナイウのセットだが、オナイウと髙田は内と外のポジションを固定させずに突破を図っていた。

 左サイドの相良はビルドアップの出口となり、長澤や工藤が平行サポートで応援する。押し込めたら石尾がサイドバックに戻り、加勢する形となっていた。

 中島はトップ下の位置でフリーマンとしてあらゆるところに顔を出しながら、最終的にはペナルティエリアへ侵入しゴールを狙う。

 前半の仙台は右サイドから活路を見出すことが多かった。セカンドボールを回収のからやサイドチェンジからオナイウのクロスに中山や中島、相良が合わせるシーンことが多かった。

 

 また仙台は無理に後ろから繋ごうとはせずに、厳しかったら大分ディフェンスラインの背後へロングボールを送り、そのロングボールから前線からのプレッシングへスイッチをしたり、高い位置でのボール非保持をスタートさせるようになっていた。

 

 前半はお互いにサイドからチャンスを作る展開のなかで、仙台が相良のゴールで先制して後半へと折り返す。

 

後半

(1)長沢投入により押し込み始める大分

 両チーム交代なく始まった後半。序盤の10分間は両チームともに前半から大きく戦い方を変えることはなかったが、仙台は後半開始序盤ということもあり前線からのプレッシングを仕掛けるよりもコンパクトな陣形を保って、守備ブロックを敷くことにややウェイトを置いているように感じた。

 

 そんな仙台の状況を見てからか56分に大分は野嶽、中川、長沢を投入する。宇津元に代わって前線のポイントとなる長沢が入ったことで大分はロングボールを収められるようになり、大分が押し込む時間帯が長くなっていく。

 仙台は前半でも書いたように11人が下がって中央の危険なスペースを埋めることで、危険なシーンを作らせなかった。

 

 ただ、押し返したい仙台も62分に鎌田と郷家を投入。彼ら2人の投入はもう一回強度と出力を上げて前から仕掛けたいのと攻撃に転じていきたいというメッセージがあった。

 前傾姿勢になる大分に対して、鎌田、郷家の投入によって中盤でマイボールにできるようになると69分には左サイドから鎌田がドリブルで侵入し、郷家へスルーパス。郷家はクロスを選んだことでコーナーになったが、この辺りからチャンスシーンを作ることができ、この時間帯に追加点を奪えれば勝点3に大きく近づくことができただろう。

 

(2)4-3-3への変更

 70分すぎから大分はシステムを4-3-3へと変更。76分には弓場から薩川へ交代する。

 一方の仙台は足を攣った石尾からマテウス・モラエス、中山から菅原へスイッチする。

 大分は中盤が保田、野村、中川の3人になったことで3人がポジションを入れ替えながらもしっかりボールを循環し、攻撃の糸口を探っていく。この辺りは片野坂監督というよりは下平前監督が残したエッセンスのように思えた。

 3トップは中央3レーンにいて、大外はサイドバックが高い位置を取ることで、仙台を押し込む形を作った。

 そして生まれたのが83分の同点ゴールだった。

 藤原の楔のパスをきっかけに中川と保田で中央をこじ開け、薩川へスルーパス。薩川のグランダーのクロスに長沢が冷静に流し込んで同点に追いつく。

 大分としてはシステム変更からボール保持の流れを持っていったので、狙い通りの得点だったと思う。

 一方の仙台としては巧みな大分のボール循環にやられた形となった。工藤が中川に付いていったときに郷家や鎌田が絞れていたり、保田に対して菅原がファウル覚悟でプレスバックすることができれば防げたかもしれない。その辺の少しの隙を与えないことも今後は求められていくだろう。

 

 その後は、同点に追いついてスタジアムのボルテージが高まって大分が押せ押せムードになるなかで、仙台も負けじと球際で激しく戦いこれ以上の失点を防ぐことことができた。

 2024シーズンの開幕戦は、追いつかれてのドロー発進となった。それでもファイティングポーズを取り続けたチームには希望を感じた試合となった。

 

最後に・・・

 期待と不安が入り混じる開幕戦だったが、90分間通して戦う姿勢が見られた試合だった。去年に比べてどの選手も走るようになったし、足が止まる選手はほとんどいなかった。守備では前線からのプレッシング、撤退時のコンパクトさ、個々人が激しく球際へ行くという部分はキャンプから取り組んできたことが成果として表れていたと思う。激しく行くことで、今節のようにカードが多くなることも覚悟しなければならないが、まずは食らい付いていく姿勢を大事にしていきたい。

 

 試合内容については、石尾が足を攣ったことはベンチとしても少しプランを変えざるを得なかったかなと思う。そのまま石尾を使えれば終盤はモラエスを投入して5バックで逃げ切れる策も取れたと思うので、その辺のやりくりの難しさはこの試合で経験できた部分だったのではないだろうか。

 それでもリーグ戦初出場だった石尾も工藤も堂々とプレーしていたことはチームにとってとてもプラスだった。今節で得た課題を次の試合へと繋げて行って欲しい。

 

 次節は再びアウェイでV・ファーレン長崎との対戦となる。監督の契約問題に揺れたものの、実績十分な下平監督が就任したので大きなショックはなさそうだし、何よりフアンマをはじめタレントが揃っているチームなので、次節も耐える時間は長くなるかもしれない。そんななかでも焦れずに戦い、前から行けるところは仕掛けて、次の試合もファイティングポーズを取って戦うチームを期待したい!!

 

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